選択権無しのマリネット   作:ルスト

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35話 強くなるために

 18番道路でエリートトレーナーが住んでいる小屋を拠点に修行する事を決めた翌日、あたしの修行が本格的に始まった。

 まずやることは基本的なタブンネ狩り。

 相変わらず経験値がかなり貰えるらしく、タブンネを倒すことで確実にあたしのポケモンは強くなっていく。

 そして、ついにその時が訪れた。

 

 

 

「むうん……!」

「図鑑の警告音……『めいそう』を覚えようとして『しねんのずつき』を忘れようとしてやがる……。

 ここか! ムンナ!」

 

 前は強引に技を忘れさせられたけど、今なら!

 

「ムンナ! 『しねんのずつき』じゃなくて『シンクロノイズ』を忘れろ!」

「むん……!」

 

 

 

 ムンナがあたしの指示に応え、めいそうの代わりにシンクロノイズを忘れ去っていく。

 ……あの時にこう出来れば、よかったのか。

 

 

 

「うん、上手くいったみたいね!

 私たちの時は手当たり次第に試すしかなかったから大変だったけど、こうして後輩の育成の役に立つなら先輩冥利に尽きるって感じね」

「教えてくれてありがとう……上手く行って良かったよ。

 これで、今後は安心してこいつらの事育てていける」

 

 あたしが借りることにした小屋の持ち主のエリートトレーナー……アヤがやって来た。

 どうやらあたし達の事を見ていたらしい。昨日話を聞いて早速やることになるとは思わなかったみたいだし。

 なんにしろ、おかげで今後は安心してポケモンの事育てていけるよ。

 勝手にサイケこうせんが消えてしまってまともに戦えなくなって大変だったけど、これでもう大丈夫だ。

 ……ところで、何を抱えてるんだ?

 

「ああ、これ? いい時間だからお昼ご飯どうかなって。

 後は、今のマリネットさんの役に立ちそうな情報の書いてある資料を漁って来たわ」

「……何から何までありがとう。いただきます」

 

 

 

 渡された昼食を食べながら少し休憩する。

 ここまで拒否権無しに手伝え協力しろやると言えって言われるような事ばかりだったし、一番マシなマコモも最後は私の話を一方的に聞け、聞き終わるまで逃がさんだった。

 旅先で親切にされたのはこれが初めてな気がする。

 いや、ここに来る切っ掛けになったカミツレにはあたし結構心配されてたのかな。

 

 

 

 

「来る途中で少し見てたけど、マリネットさんのポケモンはレベルもそうだけど『能力の鍛え方』が甘い気がするわね。

 もちろん、マリネットさんくらいのバッジ数なら十分なんだけど、もっと上の方に行くとなると、相手のポケモンもかなり鍛えてくるのよね」

「能力の鍛え方? タブンネを倒してるのとは違うのか?」

 

 他に何かあるのか?

 

「マリネットさんは『きそポイント』を上げるアイテムを知ってるかしら?」

「なんだそれ? 初めて聞いたぞ……。サンヨウシティのトレーナーズスクールにも何も無かったし」

「なるほど、そこからか……。じゃあ、今日のタブンネハントが終わったら、座学にしてみる?

 これを分かってるかどうかで、ポケモンの強さがかなり変わってくる。

 それくらい重要な要素がレベル以外にもう1つあるの」

「後で良いのか?」

 

 

 

 どいつもこいつも「今すぐ」ばっかりだったし、今やってるタブンネ相手の戦闘の後で良いって言われるのはなかなか新鮮だな。

 

「ええ! どれからやるにしろ、無理に切り替える必要なんてないもの!

 今やってることが終わったら休憩して頭を切り替えてから次の事をやる。

 それでいいわ、こういうのは」

「分かった。じゃあ、今はタブンネ相手に戦うよ。後で教えてくれ」

「ええ、準備だけしてるわね。訓練、頑張ってね!」

 

 

 

 アヤはそのまま戻っていった。

 ……よし、休憩終わり! 今はこのまま戦い続ける!

 

 

 

「……あの子、びっくりするほど伸びそうよね!

 育てがい、かなりありそう!」

 

 

 

ーーーー

 

 

 

「戻ったよ。昼に話してた育て方の事、頼めるか?」

「おかえり! 結構戦ってたんじゃない?

 成果はあった?」

 

 あたしが小屋に戻ったのは日が沈むころだった。

 結局あの後ずっと戦い続けてたな、あたし。

 

「ああ。ムンナが『サイコキネシス』を覚えてくれた。

 これでやっと普通に戦える」

「なるほど、そこまで育ったのね!

 じゃあ、後は忘れちゃった『さいみんじゅつ』か『あくび』を取り戻せれば不足なし。

 さいみんじゅつで構わないって場合はいつでもムシャーナになれるわね。

 ……と言っても、フキヨセシティだからまだまだ先か。ハートのウロコも必要だし」

「フキヨセシティ? ハートのウロコ?」

 

 え? 勝手に忘れた技を取り戻せるのか?

 

「ええ。その人はフキヨセシティに住んでるのだけど、ハートのウロコを渡せば忘れてしまった技を思い出させてくれるのよ。

 でも、ムシャーナみたいな石で進化するポケモンの場合、取り戻せなくなる技が多いみたいね」

「そうなんだ……」

 

 今の所はあくびとさいみんじゅつのどっちを使うか、って問題か。

 

「イッシュってたまに野生で石進化のポケモンが出る事があるんだけど、軒並み技が悲惨なのよ。

 その理由が、いくら戦っても全く自分で技を覚えられないからみたいなのよね」

「また悲惨な……」

 

 育てがいどうこうの話以前の問題じゃないか。

 

 

 

「……っと、そろそろ本題に入りましょうか。

 『能力の鍛え方』の話をするわね」

「頼む」

「じゃあ、まずは基本からね。

 ポケモンには『種族ごとの素質』と『生まれ持った素質』と『後から鍛えられる素質』があるの。

 私が今から話すのは『後から鍛えられる素質』の話よ」

「後から鍛えられる素質……それが『きそポイント』ってやつなのか?」

 

 昼に来た時にそんなことを話してたよな?

 

「ええ。これを高める方法は二通り。

 まずは、ドーピングアイテム。高額で簡単には買えないけど、これを使うのが手っ取り早いわね。

 ……ただ、売っているのが9番道路だから、今この方法するのは無理ね」

「またか……」

 

 無理な物は無理だ。

 不自由な地方だよな。

 

「もう1つの方法は『ひたすらポケモンを倒す』こと。

 ……でも、どのポケモンを倒すとどの能力を鍛えられるかが把握されてないのよね。

 ざっくりとした情報なら私の友達が調べたことがあるみたいだけど……」

「どんな情報なんだ?」

「それがこっちの資料ね。はい、どうぞ」

 

 結構分厚い資料だった。

 

「分かりやすい物だと1番道路のカラクサタウン側の草むら。

 ここでひたすら戦ったポケモンは攻撃が高い、ってデータがあるわ。

 ポケモンのサンプルを何匹か持ち出してやってたみたいだけど、どのポケモンも共通で攻撃が高いの。

 ほら、この比較画像がそうよ」

「なるほど……」

 

 アヤの示した比較画像は「チラーミィ、ゴチム、モンメンを複数用意してそれぞれの道路でひたすら戦ってどのような違いが起きるか」だった。

 1番道路で育てられた個体は軒並み最終的なレベルは低いが、攻撃はかなり鍛えられた、と言う結果になったらしい。

 

「興味深いのがこれね。3番道路の『池』でひたすら戦った結果。

 バスラオしか生息していない池だけど、そこで育ったポケモンはこの比較画像を見る限り共通して素早さが高いわ。

 同じポケモンだけをひたすら倒せばその能力が高くなる、って言う代表例になるんじゃないかしら?」

「……つまり、あたしもこんな感じで特定の場所で戦ったり同じポケモンだけを狙って鍛えれば、あたしのポケモンに足りてない能力を補っていけるって事なのか?」

「恐らくね。この方法で戦えば、きっと弱点を補えるわ。

 明日からはその方向で試してみる?」

「そうだな……この資料に書いてある場所で色々試してみるよ。

 それと、タブンネ相手の戦いを交互に繰り返そうと思う」

「良いと思うわ。着実に力をつけていきましょう!」

 

 

 

 明日以降も、強くなるために修行を続ける!

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