選択権無しのマリネット   作:ルスト

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20話 あたしの話聞けよ!

「この先がヤグルマの森だよ。

 確かにここに逃げられると厄介かもね」

「いや、置いてくなよ! さっきも今も!」

 

 アーティとか言ったっけ?

 こいつは、あたしが準備も出来ずに飛び出してるの分かってるのかよ!?

 アロエとの戦いでムンナやられたままなんだぞ!?

 

 

 

「おいそこのナース! 治療頼む!」

「訳ありね? もちろんすぐ治すわ!」

「助かる! ……少し息を整えるか」

 

 休む間もねえ!

 全く、何でこんな事に!

 

 

 

「あのね、ヤグルマの森を抜けるには2通りあるんだ。

 まっすぐ行く道と森の中を抜ける道。

 ボクはこのまままっすぐ進み、あいつらを追いかけるよ。

 居なかったとしても、逃げられないよう出口を塞ぐつもりさ」

「いや、あんたジムリーダーなんだろ!?

 あたしがそっちの道塞いだ方が良くねえか!?」

 

 どう考えてもあたしが森の中踏み込む方が追いかけるまで時間かかるだろ!

 

「きみはこっちのルートにあいつらが隠れていないか探してくれないかな。

 トレーナーも多いけれど、基本一本道だから迷うことはないよ。きっと」

「話聞けよ!」

 

 マジでなんなんだよこいつ!

 アロエもそうだけど、アレはまだ納得できるところもある。

 でもこいつのは完全な無視じゃねえか! あたしの話なんか聞く耳持たねえってか!

 

「それじゃあ、アロエねえさんのためやりますか!」

「どいつもこいつも! 勝手に話進めやがって!」

 

 あたしの意思は!

 全部無視して良いってか!?

 

 

 

 

 

 

 

「……苛々する。ボイコットしたい。可能なら全部無視したい。

 けど、あたしが行かないとあいつ道開けないよな?

 通すつもりないよなあいつ?」

 

 遠くを見ると、森の出口に陣取るアーティの姿が。

 あいつ、絶対楽だからってだけでそっち行っただろ。

 あたしだけ貧乏くじ引かされまくってやがる。

 

「……手当たり次第にトレーナー潰してやる!

 全員潰せば、誰に化けてても当たり引けるだろ!」

 

 とりあえず片っ端から潰す!

 

 

 

 

 

 

「おいジジイ! テメエもトレーナーか!?」

「……」

 

 その途中、妙なジジイを見つけた。

 雰囲気が明らかに異様だ。

 怪しい何かを受信してるような感じで、恍惚とした表情を浮かべている。

 

「トレーナーじゃねえのか!? どっちなんだ答えろ!」

「うーむ……感じるのお……。手強いポケモンの存在を」

 

 何言ってやがんだこのジジイ?

 もし感じてるとしても、それ明らかにテメエが塞いでる先にあるその濃い草むらの気配だろ。

 ボケてんのかこのジジイ?

 

「うーむ……感じるのお……。手強いポケモンの存在を。

 どこかのお……どこかのお……」

「くそっ、話聞いてねえ!

 身勝手に道塞いでる奴ってこんなのばっかりかよ!」

 

 とうとうあたしの話すらまともに聞かない奴まで出てきやがった。

 あたしの声は幻聴か何かかよ!

 くそっ、他の道に行くしかねえ!

 

 

 

 

 

 

「ワンツーワンツー! 息を合わせてワンツーパンチ!」

「勝負する前にあたしたちどうするか打合せしてるの」

 

 ガキが立ち塞がって来た。

 まさかこいつらが強盗の……わけないよな?

 どっちにしろ敵はぶっ潰す!

 

「「ふたり息を合わせてエーーーーーー!」」

「流石にこんな能天気な強盗は居ないか……」

 

 先に進むか。

 

 

 

「ちっ! しつこい子供め!

 追いかけられないよう、ここで痛めつけてやる!」

「お前は強盗か! ぶっ潰してやる!

 お前らのせいであたしは大迷惑なんだよ!」

 

 見た目はどうだっていいけど、強盗相手なら丁度いい!

 痛めつけられるのはテメエだよ!

 

「正義を示してやれ! メグロコ!」

「ハーデリア!『とっしん』で吹っ飛ばしてやりな!」

 

 ハーデリアがとっしんを叩き込み、メグロコを吹き飛ばす。

 吹き飛ばした先には……。

 

「なっ! うわっ! き、貴様!」

「ちっ、外れたか。流石にとっしんで吹っ飛ばしただけじゃな。

 言っとくが『たまたま』とっしんで跳ね飛ばした先にお前が居たんだぞ?」

 

 第一、とっしんが最大威力なんだから仕方ねえだろ?

 

「くそっ! やはりトレーナーなど悪なのだ!」

「強盗のお前と嫌々とはいえ正義のヒーローのあたし。

 どっちが正しいかねえ? 言っとくが力が全てだぞ?

 勝負に負けたお前は悪だ、あたしが正しい」

「おのれ……! だが残念だったな!

 俺は何も持っていない。取り返すつもりなら、仲間を探す事だな!」

 

 なら、次の強盗を叩き潰すだけだよ。

 1対1なら、あたしが負けるはずがない。

 

 

 

 

 

 

「あら? 何かお探しかしら?」

「ああ探してるぜ。あたしがスカッとできる相手をな!」

 

 二人目、OLを叩き潰した。

 チョロネコを吹っ飛ばしたが、これも当たらなかった。

 

「あ、危ないわね……なんとか避けたけど。ゴメンね、あたし手ぶらなのよね。

 だって女の子は重い物を持たないでしょ。なので他をあたってね!」

「強盗が何言ってんだよ……」

 

 というか、お前見た目どう見てもOLのくせに「女の子」って……。

 どうでもいいけど。

 

 

 

「次はテメエだ!」

「毎日ヤグルマの森をパトロールしているこのオレ!

 ここでの勝負はお手の物!」

 

 ハズレか? まあいい、ぶっ潰す。

 あたしが負けるはずがねえ。

  

「このヤグルマの森で負けるとは、不覚だ……。

 それはともかく、レンジャーが常に持っているこれをきみに……!」

「これって、カゴのみ?」

 

 チェレン以外にもくれる奴居るのか。

 

「森は生きている……。毎日何かしら変化してパトロールも楽しいんだ!」

「……なあ、急に人が大量に入ってこなかったか?」

 

 さっき既に倒した後だけど、一応聞くか。

 

「人……ああ、少し前に大きな荷物を抱えた一団が通っていったな。

 奥の方に進んでいったよ」

「サンキュ。それだけ分かれば十分だ」

 

 あいつらだけ捨て駒にして別の方向に逃げてる可能性だって無いわけじゃなかったしな。

 それが無いのが分かったし、さっさと行くか。

 

 

 

 

 

 

「ちっ、ここまで来たか!

 同志が逃げられるよう、俺が足止めしてやるよ!」

「当たりか! 覚悟しな!」

 

 見た目はさっきあたしが倒したレンジャーそっくりだ。

 だが明らかに別物だなこいつ。時間稼ぎしたいって言うなら……。

 そのミネズミをお前の体で食らってみな!

 ハーデリア! 突進だ!

 

 

 

「……くっ、貴様と我々ではルールが違うが、まさか俺まで狙ってくるとは……」

「たまたま吹っ飛んだだけだよ」

 

 吹き飛ばしたポケモン、なかなか当たらねえなあ。

 お前ら、数の暴力で道塞いだ挙句トレーナーごと始末するとか言ってたじゃねえか。

 というか実際に襲撃事件起こしてたんだし、バラで戦えるうちに相応の報いを与えようと思ってたんだけど。

 

「だが残念だったな! 俺は時間稼ぎのためだけにここにいたのだ。

 はやく追いかけないと、俺達の仲間逃げちまうぜ!」

「アーティの奴が門番やってんだからどのみち逃げ場ねえよ、お前ら」

 

 多分アーティが今封鎖してる出口をさっさと抜けるのが正解だったと思うぜ。

 本気で逃げるつもりだったらだけど。

 

 

 

 

 

 

「追手だと? まさか仲間が倒されたのか、こんな子供に!?

 仕方ない俺が相手だ!」

「お前で最後か?」

 

 結局、数だけの奴等だったな。

 まとまってるならともかく、タイマンやったらこんなもんか。

 ミネズミ、ワニ、ミネズミ。

 全部ポークが一撃で倒した。

 

「こんな事ではポケモン達を救えない!」

 

 さーて、次の奴はどこだ?

 このビジネスマンで最後ってわけじゃねえよな?

 

 

 

「……分かった! 盗んだホネは返す!」

「え? お前が持ってたのかよ」

 

 なんか数少なくね?

 森を塞いでたの8人は居ただろ?

 ここには居ないのか?

 

「これで我等の……そしてあの方の望みが叶わなくなるのか……」

「ま、後は牢屋にでもぶち込んで終わり……っ!?」

 

 後ろから誰か来る!

 

 

 

「大丈夫ですか。プラズマ団の演説に感激し、ポケモン解放のために戦う大切な仲間よ」

「アスラさま! せっかく手に入れたホネをみすみす奪われるとは、無念です」

 

 誰だよこいつ!?

 強盗連中のリーダーか!?

 

「いいのです。ドラゴンのホネですが、今回は諦めましょう。

 調査の結果、我々が探し求めている物とは無関係でしたから」

 

 強盗のくせに探し求めてる物があるってのか?

 なんなんだよそれ。

 

「ですが、我々への妨害は見逃せません。

 二度と邪魔立て出来ないよう、痛い目にあってもらいましょう」

「今度はお前がやるってのか?

 手下は全員あたしに手も足も出なかったぞ?」

「威勢が良いですね。ですが……コレに勝てますか?」

 

 アスラとかいう奴がポケモンを出してきた。

 ヤナップそっくりの、頭がリーゼントみたいになっている猿だ。

 相性だけなら……ポークは有利そうだが……。

 この威圧感、ボケジジイのムーランドとかいう奴よりは弱いとはいえ、今のあたしだとかなり苦しいか……?

 

 

 

「ああ、良かった!」

「「!?」」

 

 アスラ相手にポークで応戦しようと思った時、アーティがやって来た。

 こいつ、出口見張ってたんじゃねえのかよ!?

 

「むしポケモンが騒ぐから来たら、なんだか偉そうな人いるし、さっきボクが倒しちゃった仲間を助けに来たの?」

「マリネット! アーティ!」

 

 アロエまでやって来た。

 

「他の連中はなんにも持ってなくてさ……。

 で、なんだい。こいつが親玉かい?」

「私はアスラ、プラズマ団の思想に感銘を受けた者の一人ですよ。

 我々はあの方々の思想に感動した。ポケモンを解放しなければいけないと強く感じたのです。

 ……だが、これはちと分が悪いですな。

 むしポケモン使いのアーティに、ノーマルポケモンの使い手アロエ。

 そこの小娘のみであれば労せず片付けられたでしょうが、これは荷が重い。

 敵を知り己を知れば百戦して危うからず……。

 ここは素直に引きましょう」

 

 あたし、やっぱり弱いのか……。

 さっきの猿、倒せる気がしなかったしな……。

 くそっ! あたしは結局弱者のままじゃねえか!

 

「ですが、我々はポケモンを解放するため愚かなトレーナーからポケモンを奪う!

 ジムリーダーといえど、これ以上の妨害は許しませんよ。

 いずれ決着をつけるでしょう。ではその時をお楽しみに……」

 

 強盗はアスラに率いられ、去っていった。

 

「素早い連中だね。

 どうするアーティ、追いかけるかい?」

「いやあ……盗まれたホネは取り返したし、あんまり追い詰めると何をしでかすか分かんないです。

 じゃあアロエねえさん、ボク戻りますから……」

 

 力が無いと、本当に何も出来ないんだな…………。

 

「えっと、マリネット、だっけ?

 それじゃあさ、ヒウンシティのポケモンジムできみの挑戦を待ってるよ。

 うん、たのしみたのしみ」

 

 アーティは去っていった。

 多分、すぐに戦うことになるだろう。

 

「…………」

「マリネット! アンタの持っているそれが、取り返してくれたドラゴンのホネなんだね」

「……ああ」

 

 ホネをアロエに返した。

 

「マリネット、本当にありがとうよ。助かったよ。

 こいつはあたしの気持ちさ、大切に使っておくれ!」

「……これは?」

「そいつはつきのいし! それを使うことで進化するポケモンもいるんだよ。

 アンタのポケモンなら、ムンナだね」

「ムンナが……」

 

 ムシャーナになれるのか。

 ……でも、進化だけじゃ足りない。

 根本的に、力が足りない……。

 

「さて、ドラゴンのホネを博物館に戻さないとね。

 じゃあ、気をつけるんだよ!」

 

 アロエも去っていった。

 泥棒事件は確かに解決できた。

 でも、あたしに残ったのは強い無力感だけだった。

 アーティがあの時あたしの話を全く聞かなかったのは、あの場所を塞ぐのが楽なんじゃなくて、弱いあたしにはあの場所を塞ぐ役割をやらせられなかったんじゃないのか?

 最後に出てきたアスラとかいう奴。

 あたしだけなら倒せたと、はっきり言ってやがった。

 あたしは助けられたんだ。ジムリーダーに。

 守られたんだ。あたしが弱いから。

 情けない……全然、強くなんてなってない!

 バッジが増えても!

 ポケモンが進化しても!

 あたしは! 全然強くなんてない!

 強さが欲しい! あたしは!

 ……どうすれば強くなれる!?




七賢人(ゲーチス以外空気以下)。流石にコレはねえ。
って事で、あの場で乱入してもらわないとやられてたって事にしました。
ヤナッキーは大体レベル45くらいのイメージ。
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