トウコが私の指示に従い、バッジチェックゲートの方へと放った光の矢。
その先についていた主人公の核を回収し、私は10番道路を去りました。
あのトウコをここから救出するのはコストに見合わない。
新しいトウコを製造するなり、イッシュの浄化をするために力を使う方が効率的です。
「やれやれ……ようやくこれが私の手に戻りましたか」
一通りの作業をするために人間の形をとっている私の手の中には、トウコの奪い返した主人公の核。
見た目は白い光を放つ玉ですが、これはこの世界における主人公の証明書。
強い不死性や圧倒的な戦闘力を備え付ける事が出来る英雄の証なのです。
マリネットとかいうあの異物の体は、容れ物にすぎません。
異物の人格など無関係。
本当に必要なのはこれなのです。
「さて、急ぎますか……。
カノコタウンをはじめ、南側のエリアを制圧して、私の手で正しいシナリオを始めなければいけませんね。
イレギュラーの支配する北側を制圧するのはまだ先になりますが、順次制圧していきましょう」
そうと決まれば、バッジチェックゲートに長居する理由はない。
速やかに離脱するとしましょう。
トウコは今頃あのイレギュラーオーベムや手下に処分されたでしょうか。
まあ役に立ってくれました。貴方のお陰でマリネットは逃げられなかったですしね。
予定より早かったですが、こうして主人公の核は無事に回収できました。
ではさようなら、トウコ。
「薄汚れたイッシュを浄化しましょうか。
範囲としてはまずはカノコタウン付近だけですが、少しずつ広げましょう。
まずはCギアを手に入れるイベントまでチェックを。
目標としては浄化の範囲をサンヨウシティまで広げていく。
バグ取りもしっかり行い、主人公の核に異常が無いかもしっかり調べなくては……」
カノコタウンに舞い降りた私は、すぐに浄化の準備をしていきます。
カノコタウンだけでなく、主人公の核の方もしっかり浄化しなくては。
なにせこの主人公の核は、異物の中に長い間入っていたのです。
まず無いでしょうが、もし汚染されていたら余計な意思を再び持つかもしれません。
「私の力の及ぶ範囲では時間がおかしなことになりそうですね……。
とはいえ、些細な事です。
最終的に私の作り出した英雄がイレギュラーもすべて倒して世界を救ってくれるでしょう」
そうでなくては困ります。
あのような異物やイレギュラーにまみれた世界を浄化するためにも。
私のために尊い犠牲となったトウコの献身に報いるためにも。
「さあ、狂った世界に正しき秩序を……。
私の導きによって、この世界に正しき姿を取り戻しましょう……」
まずはカノコタウンと1番道路が私の力に飲み込まれていき、浄化されました。
素晴らしい事です。これで異物の影響はなくなるでしょう。
セッカシティのような素晴らしい場所になるはずです。
ひとまず、ここだけですね。
主人公の核の方も異常が無いか調べなくてはいけませんし、主人公の体も用意しなければ。
カノコタウンの主人公の家。
その2階に、主人公の体の材料を用意しました。
そして……主人公の核。
まずは異常な行動をしないか確かめましょう。
「さあ、目を覚ましなさい。私の英雄」
主人公の核を中心に体の材料が吸い込まれ、私の目の前で「トウコ」が生成されます。
問題なく機能するようですね。
『……』
「北・東・南・西。メニュー」
『……』
誕生したトウコは無事に私の指示通りに動きます。
やれやれ、ひとまず大丈夫そうですね。
「トウコ、貴方には英雄となってもらいます。
私の作ったシナリオを忠実に実行し、邪魔をする異物も敵もすべて処理する英雄に。
しっかり励んでもらいますよ」
『……』
返事はありませんが、問題ありません。
主人公は喋らないのですから。
私の望む主人公がようやく誕生しましたね。
あの異物のように余計な意思や感情を持ったり、口を開くのは異常なのです。
「さて、ひとまず安心ですね。では、シナリオを実際に進ませてチェックしていきましょうか。
いきなさい、トウコ。貴方の進行に合わせて街を浄化していきますよ」
『……』
返事はありませんが、問題ありません。
主人公は喋る物ではない。
周りのNPCが全ての行動を決め、その行動に流されて英雄となる。
これはそういう話なのですから。
「今はまだカノコタウン……ですが見ていなさい。
私の世界を我が物顔で破壊する異物とイレギュラー。
私が作り出した英雄が、貴方達を一人残らず排除してくれるでしょう。
このイッシュは……私の世界なのですから」
創造主である私の意思を無視して暮らす存在など、異物でしかありません。
トウコの力の前に、全て滅ぶとよいでしょう。
さて、では最初のポケモンを与える場面からテストしましょうか。
ベルとチェレンを用意して……さあ、テスト開始です!
『……』
作り出された『トウコ』の目が、階段を上って来たベルを見た瞬間怪しく輝いた。