選択権無しのマリネット   作:ルスト

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12話 力が欲しい

 夢の跡地に戻ってきた。

 って、ベルまだ居るじゃねえか。

 あたしが無駄話聞かされてたってのにこいつ見事にボイコットしやがって。

 

「え、マリネット? どうして戻ってきたの?」

「逆に『なんでベルはマコモの所に行かずにまだここに居るの?』ってあたしが聞きたいくらいなんだけど」

「うん……なかなか見つからなくってねえ」

 

 ふーん。本当かはともかく、ムンナってレアなのかね?

 ま、あたしは勝手に修行するとしようか。

 

「マリネット、ここで鍛えるの?」

「ああ。ところで、ベルはさっさとマコモの所行ってこいよ」

「あの子が見つかったら行ってくるよ」

「ホントかよ……ま、聞くだけ無駄な話だったけどさ」

 

 さーて、修行修行。

 ……とりあえず野生ポケモン出てくるまで走り込みでもさせるか?

 

「……ん? なんか、ガサガサガサガサ聞こえるな。

 どこだ……?」

 

 あたしの直感が『当たり』だと告げている。

 ここまでの戦闘が馬鹿らしくなるくらいに『美味い』何かの気配がする。

 

「そこか!」

 

 草むらに突っ込んだ。気配が近い!

 

 

 

 

 

 

「ミッミッ!」

「こいつは……?」

 

 四足歩行ならピンクの豚、みたいな形容するんだけど、二足歩行だしな……。

 まあとりあえず、ポーク、やれ!

 

「ポーク!『ひのこ』!」

「ブゥ!」

「ミッ!」

 

 攻撃が当たる……が、なんか硬いな?

 全然効いてないのか?

 

「とにかく、倒せるまで攻撃だ!」

 

 このピンク野郎は好戦的なポケモンじゃないのか、あまり積極的に攻撃してこないらしい。

 途中できのみ食い出して更にしぶとくなっていたが、結局まともに攻撃してこないままポークの攻撃で倒れた。

 

「ミッミッ……!」

「よし、倒したな! って、はあっ!?」

 

 図鑑が反応している。

 見ると、滅茶苦茶経験値を獲得した、というような警告が入っている。

 何だこのポケモン!?

 こいつ倒すだけで簡単に強くなれるのか!?

 

「もしかしなくても、今のこいつ滅茶苦茶美味しいんじゃねえの……?」

 

 その代わりに出にくい、みたいな条件あるかもしれないけど。

 とりあえずその辺走ってみるか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「気配! そこだな!」

「ミッミッ!」

「次! そこか!」

「ミッミッ!」

「おかわり、そこか!」

「ミッミッ!」

 

 それからしばらく経ったが、あたしはすっかりこのピンクのポケモン……タブンネを経験値の塊として認識していた。

 こいつを倒すと、凄まじい勢いであたしのポケモンが育つらしい。

 逆に言うと、強くなりたいならこいつを狙えばいいみたいだ。

 偶然出てきたムンナを捕まえて、ムンナにもタブンネ食わせてみたけど、こいつも爆発的な勢いで育っていた。

 ホント最高だ。もっと先に進んで、もっとレベルの高いこいつらを手当たり次第に食わせまくれば、いずれあのボケジジイだって潰せる強さを得られるんじゃねえのか?

 

「ま、マリネット……目が、怖いよお……?」

「あ? なんだベル、まだ居たのか?」

 

 あたしはタブンネを狙うのに忙しいんだけど。

 ベルはまだムンナ探してたのか?

 

「ムンナ見つかって、マコモさんの所にお話聞きに行って、その後3番道路の方に行こうとしたけどマリネットが居なかったから探しに来たんだよ」

「そんなに時間経ってたのか? ふーん……」

 

 タブンネが美味しかったからか、すっかり時間を忘れて狩りまくってたみたいだな。

 そう言えば、すっかり夜になってやがる。

 腹減ってきたな。ポケモンセンターで何か出してくれるのかね?

 

「というか、お前もチェレンも勝手に進めばいいじゃねえか。

 別にお手々繋いで皆で冒険ってわけでもないんだし」

「ええ……行ける所まではみんなで行こうよお。

 それに……ここで出会った怖い人達の事もあるし……」

「……お前、まさか『また』あたしを盾にするつもりじゃねえよな?

 あたしの強さはあたしのためであって、他の奴に盾にされるためにあるんじゃねえんだぞ?」

 

 あたしは正義のヒーローや英雄なんかじゃねえ。

 あたしの意思を力で貫き通して自由になる。

 そのためにあたしは強くなるんだ。

 あたしの親やあのボケジジイ。

 ああいう身勝手野郎共を、自分の都合をあたしに押し付けてくる奴を確実に潰せるように、強さが欲しい。

 誰にも縛られたくないんだ、あたしは。

 

「マリネット……」

「あたしに自分の都合に合わせた行動や考えを強制してくる奴等は、皆あたしの親と同じだ。

 皆、あたしの意思や考えを無視して、否定して。

 一方的に自分の考えを押し付けてくる。

 それがあたしは嫌なのに、とてつもなく嫌なのに。

 今のあたしには力が無いから拒めない。

 嫌だと言っても、聞く耳すら持たれない」

 

 それが、力の無いあたしの現実なんだ。

 あたしの意思なんて、滅多に確認すらされない。

 

「ちがうよお。みんなマリネットのためを思って」

「違わねえよ。なあベル、ここで強盗に襲われた時、お前はあたしに助けを求めたよな?

 戦えたのに、戦わずに。あたしだけが戦った」

「それは……あたし怖くて……」

「怯えて動けないのが悪いとまでは言わねえよ。

 実際あたしは迷惑したし、ふざけんなベルも戦えよって思ったけどさ。

 ……けど、逆らえないから嫌でも従わざるを得ない人間の気持ちは誰よりも分かってるつもりだ」

 

 弱いから、逆らえない。

 弱いから、言いなりになるしかない。

 強ければ、拒絶する事だって出来るんだ。

 

「3番道路への道を塞いでるボケジジイ。

 あいつだって、自分が圧倒的な力を持ってるから、あたしがあのボケジジイのポケモンに勝てる力が無いから。

 身勝手な理由であたしの邪魔をしやがった。

 あたしが、あたしのポケモンが、弱いから。

 逆らえないから。言いなりになるしかなかったんだ」

「マリネット……」

「……あたし、サンヨウシティに戻るわ。

 明日出発する」

 

 話を切り上げてサンヨウシティに戻ることにした。

 ベルにこんな事話してもどうしようもない。

 いや、誰に話しても仕方ない事だろう。

 あたしが力を得るしかないんだから。

 力で命令する奴の言いなりになりたくないなら、圧倒的な力で拒絶するしかない。

 

「あたしは……あたしの自由を守りたい……。

 力で守るしか、ないんだよ……」

 

 誰に向けたわけでもない呟きが、夜の闇に消えていった。




マコモ終わったのに何故かまだベルが夢の跡地に居たという。
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