「分かり合うためといい、トレーナーは勝負で争いポケモンを傷つけあう」
「出て早々お前が出待ちかよ……」
フキヨセジムを出て早々、毒電波が出待ちしていた。
……で、今度の妄言は何だよ?
「ボクだけなのかな、それがとても苦しいのは。
まあいい……キミのポケモンと話をさせてもらうよ」
「また珍妙な奇術かよ……オカルトがやりたいなら他でやってろっての」
この毒電波の妄言に反応してわざわざ答えようとするポークもポークだけど……。
(先程から毒電波毒電波と……Nという名前があるのですよ?
毒電波呼びは失礼ではありませんか?)
(煩い。勝手に自己完結だけしてあたしにまともに理解させる気もない話ばかりしてくるこいつなんか、毒電波で良いんだよ)
毒電波って言われたくないならせめて理解できるように説明しろって話だ。
毎度毎度わけの分からない話聞かされるこっちの身にもなれっての。
「生憎これは本当の事だよマリネット……ボクは生まれた頃よりポケモンと暮らし育ったからね。
むしろヒトと話すよりも楽なんだ。だってポケモンは絶対にウソをつかない」
「ポケモンは絶対に噓をつかない……ねえ……」
どこまで本当なのやら。
「エンブオーだね……。マリネットはどんなトレーナーか教えてよ?」
「ブウウ! ブウ!」
正直、嘘かホントかはともかくとして、この毒電波の話に喜んで応じてる時点であたしはポークを信用して良いのか怪しくなってくる。
こいつアララギから渡された奴だし、マコモの時もあたしを無理矢理マコモの家まで連行する側に回ってたんだよな……。
バッジがあれば言う事を聞かせられる、みたいなことを言ってるしあたしはバッジ6つ持ってるけど、この会話止められたりしないのかな?
(出来るわけないでしょう、イベントですよこれは。
Nが貴方の情報を把握するために手持ちのポケモンと会話するイベントはシナリオの必須事項に組み込まれています)
「……そうか、マリネットはカノコタウンで生まれ育ち母親と二人暮らしなんだ。
ポケモン図鑑をきっかけに世界を見聞するための旅をしている……と」
(タワーオブヘブンの時もそうだけど、こんなイベントの何が英雄になるために必須なのかさっぱりだよ)
毒電波が待ち伏せしてきて勝手にポークと喋り出すイベントのどこが英雄になる上で重要なのかね?
毒電波とプラズマ団を駆除して勝者になるのが英雄なら、こんなイベント要らなくね?
圧倒的な強さで全部ぶちのめして終わり! の方が手っ取り早いじゃないか。
(なんですかその野蛮な存在は?
そんなの英雄でもなんでもなくて、ただの暴力装置じゃないですか。
英雄とは皆の憧れの存在なんですよ?
都合よく悪人を倒して事件を解決するだけの暴力装置に憧れる人がいると思います?)
(あたしがこの旅でやってたこと……まんまその暴力装置なんだけどな)
ベル、アロエ、アーティ、育て屋。
都合よくそこに居たから何とかしろって感じで戦闘に駆り出された暴力装置じゃねえかあたし。
「それにしてもこのエンブオー……何故だかキミを信じている……いいね……!
全ての人とポケモンがキミたちのように向き合うなら……。
人に利用されるだけのポケモンを解き放たずにポケモン達と人の行く末を見守ることが出来るのに」
「……お前はポケモンの管理者か保護者でも気取ってるのか?」
「ボクがポケモン達の管理者や保護者?
違う、ボクはポケモン達の事をトモダチとして、ただ一人の理解者として案じているだけだ。
それよりも……キミに1つ情報を渡しておこう」
情報ねえ……。
「ゲーチスはプラズマ団を使い特別な石を探している。
その名もライトストーンとダークストーン……。
伝説のポケモンはその肉体が滅ぶとストーンとなって眠りながら英雄の誕生を待つ……」
(今Nが話したこれこそが英雄が従えるべき伝説のポケモンの情報ですよ。
必要に決まっているじゃないですか。
貴方は情報も無しにどうやってレシラムやゼクロムを探すんです?
まあ、私ならシナリオを全て把握していて知識もあるので情報なしでもやれますけどね)
そんなに必要なのかねえ……その伝説のポケモンとか言うの。
伝説のポケモンでなくても力さえあれば問題ない気がするけど。
やっぱり『格』の問題なのかな。
珍しいポケモンを従えている、って事でその辺のトレーナーより偉そうに見えるとかあるのかね?
「そのストーンから伝説のドラゴンポケモンをよみがえらせ、トモダチになり、ボクが英雄であることを世界に認めさせ従わせる……。
……ボクの夢は、争うことなく世界を変える事。
力で世界を変えようとすれば反発する人も出るだろう」
「勝手に巻き込んだ挙句従えって言うならそりゃ反発するだろ」
なんせ身勝手な奴が滅茶苦茶多い地方なんだし。
「……その時傷つくのは反発する愚かなトレーナーではない。
傷つくのは……愚かなトレーナーに利用されてしまう無関係のポケモン達だ。
そう……ポケモンは人に使われるような小さな存在じゃないんだよ!
その結果……キミたちのようにお互い向き合っているポケモンとトレーナーを引き裂くことになるのは少し胸が痛むけどね」
言いたいことだけ言って毒電波は帰っていった。
ジム終わった直後に連戦、みたいな罠が無いのだけは救いだけど、毒電波が来ると精神的に疲れるんだよな……。
ホント、自由も何もないし、冒険している感覚も全くしない旅だよ。
(……あれ? Nの台詞ってこんなに長かったでしょうか?
いえ、でも先程のフウロはしっかりシナリオ通りのメッセージでしたしおかしくないですよね。
抜けてるシーンも無いですし、シナリオはちゃんと保たれています)
「あたしに言わせるとさっきのフウロの方がよっぽど不自然だよ。
なんなんだよレベル70って。レベルの具体的な数値とか分かるわけ無いだろ」
(は? まさかそんなことも把握できずにここまで冒険を?
正気ですか? メニュー開いてポケモンの項目押せば出るじゃないですか。
戦闘中だってHPのゲージの傍に出ていますよ?)
トウコはさっきのフウロ以上に意味不明なことを言い出した。
……いや、メニュー開いてポケモンの項目押せば出るってなんだよ。
戦闘中だって出てるって言われても……あたしそんなの見たことないぞ?
(英雄の素質が無いと見れて当然の物も見れないんですね。
よくそれでここまでやって来れましたよね貴方。レベル差とかどうやって把握してるんですか?)
「見たら大体分かるだろ」
こいつは弱い、こいつはヤバい。
そんなの、相手のポケモンを見て判断するしかないじゃないか。
(……理解できません。相手のポケモンを見て判断するなんて……。
そんな脳筋そのものなやり方で良くここまでやって来れましたね。
まさかママが異物になっている影響でしょうか?
それとも主人公の人格そのものが不具合を起こしているせい……?
分からないことだらけですね……アルセウス様に聞ければすぐに解決するんですが……。
今のこの状態ではアルセウス様に連絡する事自体が出来ません……。
すいません、アルセウス様に詳しく聞きたいのでこの体渡してもらえませんか?)
「いや、せっかく返ってきたのにあたしの体渡すわけないだろ……」
もし渡したとして、その連絡の後に返してもらえる保証もないんだし。
そんな「ちょっと物貸してくれません?」みたいな感覚で体貸せるわけないだろうが。
(あ、そう言えば私が体取り返せればアルセウス様の指示も果たせるじゃないですか。
一石二鳥どころじゃないですね。素晴らしいです。
マリネットさん、すぐ返しますから体貸してくれません?)
「考えてる事全部あたしに筒抜けだって事忘れてないか、お前?」