選択権無しのマリネット   作:ルスト

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29話 あたしはお前の便利屋じゃない

 4番道路手前のゲートに来たら、ベルが後ろからやって来た。

 

「ねえねえマリネット、ライブキャスターで言った約束覚えてるよねえ」

「お前が一方的に、勝手に話して決めたやつだろ」

 

 まあぶっ潰してやりたいから乗ってやる。

 アイリスに鍛えてもらった?

 だからなんだ。叩き潰す。

 

「というわけで、早速ポケモン勝負だよ!

 と、その前に」

 

 ベルはゲートの職員の方に歩いていった。

 あたしの部屋で勝手に勝負始めた時は、あたしの意思も何もかもガン無視しやがったってのにな。

 こいつやっぱりわざとやったんだろ?

 あたしの事は都合のいい道具としか見てねえんだろ?

 ……怒りが収まんねえ!

 アーティの時以上に! 全力で叩き潰してやる!

 

 

 

「ゲートでのポケモン勝負は電光掲示板を壊さないように気をつけてお願いします! だって」

「あっそ」

「あたしも最初とは違うもん、全然大丈夫だよ!

 というわけで、改めてポケモン勝負開始ね!」

「ああ」

 

 顔や声に怒りが全く出てない辺り、あたしの怒りは相当なものになったんだなって感じている。

 まあどうでもいい! 叩き潰す!

 

「お願い! ハーデリア!」

「ポーク!」

 

 出た瞬間ポークが怯える。

 アロエの奴と同じか!

 

「関係ねえ! ポーク!『いわくだき』!」

「ポケモンとあたし! 鍛えてたくましくなったから!

 ハーデリア!『とっしん』!」

 

 ダメージは……大した事ないな!

 

「わわっ! 回復するね! ハーデリア!」

「ポーク! ハーデリアが潰れるまでいわくだき!」

 

 アーティと異なり薬の2個目は来なかった。

 もしくは、切り捨てたか。

 どっちかはあたしには関係無い。

 

 

 

「まだだよ! いけ! ムンちゃん!」

「戻れポーク! 叩き潰せハーデリア!」

 

 ベルがポケモンを出すタイミングに合わせて、あたしもポケモンを入れ替えた。

 エスパータイプのムンナはハーデリアのかみくだくに弱い。

 なら、相手に合わせて変えればいいよな?

 

「え、ええっっ!? そんなのって……!

 ……ジャ、ジャノビー!」

「もう一度交代! ポーク!」

 

 怒りが行き過ぎてるんだろう。

 ベルが新しいポケモン出そうとする瞬間にあたしもポケモンを変えていた。

 我ながら滅茶苦茶な事をしている気はする。

 相手の苦手なポケモンを後出しで繰り出しているような状態だ。

 にも関わらず反則だとか言って止められないって事は、合法なのかね?

 

「そ、そんな! ジャノビー『せいちょう』!」

「余裕あるかな!? ポーク!『ニトロチャージ』!」

 

 ぱっと見ただけでも分かった。

 ベルはあたしより明らかに格下だ。

 こんなに弱いとは考えもしなかった。

 案の定ポークの攻撃に耐えることもなくジャノビーは倒れた。

 それでも、あたしが叩き潰した強盗に負けるほど弱いか? とは思うが。

 

 

 

「ジャ、ジャノビーしっかりして!

 お、お願い! ヒヤップ!」

「戻れポーク! ラスト、ハーデリア!

 とっしんでトドメだ!」

 

 ハーデリアのとっしんがヒヤップを吹っ飛ばし、KOした。

 はっ、あたしの敵じゃねえな!

 

「アイリスちゃんと鍛えたのに……。

 やっぱり勝てなかったね……」

 

 鍛えてこれか? お前舐めてんのかよ。

 あたしはお前やジムリーダーの雑用係になりたくないから力をつけようと足掻いてるんだぞ?

 お前マジでなんなんだよ。

 

 

 

「……あたしは、マリネットやチェレン、それにアイリスちゃんのように強いトレーナーにはなれないけど。

 カノコタウンを旅立ってからいろいろな人と出会ってあたしのやりたいこと、やれる事を考えているの!

 そういう意味で、ポケモンはあたしにたくさんのはじめてをくれたんだよね!」

「ああ。それで?」

「……ポケモンをとられて、大変で不安でどうしようもなかったけど、それでも言えるの、旅に出てよかったって!

 それにポケモンといることが、すごく大事だって分かったし!」

「ふーん」

 

 話はそれだけか?

 

「うん、じゃ、またどこかで会おうね。

 バイバイマリ」

「待てよ。あたしから、言いたいことがいくつかあるんだけど」

 

 だからって、あたしの気持ちは収まらないが。

 無傷同然のパーフェクトゲーム?

 関係無い。

 

 

 

「なあ、お前にとってあたしってなんなんだ?」

「マリネット……急にどうしたの?」

「お前が困った時に、弱い自分の代わりに悪い奴や邪魔な奴を片付けてくれる便利屋なのか? あたしは」

 

 夢の跡地、3番道路、ヒウンシティ。

 あたしはずっとお前の代わりに戦わされてたわけだけど。

 

 

 

「えっ、そ、そんな事思ってない!

 マリネットの事は友達だって思って……」

「へえ、そうなのか。

 じゃあ、どうしてあたしに全部押し付けるんだ?

 ヒウンシティの件に関してはさっきのバトルの体たらくを見たらギリギリ納得も出来なくない。

 なにより、冷静に戦える状態じゃないのは理解もしてる。

 第一、アーティとアイリスに無理矢理従わされたのはお前関係無いし」

 

 けどさ、夢の跡地と3番道路の件は擁護できないぞ?

 

 

 

「ゆ、夢の跡地の時はあたし怖くて……」

「まあヒウンシティで強盗にあっさりムンナ盗られた時点で納得出来なくはないよ。

 それはそれとして、やっぱりお前あたしの事体よく使い捨てにしようとしてるだけだよな?」

 

 3番道路の時の事。

 忘れたとは言わせねえぞ。

 

「お前とチェレンが戦えばよかったじゃねえか。

 無視しようとしたあたしを無理矢理引き留めて戦わせて、お前は安全な場所でガキなだめて待ってるだけか?」

「だって! あの子ポケモン奪われて!

 あんなの見逃せないよ!」

「そうだな。力が無いからあんな事になった。

 あのガキは強盗に勝てない弱者だ。

 けどさ、助けたいならジムリーダーでも3番道路手前のイキリボケジジイでも連れてこれば良かったじゃねえか。

 なんであたしなんだよ?」

 

 何よりも。正義感強い奴ならいくらでもいるだろ。

 あたしみたいな「嫌々従わされてやってます」って奴使うよりも、もっと頼もしくて素晴らしい正義の味方様が。

 

 

 

「マリネット……マリネットは、人助けが嫌なの?

 アーティさんも言ってたじゃない。

 助け合い助け合いって」

「否定はしないよ。積極的に人助けやりたい奴が人助けをして回ってるのを『迷惑だ!』って言うつもりはない。

 けど、あたしは……。はっきり言ってやるよ。

 周りの勝手な都合に無理矢理巻き込まれるのは嫌だ。

 助け合い? 確かに立派だよ。素晴らしい事だよ。

 そのために、丁度いいからって無理矢理あたしを従わせて、鉄砲玉として、暴力装置として使ってくる点を除けばな」

 

 あたしの意思なんて関係無い。

 仮にあたしが負けても、弱かったから仕方ないね。

 じゃあ次はもっと強い人に頼むから。

 ……とか言い出すんじゃないか?

 

 

 

「……どうして? マリネットは、あたしよりもずっと強いんだよ?

 困ってる人の事助けられる力があるんだよ?

 なのに、どうしてそんな事……」

「……あたしは! そんな目的で力を求めてないんだよ!

 あたしは自由に生きたいだけなんだ!

 身勝手に面倒事を押し付けてくる奴等が『正しい行い』をするための邪魔者を掃除するために、手先として都合よく使われるために力を求めてるわけじゃない!」

 

 大体!

 あたしがこの冒険とも呼べない何かに引っ張り出されたそもそもの原因はお前なんだよ!

 

 

 

「身勝手に面倒事を押し付けてくるって……!

 マリネット、そんな事思ってたの!?」

「あたしに選ぶ権利は全く無かった!

 拒否する権利は全く無かった!

 誰一人あたしの意思は尊重なんてしなかったよ。

 そもそも話すら聞かない奴だらけだ。

 お前も、アララギも、アロエも、アーティも、アイリスも、マコモも」

 

 一方的に、身勝手に。

 あたしの意思なんて関係無い。

 

 

 

「…………アイリスちゃんの言ってた事、間違ってなかったの……?」

「ふん、あの後あいつが陰口でも言ってたってのかよ。

 なんて言ってた? 罵詈雑言でも言ってたのか?

 マリネットはなんてクズなんだ! とかか?

 お前には怒らないからさ。是非聞かせてくれよ」

 

 もしかしたらさっきの戦いみたいな事が出来るかもしれない。

 

「……強いのに、人助け嫌なの信じられないって。

 どうしてベルおねーちゃんの事助けてあげようとしないのか分からないって」

「さっき話した通りだよ。

 あたしは、可能なら自由に誰にも邪魔されず生きていきたい。

 そのための力を得て、最終的にどこかで静かに暮らすつもりだ。

 アーティがジムを飛び出した上にあたしの事を無理矢理巻き込まれなかったら、別に助けるつもりもなかった」

 

 冷たい奴だって言うならそれで良いよ。

 それとも、無理矢理巻き込むか?

 あたしより強い奴……ジムリーダーに縋り付いて。

 もしくは、環境を味方につけて。

 

 

 

「マリネットは……助けてほしいって思ったことはないの?」

「あたしの事なんか皆都合のいい暴力装置としか見てないんだぞ?

 途中であたしがやられても誰も気にもしないだろ。

 お前のムンナ盗った強盗相手に戦ってたけど誰も心配なんかしなかったじゃねえか」

 

 あの後ちょっときつくなってはいたんだけどな。

 あたしにとってあれは黒歴史だ。

 それはそうと……そもそもあたしの事無理矢理巻き込むような連中なんだぞ?

 助けてほしいも何も、あたしが助けを求める原因作っておいて助けてやろうかは酷すぎないか?

 

 

 

「マリネットは、私みたいな目に遭っても……。

 大切なポケモン奪われても、良いって言うの?」

「よくはない。けど、あたしが弱いからそうなってしまったってだけの事だよ。

 もしあたしがお前みたいにポケモンを奪われたとしたら、それはあたしが弱かったから。あたしの責任だ」

 

 そう。弱肉強食の世界なんだ。

 力が無いから一方的に泣く事になる。

 

 

 

「ちょっと話しすぎたかな。ま、あたしが言いたいことは『力がなければ何も出来ない』『力が無い奴が悪い』『力がある奴は好き勝手に人を使える』それだけだよ。

 ベル、お前のやりたい事だって力が無いと何も出来ないんだ。

 それと……あたしはもうお前の便利屋にはならない。

 はっきり分かった。あたしの方がお前より強いんだ。

 今後はもう助けてやる義務もない。

 じゃあな。挑みたければまた来いよ。

 何度でもあたしがぶっ潰してやる」

 

 ベルと別れてあたしは先に進んだ。

 言いたいこと言えて気分スッキリしたわ。

 力こそが全て。あたしは、もっと力をつける。

 ベルだけがあたしの邪魔をしてくるわけじゃない。

 ジムリーダーに逆らえるくらいの力を……あたしは……。

 自由に生きる、そのために……。

 

 

 

 

 

 

「マリネット……みんなが、マリネットみたいに考えられるわけじゃないんだよ……?

 みんながマリネットみたいに強くないんだよ……?」




マリネット、怒りが限界突破していれかえルールオン状態。
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