逃げて行ったOLの姿の強盗。
すぐさま飛び出したあたしは強盗を射程に捉えていた。
「げっ! 追ってくるの速すぎない!?」
「逃さねえよ! あたしは滅茶苦茶苛ついてんだ!
行けハーデリア!」
ポケモン出さないならそのままお前を跳ね飛ばしてやるよ!
バッジがあったら言うこと聞くんだろ!?
普段も聞いてるけど……念には念を入れてやる!
「ちょっと!? いいじゃない人のポケモン奪ったって!!
もう! やっちゃいなさいメグロコ!」
「強盗を制裁するんだ! あたしたちが正義だ!
ハーデリア!『とっしん』!」
ハーデリアがメグロコを跳ね飛ばした。
まあそっちは避けられたみたいだけど……。
「あっぶな……って、え?」
「犯罪者相手なら許されるよなあ!?」
走っている勢いそのままに、思いっきり強盗を蹴り上げた。
クリーンヒットはしなかったが、体勢崩すには十分な威力だ。
「ぐえっ!? いった……ちょ、マジで暴力!? 嘘でしょ!?
ヤバい! 洒落にならない助けて!」
「どうした!? 奪えなかったのか?」
「こいつヤバいから手を貸して!
暴力まで振るってきた! 蹴られた!」
やっぱり仲間が居やがったか!
居るよな! なら次はお前だ!
ビジネスマンの見た目だろうが中身は強盗だろ!
「くそっ! 極悪人め! ポケモンを解放してやってるだけだというのに!」
「強盗を解放って言うのがお前ら流らしいな?
ならさ、あたしの暴力は正義の裁きだよなあ!?」
ハーデリア、やっちまうぞ!
「……まさか我々の自作自演以外で本当にこんな危険なトレーナーが実在するとは……」
「ヤバいってこいつ! 刃物とかどくバリとか持ってなさそうだったから良かったけど!」
「解放の邪魔はさせない! チョロネコ!
その極悪人を倒すのだ! 正義のために!」
「3番道路のガキのチョロネコみたいに派手に吹っ飛ばしてよ!
そこのビルの壁のシミに変えてやりなハーデリア!『とっしん』!」
ハーデリアのとっしんがチョロネコを跳ね飛ばし、ビルの壁に叩きつける。
チョロネコは見事な壁のシミになった。
「ば、馬鹿な強すぎる! 我々では歯が立たん! あの方を」
「ちょっ! ヤバいよ!」
「テメエも一発、貰ってな! ムンナ! やっちまえ!」
「貴様!? 私を直接……」
サイケこうせん食らわせてやるよ!
「はい、そこまで。マリネットさん、落ち着いてくれるかな」
「はあ!? 勝手に巻き込んでおきながらあたしを止めるのかよ!
この強盗共どうしようが勝手だろ!?」
ムンナに攻撃させようとしたらアーティに止められた。
あたしは正義の制裁も許されないってのか!?
無理やり巻き込まれて! こんな目に遭ってるのに!
元はと言えばお前とベルのせいだろうが!
「うーん……強引に巻き込んだのは申し訳なかったかな。
でもここは攻撃を止めてほしいんだ。彼らを追い詰めすぎると何をしでかすか分からないからね。
……本気で止めた方が、いいかな?」
「……ちっ!」
二度と立ち上がれないように徹底的に潰してやりたい!
無理矢理巻き込まれて挙句勝手に止められて! あたしのこの怒りは、どうすればいいんだよ!
全部我慢しろ飲み込めってか!?
結局、アーティには力があるから力の無いあたしの事を自分に都合よくコントロール出来るんじゃねえか!
あたしは、力が無いから有無を言わさずアーティに従わされてるんじゃねえか!
「んだよ! 人のポケモン奪ったくらいでマジかよ!」
「逃げるわよ! そこの建物の中!」
しかも! あたしが止められてる間に強盗に逃げられたじゃねえか!
「……はあ、迷っちゃった。ライブキャスターで説明されてもチンプンカンプンだよ!」
いつの間にかベルとアイリスが来ていた。
「ここに強盗達が逃げ込んだ。もしかしたら、奪われたポケモンもいるかもしれない。
じゃあボクは行くよ!」
「って、あたしの事は止めたのに勝手に行くのかよ……」
ホント自分勝手と言うかなんというか。
力があるからこそ許されるんだろうな。
力があるからこそ、なんだって出来るんだ。
「よーし! 今度はあたしも戦う!!
さあ、ベルおねーちゃんも!」
「ちょ、ちょっとお。マリネットも来てえ!」
「ふざけんな! あたし要らねえだろ……!
勝手にやってろよ……」
「ベルおねーちゃんのポケモンを取り返す戦いなんだから! 皆で協力するの!」
結局あたしは逆らえないから行くしかないと。
ホント、都合のいい暴力装置としての役割しか求められてないんだなあたし。
ジムリーダーとかの力持ってる連中が、自分達の手足にして使い捨てるためだけの、都合のいい駒だ。
(…………っざけんな…………。
ふざけんな! あたしは…………!
テメエらの都合のいい駒なんかじゃねえ!)
アイリスに強引に引っ張っていかれるあたしには、そう胸の奥で怒りを叫ぶことしか出来なかった。
マリネットに皆でストレス与えた結果がこれだよ。
そしてもっと強い力で抑えつけられるのもマリネットの運命。