選択権無しのマリネット   作:ルスト

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6話 テメエは何様だ!

「ジムリーダーですか?

 今いないんですよ、トレーナーズスクールですかね。

 わるいですけど、挑戦するなら探してきてほしいんすよね。

 トレーナーズスクールはこのジムの隣の隣……要はポケモンセンターの横っす。

 空き巣に入られても困るんで、自分はここ離れられないんすよね、ホント迷惑かけるっす」

「マジかよ……」

 

 サンヨウシティのポケモンセンターで回復した後、ジムに挑もうとしたあたしは早速足止めを食らうことになった。

 リーダーがジム留守にしてるってなんだよ。

 ジムリーダーのくせに仕事サボってんのか?

 それはそうと、ジムリーダーに挑む前に新しいポケモンを探した方が良いか……?

 そう思ってあたしは町を出て3番道路の方に行こうとした。

 確か出口はこっちだよな?

 

 

 

 

 

 

「止まれそこの小娘!

 おぬしジムバッジの1つも持っておらぬようじゃな。

 そんな実力ではこの先きっと苦労するわい。

 悪いことはいわん、この街のジムリーダーに挑み自分の実力を試せ!」

「ああ!? あたしはこの先の道路のポケモン捕まえて戦力を増やそうとしてただけなんだよ! いきなり道塞ぎやがって、テメエ何様だよ!」

 

 なんだよこのボケジジイ! 道塞ぎやがって邪魔だ!

 どけよボケ!

 テメエのせいでポケモン探しに3番道路に行けねえだろうが!

 

「ふん、口だけは達者なようじゃな。礼儀知らずの小娘!

 じゃがしょせんバッジも持たぬ素人の小娘よ。以前、お前みたいな新人トレーナーがわしの有難い忠告を無視して先に行ったわ。

 じゃがその後、本当にサンヨウシティのジムに挑むために戻ってきた事はなかった!

 じゃからわしは、バッジも持たぬ素人の若造がサンヨウシティのジムから逃げ出して先の街に向かおうとするのを止めてやろうと思ったのじゃ」

「身勝手にも程があるだろテメエ!

 誰がテメエに新人トレーナーがサンヨウジムの攻略投げ出して逃げないように通行止めやってくださいって頼んだんだよ!」

 

 ……このボケジジイ、あたしがポケモン勝負でぶっ潰してやろうか!?

 あたしの親並みにクズ野郎じゃねえか!

 

「……おっと、わしをポケモン勝負で排除しようと思っても無駄じゃぞ?

 わしはサンヨウシティのジムリーダーの若造共、つまり……小娘のような新人トレーナー相手に手加減してやってる連中より遥かに強いからな?

 それでもわしに挑もうと言うなら、わしのムーランドに一匹残らず小娘のポケモンが踏み潰されることになるぞ?

 まさか力の差も分からんほど愚かではあるまい?

 ムーランド、出てくるがよい」

 

 ボケジジイが繰り出したのは、あたしのヨーテリーとは比較にならない威圧感を出した大型の犬だった。

 素人のあたしでも、見ただけで分かる……!

 今のあたしではこのボケジジイに勝てねえ……!

 もしここで怒りのままに喧嘩を売ったら、ポークもヨーテリーも一撃で踏み潰される……!

 

「ふん、力の差くらいは分かるようじゃな。

 本当の愚か者でなくて安心したわい。

 安心せい、サンヨウシティのジムバッジを取ってくれば大人しく通してやるわ」

「…………ちっ!」

 

 滅茶苦茶腹が立つ!

 このボケジジイを全力でぶん殴ってやりたい!

 ……けど、あたしには力がない。

 こういう身勝手な輩の嫌がらせを無視するためにも、力で抑えつけられないための強い力が要る。

 ……覚えてやがれ、このボケジジイ!

 いつかお礼参りしてやる!

 

 

 

 

 

 

 ボケジジイを倒せない以上、あたしに出来るのはさっさとサンヨウシティのジムリーダーを倒すことだけだ。

 ……ということで、トレーナーズスクールに来たんだが。

 それらしい人間は居ないな……。

 奥にチェレン居るし、あいつに聞くか。

 

「ポケモンが毒を受けると戦っているあいだどんどん体力が減る。

 ただし、体力が減るのは戦っているときだけ、ね……」

「なあ、チェレン。ここのジムリーダー知らねえか?」

「やあ、マリネット。ジムリーダーを探しに来たのかい?

 さっきまでここでポケモンのタイプについて話していたけどね……すれ違ったんじゃないか?」

「はあ? ここからジムまで一本道だぞ?

 すれ違ったって、そんな事あるか?」

 

 別に人通りが多かったわけじゃねえ。

 いくらあたしが人に興味がなくても、前から誰か来てるなら流石に分かるぞ?

 ……あたしがさっきボケジジイに道塞がれてた時に帰ったんだとしたら……すれ違ったのもあり得るけど。

 

「ところでさ、マリネット。ぼくと勝負してくれないか。

 勝負のとき、どれだけ道具が重要か試したいんだ。

 準備が必要なら待つけど」

「……いや、今すぐでいいよ。勝負だチェレン」

 

 あの傲慢ボケジジイをいつかぶっ潰す。

 そのためにも、あたしは強くなる!

 

「さて、道具の効果がどれほどか……。

 あるいは道具なしでどれだけ戦えるか試すか。

 もちろん室内での勝負、荒らすことなく戦うよ」

「……まあボケベルと違ってお前なら周りは良く見えるよな。

 じゃあ、勝負だチェレン!」

 

「先発、ミジュマルだ!」

「ヨーテリー、行け!」

 

 先発ミジュマルか!

 

「ヨーテリー!『たいあたり』!」

「ミジュマル!『みずでっぽう』!」

 

 ヨーテリーの攻撃は通ったが、問題は敵の攻撃だった。

 みずでっぽうだと!?

 名前通り、思いっきり水を吹き付けて来やがった!

 危ねえ! ベルの言葉から考えたら、もしポーク出してたら今のでやられてたんじゃねえのか!?

 だけど、出してない以上今はあたしの方が有利だ!

 やれ、ヨーテリー!

 

「ヨーテリー! 倒せるまで『たいあたり』だ!」

「……っ! ミジュマル!」

 

 ヨーテリーのたいあたりが直撃した。

 残り体力は僅か、このままだと後一撃で落ちる。

 そう思ったミジュマルが、突然何かを食べた。

 ……その直後に体力が回復しただと!?

 しかも……。

 

「ミジュマル!『しっぽをふる』!」

「嘘だろ!? そのまま動けるのかよ!」

 

 ベルの使ってたキズぐすりと違って、ポケモンが勝手に食うからか!?

 厄介すぎるだろそれ!

 

「ワンッ!」

「……は?」

「なんだって!?」

 

 ミジュマルが食った筈の物と同じ物が、いつの間にかヨーテリーの持ち物になっている。

 なんだこれ!? 敵が食った筈の物を持ってきたのか!?

 何が起きたのかは分かんねえが、少なくともヨーテリーは今ミジュマルが持ってた物と同じやつを持っている!

 

「よく分かんねえけど、チャンスだ!

 ヨーテリー!『たいあたり』で攻め続けろ!」

「まさかこんな事になるなんて! チョロネコに託す!

 ミジュマル!『しっぽをふる』!」

 

 一方的に使われて不利になるかと思ったら、そんな事はなかった。

 これはラッキーだったな。

 そのままヨーテリーは攻撃し、ミジュマルを倒すことに成功した。

 

「チョロネコ!『ひっかく』!」

 

 おっと、一撃食らってヤバくなったか?

 けど……さっきのミジュマルと同じなら……。

 

「ワンワン!」

「与えたダメージが完全に消えた……。

 仕方ないけど絶望感がすごいな……っ!」

 

 チェレンの策が完全に裏目に出た形だな。

 攻撃を食らったヨーテリーがすぐさまさっき拾った物を食って、ひっかくのダメージを打ち消した。

 

「へえ、本当に勝手に使うんだな。

 終わりだ!『たいあたり』!」

「くっ、まさか持たせたきのみが裏目に出るとは……」

 

 流石にこの流れは予測できねえだろ。

 あたしだって想定外だよ。

 

「……この負け方は読めなかったよ。

 スクールで勉強して強くなったつもりだったけど、まだまだ未熟だね」

「この展開読める方が逆に凄えよ。あたしがヨーテリー捕まえてたのは偶然だ」

 

 そもそも、敵の持ってた物を逆に利用して回復する、なんて戦法普通考えもしねえよ。

 

「それはともかく、道具を使いこなすのは大事だね。

 そうだマリネット、このきのみをあげるよ。

 さっきぼくがミジュマルに持たせたきのみと同じ物だ」

「あ、ああ……ありがとう」

 

 これって確か……オレンのみ、ってやつだっけ?

 

「ポケモンにきのみを持たせておけば、戦って体力が減ったとき勝手に食べてくれる。

 もっとも、キズぐすりのように人がつくった道具は持たせておいても使えないけどね」

「そうなのか?」

「ああ。人間がつくった回復用の道具を持たせても、使い方が分からないらしいんだ」

「ふーん…………」

 

 もし使えたなら、効果の高い高級品のキズぐすりでも持たせておけば強いんじゃね?

 って思ったんだけどな。

 世の中そこまで甘くないのか。

 

「じゃ、頑張ってよ」

「ああ。あたしはもっと強くならないと……」

 

 チェレンと別れてジムの方に向かった。

 

 

 

 

 

 

「……え? ぼくがこの街のジムリーダーですけどきみは……?」

「あたしはマリネット。このジムに挑戦しに来た」

「そうですか、ジムに挑戦。

 それできみ……最初に選んだポケモンはなんですか?」

「は? それ言う必要あるのか?」

 

 まさかジムリーダーが挑戦者の情報抜いて対策してくるつもりなのか!?

 滅茶苦茶だろ!?

 

「言わなきゃ駄目なやつか?」

「駄目なやつです」

「わかったよ。あたしが選んだのはミジュマルだ」

「……その気になれば、確認する方法はありますよ?」

 

 騙されてくれれば良かったんだけど、流石にバレるか。

 明らかに罠を張りますって言ってるような奴に情報渡したくねえんだけど……。

 

「ちっ……ポカブだよ」

「ポカブか……なるほど、みずタイプが苦手なんですね。

 きちんと対策しておいたほうがいいと思いますよ。

 たとえば夢の跡地でポケモンを鍛えるとか。

 では失礼しますね」

 

 はあ、嫌な奴……。

 事実上「夢の跡地に行け」って言ってるようなものじゃねえか。

 癪だけど、強くなるためには仕方ない。

 あのボケジジイをいつか絶対ぶっ潰すために、今は強くなる事に専念しないといけない。




3番道路への道を塞いでいる老人ですが、ゲームシステムに操られて進めない主人公と違って、人間であるマリネットはそのままだと言う事を聞く道理はありません。
なので、アホみたいに強いポケモンを従える事で物理的に突破を諦めさせる方向にしました。

ゲーム的に表現するなら、クリア前、通信交換も使えないこの時期にムーランドLV65を繰り出してきます。
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