選択権無しのマリネット   作:ルスト

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予想外の動き

「……なるほど。マリネットは通販で購入したポケモンを用いて遠くへ行ってしまった。

 その切っ掛けを作ったのはジムリーダーのカミツレ、ですか」

 

 ヒウンシティのジム前に構えられたプラズマ団拠点。

 そこでゲーチスは部下からマリネットの動向を聞き、次の手を考える。

 トモダチ、もといポケモンの解放を目指すNが育て屋の事を把握し、所業を聞いて怒りのままに『プラズマ団に』育て屋を襲撃させてマリネットに撃退された事件は少し予想外だったものの、それがどうでもよくなるほどの出来事だった。

 

 

 

「カミツレというジムリーダー、正義の勢力としては最大の悪手を打ってしまいましたね。

 一時とはいえ、マリネットを解き放ってしまうとは。

 マリネットを我々への対策に使う計画はそれでも維持できると考えてのことか、報告にあったマリネットの精神状態を見抜いたからか……」

 

 カミツレがマリネットに旅の中断を提案し、マリネットが通販で購入したポケモンに乗ってライモンシティを去ってしまった。

 この出来事は、当事者の2人以外からすればかなり大きな影響を与えるものだった。

 何かあってもマリネットを使うことが出来なくなったのだから。

 特にジムリーダーからすれば、マリネットに手伝わせることができないとなると次に頼れるトレーナーはかなり格下のチェレンやベルとなる。

 

「ここまで、我々の活動を妨害していたのはジムリーダーに使われていたマリネットだった。

 アスラに倒させるのは失敗したとはいえ、ホドモエシティにはヴィオが派遣されている。

 ホドモエシティで強盗役を率いて荒らし回っている筈です。

 なので最悪ヴィオにマリネットを倒させる手筈でしたが……マリネットが居ないのであれば好都合。

 ベルとチェレン……でしたか?

 あの2人を再起不能、最低でもプラズマ団に味方寄りの感覚を植え付ける大きな隙が出来ました。

 通販から仕入れたポケモンを団員に渡す時が来たようですね」

 

 マリネットが購入していた通販は、売っている相手は選ばない。

 必要になれば、ゲーチス達でも購入出来てしまうのだ。

 当然、バッジさえあれば使役できる。

 それは強盗役のプラズマ団でも例外ではない。

 

 

 

「指示を伝えます」

「はっ!」

「バッジを持たせた強盗役及び助けに入るプラズマ団の団員にポケモンを渡しなさい。

 バッジ4つのトレーナーではとても歯が立たないような強力なポケモンを各数匹、です。

 必ずプラズマ団が勝てるようにタイプ相性を合わせるように」

 

 組織単位でポケモン通販を利用すれば、完全に自作自演のヒーローショーも作成出来てしまう。

 強盗役でチェレンやベルを叩き潰し、助けに入る正義のヒーローをプラズマ団が務める。

 そういう筋書きだ。

 

「強盗役がチェレンやベルを倒してポケモンを奪おうとした所にプラズマ団を駆けつけさせ、助けさせる。

 ベルという少女は恐らくプラズマ団に感激するでしょう。愚かな少女ですからね。

 チェレンという少年はマリネットどころか強盗にも倒される現実に劣等感を爆発させるはず。

 そこを別の団員……一般トレーナー風に変装した団員に付け込ませ、ケアをするふりをしながら我々の側に少しずつ引きずり込んでいく」

 

 マリネットが居なければ、他の2人は大したことはない。

 そもそも、ベルに至ってはプラズマ団が一度ポケモンを奪っていたのだ。

 多少強くなったと言っても、より強い力で攻めればいい。

 

 

 

「ヤーコンは頭はキレますが愚か者です。

 一般トレーナーに強盗の捜索を押し付けるはず。

 それを逆手に取り、返り討ちにした上でプラズマ団に救わせるのです」

「……マリネットを呼び戻される可能性はありませんか?

 本人の意思を無視して従わせるのが彼らですよ?」

「無いでしょう。マリネットはここのポケモンセンターに滞在しました。

 台帳を見た団員の報告によると、翌日には去るとの事。

 自由になりたい彼女であれば、しばらくライモンシティには近づかないでしょうね。

 動くとしても離れていく」

 

 

 

 まあ、もしここからすぐに戻ってきたとしてもマリネットでも刃が立たないだろう。

 万が一のことを考えて七賢人には劣る性能にするしかないとはいえ、相当なレベルのポケモンを渡すのだ。

 マリネットが死に物狂いで戦えばどうにか1匹は倒せるかもしれないが、力の差は歴然だろう。

 それに、ヴィオが後詰めを務める。

 チャオブーとは相性が悪いとはいえ、レベルの差で圧倒できるはずだ。

 

 

 

「ところで、タマゴ大量生産・大量投棄の計画はどうなっていますか?」

「はい。間もなく最初の投棄をヤグルマの森で行なうつもりです。

 プラズマ団の保護活動の前日に予定しています。N様もそちらに回します」

「よろしい。Nに暴れられると色々と狂いますからね。

 大人しくポケモンケアごっこをしていてもらいましょう。

 象徴としては使えますが、実働としては邪魔です」

 

 

 

 Nが勝手にプラズマ団を使って育て屋の老人を襲撃させたため、バトルサブウェイの住民からプラズマ団が睨まれてしまったのだ。

 Nが独断でやったことではあるが、Nがプラズマ団のボスであると形式上はなっているため、イッシュ最大勢力を敵に回す結果になってしまった。

 これまでは「プラズマ団が一方的に嫌っていただけ」で済んでいたのだが。

 

「……もしバトルサブウェイを潰すとなれば、イッシュ全土を征服してもすぐには厳しいでしょうね。

 兵糧攻めか、物量攻めか、それとも……。いずれにしろ今は放っておきます。

 しばらくプラズマ団はライモンシティと3番道路に近づくことを禁じます。

 バトルサブウェイの住民との間に余計な火種を作らないように」

「はっ! ただちに伝えてまいります!」

 

 

 

 Nの起こした育て屋の老人襲撃事件がきっかけとなり、プラズマ団がライモンシティから手を引くことになった。

 この事により、ライモンシティだけは今後も不気味なくらい「何も起きずに」済むことになる。

 バトルサブウェイの住民が時折出てきて不気味な様相を見せはするが、彼らは滅多に出てこないし育て屋や自分達に喧嘩を売らなければ何もしないため、ライモンシティには「平穏」が訪れることになるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー

 

 

 

「……マリネット、まさかまだライモンシティのポケモンジムを突破していないのか?

 ライブキャスターも繋がらない。何をしてるんだ?

 ぼくはもう先に進むぞ……?」

 

 マリネットが勝手に旅を中断したことを知らないチェレン。

 ライブキャスターが繋がらないのを不思議に思いつつも、流石に待ちくたびれた彼は進むことを決めた。

 彼は数日間の待ちぼうけの後、ホドモエシティへと入ることになるのだった。

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