選択権無しのマリネット   作:ルスト

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捨てられた……?

「アルセウス様に……アルセウス様に、この核だけは……絶対に届けないと!」

 

 イレギュラー個体のオーベムが放った闇に覆われた空間を、私は必死に逃げる。

 アルセウス様の使命を果たすまでは、死ぬわけにはいきません。

 それが、アルセウス様の望みなのですから!

 

 

 

「逃がすか! よくもマリネットを苦しめてくれたね……きみはここで消えるがいい!」

「くっ……どうして! シナリオのラジコンのはずのチェレンがトウコである私に攻撃できるんですか!?」

 

 私の姿は権能の効果で翼こそ生えているとはいえトウコ……マリネットを名乗る異物のそれです。

 友達相手にポケモンによるダイレクトアタックなんてアルセウス様のシナリオでは絶対に出来ない。

 それが出来るという事は……このチェレンはあのオーベムに何かされた結果異物へと落ちてしまっています!

 異物であるならば……容赦はしませんっ!

 

 

 

「この闇の中でも! 無理矢理使えば何回かはアルセウス様の力が使えますッ!

 あまり私を舐めないでください、イレギュラー!!

 野生ポケモン!! アルセウス様のご命令です!!

 全てを賭して、そこのイレギュラーを襲いなさい!」

 

 本当であればこの闇を抜けた後で一気に飛んで離脱するために力を温存したかった。

 ですが、このイレギュラーチェレンがあまりにもしつこい。

 なんとしても私を殺すつもりで狙ってくる。

 ならば……チェレンであっても始末します!

 幸い、今の私には十分な力が満ちています。なのでこうやって戦う事も出来るんです。

 草むらにアルセウス様の力を注ぎ込み、イベント防衛プログラムを叩き起こします。

 金色に輝いた草むらから、私を守るために次々に野生ポケモンが出現!

 勝手に異物を攻撃してくれるようになりました!

 

 

 

「なっ……オーベムの闇の中でもこの力を使えたのか!?

 くそっ、これじゃ前に進めない……」

 

 私の後ろでは輝く草むらから飛び出した10番道路の野生ポケモン達がチェレンを阻む壁として君臨しています。

 7番道路ではどうやったのかは知りませんが、これなら物量攻めでチェレン型のイレギュラーを仕留める事が出来るでしょう。

 さて、後は何とかしてこの空間から逃げるだけですが……。

 

 

 

「目標確認、攻撃開始」

「オーベム様の敵発見、始末せよ」

「しつこいですね! イレギュラーの手下ですか!?」

 

 ソウリュウシティの方に行こうにもイレギュラーの手先が次々にやって来てゲートを超える事が出来ません。

 あの先に抜けなければこの闇の結界を抜けられないのに……。

 逆側は……チャンピオンロード……。

 こいつらを倒すために、別の権能を……!

 

(トウコ。目的を果たすのを優先してください。

 貴方の中に残っている力で光の矢を作り、そこに主人公の核を付けてチャンピオンロードの方角に。

 バッジチェックゲートから回収します)

「バッジチェックゲートから……了解です、アルセウス様!」

 

 アルセウス様が回収してくださるなら、安心です!

 主人公の核をアルセウス様の力でコーティングして、光の矢へと変えて……。

 

「アルセウス様ッッ!!!」

 

 

 

 私の放った光の矢は、アルセウス様の待っているであろうバッジチェックゲートの方へと飛んでいく。

 ……あの辺りにはイレギュラーは居ませんよね?

 それなら、大丈夫です……。

 

(トウコ、よくやってくれました。

 これで希望は繋がる……。貴方には感謝してもしきれませんよ)

「アルセウス様! 無事に役目は果たせました!」

 

 後は、私がここから離脱するだけ

 

『くく……私が居ない間に苦し紛れの攻撃をしたようだが、ここから逃げられると思っているのか?』

 

 イレギュラーオーベムの声が聞こえた、その瞬間

 

 

 

「ああああああああっっっ!!??」

 

 背中を、足を、翼を、腕を。イレギュラーオーベムの黒い槍が次々に貫いていく。

 激痛と共に、私の中へと闇が侵食してくる。

 ああ、アルセウス様の力が、使えなくなって……。

 翼が……消えていく……。

 

 

 

(……これは救出は不可能ですね。まあこれさえ手に入れば良しとしましょう。

 ではさようなら、トウコ。貴方は想像以上に役に立ってくれましたよ)

「あ、アルセウス、様……?」

 

 アルセウス様の声が、気配が……それを最後にぷっつりと途絶えてしまった。

 今までテレパシーでいつも繋がっていたはずのアルセウス様が、全く感じられない……。

 

「オーベム! マリネットは……」

『大丈夫だ、とは言っても、この手先の攻撃でかなりのダメージを負っていた。

 会うことは出来んな』

 

 アルセウス様に……捨てられたんですか、私……?

 嘘です、アルセウス様が、私を捨てるなんて……。

 

 

 

「あら、もう終わっちゃったの?

 約束通りソウリュウシティでずっと待っていたのよ私?」

 

 声の主は、7番道路のライブキャスターイベントで電話してきたママに成り代わっていた異物……でした。

 イレギュラーオーベムの手下達に囲まれ、更に槍で貫かれて……。

 私、もう逃げられないんですか、アルセウス様……?

 どうして? 私ずっとアルセウス様に尽くしていたのに……。

 アルセウス様の言うとおりにしていたのに……。

 

 

 

「こうして顔を見ると、本当にマリネットそのものねえ」

「……気味が悪いな。マリネットと全く同じ顔、同じ見た目だなんて。

 ……すみません、トリカさん、オーベム。ぼくはちょっと向こうに行ってます」

 

 イレギュラーチェレンが離れていく。

 でも、私が逃げられる可能性はどこにも無い。

 

 

 

『さて、どうする? もはやこいつは逃げられないが……殺すか?

 それとも……リサイクルするか?』

「リサイクル? マリネットそっくりのこれを何にリサイクルするつもり?」

『四天王、ジムリーダーの後任の数が足りていないのだ。

 一通り情報を抜き取った後、マリネット同様の処置を行って別人へと変えた上で適当に使ってやろうと考えている』

 

 アルセウス様に捨てられた……。

 どうして、アルセウス様に捨てられたんですか……?

 

「……どうして」

「あら? 命乞いでもするのかしら?

 見れば見るほどマリネットそっくりで、7番道路の件もあるから今すぐ殺したくなるけれど……」

「アルセウス様……役目を果たしたのに、どうして助けてくれないんですか……?

 さようならって……どういうことなんですか……?」

 

 私、ずっとアルセウス様の言うとおりにしてきたのに……。

 

『利用価値がありそうだな。……トリカ、殺すのは保留だ』

「仕方ないわねえ……」

 

 アルセウス様の言うこと聞いていたのに……どうして……?

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