ベルと話した後、あたしはポケモンセンターでさっさと休むことにした。
今日の朝のうちにさっさとサンヨウシティを出たかったからだ。
無力だって事を嫌と言うほど突きつけられたこの街から、なるべく早く離れたかった。
手早く出発の準備を整えたあたしはポケモンセンターを後にし、3番道路への道を塞いでいるボケジジイの所に足を向ける。
果たして、素直に通してくれるのかどうか……。
「うむ! 光輝くジムバッジ!
それを持っているほどの実力なら、この先何があっても大丈夫だろ!
よし、通してやろう!」
白々しいボケジジイは、ようやく3番道路への道を開けやがった。
……ぶっ潰してやりたいって衝動は、今は抑える。
今はまだ、あたしには力が無い。
まだ、我慢するしかない……。
「…………やっと、先に進めたか」
しかし、あたしの開放感はすぐに霧散する事になる。
「ポケモン1匹だけなの? それでもトレーナーですか?
それじゃあ危ないから、先に進んじゃダメです!」
「これじゃ先に進めない! す、すまん嬢ちゃん!
こいつら倒して俺の事助けてくれないか!?」
「今度はなんなんだよ!?
ようやくサンヨウシティのボケジジイの通行止めをなんとかしたってのに!」
突然バックパッカーが走ってきて、通りすがりのあたしに泣きついてきやがった。
その先を見ると、ガキ2人が道を塞いでやがる。
「おい、このおっさんがお前等に何かしたのか?
こんな所で通行止めやってると皆に迷惑なんだよ、今すぐやめろ!」
「やめません! 1匹しかポケモンを持ってない人は私達が通しません!」
「それが嫌ならダブルバトルで私達に勝ってください!」
「頼む嬢ちゃん! こんな感じでこっちの話全く聞かなくて……!」
少し話して察しがついた。
このガキ共は放っておくと、将来的にあのボケジジイみたいになりやがる奴だな。
……今のうちに徹底的に潰してやるか。
言い方があのボケジジイやマコモみたいで滅茶苦茶苛々する。
こんなガキ相手にマジになるのは大人気ないかもしれないけど、今のあたしは不機嫌だ。
「へえ〜、そうかい。なら、あたしが勝ったらそのおっさんは別に通っていいのか?
要は、ダブルバトルでお前等に勝てば誰でも良いんだろ?」
「お姉さん、私達に勝てると思ってますか?
お姉さんが勝てたら、そのおじさんは好きにして良いですけど」
「言ったな? 約束破んなよ?」
「す、すまん嬢ちゃん! 頼む!」
「勘違いすんな。あたしがムカつくからこのガキ共をぶっ潰すだけだ」
あのボケジジイぶっ潰せなかった分苛ついてんだよ。
徹底的に潰してやる!
「あたし達、力を合わせて頑張るから見ててください!」
「えーっとね……1+1は2だよね!」
「「頑張ってください! ポケモンさん!」」
「ポーク! ヨーテリー! 徹底的にぶちのめせ!」
2匹出すから2匹出せって事だろ?
関係無いし、手加減も何も要らねえ!
二度と通行止めしてやろうと思えないくらい、徹底的に叩き潰す!
「ポーク! 左の奴に『ニトロチャージ』!
ヨーテリー! 右の奴に『とっしん』!」
「「ポケモンさん!『ひっかく』!」」
タブンネで鍛えただけある。
ポークとヨーテリーはチョロネコが動く前にそれぞれを攻撃した。
特に素晴らしいのはヨーテリーだった。
「ワオンッッ!」
「フギャアッ!?」
「あたしのポケモンさんが!?」
「良い火力だヨーテリー! ナイスだ!」
『たいあたり』とは比較にならない一撃がガキのチョロネコを大きく吹き飛ばし、壁に叩き付けた。
当然一発戦闘不能だ。
はっ、最高だな!
「ポークの方は……仕留め損ねたのか」
「ポ、ポケモンさん……大丈夫!?」
「あわわ……ポケモンさん、しっかりして!」
ポークは仕留め損ねた。
逆に言うと……『とっしん』叩きつけても構わねえよな?
「ヨーテリー!『とっしん』でトドメだ!」
「ポケモンさん! 避けて!」
当然、ボロボロの体で避けられるはずがない。
ポークが仕留め損なったチョロネコは、とっしんで相方共々壁にシュートしてやった。
「こ、こいつらに足止め食らってどうしようもなかったからって事で嬢ちゃんに助けを求めた俺が言うのもなんだけど……容赦ねえ……」
「い、今の音は何!?」
こいつ……上の保育園の先生か?
壁にチョロネコ2匹叩きつけて、その時に結構デカい音してたわけだから、そりゃやって来るか。
「ああ、このガキ共が道を塞いでて、そこのおっさんを困らせてたからあたしが懲らしめてやったんだ」
「ほ、本当なんですか? それにしては……」
「本当なんです。俺がそこの子供達に足止めされてて、通れなくて。
その場にこの嬢ちゃんが通りがかって、それで……」
「あたしはもう行くわ。おいそこのガキ共」
「……!」
「な、なんですか……?」
バトル前の傲慢なガキ共は何処に行ったのか。
チョロネコ2匹をあたしに一方的にボコられて、若干青ざめてやがんな。
ま、大人しくなったならそれで良いわ。
あのボケジジイと違って、あたしが被害を受けたわけじゃない。
「二度とこんな事するなよ? もし守らなかったら……。
また、こういう目に遭うぞ?」
これだけ言っておけば、流石にこんな真似は二度と出来ねえだろ。
もしコレでもやるようなら、あたしがもっと強くなってから改めてここに来てお仕置きだ。
「「…………!!」」
「ちょ、ちょっと貴方!
この子達が悪かったにしても流石にやりすぎ……!」
「じゃあな、ガキ共。せいぜい人様に迷惑かけない良い子になれよ?」
さーて、先に進むとするか。
「嬢ちゃんがこの子供達を倒してくれたおかげで俺は通れるようになった。
そう考えると助かったのは事実だけど……素直に喜べないな、こりゃ……」
歩きながら少し考えた。
ぶっちゃけあたしはあのガキ共に恨みがあるわけじゃなかった。
ただ単にここの道を通ろうとしただけだ。
だから、もしあのバックパッカーのおっさんが泣きついてこなかったら。
もしあのガキ共があの場所で通行止めをしてなかったなら。
その場合確実にあたしはスルーしてただろう。
バックパッカーのおっさんを助けたのは、完全にあのガキ共をぶっ潰す名目でしかない。
……ま、こう言う形での人助けなら悪くないかもな。
あたしは身勝手な連中を好き放題ぶちのめせる、身勝手野郎の被害者は通行止めを解消してもらえる。
あたしみたいに理不尽に通行止めを食らって嫌がらせを受ける奴を、減らしてやれるかもしれない。
「自由に生きられるようになったら、それだけの力を得たら、さっきのあたしみたいな生き方をしてみても良いかもしれないな」
あたしは最終的には静かに生きたいって事ばかり考えてたけど、圧倒的な力で身勝手野郎を捻じ伏せるって生き方もあるんだよな……。
マリネットは手持ち1匹じゃないので本来ふたごちゃんの通行止めイベントは発生しません。
普通にバトルして終わりです。
バックパッカーさんはそのためのモブキャラ。