選択権無しのマリネット   作:ルスト

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マリネットもモブトレーナーや育て屋と同じルールでプレイしていたので起きた悲劇。
冒頭以外は番外編のようなものです。


28話 一般トレーナーの宿命

 ジムを出た瞬間、狙いすましたようにライブキャスターが鳴り響いた。

 

「ねえねえ、今どこお?

 お願いがあるんだけど、ポケモン勝負しようよ!

 アイリスちゃんに鍛えてもらってちょっとは強くなったんだよ。

 もう自分のポケモンを守れるはずだから……」

 

 本当かよ。

 心底どうでもいいけど。

 

「じゃあ、4番道路に繋がるゲートで待ち合わせしようね。

 それだけなんだけど、じゃあまたねえ」

 

 ベルは一方的に話すだけ話して切りやがった。

 ……急ぐ理由はないな。

 ポケモンセンターで回復した後、ハーデリアとムンナを鍛えていきたい。

 なんか「バトルカンパニー」とかいう建物を見かけたし寄ってみるか。

 

 

 

 

 

 

「このビルで働く人間が戦わせるのは意見ではなくポケモン。

 見たところ強そうですが、上のフロアに上がるなら存分に気をつけなさいよ」

 

 入った途端、出迎えの清掃員にそう言われた。

 どんな危険地帯だよ。

 まあ修行にはなるか?

 あたしはそんな軽い気持ちでバトルカンパニーに足を踏み入れた。

 言われた通り敵だらけだが、あたしの相手にはならない。

 筈だった。

 

 

 

 

 

 

「おかしい……強くなったはずのムンナが逆に弱くなったような……」

 

 異変に気づいたのはしばらく戦った後だ。

 ムンナは勝手に『しねんのずつき』という技を覚え、最も古い『サイケこうせん』を忘れた。

 これが全ての始まりだった。

 

「倒せない……相手は大した事ない筈なのに……」

「むうん……?」

 

 ムンナも困惑している。

 本能のままに新しい技を覚え、古い技を勝手に忘れていくのはポケモンの自然な現象だ。

 だが、それがメリットになるとは限らなかった。

 

「新しい技……サイケこうせんより明らかに弱い……。

 まさか、レベルを上げて逆に弱体化したのか!?」

 

 これが攻撃出来ない技ならあたしもその場で気づけただろう。

 だが、まさか攻撃技を覚えたのに弱くなるなんて……。

 

「サイケこうせんを取り戻す、もしくはもっと強い技を覚える方法ってないのか……?

 ムンナはずっと弱体化したままなのか……?」

 

 というか、これヤバくないか?

 あたしこの後ベルぶっ潰しに行くんだぞ?

 そのタイミングでこんな……。

 

「と、とにかく戦い続けるしかねえ!

 ハーデリアもポークも居るから大丈夫な筈だ!」

 

 大丈夫な筈。

 そう信じて、ムンナを鍛えることにした。

 ところが……。

 

 

 

「シンクロノイズ……。

 こんなのどう使えって言うんだよ……」

「むん…………」

 

 しねんのずつきの弱さを痛感したのか、危機感を覚えたムンナはかなり集中してなんとか技を忘れまいと抵抗していたものの、それでも新しい技を覚えなければいけないというポケモンの本能に逆らえず『ふういん』を忘れて『シンクロノイズ』を覚えてしまった。

 図鑑の解説曰く「同じタイプにしか当たらない」らしい。

 つまり、元から効かないエスパータイプにしかこの技は当たらない。

 ムンナ、強くなるどころかどんどん弱くなっていっている気がするんだが……。

 ポケモンの言葉なんか全く理解できないあたしにも見て分かるくらい、ムンナは落ち込んでいた。

 戦って強くなる筈が、どんどん使い物にならなくなっているのだから当たり前だよな……。

 

 

 

「うむ、私の負けだね!

 ここに来るトレーナーがどんな人物か見たくて掃除のおじさんのマネをするが、いやいや愉快だったよ!!」

 

 社長? のおっさんの話は全く頭に入らない。

 あたしはそれどころじゃなかった。

 

「これはほんのお礼だ!

 どーんと受け取ってくれたまえ!」

「あ、えっと……これ、何?」

 

 やば、話全く聞いてなかった。

 ムンナのこれからが不安で仕方なくて……。

 ってのは完全に言い訳だな……。

 

「学習装置を持たせたポケモンは、戦わなくても経験値を分けてもらえるよ!

 そう! 弱いポケモンを育てるのに役立つかもね!」

「弱いポケモンを育てるのに……」

 

 正確には「いきなり急激に弱くなった」だけど。

 ムンナをリストラしなくても済みそうか……?

 

 

 

「むん…………」

「…………なんとか抵抗出来たら良かったんだけどな。

 とりあえず学習装置はお前が持ってろ。

 きっと、戦えるようになる筈……だから」

 

 落ち込んでるムンナに学習装置を持たせた。

 いつか再び立てるようになってくれるのを信じるしかない。

 どうしようもなくなったらムンナも出すかもしれないけど、当分ハーデリアとポークの2匹旅だなこりゃ……。

 

「通販で強力なポケモンを買うのはもちろんだけど、どうにか『忘れる技のコントロール』が出来たらいいんだけどな……」

 

 今回はムンナだったが、ポークとハーデリアにもいつ今日のムンナのような悲劇が訪れるか分からない。

 勝手にポケモンが技を覚えないように、あたしに出来ることは何かないんだろうか……。

 

 

 

「ムンナが抵抗してたけど押し流されてシンクロノイズを覚えさせられた。

 ポケモンだけの力だと駄目って事なんだろうな……。

 正直アララギなんかに話を聞くなんて絶対嫌だけど、博士名乗ってるくらいだし何か……。

 いや、でもアララギなんかに頼りたくない……。

 うーん……」

 

 どうすればポケモンの本能に打ち勝ってちゃんと使える技を残しておけるのか。

 それが次のあたしの課題となった。




この話では「レベル技を上から4つ」のモブルールをマリネットにも適用してる(実際に技を覚える度に並び替えて上から消してる)わけですが、ムンナェ……。これは酷い。
残す技を自由に決められる主人公の才能ってすごいね!
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