選択権無しのマリネット   作:ルスト

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イッシュが欲しい

 チェレン君と私は強盗を探すためにホドモエシティ内に踏み込んだ。

 チェレン君はやる気満々、素晴らしいわね。

 

「手掛かりなしで探すなら別れた方が良いわね。

 チェレン君、二手に分かれましょうか。1人で大丈夫?」

「はい、ぼくは大丈夫です。もう失態はしません。

 おばさんこそ、1人で大丈夫ですか?」

 

 

 

 あらあら……チェレン君ったら。

 私がゴミに負けるはずないでしょう?

 この軟弱な雰囲気……前に叩き潰したエリートトレーナーの方が格段に強いじゃない。

 でも、この前チェレン君に倒されたからなのか、私1人になるまで見張ってる感じね……。

 ゴミのくせに知恵だけはあるみたい。

 

「ええ、大丈夫よ。チェレン君はあちらをお願い」

「分かりました。気をつけてくださいね」

「ふふ、ありがとう」

 

 

 

 チェレン君は去っていった。

 気を付けるのはむしろ貴方の方なのにね。

 まだ弱いもの。さて、と……。

 

「大人しく出てきなさい? バレてるわよ? 5人ね?」

 

 ホドモエシティの中にゴミの気配はずっとしていたわ。

 化けた所で私とオーベムには無駄。全て分かる。

 どうして誰も見抜けないのかしら?

 平和ボケしてるからなのか、皆殺気や悪意によほど鈍いのね。

 ブラックシティで、弱ければ人としての尊厳すら失い、強ければ何もかもが許される人生を歩んできた私にとって、外の世界はどこもかしこも保育園みたいな生ぬるい環境。

 つまらないにも程があるわ。

 チェレン君を使って支配したら、イッシュ全土をブラックシティのような世界に変えて皆でデスマッチさせましょう。

 きっと楽しい素晴らしい世界になるわね。

 その世界で、私が頂点として弱い奴等から全てを奪う。

 何もかも。最終的にはイッシュの人間もポケモンもすべて私の奴隷兼玩具よ。

 

 

 

「なっ、私達が潜んでいたのがバレているなんて……」

「も、問題ない! 我々の手でこの女のポケモンを解放してやるだけだ!」

「ルールも何も必要ない! 一気に襲うぞ!」

「ポケモン解放のために!」

「かかれ!」

 

 

 

 一斉に雑魚を出して襲ってきたゴミ5匹。

 殺すだけなら簡単。

 敵のポケモンをサイコキネシスで振り回して同士討ちさせてもいいし、首をへし折っても構わない。

 なんならゴミの方を直接ラティオスに狙わせてもいい。

 ……問題は、ここでそれをやると目につきそうなところなのよね。

 ヒウンシティのように隠れるスペースが多いわけじゃない。

 ヤーコンの手下に見られでもすると面倒だわ。

 イッシュを私の物にするまで、大人しく動くしかないのよねえ。

 皆殺しに出来たら速いのにオーベムで気楽に洗脳出来たら速いのに。

 

「邪魔」

 

 だから、面倒だけどルールに則った『お遊び』をしてあげる。

 新しいポケモンの試運転よ。

 チャンピオンの座に就いたチェレン君に防衛用に渡す予定のポケモンではあるけれど。

 

「オーベム、まだ出なくていいわ。

 メタグロス、手加減は不要よ『じしん』」

 

 

 

 ゴミの従えていた雑魚ポケモン5匹は跳ね飛ばされてそれぞれ違う方向に飛んでいく。

 1匹は海に落ちたみたいね。まあゴミのポケモンなんかいくら死んだってどうでもいいわ。

 そしてゴミ5匹は衝撃波に耐えられずその場で転倒した。

 ホドモエシティ全域を大地震のエネルギーが走り抜けていく。

 まあ建物が崩れるような威力は無いでしょ。

 転倒する人間は出るかもしれないけどそんなの知った事じゃないわ。

 

 

 

「なっ……なんて威力……」

「我々のポケモンが……!」

「い、一体何者なのだこの女は!?」

 

 ゴミはようやく私との力の差を自覚したみたいね。

 私相手に立ちふさがる?

 ポケモンを解放する?

 ……滑稽極まりないわねゴミのくせに!

 

 

 

「次は貴方達ね……ねえどんな目に遭いたいの貴方達は?

 仕掛けてくるという事は……殺される覚悟はあるのよねえ?」

 

 まあこんなゴミ共でも殺し方によってはアートになるかもしれないわね。

 弱すぎてそんな気も起きないけど。

 適当に脅せば逃げるでしょうし、オーベムで居場所を把握して拠点を流星群で破壊して不慮の事故扱いで皆殺し……。

 ……いえ、チェレン君に抑えさせましょうか。

 正義のトレーナーチェレン君の点数稼ぎとしてもちょうどいいわね。

 

 

 

「に、逃げろ! 撤退だ!」

「くそ! ヒヒダルマの仲間とも連絡が取れないしどうなっている!」

「ちょっと、ポケモンは!?」

「あんなもの捨て置け! どうせいくらでも捕まえられるし支給される!」

「くそ! 急に凶悪なトレーナーが増えるなんて……」

「オーベム。殺す必要はないわ、追尾してゴミのたまり場の場所を私に」

 

 予想通り逃げ出したゴミ。

 その後をオーベムに追わせる。

 どこに逃げた所で同じ。

 私からは逃げられない。

 

 

 

「だって私は……イッシュを支配する人間なのだから。

 このイッシュ地方の全てを手に入れる人間なのだから」

 

 イッシュが欲しい。

 この平和ボケしたイッシュを私好みの素晴らしい世界に変えたい。

 ブラックシティみたいな世界を、イッシュ全土に広げたいわ。 

 人もポケモンも、弱い奴は死ねばいい。

 強い奴は、私の道具になればいい。

 

 

 

「……さて、チェレン君たちの方に行かないとね。

 ゴミは……ふうん? 冷凍コンテナの方に向かってるのね。

 チェレン君に制圧させれば評価稼ぎになるわねえ」

 

 オーベムからのテレパシーで状況はすべて把握している。

 さっきのゴミは大急ぎで冷凍コンテナの方に走っていったとのこと。

 確かに、あそこなら作業員になりすませば怪しまれないわね。

 それに……作業で忙しい人間は誰かが入っていっても見向きもしない。

 作業員姿ならなおさらね。

 それにしても、律義に全員作業員が着るような服に着替えているなんて、拘るわねえ。

 OLやビジネスマンから作業員に変身しているなんて。

 

「ヤーコンに連絡……なんてしなくていいわね。

 それだとチェレン君の点数稼ぎに使えない。

 無能のまま終わってもらいましょう」

 

 

 

 すべては私がイッシュを支配するために。

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