選択権無しのマリネット   作:ルスト

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68話 あたし、詰んでる……?

「……くっ、強いな……」

「ん? あれってチェレンと……プラズマ団?」

 

 ネジ山の出口に着いたあたしはチェレンがプラズマ団と戦っていた場面に出くわした。

 最も、あたしが到着した時にはもう戦闘は終わっていたが。

 

 

 

「だがその強さは……おまえらトレーナーがポケモンを支配することで実現している強さだよな!?」

「……だから君たちがポケモンを自由にしたい……。

 そう望むならきみたちはそうすればいい。

 だけどね、力に任せてみんなのポケモンを奪うのはどう考えても間違っている。それは強さじゃない!」

 

 これも強制イベントとかシナリオの通りの台詞、とかそういうやつなのかね?

 なんか……何もかもがそう見えてくる。

 あたしたちの意思とか感情、考え方も全部、アルセウス様とか言う奴の書いた台本に合わせて作られてるんじゃないかって。

 トウコにとって想定外の話はプラズマ団がプラズマ団の姿をしていなかった? らしい事だけで、今の所残りは全部「必須のイベント」とかそういう反応だったし。

 

 

 

「おお仲間よここにいたか!

 例のモノがみつかったぞ、さあわれわれも塔に向かおう!」

 

 別のプラズマ団がやって来た。

 ……けど増援に来たって感じじゃなくて、仲間を単純に呼びに来たみたいだ。

 

「いいか! プラズマ団はポケモンが支配されているこの世界を変えるための力を手に入れた!」

「そうとも! 間違った世界をただすためならちからずくも同然だ!

 さて、われらの王様Nさまのもとに集おう!」

 

 プラズマ団が去っていく。

 ……毒電波の言葉から考えると、ゼクロムかレシラムの石を見つけたって事なんだろうか。

 イッシュってあちこち身勝手に通行止めされまくってるし、こっちが先に見つける……なんて出来ないんだろうな、多分。

 

 

 

「あいつら……なにを手に入れたか知らないけど、わざわざ強くなってまでみんなに迷惑をかけるだなんてメンドーな連中だよ……。

 マリネット……ぼくはもうすこしここにいる。

 ちょっと考えたいんだ、チャンピオンに言われたこと……ぼくは強くなって何をしたいのか……?

 そもそもぼくは誰のために強くなる……?」

「……ああ」

 

 チェレンの方も急に考え方変わりすぎなんだよな……。

 だって、あんなに憎しみを向けてる筈のアデクが言ったこと、こんなに簡単に聞くとも思えない。

 ……でもこれも、台本通りだって言うなら……。

 

 

 

 

 

「あたし達は、最初から感情も何もかも設定されてその通りにしか反応できないって事なのか?」

 

 普通に考えたらあり得ない話だ。

 だけど……ネジ山の入り口でのアデクとかフウロとかの事を考えると、どうしても疑ってしまう。

 あたし達に降りかかるトラブル、それに対するあたし達の反応。

 ……全部あらかじめどう感じ、どう考え、どう行動するかをシナリオとか必須イベントとかそんな理由で設定されてて、あたし達だけがそれに気づかないまま舞台にあげられてるんじゃないかって。

 まるで、見えない糸で動きをコントロールされてる操り人形のように。

 

(そう考えたら、狙ったようなタイミングで的確に強盗事件が起きていたのも……どいつもこいつもあたしの意思を無視して話もまともに聞かなかったのも……納得がいく。

 あたしが弱いからだけじゃない。アロエもアーティもあたしの言葉なんか聞くつもりも無いような態度だったけど、そもそもあたしが拒否することを前提に作られてないんだとしたら……?)

 

 

 

 トウコの話から考えるとこの旅の最終目標はこの体……というかあたしが英雄になる事なんだろうな。

 そしてトウコの言葉から考えるとあれらの事件に遭遇した主人公は「協力して当たり前」という事になる。

 トウコはその辺分かってなかったけど、暴力装置として全ての事件を都合よく解決する存在が多分求められてる英雄だ。

 そうなると……あの場であたしが何を言ったとしても、無視されて協力を強要された現実は変わらなかったのかもしれない。

 シナリオの強制力みたいなものが生きているんだとしたら、例えあたしが逃げ出しても無理矢理連れ戻されて引きずられていったのかもしれないな。

 その上で……。

 

 

 

「絶対にあたしに自由な冒険をさせたくない、とばかりに配置されていた通行止め……」

 

 最初の通行止めはサンヨウシティのボケジジイだった。

 何度も何度もしつこく足止めしてきやがったあのジジイ……そのうち叩き潰してやる。

 次は3番道路で強盗にポケモンを奪われたガキを無視しようとしたらベルが邪魔してきた。

 その次はヤグルマの森で強盗団。

 博物館が襲われた後はアーティが自分だけ楽しながら通行止め。

 ヒウンシティを超えようとしたら4番道路で大量のポケモンの不法投棄があったっけ。

 プラズマ団も救助活動をしてたな。

 

 

 

(ホント……自由な冒険なんてどこにあるんだよこれ。

 それはともかく……7番道路でネジ山の入り口を塞いでいたあの障害物を見た時、トウコはなんて言っていた?)

「確か……『通行止めNPCに異常なし。アルセウス様のシナリオの破綻の心配はなし』……だったな。

 じゃあ、あたしの冒険の邪魔をしてたのは全部アルセウスのシナリオなのか?

 アルセウスとか言う奴が身勝手に作ったシナリオのせいであたしはこんな窮屈な旅をしてるのか?」

 

 恐らく……いや、確実にそうなんだろう。

 トウコが英雄になるためのシナリオで、そうと知らずに暴力装置の役割を演じてたのがあたしなんだとすると……。

 

「英雄になるための必須事項を無視するような旅は認めない……って事になるよな、これ……」

 

 つまり、最初からあたしは詰んでいたんだ。

 あたしには自由は一切なく、アルセウスの書いたシナリオ通りに進むしかない。

 それを少しでも外れようとすれば、妨害用のNPC……あのジジイみたいな奴が確実に道を塞いでいる。

 

 

 

(まだあたしの考えであって、本当にそうなのかは分からない。

 けど、もしそうだとすると……あたしが本当の意味で自由になるには……どうすれば……?)

 

 アルセウスとか言う奴が作ったシナリオの言いなりになるなんて絶対にごめんだ。

 あたしは自由に生きたい。

 けど、ここまでの旅で徹底的に道を塞いで自由な冒険を邪魔してきやがったのがアルセウスのシナリオを守らせようとする嫌がらせだとすると、その決められた一本道を無視しようとすると当然この先でも邪魔が入るんだろうな。

 ……あたしに選択する権利は、最初から存在してなかったのか……?

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