選択権無しのマリネット   作:ルスト

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27話 燃やし尽くしてやれ!

 あの後どうにか気持ちを落ち着かせ、あたしはヒウンシティポケモンジムに挑みに来た。

 あたしの意思を貫くには力が要る。そのためにも、勝たなければならない。

 

「いやあ、ヒウンシティはどうですか?」

「どうって?」

「人が多くてジムに来るだけでへたばったでしょ?」

 

 ガイドーとかいう奴が話しかけてきた。

 正直、そんな事言える余裕はあたしにはない。

 力で、意思を押し通すためにも。

 

「というわけで、これを差し上げるっす!

 いつものっすよ」

「……どうも」

 

 貰えるなら貰って損はない。

 回復アイテムはあるに越したことはない。

 

 

 

「このジムは壁を突き抜けるのがテーマっす!

 一見通れそうにないミツの壁ですけど、頑張ればなんとかなるっす!」

「……力技で抜けろってことか?」

「そういう事っすね。何とかならないときは床のスイッチを踏んでください!」

 

 力ずくで無理矢理押し通る……。

 今のあたしの気分にはぴったりだな。

 

 

 

「……で、これがその壁か」

 

 見るからに蜂蜜の壁っぽいけど、これを体当たりでぶち破るのか?

 とりあえず押し通ろうとしてみるか。

 

「ぎぎぎぎぎ…………結構、跳ね返されるな……」

 

 無理矢理押せば抜けられそうではある。

 けど、抵抗がすごい。

 少しでも休むと跳ね返されそうだ。

 

「あたしは止まらねえ……。

 力を得て、自由を得る。あたしに行動を強制する奴等を、あたしの意思でねじ伏せるためにも……っ!」

 

 

 

 この先に待ち構えているアーティだってそうだ。

 あたしには有無を言わさず強制的に手伝わせた。

 そのくせあたしが強盗に制裁をしてやろうとしたら止めやがった。

 最後は自分だけ勝手に強盗が逃げ込んだ建物に踏み込んだ。

 巻き込まれたあたしはなんなんだよ。

 

「絶対! 力を得て自由になってやる……っ!

 誰もあたしに命令出来ないように!

 誰もあたしを縛り付けられないように!」

 

 その時、ミツの壁の抵抗が急に弱まった。

 抜けたと気づいた時にはあたしはバランスを崩してこけていた。

 

 

 

「いって……。壁を抜けられたのか?

 スイッチって、これか?」

 

 スイッチを踏むと、左右の壁から音が鳴り、何かが沈んだような駆動音が聞こえる。

 つまり手当たり次第にスイッチ踏んで、ミツの壁をこじ開けて進めって事だろ。

 理解した。

 

 

 

 

 

 

「スイッチを踏んだら飛び出すのはミーでした!

 さあ、というわけでミーと勝負してくれよ!」

「罠まであるのかよ……」

 

 まあ丁度いい。力を得るためならあたしは止まらない。

 あたしの前に出てくるなら全員倒してやる。

 力を得るためにジムを巡る。それがあたしの目的だ。

 

 

 

 

 

 

 ミツの壁とジムトレーナー。

 手当たり次第にトレーナーを倒して仕掛けを解除したあたしは、アーティの目の前までやってきた。

 ああ、やっとだ。やっとこいつを倒せる。

 

「さっきはありがとー!

 ボクのむしポケモンがきみと戦いたいって騒いでさ。

 ではでは、早速だけど勝負だね」

「戦いたいって騒いでる?

 上等だよ! 全力で倒してやるよ!」

 

 ヤグルマの森! さっきの強盗騒ぎ!

 よくも散々あたしの意思を無視して振り回して!

 やりたくもない面倒事させてくれたな!

 あたしはテメエから見たら弱いかもしれねえ!

 無理矢理従わせられる程度の存在なんだろうけど!

 けど! あたしの怒り、全部ぶつけてやる!

 

「ホイーガ!『いやなおと』!」

「ポーク!『ニトロチャージ』! 全部燃やせ!」

 

 速くなっていくポークは止まらねえ!

 アーティの手持ちを全部燃やし尽くすまで!

 

「イシズマイ! 『すなかけ』!

 むうん……なんとか勝ち筋を……」

「さっきから回復回復! しつこい虫だ!

 ポーク、さっさと倒しきれ!」

 

 『すなかけ』がなんだ!

 当て続ければ何の問題もねえんだよ!

 アーティはさっきからすごいキズぐすりを使いまくって粘ってやがる!

 ああしつこい! どうせ外すの待ってんだろ!

 舐めんなよあたしを!

 

「やれ! ポーク!」

「ぬうん……一度も避けなかった、か……」

 

 いいぞ!

 そのまま最後のポケモンも焼いちまえ!

 

「まさに虫の息……いやいや、そんな事ないよ、ハハコモリ!」

「それが最後か! ポーク!

 ニトロチャージで焼き尽くしてしまいな!」

 

 すなかけで外す事で逆転を狙う。

 アーティの狙いは最後まで当たらなかった。

 

「ぬうん……!? ひょっとして終わり!?」

「あたしの勝ちだ!」

 

 散々雑用押し付けられてこき使われたあたしの怒りが!

 すなかけ程度で避けられるわけねえだろうが!

 ……ふう。少しは気分も晴れたな。

 相手はあくまで試験で全力じゃないんだろうけど。

 

「あうう、負けちゃったよ……。

 それにしてもきみ、すっごく強いんだねえ。

 これジムバッジ! ボクに勝ったからあげる!」

 

 ジムバッジ3つ目。

 あの作業員も流石に通してくれるだろ。

 通行止めの理由が理由だからぶっ潰すのは一旦保留にしてやる。

 

「ビートルバッジかっこいいでしょ!

 それに、バッジを3個持っていれば更にレベルの高いポケモンでも言う事を聞いてくれるしね」

 

 そろそろ、通販を試す時かもしれないな。

 この辺までバッジ集めたら、流石に買えるだろうか。

 

「えーっと、そうだ。これもあげるよ。『むしのていこう』のわざマシン。

 むしのていこうは、ダメージを与えた相手の特攻も下げるんだよね。

 そういうなんでもないようなことが大事だったりするからさ」

 

 ふーん……。

 ……なんか、あたしのポケモン全く使えそうにないんだけどな。

 貰っても腐るだけの宝の持ち腐れか。

 ま、使えそうなら使うでいいか。

 

 

 

 

 

 

「……少しは気分も楽になったな。

 苛つく奴は直接ぶっ潰す!

 これに限るってことか」

 

 そのために必要なのもやっぱり力だ。

 必要なのはどこまで行っても力だな。

 ジムの出口まで戻ってきたとき、あたしはその事を改めて実感した。

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