選択権無しのマリネット   作:ルスト

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51話 これが警察? 嘘だろ……?

 次の日。

 ポケモンセンターから無事に退院した後、あたしとチェレンはホドモエジムに向かった。

 幸い後遺症のような物は何もなかったし、ポークも無事だった。

 さて、ホドモエジムに向かうか!

 

 

 

 

 

 

「……なんか、街の空気ピリピリしてないか?」

「恐らく気のせいじゃないよ。強盗は捕まえたのにどうしてだ……?」

 

 強盗は完全に捕まえた。

 なのに、なんか街の空気がピリピリしている。

 皆警戒心をあらわにしてるって感じだ。

 一体何が……?

 

 

 

「へへへ……ここがホドモエシティってか?

 いい街だよなあ……よく燃えそうだ」

「ストップ、まだっすよお?

 大人しく引き渡してくれる可能性あるんですから」

「そうそう……まだ何もしちゃいけないんだよなあ」

「なんだあいつら……?」

 

 ……ホドモエシティにあんな奴ら居たか?

 

「マリネット、あっちにも似たような奴等が居る……」

「マジだな……」

 

 ホドモエシティのあちこちに、雰囲気が明らかに異様な奴が立っている。

 パッと見ただけでも、強盗よりもヤバい雰囲気が漂っていた。

 ホドモエシティの人達はどうやらこいつらに警戒しているらしい。

 

 

 

「あいつら、明らかに雰囲気がおかしいな……。

 近づかない方が良いか?」

「そうだね……早くジムに向かおう」

 

 あたし達はホドモエジムに急ぐことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「強盗団の逮捕ご苦労だったなあ……ヤーコンさんにそっちの警察達……。

 おかげで捕まえる手間が省けたぜ……ひゃひゃひゃひゃ」

「おいおい、いきなり出てきてなんだお前らは?

 こいつらはこれから牢屋行きだぞ?」

 

 ヤーコンや冷凍コンテナ前で戦っていた警察達が犯人を確保していた。

 それに対峙するように立っている一団。

 街に突然現れた連中の親玉みたいな雰囲気を出している警察の男と、その部下と思われる連中がヤーコン達を囲むように立っている。

 ……警察……なんだよな?

 明らかに強盗よりヤバい雰囲気してるんだけど……。

 

 

 

「ひゃひゃひゃ……俺様を知らないってか?

 俺様はブラックシティの警察署長だ。

 言っとくが、本物だぞ? ヤーコンさんがお世話になったそこの連中よりもずっとずっと偉いのさ。

 それで、要件だが……そこの連中がブラックシティで犯罪起こしたってんで手配されていてねえ。

 捕まえたかったのに居場所が分からず困ってたんだわ。

 それをお前らが捕まえた。礼を言うぜえ……」

「いやいや、礼なんか要らんよ。

 こいつらがポケモンを奪おうとしていたんでね。

 なので討伐して捕まえただけだ」

 

 話してる内容と雰囲気が全く違う。

 明らかに敵意を隠そうとしていないヤーコン、警察署長と自己紹介した男やその部下達を視線だけで殺せるんじゃないかってくらい睨んでいる警察達。

 そしてヘラヘラ、ニヤニヤとした態度を全く崩さない突然現れた謎の連中。

 ヤーコンと話してるリーダーっぽい奴はブラックシティの警察署長って名乗ってるけど……とてもそうは見えない。

 

 

 

「申し訳ありませんが、我々の管轄です。

 ブラックシティの所長様はお引き取りください」

「おいおい……冷たい事言うなよ……?

 せっかくここまで引き受けに来てやったのに、さっさと帰ってくださいってかあ?

 それによお……そいつらのしてることってそんなに悪い事か?

 可哀そうなポケモンちゃんを悪人共の手から解放してやるために戦ってるんだよなあ?

 プラズマ団の素晴らしい思想に触れて目が覚めちゃってさあ……」

 

 警察同士でさっさと帰れって言われるって……。

 こいつマジで何なんだ……?

 

 

 

「んん? おいおい、ギャラリーかあ?」

「……っ」

「…………」

 

 あたし達の方に顔を向けた警察署長。

 目が合った瞬間、全身を寒気のようなものが襲った。

 間違いない。こいつ、ヤバい……。

 あたしの親と同じような雰囲気だ……。

 

「思想に触れて目が覚めた、悪人共の手から解放してやるために戦ってる、ねえ……。

 そうだと良いがね。こいつらはどう考えても『善良なトレーナー』を襲ってるんだがな?

 それに、お前らの態度と言動を見て素直に『こいつなら安心だ任せよう』って思えると思うか?

 ブラックシティの警察ってのは、よほど素晴らしい教育をしているらしいな」

「ひゃひゃひゃ……教育に関してはヤーコンさんも似たような物だろお?

 たまたま街にやって来た善良なトレーナーを鉄砲玉として利用し、無様に負けてもフォローもせず、挙句またしてもやって来たトレーナーに頼ってしまった。

 こんなのがジムリーダーじゃあ……安心して夜も眠れねえよなあ……。

 最近のホドモエシティは治安が悪くなってるって話も聞くしなあ……。

 強盗達が大暴れ、被害者続出。ああ怖い怖い。

 もしかしたら、どこかの建物が跡形も残らずに吹き飛ぶかもしれねえなあ……」

 

 さっき見かけた妙な連中の事が頭によぎった。

 おいおい、まさかさっきの連中……!

 

 

 

「ホドモエシティが消し飛んだら困るだろ?

 恐ろしいことに脅迫状めいた犯行予告も来ててな……。

 そいつらを引き渡してもらわねえと、気づいたら街ごと吹き飛んでるかもしれねえぜ?

 おお、怖い怖い……」

 

 完全に脅しじゃねえか……。

 

「本当に警察なのかよこいつ……?

 雰囲気とか、明らかにおかしいぞ……」

「……信じられない、こいつこそ強盗のなりすましじゃないのか?

 いや、強盗のなりすましたトレーナーでももう少しはまともだ」

 

 チェレンもあたしと同じ感想を抱いたらしい。

 そりゃそうだ。

 こんなのが警察として正義を司る?

 無理だろ……。

 まだ強盗共のなりすました奴の方が自然に警察やってたぞ?

 

「おいおい、聞こえてるぜえ、ガキ共?

 俺様はブラックシティの警察署長、ブラックシティの警察は他の街の警察連中よりずっとずっと偉い。

 この街に住み着いてるような従順なトレーナー共とはレベルも危険度も桁違いのブラックシティのキチガイ共を飼い慣らすお仕事なんだからな、当然だよな。

 ……そして、そのブラックシティの警察をまとめる署長の俺様はもっと偉い。

 覚えとけよ、世間知らずのガキ共?

 まあ……俺様は心が広いから見逃してやるけどなあ。

 目ん玉見開いてよーく見な?

 この警察手帳は正真正銘の『本物』だからよお」

 

 署長を自称する男が見せつけてきたのはこれでもかと宝石や黒く光る鉱石が飾り付けられた手帳だった。

 ……なんだよこれ、宝石飾り付けてるのか?

 

「おいおい、手帳の飾りの宝石や黒曜石の方見てんじゃねえよ。

 まあ、仕方ないわなあ。ブラックシティの実質トップの俺様にしか許されないやつだしな」

 

 贅沢の極みってこういう事なんだろうか。

 しかし、ろくでもないな……。

 

 

 

「ま、ガキ共に俺様の素晴らしさは伝わらんか。

 それで……ヤーコンさん? 返事の方は?」

「………………分かった、連れて行きな……」

「賢明なご判断、ですねえ。感謝しますよヤーコンさん。

 ほらお前ら、連れて行きな」

 

 強盗達はブラックシティの警察によって連れて行かれた。

 ……話の雰囲気からしても、まともに扱うとは到底思えない。

 逃がすつもりなのかな……。

 

 

 

「安心しな? お前らはちゃーんと仕事したんだ。

 誰の責任にもならねえからよお……」

「……」

「くっ……」

 

 去り際、ヤーコンと共に戦った警察達に向かって嫌味ったらしくそう告げて去っていった警察署長。

 警察達は失意の表情を浮かべながら去っていった。

 滅茶苦茶だろ、ブラックシティの警察署長…………。

 

 

 

「お前ら、悪いな……。

 せっかく強盗共を捕まえたのに無駄になっちまった。

 ……まあ気を取り直してポケモン勝負といくか!

 あんまりワシを待たせるなよ」

 

 ヤーコンはそれだけ言ってジムに入っていった。

 

「……争いは避けたか。

 それにしてもあの警察署長……アレがこのイッシュの警察のトップ?

 腐っているのはチャンピオンだけじゃなくて、そのほかの組織もなのか……?」

「あんなのが街の治安を守ってるって言われても、信じられねえよな」

 

 あんな奴に命を預けるなんてあたしには絶対に出来ない。

 あたしの親と同レベルじゃねえか。

 

「……まあ、今はジムの事だけ考えようか。

 ひとまず、ぼくはポケモンを調整してくる。

 あのヤーコンって人には絶対負けたくないからね。

 というか、完全勝利でジムバッジをもらうよ」

「そうか? じゃあ、あたしは先に挑むぞ」

 

 

 

 まあ本来の5個目に合わせたポケモン相手に負ける要素なんか無いと思うけど。

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