選択権無しのマリネット   作:ルスト

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73話 求められてるのは力だけ

 リュウラセンの塔の入り口にプラズマ団が立っている。

 ……まずはこいつからか?

 と思って近づいたが、襲ってくる気配はない。

 

 

 

「……先程ジムリーダーたちが登っていった。

 運が良ければ伝説に立ち会えるぜ!」

「何のために居るのやら。道案内のつもりか?」

「……先程ジムリーダーたちが登っていった。

 運が良ければ伝説に立ち会えるぜ!」

 

 道案内ですらない、ただの置物だったらしい。

 なんでこんな役割必要なのやら。

 

(ほら、早く行きますよ。

 イベントが待っています)

「……くだらない」

 

 最も、言いなりにならないと体を奪われる時点であたしに逆らう権利はない、か……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんだ……?」

 

 塔の中に入ると、強い揺れのような物を感じた。

 何か、滅茶苦茶重い奴が塔の上で暴れてるのか……?

 

(急ぎましょうよ、もしかするとなんとかできるかもしれませんよ?)

「嘘つけ……全部イベントで決まってるんだよな?

 って事は……あたしが急いでもゆっくり行っても結果は変わらないんじゃないのか?」

(……つまらないですね。緊迫してる場面ですよここは?

 プラズマ団が伝説のポケモンを復活させて従えるかもしれない、だから急いで止めに行かないといけない。

 そんなシーンなのに、どうしてそんなに白けてるんですか?)

「お前が全部言ったんじゃないか。全部イベントで決まってるって」

 

 逆を言うと、あたしが一番上に行くまでこのイベントは終わらない。

 そういう事だろ?

 ……逃げられるなら、逃げるんだけどな。

 

 

 

「マリネット」

「……チェレン」

 

 2階に上がると、チェレンが先に進む階段の手前から声をかけてきた。

 

「倒れている柱も通り道みたいだね。じゃ、ぼくはプラズマ団を追いかけるから!」

(……必要なのかこれ?)

(必要ですよ、どこに道があるのか分からない人も居るでしょう?)

 

 そんな奴居るのかよ……。

 居たとしてどこに居るのやら。

 まあ丁度押せる岩があるから、そっち通った方が速そうだけど。

 

 

 

 

 

「これは……」

(一方通行の斜面です。よく考えて進んでください)

「……考えるまでもないだろ、こんなの」

 

 次に出迎えたのは斜面が並んだ細い通路。

 全体を見たらどこに何があるのかはすぐに分かる。

 落ちてたアイテムを拾いながら先に進んだ。

 

 

 

 

 

「うわ……プラズマ団だらけだ」

 

 斜面だらけのエリアを抜けると、大量のプラズマ団とハチク、チェレンが。

 ……またイベントか。

 

(いちいち煩いですよね。こんな緊迫した状況でよくそんな風に冷めた態度で居れるのか……謎ですよ)

「マリネットか! こいつらをくいとめる。だからきみが行け!」

「はいはい、あたしには選択肢なんて無いよな。強制イベントだしな」

 

 ハチクの言葉を聞き流して、あたしは進む。

 真面目に聞くだけ無駄だ。全部イベントなんだから。

 

「これぐらい平気さ。だけどプラズマ団がこんなに居るとはね……。

 全く、メンドーだな」

「……はいはい、まあイベントだから大丈夫だよな」

 

 チェレンも多分……イベントなんだろうな。

 あたしに求められてるのは、イベントとして出て来た敵を倒す力だけだ。

 

 

 

「ハチクとかチェレンとか……ちょこまかとうるさいやつらめ」

「煩いのはお前らだよ……アルセウスのラジコンのくせに」

「プラズマ団に盾突くヤツは痛めつけてやるんだから!」

「……ここから蹴り落としてやろうか、お前?

 どうせイベントのラジコンなら死なねえよな?」

(ふざけないでください。そんな台詞英雄としてふさわしくありません)

 

 バトルの結果は言うまでもない、全部瞬殺だ。

 弱い奴がうじゃうじゃと……。

 本当に目障りなんだけど。

 

「……オーベム、本当にマリネットを奴の手から助けられるんだね?

 信じてるよ……ジムリーダーも誰も頼りにならない。

 頼れるのはきみだけだ……」

 

 チェレンが何か言ってたような気がしたけど、どうせイベントの台詞だろう。

 どいつもこいつも人間の形したラジコンなんだ。

 

「あなた……ここに来るまでにどれだけのポケモンをきずつけたの?」

「お前が人間だったら……あたしだって好き好んで倒してねえよ!

 ……って言ったのかもしれないな」

 

 まあこの世界は向こうから一方的に襲ってくる世界だから……。

 敵を倒さなきゃ倒されるだけで、弱い奴には生きている資格も無いんだけどさ。

 

 

 

 

 

「どうせキミも自分が強い! 勝てる! と思ってここまで来たんだろ?」

「あたしがここに来てるのはアルセウスの台本に従わないと体を奪われるからだよ……!」

「ふん……! 思い通りってわけだ!」

 

 話なんて通じない。会話にならない。

 どいつもこいつも、一方的に自分のセリフを喋るだけ。

 

「Nさまのためわれわれは存在するの!」

「アルセウス様のシナリオのためだろ……お前らの存在理由なんて」

 

 ……どうせこいつら、イベントが終わったら跡形もなく消えるんだろうしな。

 あの時のアララギ父みたいに。

 

「リュウラセンの塔に来てテンションマックスのおれさまに負けてしまえ!」

「……人間のふりするのやめろよ。……って言っても通じないよな」

 

 今になって気づいたけど、この塔もアルセウスの力がかなり満ちているらしい。

 セッカシティと同じ妙な感覚になってくる。

 中に居る連中は、皆人間じゃないんだろう。

 邪魔な奴らを全員倒しながら、あたしは先へ進む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわ、またかよ……」

 

 邪魔な壁がいくつもあるエリアを抜けたところで、また塔が激しく揺れる。

 ああもう、いきなり揺れるからバランス崩しそうになって面倒だよ。

 イベントだって言うなら、このタイミングで揺れるよって最初に言っとけっての。

 

「バリバリダー!!」

「……は?」

 

 いきなり塔の上から珍妙な声が聞こえてきた。

 何今の? 誰か叫んでるのか?

 ……まさか今のが伝説のポケモンとか言う奴の鳴き声?

 

(えっ、どうしてそんな白けた反応してるんです?

 こんな緊迫した場面に突然「バリバリダー!!」とか「モエルーワ!!」って鳴き声響き渡るんですよ。

 面白くないですか? そうでなくても緊張感抜けません?)

「今のが面白いと思って入れた演出なら、アルセウスの台本が滅茶苦茶雑なのも理解できるよ。

 ま、お前に何言ったところで理解できないだろうけどさ」

 

 そんな事より先に進まないと。

 ほら、あっちにプラズマ団が居るわけだし……。

 

 

 

「いよいよである、Nさまが英雄になられる!

 ……なんと! ここまで来る者がいようとは!

 ええい! Nさまのため! こいつを足止めせよ!!」

 

 プラズマ団4匹に囲まれた。

 親玉は……もしかしてヴィオの色違いかこれ?

 ……なるほどな、トウコの言ってたことが正しいって事か。

 ま、今のあたしにはどうでも良いけどさ……。

 

「プラズマ団以外はすべて敵! 全力で排除する」

「イッシュの夜明けをジャマさせるわけにはいかない!」

「どいつもこいつも、アルセウスのラジコンのくせに人間ぶってさ……」

「我らの願いがようやくかなう! だれにも我らを止めることなどできない!」

「こうやって一方的にあたしの邪魔だけしてくれて……」

「行くよ! プラーズマー!!」

「あたしの言葉は全く聞く耳も持たずに好き勝手に……」

「ほらほら! 4人続けて相手できるか?」

「ホント……腹立つよな……」

 

 トウコとか言う寄生虫が居なければ、こいつら今すぐにでもここから突き落としてやるんだけど。

 よりによってあたしの体に寄生してやがるから、あたし自身じゃどうする事も出来ない。

 ……こいつさえ居なければ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ここが最上階か?

 うわ……下の階より嫌な感じが……」

(アルセウス様の力に満ちていますね……実に素晴らしい空間です)

 

 邪魔なプラズマ団を倒した先の階段の先のエリアがどうやら最上階だったらしい。

 毒電波の傍に居るのは……黒いドラゴン?

 

 

 

「どうマリネット。世界を導く英雄のもとその姿をあらわし共に戦うポケモンの力強い姿は!」

 

 毒電波は結局まともにポケモンを育てる気はなくて、こいつでゴリ押そうって感じか。

 確かに……あたしのポケモンと比べてもまだ強いかもしれないな……。

 

「これからボクはゼクロムと共にポケモンリーグに向かいチャンピオンを超える!

 ポケモンを傷つけてしまうポケモン勝負はそれで最後。

 ポケモンだけの世界……ようやく実現する」

 

 馬鹿馬鹿しい。

 どうせその筋書きも全部アルセウスが決めたんだろうにな。

 これを見るためだけにわざわざ最上階まで来たのか、あたしは。

 

 

 

「ボクたちを止めるならキミも英雄になればいい!

 そう! ゼクロムと対をなすポケモン、レシラムに認められてこそようやく対等になれる!

 ボクたちを阻止できる!」

「くだらない……本当にくだらないな」

「さてどうする? ボクの予測……僕にみえる未来ならキミはレシラムと出会うだろう。

 共に歩むポケモンに信じられているキミは……!

 世界を変えるための数式……キミはその不確定要素となれるか?」

「これも全部……シナリオの台本通りなんだろ?」

 

 英雄になるのが決められてる、というよりも……。

 こっちの意思も何もかも無視して生贄に捧げられてるって感じだ。

 どいつもこいつもあたしをここに生かせるように動いてたし。

 

「ポケモンと人のきずなを守りたいならレシラムを探すんだ!

 ……きっとレシラムはライトストーンの状態でキミを待っている」

 

 一方的に言う事だけ言って飛び去った毒電波。

 

 

 

「マリネット、今飛び去ったのって……」

「なんたること!」

 

 毒電波が飛び去った後、チェレンとハチクが上がってくる。

 

「何故だ? 今のってNってヤツだよな?

 どうして伝説のポケモンと一緒に居たんだ?

 まさか彼は本当に英雄だと言うのか!?」

「アルセウスのシナリオがそう決めてるだけなんだから、英雄も何も無いんだけどな……。

 英雄なんて言うけど、ただのラジコンだよ」

 

 ホント、都合よく出来てるシナリオだよなこれ。

 あたしには自由は一切ないのに、ラジコン共はどんな適当な計画でも大成功が約束されてるって事だろうし。

 

「……。それに聞こえたけど、伝説のポケモンを探せって!?」

「落ち着け! まずは戻るぞ。いま大事なのは起きたことを解明するよりこれからなにをするかだ」

(ほら、戻りますよ。まだイベントは終わってません)

「…………」

 

 あたしに拒否権はない。

 そのままリュウラセンの塔を降りる事になった。

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