選択権無しのマリネット   作:ルスト

74 / 75
確実に『消す』ために

 コバルオンはトリカの手に落ちた。

 まあ私にかかれば多少長生きしただけの野生の獣1匹、どうということはない。

 準伝説とか言われて格だけは立派だが、野生のポケモンなど相手にもならん。

 問題はマリネットだ。

 

 あの小娘はトリカが本来の母親に成り代わって毒親教育してなお、トレーナーとしての才能を目覚めさせかけている。

 『本来の』主人公と異なり性格にそれなりの影響を与えることは出来たが、それでも様々な不確定事項と原作の流れがマリネットの人格を矯正しようと働きかけてくる。

 

 このまま何もしなければ、恐らく博物館の石はマリネットの手に渡り、マリネットが英雄として覚醒してしまう事になるだろう。

 私やトリカの目論見を破壊する大団円だけは認めるわけにはいかない。

 このイッシュ地方には、将来的には邪神討伐用の戦闘用ポケモンやトレーナーを量産する軍需工場になってもらう予定なのだから。

 時が来たら用意した戦力と共にシンオウ地方に一気に入り込んで、テンガン山を突破して始まりの間まで攻め上がる。

 そして私にこのような仕打ちをしてくれた邪神に礼をしてやり、完全に滅ぼす。

 今はそのための戦力を作る工場を建てている途中なのだ。

 

 3番道路の育て屋の老夫婦もそのために人格を改造した。

 戦闘兵器を生み出すための厳選に、優しい交尾など不要だ。

 無理矢理にでも子供を作らせ、良個体が生まれれば即座に次の親に。

 親と子であろうと、相手が生まれたてのポケモンであろうと。

 

 トリカはイッシュ地方を支配出来ると思っているし、実際管理はさせるつもりだが、正直アデクその他原作キャラが私にとって邪魔なだけで、私の管理下に置けてイッシュ地方の政治中枢に据えられるなら誰でも構わない。

 記憶だけは都合良く書き換えたが、トリカだって元はブラックシティの下層の名も無きモブだったのだから。

 私が拾って改造しなければ、そのうちどこかで野垂れ死んでいたであろう存在、それがトリカの元の姿だった。

 ゲーム内に置かれた町人モブですらない、雰囲気作りの数合わせのために用意されたこの世界用のエキストラ。

 それがトリカの素材。そんな存在からトリカが作れた。

 仮にトリカが駄目になったとしたら、別のトレーナーをトリカの代わりにするだけだ。

 

 そんな事より、問題はマリネットだ。

 このまま放っておくわけにはいかない。

 どこかで、表舞台から消えてもらう必要がある。

 しかし、変なタイミングで手を出すと面倒な事になる。

 奴の周りには人が多い。ポケモンは私の力なら瞬殺することも出来るが、私1人でマリネットや周りの人間全員を消すとなると流石に目立ちすぎる。

 あまりやりすぎて邪神の介入で時間の巻き戻し等をされると、対策されかねん。

 

 マリネット本人の記憶からはその都度削除したためマリネットは全く覚えていないが、昔トリカを使って幼いマリネットを始末しようとした事があった。

 だが、いかなる手段を使ってもマリネットを殺せなかった。

 池や海に沈めて窒息させようとしても、刃物で刺し殺そうとしても、火事に巻き込んで殺そうとしても、何故か必ず失敗した。

 野生ポケモンも決してマリネットを殺そうとはしなかったし、そもそも主人公特有の強靭な体はビル等の高所から地面に投げ落とす程度ではびくともしない。

 マリネットを物理的に始末するのは恐らく不可能だ。

 

 ならばどうすればいいか。

 簡単な話だ。マリネットの記憶を全て書き換えてしまい、見た目も完全に変えて、無力な人間にした上で家族を作って配置し、どこかの街で死ぬまで閉じ込めればいい。

 平穏な引きこもり生活はマリネット自身の望みでもあるだろう。

 

 なんのイベントも起きず、重要度も低く、原作キャラも介入してこない街の端っこに家を建てて閉じ込め、ポケモンと完全に切り離してしまえばいいだろうか。

 これなら、マリネットという人間の存在を完全に消し去ることが可能になるだろう。

 

 ポケモンの主人公とは、邪神の尖兵のような存在だ。

 決して絶望せず、決して折れず、何度倒しても蘇る。

 邪神の書いた都合のいい英雄譚を仕上げるためのパーツなのだから当然だが、異常な加護や才能を与えられている。

 それを倒すのだから、あらゆる手段を使わなければ。

 

 

 

『すまないトリカ、私は少し離れるぞ。

 行くところがある』

 

 考えがまとまった私はボールの開閉スイッチを念力で自ら押し、外に出た。

 トリカはコバルオンの使い道を考えているらしく、まだ動くつもりはなさそうだ。

 

「あらそう? 落ち合う場所は決めておく?」

『大丈夫だ。やることが終わったらチェレン経由で合流しよう』

「チェレン君の手持ちに入るの?

 あの子貴方なんか扱えるかしら?

 通販のポケモンで手一杯よ?」

『おいおい……私はその辺のプライドだけ1人前のポケモンとは違うぞ?

 バッジなんか関係なく従ってやるさ。

 私より扱いやすい他人のポケモンなど、この世に存在しない筈だ』

 

 最も、私の力をフルに引き出すためには私のラジコンになってもらわなければならないのだがな。

 しばらくチェレンにはラジコンになってもらおう。

 ……さて、マリネットを表舞台から消すための準備にかかるとしようか。

 まず用意するものは空き家と、作り変えたマリネットの家族にする人間だな。

 空き家は……適当な人間をそこそこの数使って作らせればいいだろう。

 マリネットの家族は……髪と肌の色が似ているトレーナーを何人か使って用意するとしようか。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。