「……マリネット!」
「チェレン、どうし……ヤーコン!?」
ネジ山に入ってすぐにヤーコンと会う事になった。
ホドモエシティに居るんじゃないのかよ?
こんな所で何してんだよ!?
「ネジ山を視察していてお前達に出会うとはな。
ちっとは……たくましくなったみたいだな」
「……そうですか」
チェレンは相変わらずなんとなく演技してるような反応だ。
「ところでお前達……最近強盗集団を見たか?
ホドモエシティで捕らえたような奴等だ」
「強盗?」
ヤーコンから強盗の事を聞かれた。
そう言えば、ホドモエシティを最後に見てないような気がする。
電気石の洞穴はプラズマ団の団体だったし……。
「あれからジムリーダー達で集まって話し合ったが、まるで地に潜っているのかあいつらのアジトが分からなくてな。
コチラとしても出方を待つしかないのだ。
まあ、お前達には関係のない話だな。子供はポケモンと楽しく旅をしておればいいんだ」
「強盗がアジトなんか構えるものなのか……?」
プラズマ団の理想に感動したとか言って強盗に走ってるあの連中に、アジトとかあるのかねえ……。
プラズマ団はヒウンシティに拠点を構えてたけど……。
「ネジ山はいいぞ! 特にワシのお気に入りはこの通路を抜けた時の……。
いや……言葉よりも実際に見れば分かるか。じゃあな、ヒヨッコども!
よければワシの山でトレーナー修行でもしていけ」
話すだけ話してヤーコンは去っていった。
……面倒な事にならなかっただけよかったと思うべきか。
「また何かメンドーな事を押し付けられるかと思わず身構えたよ」
「……あたしも」
少し前にフウロが職務放棄してタワーオブヘブンに行きやがったし、そうでなくてもアロエやアーティ、アイリスと面倒事を押し付けてくるジムリーダーの印象が強い。
必須イベントだか何だか知らないけど、あたしからすれば滅茶苦茶迷惑だ。
「まあ何も無くて良かったよ。マリネット、じゃあぼくは先に行くから」
「ああ」
チェレンも去っていき、あたし1人になった。
それを待っていたかのようにトウコが口を開く。
(……待ってください。強盗って何ですか? プラズマ団ならともかく、強盗?
プラズマ団が一方ではポケモン解放を訴えながら、もう一方では暴力でポケモンを奪っている。
……っていうのが、この世界の正しい姿ですよ?)
「は? プラズマ団って少なくともポケモンの保護活動や救護活動をやってた真っ当な集団だったぞ?
……ダークトリニティとか毒電波の手先とか、アレな奴も多いかもしれないけど」
(何言ってるんですか!? プラズマ団ってこの世界の悪の組織……絶対に潰さないといけない敵ですよ!?
幼馴染の、えっと……ベルのムンナを盗んだ奴とかプラズマ団ですよ!?)
「……いや、OLとかビジネスマンとかポケモンレンジャーとかそんな奴らが強盗として襲ってきてたんだけど。
少なくともプラズマ団の制服着てそんなことやってた奴は見たことない」
あたしの言葉を聞いてこいつ正気か!? みたいな反応をするトウコ。
けど、あたしからすればトウコの方こそ何言ってるんだよって感じだ。
育て屋のジジイを追ってた奴らと電気石の洞穴の奴ら。
それ以外にプラズマ団と戦った記憶はない。
ベルのムンナを……ってヒウンシティか?
……プラズマ団はむしろ強盗を捕まえるのに協力してたような気がするんだけど。
(あ……あり得ません! 一体どんな異物が混ざり込めばそんな事に……!
シナリオは終盤近くまで来ているのにプラズマ団を悪と認識していない。
こんな異常事態まで起こるなんて……)
トウコが頭抱えてるような感じはする。
……けど、異常事態ってさあ。
お前やアルセウスの考えてる世界の方がよっぽど異常な世界なんだけど。
皆決まった台詞しか返さないし台本に無い反応とかは一切しない世界の方がよっぽどヤバいだろ。
(い、良いですか?
プラズマ団は、表向きはポケモン解放を訴えたりポケモン保護団体のような事をしていますけど、裏ではムンナをゆめのけむりのために痛めつけたり小さな子供のポケモンを奪い取ったり滅茶苦茶やってるんですよ?
なんせ、ゲーチスの最終目的はプラズマ団だけがポケモンを使える世界なんですから。
Nと伝説のポケモンの威光を使って自発的にポケモン解放をさせようとしてるんです!
問答無用で叩き潰さないといけない悪の組織、それがプラズマ団の本性なんですよ!)
「…………本当かよ」
体奪ってきたこいつが言ってるってのがなあ……どうにも信じきれない。
そもそも、仮にそれが本当だとしてもどうやって周りに信じさせるんだか。
強盗とプラズマ団を結びつける証拠が無いわけだし。
あたしだけが「強盗の正体はプラズマ団だったんだ!」って言ったところでこいつ何言ってんだって思われるだけだしな……。
(……正しい事を言っても半信半疑。ちゃんと信じてもらえないとは。
体を奪えない以上もう何も出来ませんけど、プラズマ団を良い人だと思っていたらそのうちとんでもない目に遭いますからね。
せいぜい私を信じなかったことを後悔してください……!)
それだけ言うとトウコは黙り込んでしまった。
……まあ静かになるならそれに越したことはないか。
あたしも先に進もう。
「うわあ……中は大空洞みたいになってんじゃねえか」
通路を抜けたあたしの目に飛び込んできたのは、巨大な空洞のようになっている山とその外周を覆うように作られている足場だった。
当然ながら足場から飛び降りて力ずくで先に進むような真似は出来ない。
あたしがこの山を抜けるためには、足場と外周の山を歩き回って進むしかないのかな?
「ん、ネジ山は初めてかい?
ネジ山は冬だと景色が一変するんだぜ。
ここから見えるように、今は巨大な空洞になってるだろ?
冬になると、この空洞が雪で埋まって一気に駆け抜けられるようになるのさ」
「え、この巨大な空洞が雪で埋まるのか?」
作業員が冬の話をしてくれた。
……そんなに雪降るのかよ、ここ。
今は雨しか降ってないけど。
「まあ、時期が悪かったな。
今の時期にこの山を抜けるとするなら、あっちの方から山の中の通路を通って、足場と通路を先に進んでいくしかないな」
「なるほどな……まあ、とりあえず行ってみるよ」
冬のネジ山の事は少し気になるけど、だからってここで冬まで待つわけにもいかないしな。