選択権無しのマリネット   作:ルスト

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14話 またかよ! メンドーだな!

 ガキ共を懲らしめ、晴れやかになったあたしの歩みはまたしても止められた。

 

「マリネットストップ!

 トライバッジを持つ者同士、どちらが強いか確かめるよ」

「今度は準備させてもくれないのかよチェレン。

 まあいい、ぶっ潰す」

 

 今のあたしのポケモンは、タブンネ食ったおかげで前よりかなり強くなった気がしてるんだ。

 ボコボコにしてやるよ! 

 

「ポーク!」

「ミジュマル!」

 

 くそっ、いきなりこれかよ!

 下げねえと!

 

「ちっ、交代だポーク! ムンナ!」

「ミジュマル!『しっぽをふる』!」

 

 いきなり一手遅れることになっちまった!

 取り返さねえと!

 

「ムンナ!『あくび』!」

「ムンナは確かかなり耐久力がある……。

 ならもう一度『しっぽをふる』!」

 

 ……なんだ、攻めてこないのか?

 まあいいや。

 

「その余裕、無くしてやるよ! ムンナ!『サイケこうせん』!」

「クッ、なんて威力だ……! 相変わらず、良い技を選ぶよね!」

 

 その直後、ミジュマルは眠りに落ちて動けなくなる。

 ミジュマルはそのまま目覚めることなく、サイケこうせんの餌食になって倒れた。

 

「なら、チョロネコ!」

「ムンナ戻れ! ヨーテリー!」

 

 『とっしん』で吹っ飛ばしてやる!

 さっきのガキ共のチョロネコみたいにな!

 

「当たらなければ意味はないよ!『すなかけ』!」

「ちっ、変え際に狙われた! ……けど、当たれば終わりだ!『とっしん』!」

「かわして『みだれひっかき』だ!」

 

 最初のとっしんは外れた。

 が、みだれひっかきを当てた事でヨーテリーが位置を把握できたらしく、二度目は無事に当たった。

 チョロネコは大きく吹っ飛び、戦闘不能になった。

 

「何故? ジムバッジの数は同じなのにここまで一方的に……。

 ……なるほど、そういう戦い方もある、か」

(タブンネで相当鍛えたつもりだったけど、チェレンの強さはあたしとそう変わらなかったな……。

 このままじゃ厳しいか?)

 

 あたしの想定では、圧倒的なレベル差で叩き潰せるはずだった。

 けど実際には、あたしとチェレンのレベル差はほとんどなかった。

 頭数の差でどのみち勝っていただろうけど、思った以上にあたしは弱いのか。

 もっと強くならないとな。

 

 

 

 

 

 

 その直後。

 

「どけどけーッ!」

 

 猛スピードで二人組が通り過ぎていった。

 なんだ、今の?

 

「なんだよ、今の……?」

「さあ……?」

 

 ここ、そこそこ長い一本道で走りやすそうだしな。ランニングでもしてんのか?

 二人居たから、競争か?

 ……なんか向こうからベルがガキ連れて走ってきてるけど。

 

 

 

「って、ベル? どうして走ってるの?」

「ねえねえ、今の連中、どっちに向かった?」

「あっちの方だけど? というか、そのガキ、何?」

「あっちだけど……だからどうして走ってるのさ?」

 

 気のせいかね?

 ……嫌な予感してきたんだけど。

 

「ああもう! なんて速い逃げ足なの!!」

「おねえちゃん……あたしのポケモン?」

「大丈夫! 大丈夫だから泣かないで!!」

 

 今にも大泣きしそうなガキ。

 なだめるベル。

 「あたしのポケモン」ねえ……。

 昨日夢の跡地で強盗に襲われたんだよな……。

 さっきの奴らの格好はビジネスマンじゃなかったけど……。

 

「……あのね、ベル。だからどうして走ってるんだ?」

 

 大体察しはついた。面倒事の予感だ。

 

「聞いてよ! さっきの連中にこの子のポケモンを盗られちゃったのよ!」

「それを早く言いなよ! マリネット、ポケモンを取り戻すよ」

「メンドーだな……。あたしが居ない時にやれよこういうの……」

 

 夢の跡地で出て来た強盗の仲間かね?

 どっちにしろ巻き込まれた以上無視できないんだろうな。

 チェレンもベルも。

 あたしは、自分に火の粉が飛んできてなかったらどうだっていいんだけど……。

 さっきのガキはボケジジイみたいで苛々してたからぶっ潰しただけだし。

 

「マリネット。きみはぼくより強いんだからきみも戦力になるべきだ。

 相手がどれだけ強いのかは分からないからね。

 ベル! きみはその女の子のそばにいてよ」

 

 言うだけ言ってチェレンは走って行った。

 あたしは関係ねえだろ……。

 

「お願い……マリネット。

 あの人達に奪われたこの子のポケモンを取り返してあげて!」

 

 腕掴まれてベルに縋り付かれた。

 

「はあ……あたしには関係ないだろ、全くメンドーだよ……!」

 

 自由な冒険も何もあったもんじゃねえ!

 さっきのガキ共の次は別のガキか!

 仕方ないからチェレンを追う。

 

 

 

 

 

 

 チェレンを追いかけて道の突き当たりまで行くと、山みたいになってると思った場所に実は入り口があった。

 内部に入れる……つまり洞窟になっていたらしい。

 その洞窟の入り口にチェレンがいる。

 

「……で、チェレンはそこで何してるんだ?」

「きみを待っていたんだ。あいつら、この中に入っていったよ。

 で、マリネット、ポケモンの体力とか準備は万端だよね?」

「問題ねえよ。さっさと片付けるぞ」

「……じゃ、行くよ」

 

 あたし達は同時に中に踏み込んだ。

 

 

 

 

「こいつら、ポケモンレンジャーか?

 ポケモンレンジャーがどうしてポケモン泥棒を……」

「おい! テメエらガキからポケモン盗ったんだろ?

 痛い目見たくなければさっさと返しな!」

「……まあいい、考えるのは後だ。

 きみたち、あの女の子のポケモンを大人しく返すんだ」

 

 中に居たのは同じような格好の2人だった。

 なんかロープをつけたモンスターボールを持っている。

 

「なんだ貴様ら? 我々の邪魔をする気か?

 ポケモンを解放してやるのだ、邪魔をするな!」

「マリネット! こいつら話が通じないメンドーな連中だね」

 

「あんな子供にポケモンは使いこなせない。それではポケモンがかわいそうだろう?

 お前らのポケモンも同じだ。我々に差しだせ。

 ……というか、力ずくで奪ってやるよ!

 行けミネズミ! こいつらのポケモンを奪ってやるぞ!」

「こいつら、夢の跡地で見かけた強盗と同じかよ!

 ポーク! 手加減は要らねえ!」

 

 ミネズミはポークがあっさりと倒した。

 ポークはダメージすら受けていない。

 

「おいおいおい! 子供に負けてショックデカいぞ!」

「なんだ、結局この程度かよ」

 

 どれだけ強いかと思ったけど、雑魚じゃねえか。

 

「何故だ! 何故正しき我々が負ける!?」

「はっ! 結局力が全てだってことだよ!」

 

 いくら正しさを語ろうと!

 力が無いなら意味がねえんだよ!

 

「さすがマリネット。さあ、あの子から取り上げたポケモンを返しなよ」

「ぐっ……」

「くっ、貴様ら……」

 

 こいつら強盗だし、痛めつけても構わねえよな?

 渡さねえなら最悪直接攻撃してでも……。

 

 

 

 

 

 

「返す必要はないぜ!」

 

 マジかよ!

 奥からまだ出てきやがった!

 

「大変だよな。理解されないばかりか、邪魔されるなんて」

「相手は2人、我々も2人。

 こちらの結束力を見せつけ、我々が正しいことを教えてやるよ」

 

 何が結束力だよ。強盗のくせに。

 

「まだいたとはね……。それにしても、ポケモン泥棒が何を開き直っているんだか」

「全くだ。強盗の分際で正義面かよ?」

 

 強盗が正しい事だって言うんならよ、あたしがここでテメエらのポケモン、根こそぎ奪ってやろうか?

 奪うなら当然、奪われる覚悟はあるんだよな?

 

「マリネット、こんな奴らと同類になる必要はないよ。

 幼馴染のコンビネーションで奴らに思い知らせよう」

「コンビネーションねえ……。

 片っ端から力でねじ伏せればいいだけだよ!」

「まあ、きみは好きに暴れてくれ。僕が合わせる」

 

「「行くのだミネズミ! 正義のために!」」

「ポーク! 左の奴に『ニトロチャージ』!」

「ミジュマル! 追撃で『みずでっぽう』!」

「んなっ!? 俺のミネズミを狙い撃ちかよ!?」

「げっ、いきなり1対2かよ!?」

 

 勝負は一瞬で終わった。

 やっぱりこいつら、弱いよな?

 

 

 

「負けちまった!」

「こんな奴らに敗れるとは……!」

「強盗の腕だけ一級品で、中身は雑魚だな。

 チェレンの方がはるかに厄介だ」

「マリネット……強盗とぼくの力量を比較しないでほしいんだけど?」

 

 結局、夢の跡地で見かけた連中との関係はあるのか?

 こいつらもプラズマ団の演説に感動したとか言い出すのか?

 

「俺達はプラズマ団の演説に感動したのだ!

 だからこそ! ポケモンを解放するために愚かな人間共からポケモンを奪っていくのだ!」

「こいつらもあいつらと同じか……」

「マリネット、あいつらって?」

 

 そう言えばチェレンはあの場に居なかったな。

 それに、チェレンには昨日の事言ってなかったな。

 ベルはあの場に居たけど。

 

「昨日夢の跡地で、こいつらみたいに人のポケモンを強奪しようとしてきたビジネスマン、OLと遭遇したんだよ。

 その時はあたしが倒して、その後ムシャーナが幻で追い払った」

「……やれやれ。本当にメンドーくさいな。

 どんな理由があろうと、人のポケモンを盗っていいわけないよね?」

 

 それが分かるような奴なら苦労しないだろうな。

 

「ふざけるな……。お前達のようなポケモントレーナーが、ポケモンを苦しめているのだ……!」

「……何故トレーナーがポケモンを苦しめているのか、全く理解できないね!」

 

 まあチェレンがポケモンを苦しめる姿は想像出来ないな。

 もちろんベルも。

 

「なら実例を教えてやろう。貴様らが通って来た道にある保育園。その横の建物を知っているか?」

「……もしかして、育て屋のことかい?

 だったらなおさら言いがかりじゃないか」

 

 ふーん、そんな建物があるのか。

 

「で、その育て屋がどうかしたのか?

 名前からして、ポケモンを育てるための施設に思えるけど」

「全然違う! タマゴを作るために預けられたポケモン2匹、そして無計画に量産され、要らないからと捨てられる大量の産まれたてのポケモン!

 ゴミ個体だの失敗作だの吐き捨てられ、愛情すら得られず捨てられていく大量の悲しいポケモン!

 そんな悲劇をあの施設がもたらしているのだ!

 貴様らもいずれ知るだろう! あの施設がいかにおぞましく、痛ましい仕打ちをポケモンに強いる元凶になっているのかを!」

 

 何言ってんだよこいつら……。

 いくらなんでも出鱈目すぎないか?

 

「まあいい、ポケモンは返す……。

 だが、このポケモンは人に使われかわいそうだぞ。

 ……いつか、自分達の愚かさに気づけ」

 

 強盗はそのまま去っていった。

 まあ、ガキのポケモンは取り返せたしいいか。

 

「ポケモンの能力を引き出すトレーナーがいる。

 トレーナーを信じてそれに応えるポケモンがいる。

 これでどうしてポケモンがかわいそうなのか、分からないね。

 それに、さっきの話などどうせ出鱈目さ。

 さてと……マリネット、ぼくがポケモンを返してくるよ」

「ああ」

 

 …………作り話にしては、妙に感情こもってたんだよな。

 まあ、いいか。あたしもとっとと戻ろう。

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