選択権無しのマリネット   作:ルスト

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21話 橋を渡りながら、あたしは思う

 アーティやアロエが立ち去った後、あたしは森を抜けて先に進むことにした。

 アーティがさっきまで塞いでた森の出口。

 そこを抜けると、すぐに大きな橋が目に入る。

 ヒウンシティとシッポウシティの中継地点、スカイアローブリッジだ。

 

 

 

「実物は……本当に長いな……。

 …………行くか」

 

 流石にこの大きさは圧倒される。

 あちこちで見かけた、池や川に架けてあった橋とは比較にならない。

 そして、先が見えないくらい長い。

 

 

 

「…………当たり前と言えば当たり前、なんだけど。

 周りは、海、なんだな……」

 

 吹き付ける風は潮の香りが漂っている。

 どこまでも果てしなく続く海、水平線……。

 広大で、どこまでもどこまでも続いていそうだ。

 あたしが鳥ポケモンだったら、この橋から飛び立って飛んでいくことも出来るんだろうか……なんて、らしくない事を考えてしまう。

 

 

 

「スカイアローブリッジは当然ながら一本道。

 ははっ……なんだか、あたしの旅みたいだよな」

 

 先は全く見えないけど、行き先だけはずっと指定されている。

 親に、アララギに、ボケジジイに、マコモに、ベルに、チェレンに、アロエに、アーティに……。

 道を外れようとしても、あたしの行動は絶対に許されない。

『こうしないと駄目なの』『こうしなさい』『こうしてあげて』をずっと押し付けられてここまで来た。

 

 

 

「あまり時間経ってない筈なのにな……。

 ずっと、周りの都合を押し付けられて、便利屋みたいに使われてる」

 

 ポケモン押し付けられて、トレーナーにされて。

 身勝手な奴等に何度も足を止められて。

 助けを求める弱者の盾にされて。

 強盗を倒すための都合のいい戦力として使われて。

 

「あたし自身の意思でやろうと思った事って……なんだ?

 夢の跡地での修行……。ヤグルマの森の外で修行。

 そして、修行ついでに辺りをぐるっと回った事。

 これだけなんじゃねえの?」

 

 あたし自身の意思でやろうと思って、やってみた事。

 想像以上に少ない。

 

「試しの岩とか言うのをぶっ壊してやろうと思ってポークにやらせたっけ。

 恐ろしく硬くて、まるで効果が無かったな」

 

 あの岩から転がってきたほしのかけらをそっと手に取る。

 ほしのかけら、通販で強いポケモンを購入するために使えないだろうか。

 今はまだ困ってない。けど、そのうち必要になる気がする。

 もし購入出来るとしたら、どんなポケモンを買おうか。

 

「あたしを自由にするための力が欲しいからそのためのポケモンをくれ!

 ……なんて言っても、通じないよな」

 

 もしそんな頼みでポケモンが買えたら、どんなポケモンが送られてくるんだろうな。

 とんでもない力でイッシュをぶっ壊せるレベルのヤバい奴なのか、単に大きな翼と高い戦闘力を兼ね備えていてあたしを遠く離れたどこかへと連れて行ってくれるポケモンなのか。

 

 

 

「そう言えば、あの毒電波は伝説のポケモンとトモダチになるとか言ってたよな。

 もし通販で伝説のポケモンが買えてしまったとしたら……どうなるんだろうな、イッシュ地方」

 

 別に伝説のポケモンはゼクロムとかいう奴だけじゃ無いだろう。

 住処にしている地方を自由気ままに飛び回っている奴や、特定の場所を住処にしている奴だって居るはずだ。

 あの通販会社がもし情報を知っていたら、そんなポケモンだって商品の中に入っているかもしれない。

 

「どいつもこいつも伝説のポケモンをその辺の野生ポケモン感覚で使ってくる世界……。

 くくっ、完全に無法地帯だよな。

 弱いポケモンやトレーナーは全く生きていけなさそうだ」

 

 でも、あたし的にはそういう世界も悪くないかもしれない。

 一番上に君臨して誰にも邪魔されず穏やかに過ごすのも、歯向かう奴等を圧倒的な力で踏み潰して支配してやるのも。

 そういう所から離れて我関せずでひっそり生きるのも。

 

 

 

「誰にも干渉されず、縛られず、穏やかに生きる時間ってどんな感じ……なんだろうな」

 

 ベルやチェレンに絡まれることも、身勝手な連中に踏み荒らされることも無い時間……。

 好きなだけ寝て、テレビ眺めて、家の中だけで完結する時間……か……。

 必要な物があったら買いに行く必要はあるけど。

 それも通販頼めばなんとかなるのかな?

 

「あたしがずっと欲しかった時間……。

 静かな日常、誰にも邪魔されない生活……」

 

 優雅にティータイム……なんてガラじゃないけど。

 気まぐれに本を取り寄せて読み漁ったり、個人でパソコン買って配信眺めたり……なんて。

 あの親のせいでまともな遊びなんて出来なかった。

 チェレンやベルも居たから家の中でのんびり過ごす、なんて機会なかったし。

 

 

 

「……いつか必ず。

 この敷かれたレールから逃げ出したいな」

 

 スカイアローブリッジから飛び出す事は出来ないけど。

 あたしが欲しい日常が、この道の先にあるかも分からないけど。

 穏やかな時間と、それを守り抜くための力を、いつかあたしは手に入れたい。

 揃いも揃ってあたしの事を縛りつけてくるこの世界に、全力で歯向かってあたしの意思を押し通すために。

 

 

 

「遠くに街の影が……あれがヒウンシティ、か?」

 

 どうやら、折り返し地点らしい。

 まあ急いで行かないといけないわけじゃない。

 今くらいは、あたしのペースで歩いていこう。

 

 

 

「……っと、なんだ? 突風?

 ……橋の上を、なんか飛んでいったのか?

 ヒウンシティの方に向かって、影が……」

 

 ゆっくり歩いてたら、突然強い風が吹き付けた。

 すぐに風は収まったので辺りを見ると、橋の上を影が結構な速さで進んでいく。

 上を見上げると、ポケモンらしき影がヒウンシティの方を目指して飛んでいる。

 

「空を飛べたら……自由にどこにでも行けるのかな。

 あの影の本体のように、自由に」

 

 離れていく影を見送りながら、そう呟く。

 あたしは、ヒウンシティ目指してその後もスカイアローブリッジを歩き続けていた。

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