リュウラセンの塔を降りた先で、アララギ父とベルが待っている……。
まだイベントは終わらない……。
「たまげたな……。伝説のドラゴンポケモンが現代によみがえるとはな……」
「Nって男……プラズマ団のボスが伝説のポケモンを復活させたようなんです。
しかもマリネットにもう1匹のポケモンを探せと言って飛び去った……」
「へ? ……伝説のドラゴンポケモンって2匹もいるんですかあ?」
イベントがまだ続く。
あたしは会話に入らない……というより、入る意味がない。
黙ってても勝手に終わる、何か言っても無駄。
そんなイベントばかりだからだ。
あたしに求められてるのは暴力装置の役割だけ。
「ああ、そうなのだ!」
のこのことやって来たアデク。……相変わらず目に光が無い。
まあここに居る奴皆アルセウスのラジコンか。
「……アデクではないか、久しいな! 元気であったか?」
「あいさつはぬきだ。塔から放たれたあの激しい稲光……世界を滅ぼす力を持ったポケモン……。
それを従えたものがみなにポケモンを解き放てという……。
恐怖か、崇拝か……いずれにせよ、世界は変わりかねない。
われわれとポケモンはもう手を取り合うことがなくなる、そんな世界に……」
正直、それならそれで良いとすら思ってるあたしが居る。
何もかもどうでもよくなってるからかね?
……でも、その状態だと敵に襲われた時に困るか。
「そうだな……しかもゼクロムを復活させたNというプラズマ団のボスはもう1匹のレシラムを探すよういっていたらしい」
「……たしか神話ではゼクロムは強力な電撃を放ちもう1匹のポケモンと共に太古のイッシュを一瞬にして荒廃させた……。
Nはそれを知っていてもう1匹を待つというのか?」
アルセウスの台本が適当すぎるのか、毒電波が馬鹿なのか、どっちなのやら。
わざわざ英雄対決とかしなくても、自分だけゼクロムの圧倒的なパワーでゴリ押せば終わりじゃねえか。
(何言ってるんですか? そんなNがただ蹂躙して勝ち組になるだけの物語燃えるわけないでしょう?
伝説のポケモンを従えた英雄と英雄のぶつかり合いがあるから燃えるんですよ?)
「何が伝説のポケモンを従えた英雄と英雄のぶつかり合いがあるから燃えるんですよ? だよ……。
そんなのやりたいなら他の奴の体使ってやればいいのに……」
なんとかしてこいつ追い出せないのかな?
こいつさえ居なくなれば、あたしは自由になれるんだけど……。
「へっ、へっ……? そんなすごすぎるポケモンを復活させるのってあぶないんじゃあ……?」
「……おじょうさん、君は優しいんだな。だが他のポケモンでは抗えるかどうかわからん。
なにせ伝説の存在だからなあ……。そのNとやらのいうとおりにするのはシャクだがドラゴンを……ストーンを探すのは悪くない。
むしろプラズマ団が2匹目を復活させたら一大事だ!
イッシュの各地を旅していたわしに心当たりがある。古代の城に向かおう! マリネットたち行くぞ!」
で、またあたしは強制的に行き先を決められると。
力でどうにかなると思ったジムリーダーから力でもどうにもならないトウコやアルセウスのシナリオに変わっただけで、結局ずっとあたしは誰かのラジコンだな。
「そうか、ではそちらはまかせた。こちらは塔の中を調べよう。
なにかわかるといいのだが……」
「ではわたしがお供いたします」
ハチクとアララギ父がリュウラセンの塔に戻っていく。
……いつになったら終わるんだ、このイベント?
長くて長くて嫌になるな。
どうせあたしが居なくても成り立つんだから、勝手にやっててくれよ。
「……少し分かった。
こんな時ポケモンのため誰かのために何か出来るのが強さなんだ……きっと。
そしてぼくの強さはポケモンがくれたものだった。さあチャンピオン、早く行きましょう!」
チェレンとアデクも去っていく。
残されたのはベルとあたしだけか。
「マリネット、大変なことになっちゃったね。あたしなんだか混乱しちゃって……。
マリネットは古代の城に向かうんでしょ? 4番道路からつながるリゾートデザートの奥……。
そこが古代の城だって……」
まあ、こいつが何かしてくれるわけ無いか。
……トウコの機嫌を損ねて体を奪われる前に、あたしも行かないと……。
「カイリュー、ライモンシティまで頼む」
(……貴方、なんでこの段階でそんなポケモン持ってるんですか。
イッシュは新ポケモン以外の入手を頑なに阻むための妨害もたくさん仕込んだはずですよ?
まさかこれも異物の影響で……!)
煩いな。まだ何か文句でもあるのかお前?
ちゃんと言いなりになってやってるじゃねえか。
「カイリュー使うなって言うなら、のこのこのこのことネジ山から歩いて向かう事になるけど?」
(使うなとは言ってないじゃないですか! 使いなさい!
むしろ『そらをとぶ』を使わずに少しでも時間を引き延ばそうとする方が許せません!)
あたしとしてはぶっちゃけどっちでも構わない。
どのみちあたしの末路は決まってるんだろうし。
(全く……英雄になれることの何が不満なんですか?
素晴らしいじゃないですか、伝説のポケモンを従えられるなんて……)
「そんなに素晴らしい事かねえ……理解出来ねえよ」
まあ楽して強いポケモンって言うなら確かに頼もしいんだろうけど。
カイリューの背に乗りながら、そんなことを考えていた。
「ライモンシティ……か」
ホドモエ、フキヨセ、セッカと3つ町を進んだだけ。
大して遠くには行ってないのに、酷く遠くなったような気がする。
あたしの置かれた状況が変わったからか、理不尽をこれでもかと見せつけられたからか……。
(あの時は……逃げてよかった。けど、今は……)
カイリューを買って、旅から逃げた時の事を思い出した。
あの時はトウコなんて居なかったから、誰もあたしを止めなかったな。
連れ戻すためにあたしの親が襲撃してくるとは思わなかったけど……。
もし今それをしたら、こいつは何の躊躇も無くあたしの体を奪うんだろう。
(到着したらすぐにリゾートデザートに行きますよ。
寄り道なんて許しません)
「ポケモンの回復ぐらいさせろよ、あたしが負けたら困るのはお前とアルセウスだろ?」
(仕方ありませんね……ポケモンセンターへの立ち寄りを許可しましょう)
何が許可しましょうだよ。寄生虫の分際で……。
「……いっそ、ここから飛び降りたら楽にならないかな」
(はあ? 愚かな事を考えるのはやめなさい。
余計な行動をしようとするなら、それこそ体を奪いますよ?)
「だったらいっそのこと奪えばいいだろ」
どうせこいつの方が力が強いんだから。
嫌がらせか、楽するためにあたしに体動かす権利渡してるんだろうな。
(なんなんですか? 体を奪ってほしいんですか?
せっかく体を返してあげたというのに……ようやく協力的になったと思ったら妙な事ばかり……。
馬鹿な事言ってないでシナリオを進めなさい、それが貴方の存在意義です)
命令されるままに体を動かす事しか許されない。
あたしに自由はもう……無いのかもしれないな。