選択権無しのマリネット   作:ルスト

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55話 寄り道するかな

「うわ、なんだこれ」

 

 電気石の洞穴の手前まで来たあたしが見たのは、入り口に張られた黄色の網だった。

 もしかして、ヤーコンが言ってた野暮用ってこれの事なのか?

 ……ポークに攻撃させたら簡単に破壊できそうな気がするけどなあ。

 

「待たせたな」

「まあ今到着したところだけどさ……なにこれ?」

 

 入り口に張ってある網を眺めてたらヤーコンがやって来た。

 洞窟の入り口にわざわざ張ってある辺り、迷惑を考えてない奴の仕業なんだろうけど。

 

 

 

「これはデンチュラと言うでんきタイプポケモンの巣だな」

「デンチュラ……」

 

 デンチュラって、アヤさんが使ってたよな?

 言われてみると確かにクモの巣っぽいよなこの網。

 まあ邪魔な以上破壊するしか無いだろうけどさ。

 

「なんでこんな所に巣があるのか分からんが、困っている人間が居るなら何とかするのもジムリーダーよ。

 ホドモエで足止め食らってる奴等からこれの対処を頼まれてたんだ。

 最も、強盗事件のせいでそれどころじゃなかったんだが……」

「ふーん……。なあ、こんなのあたしのポケモンでもどうにかなるんじゃねえの?」

 

 サイコキネシスでもかえんほうしゃでも使えばさ。

 ねっとうだってあるぜ?

 

「いや、これはただの蜘蛛の糸じゃねえ。普通に攻撃しただけじゃ大して効果はねえよ。

 普通の糸なら燃やして終わりだが、なんせ電気の糸だ。

 下手に触れば痺れる、エネルギーの塊みたいなものだな。

 だから、でんきを受け付けないじめんタイプの出番ってわけだ。

 やれい! ワルビルっ!!」

 

 

 

 ヤーコンの繰り出したワルビルがデンチュラの巣に突っ込み、電気をものともせずにデンチュラの巣を引き千切って地面に埋めていった。

 

「それはそうと……ほらよ! このわざマシンをくれてやる。

 オレさま自慢のわざマシンだ。全部のポケモンに覚えさせてもいいぞ!」

「中身次第だな、で、何が入ってるんだ?」

 

 ヤーコンの渡してきたわざマシンは見た事のない番号だった。

 つまり、新しい技という事になる。

 

「その『じならし』はだな……ダメージを与えつつ相手の素早さを下げる技。

 じめんタイプのポケモンには素早さが低いものもいる。

 じならしを使いこなせばその弱点をカバーできるだろ」

 

 攻撃しながら相手の素早さを下げられるのか。

 説明だけを聞くとなかなか使えるんじゃないか?

 ……カミツレのボルトチェンジみたいに誰も使えないってオチじゃないことを祈るけど。

 

 

 

「ワシにはお前の才能がどれほどの物か分からんが……。

 行けると思うならどこまでも、やれると思うならいつまでも……。

 好きなようにやればいいじゃねえか。そう思うぞ」

「好きなように? その結果周りが望まないところであたしが勝手に止まってもか?」

 

 アララギなんか分かりやすいけど。

 

「フン、どこかで止まるならそれはそれだ。

 どう転ぼうと、限界を決めるのは自分って事だ。じゃあな」

 

 それだけ言うとヤーコンは去っていった。

 このまますぐに洞穴に入っても良いけど……。

 

「ちょっと寄り道してみるかな」

 

 ここに来る手前の場所で川が見えたんだよな。

 なんかジジイが突っ立っていたけど……。

 一度そっちに寄り道するか。

 

 

 

 

 

 

「この6番道路にある『フキヨセの洞穴』を知っているか?」

「フキヨセの洞穴? この川の先にあるのか?」

 

 突っ立ってるジジイに近づいたら向こうから話しかけてきた。

 川の先がどうなってるかは見えないけど……この先にその洞穴があるのか?

 

「フキヨセの洞穴の奥には、大昔イッシュのポケモンを火の海から守ったと言われる凄いポケモン……コバルオンがいるという。

 水上を進めるというなみのりのわざが使えるならそのコバルオンにも会えるかもな」

「なみのりが必要なだけなのか? 随分簡単に会える気がするけど……」

 

 そういうポケモンってなんか会うための資格とか求めてきそうなイメージだけどな。

 ま、どうでもいいか。カイリューに乗って調べてみよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……本当にあっさりと来たけど、ここがそうなのか?」

 

 川の先にそれらしい入り口があった。

 流石に立札なんかは無いからここで合ってるかは分からないけど、他にそれらしい場所も見当たらないからここがそうなんだろう。

 

「とりあえず入るか……って、また真っ暗闇かよ!」

 

 地下水脈の穴と違って入った瞬間に真っ暗闇だ!

 とりあえずフラッシュ使ってもらわないと……。

 

「あのジジイはなみのりだけあれば会えるみたいなこと言ってたけど……そんなことないな」

 

 あたしの目の前には大きな岩。

 かいりきが無いと動かす事も出来ない。

 いかにもな大穴があるから、そこにこの大岩を叩き落して進めって事か。

 

 

 

 

 

 

「わしの大好物は山! ご飯! ポケモン! そして楽しい勝負!!」

「って、こんな所に敵居るのかよ!?」

 

 しかも大岩を落とした先じゃねえか!

 どうやってこいつここに来たんだよ!?

 まさか、穴を飛び越えて……? もしくは穴に落ちてから這い上がって……。

 ポケモンに頼らないと先に進めないあたしが軟弱なんだろうか……?

 地下水脈の穴の連中も湖なんか泳いで渡って来たって言ってたしな……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「夢を求めここを彷徨い、勝利を求め戦う!」

「まだ居るのか!?」

 

 進んだ先でまたしても敵がいた。

 ここにきてる奴って1人2人じゃないのか……?

 幸い戦力的に負ける相手じゃないのですぐに倒せた。

 苦戦するような奴はほとんどいないのか?

 

「夢を見る事はかなわなかったか……」

「夢ってなんだよ?」

 

 一応聞いてみた。

 6番道路で出くわした研究員みたいに毒電波なこと言ってくるのかもしれないけど……。

 

「この洞穴に潜むという伝説のポケモンを探している。

 わはは! そうよ、男はいくつになってもロマンチストよ!」

「夢のためならなみのりもかいりきもフラッシュも一切使わずにこんな所まで進めるんだな……」

「道なき道を切り開いてこそ冒険よ!」

 

 よほど強靭な肉体なのかそれともただのド根性なのか……。

 少なくともあたしには無理だな。

 バスラオまみれの湖や川を泳いで対岸まで泳ぐとか考えたくもないし。

 ……あたしはあたしだ。

 敵に気を付けながら、探索を続けよう。

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