チェレンと共にホドモエの跳ね橋を渡り、あたしはホドモエシティに入る。
厳戒態勢なのが嫌でも分かる。
街の入り口には検問が敷かれており、跳ね橋から入る側もライモンシティに向かう側もかなり詳しく調べられるようだった。
「随分警戒してるな……」
「まあ、ぼくたちで手に負えないような相手だった以上こうなるのは必然だろう。
ヤーコンさんが最初から働いてくれればよかったんだけどね」
「それは言えてる……」
ここまでやってもまだ見つけられないってなるとそれはそれでヤバいけど。
「……フン、お前がマリネットか」
「そう言うあんたがヤーコンだな」
検問を抜けるとテレビで見た男が声をかけてきた。
今更誰と聞くまでもない、今回の騒動の原因のヤーコンだ。
「マリネット! ホドモエシティに来たのね!
良かったわ! チェレンも一緒ならなおの事!」
「……」
当然アララギもここに居る。
アララギの期待通りに強盗相手に戦わされるんだろうな。
まあそれが分かってても先に進むためにここに来たんだけど。
「アララギ博士、マリネットの力は必要ありません。
ぼくが見つけ出して倒します」
「何言ってるの!? 強盗に負けちゃったのよ!?
それを分かって……」
「だから、勝てるように準備したんです。
ここまで使ってきた弱いポケモンじゃない、マリネットにだって通用するような強いポケモンを使います。
……ぼくが強盗を倒します」
チェレンの圧がすげえな……。
よっぽどきつかったんだろうな、負けてポケモン奪われそうになったの。
あたし自身の命が助かるのに比べたら安い、って思っちまう。
けど、そんな状況にならない限りは渡したくない。
そのためにも強くならないと。
「……ガキ共に頼る必要はねえ。ワシが捕える」
「ヤーコン!? ここに頼りになる戦力が居るのよ!」
「これ以上失態を晒したくない気持ちは分かるけど……。
チェレン君とマリネットを使う方が効率は良くないかしら?」
あたしの親……!
……こいつ、ここに居たのかよ……!
そりゃ、そうだよな。チェレンの所に行く、ってあたしやアヤさんを襲撃してきたときに言ってたし。
流石にこの状況であたしに何か仕掛けてくる、って事はなさそうだけど……。
「……お前らの言うように仮にこいつらを使ったとしよう。こいつらは強盗相手の戦力になるのか?
相手はバッジ4個のトレーナーでは歯が立たないようなポケモンを持ってやがるんだぞ?
実際、そいつは倒されてやがる」
「あら……チェレン君はもう強盗に負けた時とは比べ物にならない強さのポケモンを手に入れたわよ?
ねえ、チェレン君。強盗のヒヒダルマを倒せそう?」
「倒せます。そのためのポケモンを手に入れましたから。
マリネットと戦ってチェック済みです」
実際、戦術は完全にあのヒヒダルマを潰すための物だった。
雨を降らせ、すいすいの効果で加速し、強力なみず技でゴリ押す……。
あれなら勝てるだろう。
「通販か……ちっ、ガキに余計な物に触れさせちまったな」
「心配なら私がチェレン君に付きましょうか?
これでも元トレーナーよ?」
どこが『元』だよ……。
明らかに異次元の強さだったじゃねえか……。
でも、あの暴力があるならそれこそあたし要らねえだろ。
「……そこまで言うなら勝手にしろ!
だが、ワシは責任は取らんぞ」
「決まりですね。では、ぼくたちはこれで」
「失礼します」
ヤーコンが折れてチェレンとあたしの親が強盗探しに出向いて行った。
「マリネット! あなたも行きなさい!」
「別に行かなくていいんだろ? 何より……あたしの親が居るのに失敗する?
天地がひっくり返ってもあり得ねえよ」
アララギはあたしにも行けと言うが、必要ねえだろ。
どうやってもあの強盗が勝てる可能性はない。
あたしの親に逆らったら最悪殺されるかもな……。
「ヤーコンだっけ。戦え、って命令しないんだったらあたしは待たせてもらうよ」
「ああ。ガキは余計な事考えない方が身のためだ」
「マリネット!! この状況で手伝わないなんて何考えてるのよッ!」
うるさいアララギを無視してあたしはホドモエシティに入っていった。
ーーーー
「……って、大人しく待ってられるはずだったのにな」
「命が惜しけりゃ……ポケモン置いてきなぁ! 解放してやるぜぇ!」
「なんであたしが遭遇するんだか……チェレンの前に行けよお前」
あの後ホドモエシティを歩いていたら妙な視線を感じた。
そのまま戦えるスペースに入ると、すぐさま隠れてあたしの後をつけていた強盗に襲われることになった。
作業員の姿だが、明らかに雰囲気が強盗のそれだ。
「ポケモン解放のために! 奪い取ってやるぜえ!
ヒヒダルマァ! この前のガキ2人みたいにこいつもやっちまいなあ!」
「しかも最悪の大当たりかよ!」
チェレンとベルのポケモンをフレアドライブで全部粉砕した化け物。
よりによっていきなりあたしを狙ってくるなんて……。
「ブルンゲル! 頼むぞ!」
「やっちまいな!『フレアドライブ』!」
「『みずのはどう』!」
映像で見てたけど、マジで凄まじい威力だ……!
ブルンゲルとポーク以外はかなり厳しくないか……?
「ダルマァ……!」
「マジかよ! このガキあのガキ共と比べ物にならねえ強さだぞ!?
こいつなら一撃で吹き飛ばせてガキ共を絶望させられるんじゃ……。
ええい! フレアドライブが駄目なら『アームハンマー』!」
「『じこさいせい』!」
「畜生! 当たらないだと!?『フレアドライブ』行けえ!!」
相手が無駄行動をしたのでその隙にじこさいせいで回復。
そしてヒヒダルマはフレアドライブの反動で自滅することになった。
「おいおいおいおいおいおい……マジかよ?
このガキ……強すぎる……2匹目のヒヒダルマで倒せるか?」
「……あたしは積極的に強盗探しする気は無かったんだけどさ、襲ってきたなら覚悟はできてるよな?」
「くそ……ヒヒダルマ行け!『フレアドライブ』でなんとか道を開けろ!
俺の強盗ライフにピリオドを打たせるな!」
強盗が考えていたような展開は起こらない。
あたしがあっさりとポケモンを全滅させられ、命と引き換えにポケモンを手放す。
その光景が楽しみだったんだろうが、今のあたしはお前の想像通りの展開にはならねえよ。
「ブルンゲル!『みずのはどう』でトドメだ!」
「ダルマァ……」
ブルンゲルの攻撃でトドメを刺し、2匹目のヒヒダルマは倒れた。
「そ、そんな馬鹿な! ヒヒダルマでガキ共を叩き潰してポケモンを奪う俺の役目が!」
「チェレンやベルの時とは違う。
……ポケモン持ってるのはあたしの方だ。
お前は丸腰。覚悟は良いよな?」
まあ別に殺す気は無いけど、ヤーコンに突き出してやるよ。
ブルンゲル、捕まえろ!
「ゲルゥ」
「ひええええええええ!!!!」
ブルンゲルの腕のような部位に絡めとられた強盗はあたしを襲ってきた時の余裕はどこに行ったのか、情けない悲鳴を上げる。
ヒヒダルマのボール2個はあたしが没収して完全に無力化した。
ポケモンが動けなくなるとこんなに無力なんだな。
あんなにチェレンとベルを甚振ってたのに。
「……リベンジするつもりのチェレンには悪いけど、あたしが捕まえてしまったな。
ま、捕まえたのは確かだし突き出すか」
それにしても、アララギの命令は無視したのにどうしてこうなるのかねえ……?
ヤーコンも別に戦わなくていいって言ってたのに。
普通に歩いてたら強盗の方から襲ってきたんだけど。