選択権無しのマリネット   作:ルスト

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23話 また通行止めと面倒事かよ!

 ダンサーからお礼として小判をもらった後、あたしは再びヒウンシティを歩いていた。

 今度は4番道路の方を覗いてみようと思ったので、ゲートの先に行ってみる。

 

 

 

 

 

 

「うわっ……なんだよこれ……!!

 砂が……っ!」

 

 4番道路やリゾートデザートはイッシュでは珍しく年中砂嵐が舞っているらしい。

 実際に見るとこれは……!

 

「おいおい……マジでこの先進まなきゃ駄目なのか?」

 

 とは言っても、旅から逃げ出す選択肢は恐らく認められていないだろう。

 というか、強くならないといけないあたしが旅から逃げ出す理由はない。

 目に砂が入らないように気をつけながら進んでいったあたしだが、またしても通行止めに阻まれる事になった。

 

 

 

「おい! トレーナー、この先でちょいと厄介な事があってな、仲間はそっちに行ってるんだ。

 まあヒウンシティのジムに挑戦して時間潰してこい」

「また通行止めかよ! どいつもこいつも!

 というか、そこに居るあいつはなんなんだよ!」

 

 あたしの目にはなんかバックパッカーが当たり前のように突っ立ってるように見えるんだけど!?

 お前あいつは無視かよ!?

 

「自分も困ってるんですよ。

 ヒウンシティに行こうにもこの作業員さんが通してくれなくて」

「なんでだよ!

 通るのはともかく出るのも駄目なのか!?」

 

 普通出るのは問題ねえだろ!

 

「すまんね、これも規則なんだよ。

 作業が終わるまで『関係者以外誰も通すな』と言われたら出すことも出来なくなるんだ」

「そして俺はこの砂嵐の中進むことも戻ることも許されず待ってるってわけさ……」

 

 融通以前の問題じゃねえか。

 

 

 

「……で、結局何が起きたって言うんだよ?

 あたしのこと通さないなら理由くらい説明しろ」

「この先の深い砂地帯に大量に産まれたてのポケモンが捨てられてやがったんだ。

 しかも外来種のポケモンばっかりだ。

 誰がこんな所に産まれたばかりのポケモンを捨てていきやがったんだか……」

 

 外来種のポケモンの大量不法投棄?

 はっきり言って信じられないけどなあそんな話……。

 そう思ってたら、奥から作業員とプラズマ団がやって来た。

 ……プラズマ団まで居るのかよ。

 というかそいつらは良いんだ。

 

「許せないわ! こんな産まれたばかりの赤ちゃんポケモンを大量に捨てるなんて!」

「俺達も困ってたんだよ……引き受けてくれて助かる」

「構わない。我々が救うのはこう言うポケモン達なのだ」

 

 向かってきたプラズマ団が台車に乗せて運んでいるのは大量に乗せられた陸鮫みたいなポケモンだった。

 確か……あのポケモンは進化すると滅茶苦茶強くなるって……。

 

「後何往復すればいいのか……。

 まさか本当にゲーチス様が仰るように、産まれたばかりのポケモンを不法投棄するトレーナーが出てくるとは」

「イッシュのトレーナーにそんな非道な奴が居るとは思いたくねえけどなあ」

「ゲーチスとか言ったっけ、演説して回ってるあんたらのリーダー。

 あの演説聞いたときは信じられなかったけど、実際にこんな光景見せられるとな……」

「我々もゲーチス様が仰らなければ信じなかっただろう……。

 大丈夫だからなフカマル達。我々が必ず保護してやる」

 

 作業員とプラズマ団が話しながら保護作業をしていた。

 …………流石に1匹くれと言えるような状態じゃねえよな。

 それに、あのボケジジイみたいに嫌がらせでやってるんじゃなくてマジで大変な事になってるらしいのは見たら分かる。

 仕方ねえ、諦めて戻るか……。

 

 

 

「フカマル、ダンバル、タツベイ……。

 ああくそ、何百匹いるんだよ!

 こんなの野放しにしてたら4番道路が大変な事になっちまう!」

「だからこそ我々が協力してるんです!

 こんな事したトレーナーは絶対に許せないけど、今は捨てられたポケモン達の保護が優先だから!」

「犯人には必ず罪を償わせてやる! ポケモン達の痛みを与えてやる!」

 

 

 

 昨日見かけたのはイーブイがポケモンセンターに運ばれる所だったけど、今度は大量に不法投棄する奴か……。

 誰がやってんだろうな?

 

 

 

 

 

 

「あれじゃどうしようもないし仕方ねえ。

 ヒウンシティのジムに行くとするか……」

 

 4番道路が通れない以上、あたしはヒウンシティのジムに挑むしかない。

 仕方ないから攻略することに……。

 

「やあマリネット。たった今ジムリーダーのアーティさんに挑んだところさ」

「チェレン? もう来て……ああそっか、あたしは休んでゆっくりしてたから……」

 

 ゆっくりしすぎてたのかね?

 一人だけアロエに先に挑めてたのに追い抜かれてたらしい。

 

「流石ジムリーダーだね。ジムバッジを入手するのにちょっと手こずったけれど、まあぼくにかかればむしタイプも問題なしだね」

 

 ミジュマルって事は、くさタイプ対策の猿でも貰ったのかね。

 あたしとの対決では使ってこなかったけど。

 

「このままイッシュ地方のジムリーダー全員に勝利し、そしてポケモンリーグに向かいチャンピオンを超える!

 そうすれば、誰もがぼくを強いトレーナーとして認めてくれる……。

 それでこそぼくは、生きていると実感できるはず……」

 

 チェレンは生きている実感が欲しいのか?

 あたしにはよく分かんねえな。

 誰にも縛られず、自由に生きられればそれで良いんだから。

 まあそのためにかなりの力が要る以上、あたしは必然的にチェレンより格上の存在にならないといけないだろうけど。

 ボケジジイ、あたしの親、他にももっと居るかもしれない。

 あたしに自分の身勝手を押し付けてくる奴が。

 そいつらからあたしの意思と自由を守る。

 言い換えると、あたしの意思と自由を、あたしに身勝手を押し付けてきた奴等に逆に押し付ける。

 それが全てだ。

 

「……って、チェレン?」

 

 勝手に行ってしまったらしい。

 まあいいや、ジムに挑戦……。

 

「うおわ?」

「いって! 誰だボ……アーティ?」

 

 ジムに入ろうとしたらアーティが出てきてぶつかってきた。

 ……はあ? あたし今から挑むつもりなんだけど?

 

「きみ……ヤグルマの森で強盗達と戦ってくれた……」

「話も聞かずに無理矢理戦わせたの間違いだろ」

 

 助けられたのは屈辱とはいえ感謝はしてるけど。

 まあそんな事はどうでもいいから挑ませろよ。

 

「確か名前は……マリネットさん!

 ひょっとしてジムにチャレンジ?」

「聞くまでもないだろ。さっさと挑ませろよ」

 

 ジムリーダーが仕事放ったらかして何処行く気だよ?

 さっきチェレン出てきたぞ。

 

「あうう……申し訳ないけどちょいと待ってくれるかな?

 連絡があってさ! ヤグルマの森で見たような強盗達がでたらしいんだ!

 というか、きみも来てよ!」

「はあ!? なんであたしが!」

 

 ふざけんな!

 また無理矢理巻き込まれるのかよ!

 

「というか、さっきのチェレン呼び戻せよ!

 バッジ取ったあいつの方が相応しいだろ!

 ライブキャスターチェレンに繋げてやろうか!?」

 

 あたしは面倒事に関わりたくねえんだよ!

 無理矢理持ってくんな!

 強制すんな!

 

「プライムピアって波止場に行くからさ!!」

「おいテメエ! あたしの話聞け!」

 

 あのボケ! あたしの話完全に無視かよ!

 ヤグルマの森の時もそうだけど!

 あたしの言葉なんか聞く価値も無い、黙って私に従えってか!?

 

「ふっっっざけんな!!

 どいつも! こいつも!」

 

 あたしに力も権力も無いから!

 だからこんな事になってんだろうな!

 嫌と言うほど思い知らされてるよ!

 力が無いと体よく使われるだけで自分の意思も無いんだって!

 

 

 

 

 

 

「強盗があたしでも倒せるような奴だったら、今度こそとっしんでポケモンぶち当てて痛めつけてやる!

 犯罪者なんだから構わねえよな!?」

 

 ああ、最悪だ!

 せっかく落ち着いてた気分も全部吹っ飛んだ!

 

 

 

 

 

 

「こっちこっち!」

「はあ……またベル絡みか。

 で、今度は横のそいつのポケモンが盗られたのか?」

 

 3番道路の時みたいに助けてあげてって?

 

「知り合いなのかい?

 強盗達が、このコのポケモンを奪ったって」

「はあ………………?」

 

 ベル、お前戦えるだろうが。

 まさか、夢の跡地と違ってあたしが居ないからってあっさり負けを認めて強盗にポケモン差し出したのか?

 ……で、あたしに助けろと?

 

「……マリネット、どうしよう。

 あたしのムンナ、とられちゃったあ」

「守ってちゃんやってるからだろボケが!

 夢の跡地の時から何も変わってねえじゃねえか!」

 

 戦えよ!

 なんのためにポケモン貰ったんだよ!

 まさかあたしに押し付けてたのはあの時から全く成長してないって事なのか!?

 

「もう! 今はそれどころじゃないでしょ!」

「……っていうか、あんたは?

 てっきりベルがまた強盗にポケモン奪われた子供の面倒見てると思ったんだけど」

「あたしね、おねーちゃんの悲鳴を聞いて必死に追いかけたんだよ!

 ……でもこの街大きいし、人ばかりで見失っちゃったの」

 

 この街ビジネスマンとかOLだらけだし、そこに同じ格好で逃げられると見つからないだろうな。

 目が明らかに違う、って言った所で通じないだろうし。

 

「アイリス……きみは出来ることをしたんだから」

「……でもダメだもん!

 人のポケモンを盗っちゃダメなんだよ!

 ポケモンと人は一緒にいるのがステキなんだもん!

 お互い無いものを出し合って支え合うのが一番だもん!」

 

 綺麗事だ。

 あいつらにそんな言葉は通じないだろ。

 あの手の奴にはもっと強い力で分からせるしかない。

 

「……アイリスちゃん」

「うん! だからボクたちがポケモンを取り返す。

 ね、マリネットさん」

「……ベルには言いたい事しかねえけど、先に取り返してやるよ」

 

 マジで言いたい事しか無いんだけど。

 家、2番道路、夢の跡地、3番道路、そして今回。

 迷惑ばかりかけられてるんだけど。

 一旦後回しにしてやるよ。

 

「とはいえ、このヒウンシティで人探し、ポケモン探しだなんてまさに雲をつかむ話」

 

 とアーティが言った直後、強盗の方からやって来た。

 見た目は……やっぱりOLか。

 目がこの街の通行人とは明らかに違ってるが。

 

 

 

「なんでジムリーダーがいるの!?

 せっかく上手くいったからもう1匹奪おうとしたのに……。

 って、逃げなきゃだわ……!!」

 

 自ら犯人が戻ってきて逃げた。

 ならあたしのやる事は……。

 

「逃がすか! テメエのせいであたしはこんな事に巻き込まれた!

 おかげであたしの機嫌は最悪なんだよ!

 骨の一本は覚悟しな犯罪者!」

 

 追いついて、徹底的に痛めつける事だ!

 

 

 

 

 

 

「あのコの様子……それにヤグルマの森で出会ったアスラ……。なるべく早く行かないとね。

 アイリス! きみはそのコの側に居て」

「うん! あたしベルおねーちゃんのボディーガードをしてる!」

「……ごめんね、ムンナ。トレーナーなのにじぶんのポケモンを守ってあげられなくて……あたし……」




作業員が通行止めしてるくせに普通に先にバックパッカーが見えてる4番道路。
強いのに何故かポケモン奪われてるベル。
チェレン使おうという発想が無いアーティ。
そして選択権無しのマリネット。
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