選択権無しのマリネット   作:ルスト

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26話 力を得るしかない

 プラズマ団に見送られ、ビルを出たあたし達。

 色々と思う所はあるけど、あたしはさっきのゲーチスの話がかなり印象に残っていた。

 あたしが選ぶ道。他人に服従するか、服従させるか、一切関わらないか……。

 

「あたしは……自由に……でも、それはことごとく邪魔されて……あたしに力が無いから……」

 

 今まで、あたしの意思は無視されるばっかりだった。

 力が無いから、従うしか無いんだよな……。

 

 

 

「悪いヤツは捕まったし、大丈夫だよね!」

「……んうん、そうだね……大丈夫だろうね」

 

 強盗が無事に引き渡されて安心だと喜ぶアイリス。

 それに対してアーティはなんか微妙な態度だな。

 明らかに警察に引き渡しに行ってただろ?

 

 

 

「ベルおねーちゃんのポケモンも! 無事でよかった!」

「アイリスちゃん、ありがとう!

 ムンちゃんが帰ってきてくれて、本当に良かった……」

「で、みんなはこれからどうするのさ?」

 

 アーティが切り出した。

 

「……あたしは、ヒウンシティをいろいろ見て回りたいけど……」

「だいじょーぶ!! あたしがベルおねーちゃんのボディーガード続けるから!!」

「アイリスちゃん……」

 

 ベルは今度はアイリスに頼るらしい。

 あたしは体よく使われて、都合が悪くなったらポイか。

 ま、それがあたしの印象なんだろう。

 都合よく幼馴染やら友達って扱いして使うだけ使う。

 困ったことがあったら武力装置として大活躍してもらって、役目がすんだらポイ。

 もっと強いアイリスが居るからあたしはお役御免だ。

 

 

 

「んー、いいねえ。アイリスはとびっきりのポケモントレーナーだけど、この街は苦手みたいだし」

 

 やっぱりこいつ強いのか。

 そうだろうな。

 有無を言わせずあたしを従わせるんだ。弱いわけがない。

 恐らくこいつもジムリーダーか、それに並ぶ強さの……。

 

「それにほら、人もポケモンも助け合い! 助け合い!!」

 

 お前の言う助け合いってのは、あたしみたいに半端に力を持ってる奴を有無を言わせず従わせて都合よく使う事なんだろ?

 ……あたしが親に服従させられてたのと何も変わらねえ。

 あたしは……。

 

 

 

「じゃーねー!」

「ちょっ、ちょっとお」

「……」

 

 そのままアイリスはベルを連れて去ってしまった。

 この場でベルに言いたいことは山ほどある。

 あたしを何だと思ってやがる、お前の都合で巻き込むな、力あるんなら戦えよ、他にも色々。

 けど……言おうとすれば恐らくアイリスが邪魔する。

 恐らく、あいつからしたら絶対に許せない事を言うだろうしな。今のあたし。

 そして、アイリス相手にここで戦ってもあたしは勝てない。

 もっと力を付けないと……。

 

「……じゃあマリネットさん。ボクはジムで待ってるよ」

「ああ……」

 

 

 

 力しか無いんだ。

 誰も、あたしの意思を尊重なんてしてくれない。

 強盗相手に戦わせても、心配なんてしてくれない。

 あたしの事は、あたしが守るしかない。

 

 

 

「……ゲーチス様には手は出さず監視せよと言われてるから監視だけに留めてるけど、誰もケアしてあげないの?

 戦いお疲れ様、じゃーねー☆ って感じ?

 プラズマ団の敵とはいえ、あまりにも哀れねあの子……」

「半端に力だけあり、かつ正義感があるわけじゃないから強い者の都合で強引に戦わされている。

 当然嫌々戦わされている態度を隠せないために感謝もされず、か。哀れだな」

「ポケモンはトレーナーに命令されて他のポケモンと戦わされる。

 あの子はジムリーダーに強制されて私達と戦わされる。

 モンスターボールの中のポケモンとあの子と何が違うのかしらね?」

 

 

 

 

 

 

「……一旦、噴水広場に行くか。あのベンチで、少し休もう……」

 

 少し、頭を落ちつけたい。

 最終的に必要なのは力なのは分かってる。

 でも、あたしが今感じてるのはそれだけじゃない……と思う。

 

 

 

 

 

 

「……………………」

 

 噴水を眺めながら何をするでもなく過ごす時間。

 そうしていると、自分の感情が少し整理されていく気がする。

 

「1つずつ、出していこう……」

 

 ……アーティにまた有無を言わさず手伝わされた、苛つく。

 ……ベルが結局強盗にポケモン奪われてて泣きついてきた、ふざけるな。

 アイリスに無理矢理あたしの言いたい事切られた。引っ張って建物の中まで付き合わされた。ざけんな。

 強盗を叩き潰して、痛めつけてやろうとしたらアーティに邪魔された。なんなんだよお前。

 強盗なんかどうなったっていいだろ。大体あたしは巻き込まれた被害者だ。

 巻き込まれたのはあたしだぞ? なのになんで邪魔するんだよ。

 

「最悪だよな……ホント。…………っ」

 

 誰もお礼1つ言わなかった。まあ嫌々やらされて機嫌最悪のあたしの態度が悪いのはあるかもしれない。

 だから別に「あたしに礼を言えよ!」とは思わない。

 善意の塊で、トラブルの対処に率先して協力するような正義のヒーロー。

 あんな素晴らしい人格者の姿をあたしに求められても困る。

 あたしは自由に生きたい。ただそれだけなんだ。

 

「けど……だけどさ……」

 

 ……けど、誰もあたしの事は心配すらしてなかった。

 今回強盗相手に戦ってたのはジムリーダーのアーティじゃない。巻き込まれたあたしだ。

 アーティは、一般人のあたしに強盗との戦闘を全部押し付けたんだ。

 まあ勝手に飛び出したのが悪いって言われるかもしれない。

 本当ならアーティが勝手に飛び出してあたしは慌てて追いかける姿になってたんだろうし。

 

「それでもさ……これあんまりじゃないか?」

 

 ヤグルマの森の時みたいに、あたしは都合のいい暴力装置でしか無い。

 ジムリーダーのアーティからしたら、雑魚処理用の道具だ。

 ベルからしても同じだ。夢の跡地、3番道路。無理矢理押し付ければあたしが戦わざるを得ないから。

 逃げ出そうとしても、周りを巻き込んで逃がさないように仕込んでやがる。

 3番道路ではチェレンが、今回はアイリスが。あたしにベルの意思を強制させるために邪魔をした。

 

「人として正しいから? トレーナーの行動として正しいから?

 これが正義の立場だから? そのためならあたしはどうなってもいいのか?

 確かに……人助けって大事かもしれないよ。けどさ……」

 

 有無を言わさず手伝わせて。

 それが当然の行いみたいな態度で。

 あたしに強要する。

 

「確かに『悪いのは人助けを嫌がるマリネットの方』って言われるだろうさ。

 あたしはそれでも面倒なのは嫌なんだ。誰にも関わられたくない。静かに生きたい。

 どうせ家を追い出されるにしても、せめて自由気ままに旅がしたかった」

 

 現実はどうだよ。

 あたしの意思なんて尊重されない。

 暴力装置として戦わされ、心配すらされない。

 まだモンスターボールのポケモンの方が愛されてるんじゃないのか?

 

「考えれば考えるほど、嫌な気分になってくるな…………」

 

 自由になりたい。この環境から解放されたい。

 そのためにも……。

 

「そのためにも、力が要る……。アーティもアイリスも、もっと強い奴らも、誰もあたしに行動を強制できなくなるくらい。

 行動を強制しようとした奴らを逆にねじ伏せて従わせられるくらいに」

 

 ゲーチスが言ってた。

 人と自分の考えが対立した時、取れる手段は「服従するか」「服従させるか」「関わらないか」だと。

 あたしは、最低でも「関わらないで済む」ように出来るだけの力が欲しい。

 

「……酷い顔だな、あたし」

 

 覗き込んだ噴水に水がぽたぽた落ちていく。

 噴水の水に映ったあたしの顔は、泣いているように見えた。

 飛沫が反射して濡れたのか、顔が冷たい。

 ……もう少し休んだら、行かないと。

 自由になるための、力を得るために。

 次は、アーティを全力で倒してやる。

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