選択権無しのマリネット   作:ルスト

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47話 解決するんじゃないのか?

 あたしはあの後ポケモンセンターに戻り、ひとまず休むことにした。

 警察も来たし、あの作業員が強盗なら確実に捕まるだろう。

 もし違ったとしても、あたしの親が何目的で作業員の後を追わせたのかなんて考えるだけ無駄だし。

 

 

 

「マリネット、入るわね!」

 

 アララギが勝手に入って来た。

 今度はなんだよ……。

 

「素直に手伝わなかったのはダメだけど、それはそうと良い働きだったわね!

 強盗は警察が抑えてくれたし、ヤーコンさんと警察が何とかしてくれるわ!

 これでわたしもベルの事に集中できるわ」

「あっそ」

 

 ベルの事とか心底どうでもいい。

 適当に流そう。

 

 

 

「ところで、あなたのお母さんの事なんだけど……」

「あたしに聞かれても答えられることないぞ?

 あいつの事なんか、あたしはまるで分かってないんだから」

 

 物心ついた時にはカノコタウンに居て、あいつがあたしの親だった。

 中身はご覧の有様だったけど。

 アヤさん以上に強い化け物トレーナーで、伝説のポケモンすら好き放題に動かすヤバい存在だって事は分かるけど。

 

「チェレンと何かあったのか知らない?」

「あたしが知るわけないだろ……」

 

 そもそもチェレンの面倒見てるって事すら知らなかったし。

 お前が頼んだんだろ。

 

「わたしはベルの面倒を見るしかなくって、あなたのお母さんを呼んだのよ。

 その辺りからチェレンの様子が変わったような気がするのだけど……」

「……」

 

 思い当たることはあるにはある。

 けど、あんな目に遭わされたんだから歪んでもおかしくないだろ。

 ポケモン全滅、強盗にポケモン奪われかけた挙句にプラズマ団に救われた。

 ヤーコンは駆け付ける事も無く、見殺しにしてる。

 チェレンからしたら我慢できないはずだ。

 

「アララギはあたしの親がチェレンに何かしたって思ってるのか?」

「そんなことないわ! あなたのお母さんは素晴らしい人だもの!

 ……でも、なんか引っかかるのよね」

 

 あたしの親は素晴らしいどころか最悪の人間だし、チェレンに何かしたって可能性は普通にある。

 けど、証拠が何も無いんだよな……。

 それに、いくらあたしの親でも何もしてないチェレンに手を出すかね?

 あたしを守ろうとしてくれたアヤさん相手でも一応普通のポケモン勝負で済ませてくれてたし……。

 

 

 

「ここは直接尋ねるのがベストね!」

 

 アララギは勝手に出て行った。

 聞いたところで、何かしてる奴がしてると白状する事は無いと思うけどな。

 まあアララギに何を言っても無駄だしあたしの知った事じゃない。

 

「考えても仕方ないな。なんにしろ、少し休むか」

 

 部屋の鍵は施錠して休むことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー

 

「ふあ……いつの間にか寝てしまってたのかあたし……?」

 

 備え付けの時計を見ると休む前より2時間進んでいた。

 一度様子を見に行くかな……。

 

 

 

 

 

 

「……そう、警察が対処するから手を引くようにって?

 冷凍コンテナを警察に封鎖されたのね。

 そしてヤーコンは静観。

 本当に対処すると思ってるのかしら」

 

 部屋を出るとあたしの親の声が聞こえた。

 気づかれないように聞き耳を立てる。

 

「だけど……警察ですよ?

 ヤーコンさんじゃないんです。ちゃんと仕事するはずですよ」

「チェレン君……貴方には教えておいていいかもしれないわね」

 

 話している相手はチェレンらしい。

 一体何を話してるんだ?

 教えるって何を?

 

「今ホドモエシティを歩いてる警察、そして街を騒がせている強盗。

 こいつらはグルよ。仲間だわ」

「!?」

「どういうことですか? いくらトリカさんでも、警察を強盗とグルと言うなんて……」

 

 いくらあたしの親が理解不能な奴だとしても、警察と強盗がグルって断言するなんて正気とは思えないんだけど。

 警察のくせに、犯罪者を野放しにするってのかよ?

 

 

 

「誰も正体に気づかないのねえ……皆平和ボケして保育園の園児みたい。

 まあそれはそうと、チェレン君。これを見なさい。

 オーベムが中継してくれている映像よ。

 警察が封鎖した直後から、オーベムに設置してもらった遠隔のカメラでずっと監視しているの」

「作業員達が冷凍コンテナに逃げ込んで、そこを警察が封鎖してるように見えますが……」

 

 流石に出て行って映像を見せてくれと頼むことは出来ないからイメージで済ませるしかない。

 ……待てよ、警察?

 

 

 

「ええ、そうね。マリネットから話を聞いた警察がここに駆け付けたのよ。

 それで封鎖を始めた」

「……それ自体は普通ではないでしょうか?

 数もいますし、突入しようとすれば出来るのでは」

 

 やっぱり、あたしが話を聞かれた警察か……。

 

 

 

「そうねえ、突入しようとすれば出来るわね。

 でもこれ、見てみなさい?

 集まるだけで何もしてないわ。

 こんなの、警察がバリケードを作って冷凍コンテナに入れないようにしているだけのように見えるわねえ」

「確かに……突入の準備をしているようには見えません」

 

 あの警察、偽物だったのか……?

 

「それに、おかしくないかしら?

 張り込んでいる警察、強盗犯が潜んでいる倉庫を背にしてる割に緊張感無さすぎる。

 私が仮に中に逃げ込んだ強盗だとしたら……こんな警察、隙をついてあっさり逃げられるわよ」

「……倉庫を警戒してる感じがしませんね。いや、警戒してるとしても外に警戒してる……?」

 

 冷凍コンテナじゃなくて外に警戒してるのか?

 確かにおかしい……。

 

「恐らく、搬出に合わせて逃がすつもりよ。警察が守ってるとなれば安心感があるから普通の人間は疑わない。

 作業員の姿をしているから、警察が白ですと言えば誰も疑わない」

「もしトリカさんの予想通りだとして、ぼくはどうすれば……?」

 

 ……なんで分かるんだよ、って感じなんだけど。

 あまりにもタイミングよすぎじゃないか? とは思ったけど、強盗とグルなんて展開は考えもしなかったし。

 

 

 

「そうね……。この映像証拠をヤーコンに突き付けて、私が言ったように警察が怪しいと主張する。

 そうやって急いで冷凍コンテナを確保させに行けばいいんじゃないかしら?

 そうすれば冷凍コンテナの中の強盗を倒すための戦いに参加できるわ」

「なるほど……分かりました。これ、借りても?」

「ええ。ヤーコンに渡してきなさい。アララギでも良いわ」

 

 チェレンが走って降りていく足音が聞こえる。

 

 

 

 

 

 

「……隠れて聞いているんでしょ、出来損ない。

 貴方が警察に余計なことを喋ったからこうなったのよ。

 おかげで余計な手間が増えたわ。

 まあ、最終的にチェレン君の評価が上がれば私はどうでも良いけれど」

 

 あたしの親も降りていくのか、足音が遠ざかっていく。

 嫌味だけで済んだのはある意味奇跡……なのかな……。

 それはそうと……。

 

「……警察を疑うなんて発想、最初からする方がおかしいっての…………」

 

 

 

 まあ、今回の場合オーベムに最初から見張らせてたから分かったんだろうけど。

 ……いや、でも警察の様子からこいつら怪しいって判断出来る方がおかしくないか?

 警察が犯人の逃げ込んだ建物を封鎖してるなら普通はもう安心だってなるはずだし。

 

「それはそうと、チェレン君の評価が上がれば、ねえ……」

 

 もしあたしが警察に喋らなかったら、チェレンにだけ場所を教えて突っ込ませたのかな?

 そうすればヤーコンの手を煩わせることも無く片付けられたかもしれないし。

 ……なんでそんなにチェレンに入れ込むんだ?

 やっぱり性格的に合うのかな?

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