試しの岩から戻ってきた後、なんとなくヤグルマの森の内部に入ってみた。
……が、直ぐに行く手を阻まれた。
なんかヤバい連中が集まって道を塞いでやがる。
見た目は各々違うが、雰囲気が確実にヤバい!
「プラズマ団の演説! ゲーチス様の演説!
ああ……実に素晴らしかった! 涙が溢れる!
感動した! この感動を行動で表すため、我々に何が出来るか!
君達答えてみたまえ!」
「うわ、もしかしてさっきの演説に影響された連中かアレ……!?」
これ……不味いな。一旦隠れるか! しかも数が多い。
8人くらいで道を塞いでやがった。
おまけに……。
「間違った価値観を破壊するためなら……手段は問わない。
邪魔する者は……全て排除する」
「人からポケモンを奪い、解放する!
もう一緒に遊ぶこともない!
我等の崇高なる使命のために! 戦うのみ!
歯向かう者は! 皆殺しも辞さない!」
「ポケモンを手放し、トレーナーがトレーナーでなくなる!
その先に、我々の理想となる世界が待っている筈!
あのタブンネのような可哀想なポケモンを!
生み出してはいけない!」
「我々こそが正しい! 否定する連中は間違っている!
ポケモンを傷つけ、平気でいるおぞましい悪魔だ!
火炙りにしてでも殺さなければならない!
ポケモンの痛みを思い知らせてやる!」
「私達以外は、皆間違っている。
私達こそが正しい、私達の行いは正義。
私達の行いが否定されるのは悪である」
「私達と考えが異なるなら! ポケモンを解放することに反対するなら!
全力で排除するし、トレーナーもろとも始末するかも!
あんな酷い事をやってのける奴等なんて、死んじゃっても構わないかも!」
「素晴らしい! 我々こそが正しいのだ!
我々こそが正義なのだ!
あのタブンネのような可哀想なポケモン!
あの悲劇を生み出さないために戦う我々こそが正しい!
イッシュのトレーナーは……悪だ!
我等に裁かれるべき、悪なのだ!」
滅茶苦茶言ってやがる!
どうする? 仕掛けるか……?
ここまで倒してきた強盗は雑魚だった。
けど、これだけの数となると……。
引き続き、隠れて様子を見るか……。
「もしトレーナーが来たらどうしますか?」
「確認するまでもないだろう!
我等8人、一斉に襲いかかるのだ!
悪を倒す正義の行いにルールは無い!」
「8対1のバトルで倒します。卑劣とは言わせない。
正義のヒーローは悪を複数人の力で倒すのが鉄板です」
「トレーナーもろとも殺ってしまえばいい!
どのみち我々がポケモンを解放してやるのだから!」
「二度と見つかることは無いだろう!
ポケモンも! 悪のトレーナーも!」
「私達の正義の行いの1ページに、悪のトレーナーを倒してポケモンを解放したという誇らしい記録が残るだけ!」
ヤバいな……。
もし戦いになったら、あたしもろとも狙ってきそうだ。
しかも「8対1」って滅茶苦茶だろ!
複数をまとめて攻撃出来る技とかあったら良かったんだけど……。
個別に戦う分には問題なさそうだけど、あの様子じゃ一斉に襲ってくるだろう。
「……あたしは今までポケモンに戦わせて強くなる事考えてたけど、あたし自身の安全の事も考えないと駄目なのか?」
少なくとも、命令してるトレーナーは無防備だ。
ポケモンは強くても、あたしは生身の人間なんだから。
あたし自身強盗相手なら直接攻撃するのもありか?
と考えた事はあったけど、あいつら自身もそれを考えないわけがなかった。
「それにしても嘆かわしい。ポケモンを解放してやろうとしているのに、邪魔ばかり入るのだ。
ジムリーダー、力のあるトレーナー。目障りだ。
とにかく目障りだ!」
「我々は善意でもって可哀想なポケモンを救ってやろうとしているだけなのに!」
「私達の行動を悪と断定する。理解不能です。
自分達は絶対に間違わないとでも言うのか」
「決まっている。身勝手な押しつけだ!
間違っているのは奴らの方だ!」
好き勝手言ってやがる。
……けど、この数相手に正面から殴り込んでも嬲り殺しに遭うだけなのは明らかだ。
あたしは、そっと離れるしかない。
その時。
「向こうから誰か来ます!」
よりによってここに通りがかった奴が出たらしい。
奴等が塞いでる向こう側……曲がり角の先だから何も見えない。
「極悪人か! 我々の手でポケモンを解放してやるぞ!」
「全ては正義のために!」
「トレーナーは悪だ! 断罪せよ!」
「私達の思想を理解できない者は全て悪!
滅ぼして構わない存在よ!」
「プラズマ団の理念は、ゲーチス様の演説によって目を覚ました私達が代わりに叶えてやるのだ!」
「全てのポケモンを解放せよ!」
「我等の戦いに祝福あれ!
全てのポケモンが、悪の手から救われるように!」
「正義を執行します。歯向かう存在は消し去ります」
強盗団が曲がり角の奥に消えた後、複数の人の叫び声と戦闘が始まったのであろう音が聞こえてきた。
流石に見殺しは……。せめて挟み撃ちに出来れば。
そんな風に考えたあたしが進もうとした時、ムンナがあたしを止めた。
「なっ! これ、煙か!?
ムンナお前、何を……っ!」
ムンナの煙を吸ったあたしの目に「ある映像」が映し出された。
夢を見せる煙。
だが、別に見せられるのは夢だけじゃない。
あたしのムンナは『よちむ』らしい。
つまり、すぐ先の未来の可能性も……。
「…………!!」
あたしの目の前に、あたしとさっきの連中が戦っている光景が現れた。
数は6人に減っている。
あたしはポーク、ハーデリア、ムンナを出して応戦しようとしていたが……。
「ガッ…………!」
8対1が6対1になったから何だというのだ。
ポケモンをまともに狙う必要は無い。
倍の数でもって押し通れば直接トレーナーを狙える。
さっき連中が話していた通り、あたしから狙われて潰された。
命令が出せなくなったあたし、命令が出せなくなったためその場その場の対処しか出来なくなったポーク、ハーデリア、ムンナ。
ヤナップも含め、数の暴力の前に押し潰されて倒れ伏した。
「これが…………今のあたしの現実かよ……」
「むうん…………」
その後、ゴミ袋のようなポケモンにガスを浴びせられ、完全に動けなくなったあたしの頭を黄色い格闘家のようなポケモンの手刀が粉々に砕いた。
文字通り、死んで終わりだ。
呆気ない、本当に呆気ない終わりだった。
「…………ごめん、今のあたしには、力が無い……」
「むうん…………」
ムンナも、悔しいという気持ちを隠そうとしていない。
自分の仲間がさっきの連中のような奴等に襲われ、最終的に助けられた所を見ていただけに、尚更だろう。
すぐそこで行われている惨劇。
力が無いあたしは、見つからないうちに逃げ出すしかなかった。
力が無い奴には、何も出来ない……。
強く、ならないと……。
当然ながら、挑んでたらムンナのよちむ通りにマリネット死亡エンディング。