選択権無しのマリネット   作:ルスト

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4話 ポケモン解放? やりたい奴だけ勝手にやれ

 犬……あの後図鑑を見たら『ヨーテリー』というらしい、を捕獲した後、あたしはそのまま1番道路を抜けることにした。

 ポークの体力はまだ残ってるが、さっき捕まえたヨーテリーの体力は別に回復したわけじゃなかったのだ。

 文字通り、少し押せば倒れそうな状態だった。

 渡されたキズぐすりを使ってもいいかもと思ったが、ここはさっさと拠点を確保し、そっちで回復させた方が良いだろう。

 もし強行軍を強いられるような状態になったら、回復させてくれる暇すらないかもしれない。

 その時に備えた方が良さそうだ。

 そんなことを考えながら道路を抜けようとしたら、チェレンとベルが待っていた。

 ……そう言えば、捕まえた数がどうとかいってたな。

 

「どう? マリネット。

 どちらがたくさんのポケモンを連れているかくらべる?」

「ああ」

 

 中身入りのボールをベルに見せる。

 と言っても、さっき捕まえたヨーテリーが増えただけだ。

 

「マリネットがいま連れ歩いているポケモンの数は……2匹ね!

 あたしたちみんなおそろいだね」

「ちなみに、ポケモン図鑑をチェックすればいままでにみつけたポケモンの数や捕まえた数がわかる。

 じゃあ、カラクサタウンに行くよ。博士が待っている」

 

 その直後、ライブキャスターが鳴り出した。

 スルーしたいが、この音量でずっと鳴り続けられても困るので取った。

 

『ハーイ! みんな元気?

 そろそろポケモンと仲良くなったころでしょ!』

「……」

「あっ、博士!」

『いまカラクサタウンのポケモンセンターにいるの!

 案内してあげるからみんなはやくおいでよ!』

「わかりました! ポケモンセンターですね!」

『オッケイ! それじゃーねー!』

 

「……だってさ。ほらマリネット、無視しようとしないで行くよ」

「はあ……面倒だな……」

 

 正直、アララギ自体に会いたくないってのが大きいかもしれない。

 あたしの親と同じ人の意思は完全に無視するタイプだし。

 

 

 

 

 

 

「ハーイ! マリネット! ポケモンとともに道を行く!

 これがトレーナーの喜びだよね。ということで!

 トレーナーにとって一番大切な施設を教えるからついてきてね!」

「…………」

 

 正直無視したい。

 ……が、親に散々教え込まれた内容からしても、ここを無視するわけにはいかないのは分かる。

 ポケモンセンター……トレーナーやらされるなら生命線になる場所だからだ。

 

「ここがポケモンセンター! なんとなく落ち着くでしょ?

 それでは案内しまーす!」

「あっ、あたしも!」

 

 そのまま奥の受付まで連れて行かれる。

 何回も映像で見せられたことはある。ポケモンセンターの回復装置と受付だ。

 

「ポケモンセンターのすごいところ!

 それはなんと! ポケモンの回復ができること!

 しかも無料なの! トレーナーの味方だよねー!

 ほら、マリネットもポケモンの回復をしてみて!」

 

 正直アララギの指示を聞いてると親の『授業』がフラッシュバックしてくるし、全部無視したいって気になる。

 だが、ポークはともかく、ヨーテリーは回復させないととても使い物にならない。

 キズぐすりも温存した以上、これに頼るしか無いだろう。

 

「おつかれさまです! ポケモンセンターです。

 ここではポケモンの体力回復をします。あなたのポケモンを休ませてあげますか?」

「……お願いします」

「それではお預かりいたします!」

 

 受付に預け、回復装置で回復されていく手持ちを眺める。

 

「おまちどおさま! お預かりしたポケモンはみんな元気になりましたよ!

 またのご利用をお待ちしております!」

「……ありがとうございました」

 

 ポークとヨーテリー両方体力が回復したのが分かる。

 ボールごしの観察だがヨーテリーは動きが明らかに違う。

 

「オーケイ! ポケモン元気になったわね!

 じゃ、次はポケモンセンターのパソコンについて説明でーす!」

 

 アララギにパソコンの前まで連れて行かれる。

 ……さっさと終わらないかな。

 あたし、最低限は知ってるっての……。

 トレーナー関連の教育ビデオなんかはどれだけ嫌だって喚いても無視されて無理やり見せられ、頭に刷り込まれたんだから。

 いくら「嫌な記憶を思い出したくないから覚えてない」って言ってもどこかで覚えてる感じはするんだよ。

 

「これはパソコン! トレーナーならだれでも使えるの。

 連れているポケモンを預けたり、逆にパソコンに預けているポケモンを引きだせるわ。

 ちなみに、ポケモンを6匹連れているときに新しく捕まえたポケモンは自動的にパソコンに転送されるの!

 すばらしいでしょ! びっくりでしょ!

 あと、博士のパソコンを選べばわたしが図鑑評価しまーす!」

 

 少なくとも「博士のパソコン」をあたしが選ぶことは絶対に無いな。

 誰が好き好んでアララギと話したいと思うか。

 

「博士……画面の『だれかのパソコン』ってだれのパソコンのこと……?」

「まあベル! よく気づいたわね! すっごくいい質問よ。

 といいたいところだけど、今は気にせず使えばいいわ!

 だれかというのは、パソコンでのポケモン預かりシステムをつくった人のことでね。

 きみたちもいつか出会うわよ! じゃ、次ね!」

 

 そのまま次の場所に連れて行かれる。

 見た感じの雰囲気は……店か。

 売ってるのはポケモン用品だけだろうが。

 

「こちらはフレンドリィショップ!

 役立つ道具を買ったり、要らなくなった道具を売ったりできるの!

 おにいさんが笑顔で対応してくれるわよ!

 ……さてとッ! これできみたちにトレーナーの基礎の基礎は教えたわね!

 それではわたしはカノコタウンに戻ります」

 

 やっと帰ってくれるのか……。

 顔も見たくないわ、可能なら。

 

「最後にひとつ! サンヨウシティに行ったなら発明家のマコモに会いなさい。

 わたしの古くからの友達で冒険を手助けしてくれるわ。それではがんばって!

 きみたちの旅が実り多いものでありますように!」

 

 本当に「手助け」なのかそれ?

 面倒事の追加じゃねえよな?

 それはそうと……。

 

「なに買おうかなあ。やっぱり『キズぐすり』とか『モンスターボール』大事だよねえ。

 マリネットはどうするの?」

「そうだな、あたしは……」

 

 駒が居ないと困る以上、ある程度ボールは欲しい。

 けど、キズぐすりを買っておかないと必要な時に枯渇して使えないか……。

 資金難に悩まされることになりそうだな……。

 だから他の奴から金巻き上げることになるんだろうか。

 

「……モンスターボールとキズぐすり、それぞれこれだけ買います」

「合計で2400円になります」

「……」

 

 金を出して店員に渡し、モンスターボールとキズぐすりを受け取る。

 この1回の買い物でもう残金が半分を切ったか。

 浪費なんて絶対出来そうにないな。

 

「マリネット、結構大胆に買うんだねえ」

「あたしは必要だと思ったから買っただけだ」

 

 買い物は済んだし、出るか。

 まだ飯の時間には早い。

 

 

 

 

 

 

「なんか広場で始まるらしいぞ!」

「んじゃ、ちょいと行ってみるかね」

 

 ポケモンセンターを出るとそんな会話が聞こえた。

 何する気かは知らないが、少なくともあたしには関係ない。

 

「マリネット、こっちに来なよ」

 

 無視して進もうとしたらチェレンに呼び止められ、連れて行かれた。

 心底どうでも良いんだよこっちは。

 なんか変なコスチュームの集団が並んでやがるけど、大道芸でもやるのか?

 

「ワタクシの名前はゲーチス。プラズマ団のゲーチスです。

 今日みなさんにお話しするのは『ポケモン解放について』です」

 

 変なコスチュームの集団の前に居たゲーチスとか言う奴が喋り出した。

 ポケモン解放? なんじゃそりゃ?

 周りの連中も意味が分からん、って顔してるぞ?

 

「われわれ人間はポケモンとともに暮らしてきました。

 お互いを求め合い必要としあうパートナー、そう思っておられる方が多いでしょう。

 ……ですが、本当にそうなのでしょうか? われわれ人間がそう思い込んでいるだけ……。

 そんなふうに考えたことはありませんか?」

 

 実際の所どうなのかねえ?

 今さっき駒にするためにヨーテリー捕まえた身で言うのもなんだけどさ。

 あたしが必要だと思ったから一方的に捕まえただけだし。

 

「トレーナーはポケモンに好き勝手命令している……。

 仕事のパートナーとしてもこきつかっている……。

 そんなことはないと、だれがはっきりと言い切れるのでしょうか?」

 

 あたしの親とか間違いなくその「こきつかっている」部類の人間だろうな。

 散々聞かされた親の武勇伝は大体ろくでもない内容だった。

 というか、あたしだってさっき捕まえたヨーテリーは駒として使うつもりで捕まえたわけだし。

 もちろん駒として使う以上ダメージの回復とかはしっかりするけど、強いポケモンは必然的に『こき使う』ことになるだろう。

 周りの連中にも一部居るんだろうな、思いっきり「ドキ!」とか言ってる奴が居るし。

 ポケモンは労働力として間違いなく人間より優秀なんだろうから。

 

「いいですか、みなさん。ポケモンは、人間とは異なり未知の可能性を秘めた生き物なのです。

 われわれが学ぶべきところを数多く持つ存在なのです。

 そんなポケモンたちに対し、ワタクシたち人間がすべきことはなんでしょうか?」

 

 周りの奴らは困惑通り越しておろおろしている。

 ポケモンを使役することが常識の世界でこんな事言い出す奴なんて居ないだろうしな。

 頭おかしい奴と思われてもおかしくないだろうし。

 

「そうです! ポケモンを解放することです!!

 そうしてこそ、人間とポケモンははじめて対等になれるのです!!

 ……みなさん、ポケモンと正しく付き合うためにどうすべきか、よく考えてください」

 

 ……? なんかボールがガタガタガタガタ……。

 このボール、ポークか? お前何キレてるんだ?

 少なくとも、あたしの親とかポケモンを解放してやった方が良いと思うぞ?

 捕まえるためなら「朝から晩まで徹底的に痛めつけてからダークボールを投げるのよ!」とか言い出す奴だし。

 『違う! そんなことない!』みたいな雰囲気出されてもなあ。

 ポケモン解放してやった方が良い典型例をあたしは良く知ってるし。

 

「というところで、ワタクシゲーチスの話を終わらせていただきます。

 ご清聴、感謝いたします」

 

 後ろの集団が移動し始め、戦隊がフォーメーションでも組むかのような動きで去って行った。

 ……無駄に芸術性高いな。やっぱり劇団か何かなんじゃねえの?

 

「今の演説……わしたちはどうすればいいんだ?」

「ポケモンを解放って、そんな話ありえないでしょ!」

 

 周りの連中は真っ二つだった。

 あたしには関係ないけど、どっちでも良いんじゃねえの?

 解放したいなら解放すればいいじゃねえか。

 嫌ならあいつの言葉とか無視する、それでいいだろ。

 散っていく群衆を見ながら、あたしはそんなことを考えていた。

 

 

 

 

 

 

 群衆解散後、あたしとチェレンと、もう一人妙な奴が残っていた。

 そいつが話しかけてきた。

 

「キミのポケモン今話していたよね……」

「……は?」

 

 ポケモンが、話す?

 ……さっきの自己主張するようにボールガタガタさせてたポークの事か?

 それとも、文字通り人間の言葉をポークが? そんなわけないか。

 

「……ずいぶんと早口なんだな。それにポケモンが話した……だって?

 おかしなことをいうね」

 

 時代間違えたような演説家の次は毒電波か?

 

「ああ話しているよ、そうかキミたちにも聞こえないのか……かわいそうに。ボクの名前はN」

「……ぼくはチェレン」

「……あたしはマリネットだ」

 

 妙な奴……。関わり合いにならない方が良いタイプな気がする。

 

「ぼくたちはアララギ博士に頼まれて、ポケモン図鑑を完成させるための旅にでたところ。

 もっとも、ぼくの最終目標はチャンピオンだけど」

「ポケモン図鑑ね……」

 

 露骨に嫌そうな顔してるな、Nとか言う奴。

 

「そのために幾多のポケモンをモンスターボールに閉じ込めるんだ、ボクもトレーナーだがいつも疑問でしかたない。ポケモンはそれでシアワセなのかって」

「幸せも何も、トレーナーの世界も野生ポケモンの世界も同じ弱肉強食だろ?

閉じ込められたくないなら野生ポケモンだってトレーナーのポケモンを徹底的にぶちのめしに来るだろうし、群れで集まってそもそもボールの狙いを定められなくしたりするだろ?

お前の言うところの『閉じ込められたポケモン』は実力でトレーナーに勝てなかったから捕まったんじゃねえのか?」

「力で従えるのが正しいと言うのかいキミは」

「少なくとも力が無いと何の権利も与えられないとあたしは考えるけどね」

 

 現にあたしには、教育と言う名の何かを拒む権利も何も無かったんだ。

 今だって無理矢理図鑑やポケモンを押し付けられてここに居る。

 あたしの意思は全部無視されてな。

 もっと強くなれば、嫌な事を嫌と言って押し通せるはず…‥。

 

「なるほど……マリネットだったか、キミの考えは分かった。

 それはそうと、キミのポケモンの声をもっと聴かせてもらおう!」

「っ!? やるのか!?」

 

 Nがいきなり妙な猫を出してきた。

 応戦しないと……! 急すぎるだろ!

 出ろ! ポーク!

 

「チョロネコ!『鳴き声』!」

「ポーク! さっきの火の粉まき散らす技だ!」

 

 妙な猫……チョロネコに鳴き声を浴びせられたが、ポークはそのまま攻撃する。

 ……ダメージは与えてそうだが、さっきヨーテリー捕まえた時と違って、あんまり効いてないのか?

 なんでだ?

 

「もっと、もっと声を聞かせてくれ! チョロネコ!『ひっかく』!」

「ポーク、もう一度火の粉まき散らして攻撃しろ!」

 

 その後はチョロネコがスピードを活かして引っ搔いてくるが、その度にポークに反撃で火の粉を浴びせられていく。

 ダメージの蓄積は向こうの方が早かったらしく、チョロネコは倒れた。

 Nはなんか愕然としている。

 

「そんなことを言うポケモンがいるのか……!?」

「いや、どんな事だよ」

 

 そもそもこの一騎打ちのバトル中に何を聞いたんだ。

 あたしの指示通り火の粉まき散らしてただけだぞ?

 律義に金渡してきたのはこんなよく分からない奴でもトレーナーのルールに従ってるって事なのかもしれないが。

 

「モンスターボールに閉じ込められているかぎり……ポケモンは完全な存在になれない。

 ボクはポケモンというトモダチのため世界を変えねばならない」

 

 言いたい事だけ言って勝手に去って行った。

 結局何だったんだよあの毒電波は。

 

「……おかしなヤツ、だけど気にしないでいいよ。トレーナーとポケモンはお互い助け合っている!

 ……じゃあ、ぼくは先に行く。次の街……サンヨウシティのジムリーダーと早く戦いたいんだ。

 きみもジムリーダーとどんどん戦いなよ、トレーナーが強くなるには各地にいるジムリーダーと勝負するのが一番だからね。

 きみの目的を考えたら、ジムリーダーと戦っていくのは悪くないはずだ」

「力を得るために……」

 

 トレーナーの世界は力が全てだ。

 そう考えると……ジムリーダーを倒して回る方が良いのか?




途中でポケセンを使ってますが、ここも無視して移動すると止められて、使うまで逃げられない仕様になってます(ゲーム版)
マリエットの手持ちのHP的に使わない理由が無いので素直に使いましたが。
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