選択権無しのマリネット   作:ルスト

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36話 危機一髪

 翌日。あたしは3番道路に行こうと考えていた。

 昨日アヤに見せてもらった資料によると、バスラオを倒し続ければ素早さを鍛えられる……らしい。

 今日はこれと、1番道路での修行をするつもりだと小屋を出る時にアヤに伝えた。

 

 

 

「なるほど、今日のメニューはそうするのね。

 ……悪いけど、今日は私出かける用事があるの。だから、夕方まであの小屋には戻れないけど大丈夫?

 もし必要なら合鍵渡すけど……」

「いや、それなら夜まで修行してからここに戻るよ。シッポウシティにもカラクサタウンにもポケモンセンターはあるし」

「オッケー! じゃあ、頑張ってね!」

「ああ、行ってくる!」

 

 

 

 アヤは用事があるらしくて今日の晩まで18番道路の小屋には帰ってこれないから、しばらく自由に修行しておいて、とのことらしい。

 さて、出るか!

 

「カイリュー、シッポウシティまで運んでくれ!」

「リュー!」

 

 

 

 カイリューに飛び乗り、シッポウシティまで飛んでいく。

 カイリューに乗るのも少し慣れたような気がする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うーん、まさか仲間内で散々回したあの修行方法をこの年になってまた準備した方が良いことになるとはね。

 まあやるかはマリネットさん次第だけど……倒されるだけのポケモンは結構可哀そうだし。

 使うかは分からないけど、一応準備してきますか!」

 

ーーーー

 

 

 

「ここに帰ってくるの、ずいぶん久しぶりな気がするな」

 

 シッポウシティを離れてから一週間も経ってないはずなんだけどな。

 家を出されて、駆け足で次から次へと進み続けることになった。

 それを考えると、かなり久しぶりに来たような感覚になる。

 

「……また面倒事に巻き込まれても嫌だし、さっさと目的地に向かうか」

 

 アロエに強引に連れてこられて博物館の骨の窃盗事件の対処をさせられた時のことが頭によぎる。

 自然と3番道路へ向かう足が早まった。

 

 

 

「……なんだ、奥の方かなり騒がしいな?」

 

 3番道路に入ると、すぐに違和感に気づいた。

 あたしが入ったシッポウシティ側から結構離れた場所、サンヨウシティ側の方が異様に騒がしいのだ。

 何かあったらすぐに離れる。最悪カイリューに飛び乗って逃げる。

 そのつもりで、あたしは様子を見に行った。

 

 

 

 

 

 

「どけどけ! タマゴを孵化させなきゃいけないんだよ!」

「どきなさい! たくさんタマゴが必要なのよ!

 走れないじゃない!」

「どけ、ゴミが! 俺たちの邪魔をするってのか?」

「ポケモンなんかたくさん作らなきゃまともな個体が出来ないんだ。

 使い物にならないゴミ個体を捨てて何が悪い? 言ってみろ!」

「質の悪いポケモンなんか欲しくねえんだよこっちは!

 こんなゴミばかり産まれても使い物にならねえから処分してんだ!」

「お前らみたいなポケモンが可哀そうだからとか言い出す奴らのせいで、俺達はいつもいつも迷惑を被ってるんだ!

 お前らの存在こそ迷惑なんだよ!」

「こっちだってゴミ個体のポケモンなんか産まれてほしくないっつーの!

 殺処分も出来ないから仕方なく捨ててんだ!

 弱いくせにボックスを埋めるから、邪魔で仕方ないんだよ!」

 

 

 

 ベルに無理矢理止められた交差点。

 そこで、自転車に乗った集団が道に立ちふさがった誰かと言い争っているのが見えた。

 相手は……。

 

 

 

「いいえ! こんな事認めるわけにはいきません!

 命への冒涜です!」

「子供達の教育にもよくないの! やめて頂戴!」

「育て屋はそんなことするためにあるんじゃなかっただろ!」

「ポケモンが可哀そうじゃないか!」

「赤ちゃん同然のポケモンを勝手に作って勝手に捨てるなんて、お前らトレーナーの風上にも置けねえよ!」

 

 様々な服を着た一団……。

 サンヨウシティかシッポウシティの人間か?

 幸いジムリーダーは近くに居ないけど……巻き込まれると嫌だ。

 さっさと離れよう。

 

 

 

「……悪いカイリュー。今すぐカラクサタウンに飛んでくれ。

 まず無いと思いたいけどアレに巻き込まれたくないんだ、頼む」

「リュー」

 

 カイリューに飛び乗り、あたしは3番道路を後にした。

 修行の順番を変えることになるけど、仕方ない。

 去り際、シッポウシティ側のゲートから見覚えのある人影が走ってくるのが少しだけ見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何やってんだいアンタ達! 連絡があったから駆け付けたけど……!

 まさか、産まれたばかりのポケモンを手当たり次第に捨ててるってのはアンタ達かい!?」

「ポケモンは大切に育ててこそだろ! 生まれた直後に逃がすとか、わけわかんねえことやってんじゃねえよ!」

「話し合いが通じる相手なら良いのですが……」

「ねえ……こんな悲しい事やめない?」

「ちっ、ジムリーダー来やがったぞ。どうする? 潰すか?」

「面倒すぎんだろ……ジムリーダー4体総出とかさ。おい、一旦下がるか?」

「どうせ話は通じないんだ、さっさと潰しちまった方が良い気がするけど、お前ら戦力は?」

「こちとらタマゴ抱えてるんだぞ? ほのおのからだしか居ねえよ」

「……大人しく下がってやるか。見せしめにサンヨウとシッポウぶっ壊したって良いんだけど……。

 こいつらいつもいつも狙いすましたように孵化作業で駒が居ない時に……」

「……ねえどうする? 想像以上に大事になってない?

 捕まったら不味いから今晩辺りに逃げる?」

「いや、でも大事な任務だし……指示が来るまでこいつらの真似するしかないよな……。

 ……今晩指示仰ごうぜ」

 

 

 

 その日の晩、アヤに教えてもらってあたしが出くわした出来事の詳細を知ることになった。

 結論だけ言うと、あたしがこの時とっさにカイリューに乗ってその場を逃げ出したのは正解だった。

 どうも大量に産まれたばかりのポケモンを捨てまくっている集団と、それをよく思わない地元……サンヨウシティやシッポウシティの住民がぶつかり合う騒ぎとなり、あたしが飛び立ったすぐ後にジムリーダーが駆け付けていたらしい。

 見覚えのある人影はやはりアロエだった。

 もう少し離れるのが遅ければ、あたしはまた有無を言わさず巻き込まれることになっていただろう。

 

ーーーー

 

 

 

「さて、気を取り直して、修行スタートだな」

 

 1番道路。ヨーテリーとミネズミしか出ない道路で戦い続けるって事だけど……学習装置は有効なのかな?

 今はとりあえずポークとハーデリアだけ鍛えればいいけど。

 

 

 

 確か、ひたすら倒し続けるんだったな。

 図鑑で能力を見ながら倒してみるか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……やっぱり、全然経験値の足しにはならないみたいだな」

 

 それから戦い続け、しばらく経った。

 いくらヨーテリーとミネズミを倒しても、ポークにもハーデリアにもまともに経験値が入った様子はない。

 しかし……。

 

 

 

「本当だ。微妙にだけど、ポークもハーデリアも攻撃が高くなってる……」

 

 ポケモン図鑑はデータとしてポケモンの能力を見せてくれる。

 そのデータが、アヤの見せてくれた資料の中身が間違っていないことを確かに証明していた。

 修行前に表示されていた攻撃の数値より、わずかにだけど上がっている。

 

「つまり、これをある程度続ければ攻撃を鍛えたことになるのか……。

 よし、このまま続けるぞ!」

 

 

 

 この修行を終わらせた後、こっそり3番道路に戻って覗いてみたらさっきのトラブルは解決したらしく、元の静かな道路に戻っていた。

 そのため、予定していたバスラオ相手の修行も無事に行う事が出来た。

 アヤに見せてもらった資料の通り、戦ってしばらくすると素早さが上昇していることが確認できたので、そのまま夜まで戦い続けてポケモンの素早さを鍛え上げた。

 面倒事を無事に回避できて予定通りの修行も出来た。普段と違って何事もなく終わってくれて本当に良かったよ。

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