選択権無しのマリネット   作:ルスト

36 / 69
33話 あたしだけの旅の始まり

「とりあえず、買ったこいつを試してみるか。

 カイリュー、あたしをヒウンシティまで運んでくれ!」

「リュー」

 

 ライモンシティのポケモンセンターを出た後、カイリューを出した。

 ボールから出したカイリューはすぐにうつ伏せになり、乗れ、とばかりに背中を示す。

 とりあえず、乗って掴まれば良いのか?

 

「リュ」

「おおっ……浮き上がって……」

 

 まだ少し浮いただけで飛んでいるわけじゃない。

 けど、実感することは出来た。

 『そらをとぶ』って本当にポケモンに乗って運んでもらうのか……。

 落ちないように気をつけないとな……。

 

 

 

「リュ」

「ん? なんだ?

 って、ロープかこれ?」

 

 カイリューが渡してきたのはロープだった。

 カイリューは自分の首にそのロープをかけ、ギャロップの手綱のように装着していく。

 

「そっか……流石に何も付けずに飛ぶのは危なすぎるもんな」

 

 カイリューの渡してきたロープをしっかり握る。

 かなり握りやすく、滑りにくい特殊なロープみたいだ。

 これなら持ってられるだろう。

 その辺の事何も考えないまま買ってしまって、注意点の類とか何も気にしてなかった。

 試しに飛んだ後、問題があったら問い合わせて聞いてみるか。

 

 

 

「あたしこれが初めての『そらをとぶ』なんだ。

 ゆっくりで構わないから安全に頼むぜ」

「リュー」

 

 分かった、と言ってくれたかは分からないけど、カイリューはあたしの希望を汲み取ってくれたのか、あまり速度を出さないようにしつつ、ヒウンシティ目指して飛行しはじめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すっげえ……これが空から見た景色……」

 

 カイリューに運んでもらっている最中、あたしは完全に目の前の景色に夢中になっていた。

 辺り一面見渡す限り空。

 チェレンを一方的に攻撃していたあの砂嵐もカイリューが飛んでいるこの高さまでは届かない。

 眼下には4番道路があるが、砂嵐の隙間から見える建物や地形はどれも玩具のような大きさだ。

 そして遠くにはどこまでも続いていきそうな果ての見えない海。

 

 

 

「ヒウンシティまで飛んでいってるだけでも、こんな感じなんだな……」

 

 周りに誰もいない。

 完全にあたしとカイリューだけが飛んでいる空。

 そう実感した時、あたしは開放感のようなものを強く感じていた。

 自由になれた時、この空を好きに飛べるようになった時には……どんな気持ちになるんだろうか。

 誰にも邪魔されない旅、誰にも干渉されない冒険。

 面倒事を押し付けてくる奴がいない旅。

 果たしてどれだけ素晴らしいものなのか。

 

 

 

「……っと、ヒウンシティが見えてきたな……」

 

 もう戻って来てしまったのか。

 ……さて、少しの間だけでもあたしの行きたいように歩く冒険を始めるか。

 

 

 

「到着か。ありがとう、カイリュー。

 必要になった時はまた出すから、力を貸してくれ」

「リュー!」

 

 カイリューは役目を終えたとばかりにボールに戻った。

 ……確かにポケモン勝負には使えないかもしれないけど、滅茶苦茶優秀じゃないか。

 これがほしのかけら1個で手に入るって破格すぎないか?

 

 

「……とりあえず、今日はここで1日休もうかな。

 ジムリーダーがなんでこんな便利な通販をオススメ出来ないって言ったのか気になるし、その辺調べてみようかな?」

 

 確かポッドとかコーンだったかね?

 なんであんな事言ったのやら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……落ち着いて休めるって、最高だな……」

 

 ポケモンセンターの宿泊用個室であたしは完全にリラックスしていた。

 ライブキャスターの電源も落としておいたから、面倒事に巻き込まれることも呼びつけられることも無いだろう。

 とりあえず1週間くらいはライブキャスターは放ったらかしで良いな。

 

 

 

「ああそうそう、通販をオススメしないって言ってたのってなんでなんだろうね……よいしょっと」

 

 個室備え付けの情報端末で検索してみた。

 すると、あっさりとその理由らしき物が出てきた。

 

「ポケモン通販が出来てから、イッシュのトレーナーはポケモンへの愛情が欠落したり、自分のポケモンを手塩にかけて育てるということをしなくなってきています、か」

 

 どうも書いたのはイッシュのジムリーダーらしい。

 定期的に行われているジムリーダー・四天王合同会議の内容のうち、公開しても問題無いものが公開されているらしかった。

 

「……ポケモン通販が我々のテストポケモンへのメタを張った強力なポケモンを融通してくれるため、最初のパートナーですら切り捨てるポケモントレーナーが4割超確認されている。

 アロエ、アーティ、カミツレ」

 

 よりによって「全滅まで追い込まれた」ポケモントレーナーの手持ち内訳らしい。

 アララギが配っている初心者向けポケモンのツタージャ、ポカブ、ミジュマルのどれも手持ちに確認できず、通販で購入したポケモンばかりで固めているトレーナーがそれだけ居るとのことだった。

 

 

 

「使いこなせないくらいレベルの高いポケモンをポケモン通販から購入し、命令無視上等でゴリ押すポケモントレーナーが増加傾向。

 中にはグループで共同購入した超高レベルポケモンを融通しあい、まとめて大量にジムクリアをしていく団体も。

 ……アロエ、ヤーコン、ハチク」

 

 まあタブンネを倒さないとレベル上がらないだろうしな。

 あたしはタブンネを見つけたからタブンネで稼ぐけど。

 

 

 

「ポケモンを育てるという行為自体への忌避感すら生じているポケモントレーナーが確認される。

 ポケモン通販で購入すれば最初から強いポケモンが買えるため、弱いポケモンを大切に育てる必要にかられないとのこと。

 また、イッシュ地方は他の地方と比べてポケモンが強くなりにくい特質があるためか、簡単に強いポケモンを手に入れられるポケモン通販の需要はかなりのものとなってしまった。

 シキミ、レンブ、シャガ、アイリス」

 

 まあ、わざわざ育てるよりも金で買った方が早いし楽だよな。

 あたしは一応タブンネで鍛えるけど。

 

 

 

「最後、これが最も大きな懸念事項となった。自分のポケモンへの信頼を持たないポケモントレーナーの増加。

 更にこれらのトレーナーはバトルサブウェイに流れ込み、イッシュ地方全土の生態系破壊をしかねない脅威となっている。

 アデク、フウロ、シャガ、アイリス、カトレア」

 

 なるほどねえ。

 まああたしには関係ない事だけど、オススメしないって言ってた理由は理解したよ。

 

「仮にあのカイリューがポケモン勝負でも使い物になるよって言われたら、あたしだって負けそうになった時の切り札に据えるだろうしな」

 

 んじゃ、調べたい事も調べたし飯食ってとっとと寝るかな。

 明日は17番水道? の方に向かってみるか。

 カラクサタウンまでカイリューに運んでもらって、1番道路からなみのり……だったかな。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。