「ついた……」
スカイアローブリッジを抜けて、あたしはようやくヒウンシティにたどり着いた。
直後に実感した。
ここまでの街とは比べ物にならないくらい、大きい街だここ。
「橋の上からも見えてたけど、実際に来ると建物全部滅茶苦茶高いな……」
しかも、街自体もかなり大きい。
歩いていたら滅茶苦茶時間がかかりそうだ。
「とりあえず、ポケモンセンターで休むか。
結構距離があったし歩いてたから、日が落ちてきやがった」
ヤグルマの森を出たのはまだ15時くらいだったはずだ。
けど、スカイアローブリッジがかなり長かったため想像以上に時間を食っている。
今日はとっととポケモンセンターで休むべきだな。
あたしはポケモンセンターの方に向けて歩き出した。
「どいて! そこの貴方どいて!」
「しっかりするんだ! すぐにポケモンセンターに連れて行ってやるからな!」
「ん? なんだアレ……プラズマ団?
手に何か……茶色いやつを抱えてる?」
プラズマ団が2人走っている。目的地はポケモンセンターらしい。
なんだ、また怪我したポケモンでも保護したのか?
「おい、見たかアレ……」
「ああ……えぐすぎるだろ……」
「なあ、ちょっといいか? あいつら何を運んでたんだ?」
何を運んでたのか知ってる奴が居た。
タイミングが悪かったからあたしは見れなかったし、知ってるなら教えてくれ。
「見えなかったほうが正解だよ……。イーブイだ。
どうも広場の方で倒れてたらしい」
「あまり話すのも憚られる状態だったんだが……。
その、無理矢理大量に産卵させられた後で放置された、って状態らしくて。
犯人は分かってないらしい」
「マジかよ……」
到着早々エグイ話を聞くことになった。
よく見たら地面に液体の跡が点々と付いている……。
「育て屋に預けられないからって力ずくでタマゴ作らさせたのかねえ……」
「いや、イーブイだぞ。人気あるし、愛情拗らせた奴が無理矢理って可能性も……。
産卵させられた形跡があるって言ってたし無いか……」
エグいな……。本当にトレーナーのやることかよ。
「おい、なんか路地の方で地面に血が付いてるって言ってたぞ。
それ関係あるんじゃねえのか?」
「いや、その血って人間の血じゃねえのか?
誰か転んだんじゃねえの?」
「転んだにしては多いような気もするけどねえ……。
まあ一箇所にしかついてなかったみたいだし、自分で手当てしたんだろうな」
「怪我人が〜みたいなニュースもなかったっけ、そういえば」
なんか物騒だな。
さて、ポケモンセンターで明日まで休んだら街を巡ってみるか。
「それにしても、すごい人だな……」
翌日。あたしはヒウンシティを回ってみるために歩いてみる事にした。
そして、この街の洗礼を受けることになる。
「……って、うわっ! 危ないなおい!
嘘だろ……どいつもこいつも目の前の人間を障害物としか思ってないのか?」
ヒウンシティの大通り。
踏み込んだあたしを待っていたのは途絶えることなく流れ続ける人だった。
皆周りの人間の事は眼中にもなさそうで、ぶつかりそうになってもさっと避けて走り去っていく。
流れの速い川の中に飛び込んだような感覚だ……。
「急ぐので」
「すいません」
「取引が」
「仕事が」
「行かないと」
「次の現場は……」
通行人は誰一人として、他の人間には見向きもしていない。
他の人間には興味も何もないんだろうな。
当たりそうになった時だけさっと避けて通っていく。
そんな人の波に合わせるように、あたしも進んでいった。
なんか、目ぼしい建物でもあったら入るとするか。
「ぼくはヒウンでも有名なポケモンマニアです!」
「はあ……」
なんとなく入った建物の中で、よく分からない研究員に声をかけられた。
「おやあなた! ポケモン図鑑をお持ちですね。
それで見つけたポケモンの数は……」
「いや、勝手に触るなよ……」
別に壊れなかったらどうでもいいけどさ。
「25匹! これはなかなかの図鑑です!
ちょっと感動したのでこれをあげましょう!」
「……どうも?」
なんか勝手に感動して石ころを渡してきた。
なにこれ……?
「それはしんかのきせき! しんかのきせきは凄いですよ!
なんと! 持たせたポケモンの防御と特防がアップ!
……ただし、効果を発揮するのは進化するポケモンの進化前の状態だけと言う不思議な塊なのです」
「な、なるほど……?」
進化してない状態っていうと、ムンナとか?
まあきのみと違って食べてしまうことは無いだろうが。
「なんだったんださっきの……。
まあいいや。ちょっと休憩でもするか」
噴水広場にやって来た。ヒウンセントラルエリアとか言うらしい。
昨日話題になってたイーブイの件は完全に無かったかのように静かだ。
「自販機で水でも買うか。……ん、水……?」
確か、おいしいみずって……やっぱり!
「200円でおいしいみず、300円でサイコソーダ、350円でミックスオレ……。
キズぐすりより安くて効果が高いって言ってたな……買いだめするか!」
おいしいみずを買い漁り、詰め込んでいく。
200円でいいキズぐすりと同じ性能って、いいキズぐすりどれだけぼったくり価格なんだよ。
まあキズぐすりからして高いけど。
「ん? たまにおまけくれる時があるのか。へえ……」
おまけのおいしいみずももちろんもらっておく。
今後の旅に役に立つはずだ。
「なあなあトレーナー!」
「あ?」
急に人が話しかけてきた。
「アンタの実力見たいんだ! ちょいとポケモン勝負してくれよ!」
「……まあ、構わねえけど」
勝負は別に記憶に残るような物じゃない。
普通にあたしが勝った。
「オーケー! レッツダンシング!
……どうだい! バツグンのステップだろ」
「……そうなのか? あたしはそういうのさっぱりだよ」
そもそも最低限の読み書き計算とポケモントレーナーとしての教育もどき以外何も受けてないんだし。
「でさ、仲間がいたらもっとグッとくると思わない?
頼むよキミ! ダンサーに声かけてくれない?
2人誘ってくれればトリオのチームでダンスできると思うんだよ!
どうかな? 礼はするぜ!」
正直どうでも良いと言えばどうでも良いんだけど……。
……まあ、街を歩くついでに見つかったらで良ければ。
「先に言っとくけど、集まるかは知らねえぞ?
あたしはあてもなくヒウンシティを歩き回るだけのつもりだから。
もし見つからなくても、道塞いだり引き止めたりしてダンサー連れてくる事強制するなよ?」
「お、おう……なんか随分苦労してるオーラが出てるなキミ……。
そういうことなら、偶然見つかったらでいいぜ……」
この広い街でそう簡単に見つかるかねえ?
「ぼくになんか用かい?」
「こういう時に限って見つかるんだな……。要件は単純だよ。
ダンスチーム作りたいって言いだした奴が居るから、噴水広場に行ってくれるか?」
「面白そうだけど、ぼくより強くない相手のお願いは聞きたくないなー」
「結局そうなるのか。じゃああたしが勝ったら広場に行けよ?」
その後の勝負はもちろんあたしが勝った。
「ダンスチームを作るんだよね。すごく面白そうだし、是非参加させてもらうよ」
「ああ」
……しかし、治安悪そうな通りだなここ。
血が付着してたって言われても納得だろ。
見るからに薄暗くて雰囲気もヤバい。
何かするなら最適の場所だ。
「ヒヒヒ……」
「ウヒヒ……」
というか、明らかにかかわってはいけない奴が何か話し合ってるし。
さっさと抜けるか。
「……なあ、そんな所に隠れて何してんだ?」
「にゃあ! よくオレ様を見つけたな!」
いや、あたしの来た噴水広場側からは丸見え……。
「そんな凄いお前にはこれをやろう。フラッシュのわざマシンだ」
「……どうも」
どこが凄いのかさっぱりだが、とりあえずわざマシンを貰った。
「フラッシュの技を使えば相手の技の命中率が下がる……。
それに、真っ暗闇の中で使えば周囲を照らし出せるぜ。
フラッシュ持ちのポケモンはライト代わり……ってことさ」
「……なるほど。まあ使わせてもらうよ…………」
「そのまま港に来たら、もう一人ダンサー居たし……」
「なんか用?」
「ああ。ダンスチームに招待する人間を探してきてくれって言われてて……」
「あっ、ダンスチーム! 紹介してくれるんだ!
じゃあその前に、オレとポケモン勝負だぜ!」
「……じゃあ、さっさと始めようか」
戦いで負けを認めさせないと提案を聞かない奴、多すぎないか……?
トレーナーってそういうものなのかねえ……?
「ポケモンのレッスンもばっちりなんだぜ!」
まあ、負けるわけがない。
あっさり倒して終わりだ。
「……なんだったっけ? そうだダンスチーム!
レッツ合流しまーす!」
「…………見に行くか」
「サンキュー! サイコーのチーム誕生しちゃった!
これはオレからの気持ち!」
「……小判?」
なんで小判?
「それはおまもりこばん! 持たせたポケモンが戦っていると、トレーナーに勝った時により多くお金を貰えるぜ!
レッスンの金を集める時に重宝したんだ!」
「どういうルールなんだよ…………」
この小判を持ったポケモンが戦いに出たら金を普段より稼げるって……。
とんでもないアイテムだな……。
……まあいいや。ヒウンシティ巡りを続けよう…………。