2045年 11月6日
ソロモン海域
とにかくもう時間がない。新しい提督はいつ来るのだろうか、そろそろ来て、敵の漸減だけでも始めなければ手遅れになる。俺だけでも攻撃をかけた方がいいのだろうが、一人の力ではもうどうすることもできない。すでに南西諸島に攻勢をかけられている今、西日本の戦力に期待はできない。ハワイやフィリピンが陥落してて、他国からの増援もない。仙台も横須賀と同じような状況だし…、横須賀の回復を待つしかないが、急がなければ。小笠原や硫黄島がとられたら終わりだ。日本は本格的に追い詰められる。
ひとまず、この周辺の海図は作った。大規模な物資集積地が11箇所、飛行場がラバウルとブーゲンビル併せて13箇所、飛行場の破壊は無理だが集積地なら燃料タンク、弾薬庫、修理用ドックの破壊は駆逐艦の火力でも可能だろう。多少の戦力が置かれているが、単体なら問題はない。問題なのは、通報を受けて、敵が終結することだ。劣悪な整備環境のせいで、速力も27ノットが限界だ。ちょうど、機関の限界の半分といったところか。それに主砲旋回機構もさびがひどい。部品の欠落もあるせいで、まともに回せない。仰角も30°が限界か。こんな状態で敵に包囲されたらさすがに抜け出せる自信がない。最終手段もあるが、これは本当に危険だからやりたくない。時間との勝負だな。報復に来ることはあっても、本格的な攻勢は遅らせられるだろう。なるべく、早く。
「まずは、占領されて、修復されたラバウルからだな。」
***
横須賀鎮守府
13:30
「食事が終わってのんびりしているところ悪いんだが、ちょっといいか?この鎮守府の現状を知りたい。」
「わかりました。では資料室へ行きましょう。羽黒さんもつれていきましょうか、以前この鎮守府の秘書艦を務めていましたので、たぶん、この鎮守府内のことは彼女が一番よくわかっていると思います。」
「わかった。早速向かおう。」
大淀と羽黒の三人で廊下を歩く。さすがに、入渠ドックほどではないが、ここも汚いな。いつかみんなで掃除するか。
「ここです。どうぞ。」
「ありがとう。まず聞きたいのは、この鎮守府の備蓄状況と艦娘の状況だ。わかる範囲で教えてくれないか。ここでは資源の売買も行われていたそうで、詳細がわからない。」
「わかりました。まず、資源の備蓄についてですが、はっきり言って全然ないです。燃料と弾薬はこの鎮守府の総戦力を一回動かすことすらできません。多分、七割くらいなら足りるかと。そして、鉄やボーキサイトは底を付きかけています。」
「そんなに少ないのか。これは、俺たちの力だけでは解決できないから大本営に頼むしかないな。」
「そうですね。次に、艦娘についてですが…」
「ここは私が。ここに、前任者が去った後に作った現有戦力のリストがあります。どうぞ。」
羽黒から資料をもらう。やはりあまり多くないな。
戦艦・・・扶桑
航空母艦
正規空母・・・翔鶴、瑞鶴
軽空母・・・瑞鳳
巡洋艦
重巡洋艦・・・衣笠、羽黒、愛宕、摩耶、利根
軽巡洋艦・・・名取、北上、大淀、最上、阿武隈、五十鈴、神通
駆逐艦・・・如月、皐月
白雪
狭霧、潮
電
時雨、夕立、村雨、春雨
荒潮、朝雲
初風、雪風、磯風
潜水艦・・・伊19、伊58
給糧艦・・・間宮
保有航空機
艦上機・・・68
水上機
水上戦闘機・・・6
水上観測機・・・12
水上偵察機・・・9
特殊艦・・・白霜
なんだ?この白霜ってのは、見たこともないし聞いたこともない。
「なあ、このし…、白霜?って、誰だ?」
「それが・・・、私たちもよくわからなくて…、えっと、これが、彼の資料になるのですが…」
渡された資料を見てみるが、何一つよくわからない。建造年月日・不明、建造場所・不明、履歴にはリンガ泊地からの移籍とある。確かリンガ泊地はだいたい一年前に壊滅したところだった気がするが…、なぜか、移籍年月日が今年の1月14日になっている。二か月間何をしていたんだ?
「あと、白霜さんについてなんですが…、今、出撃中でして、どうやら深海棲艦の大規模攻勢を準備しているらしく、時間稼ぎのためにソロモン諸島に行っているんです。」
「そうか、いつ頃帰ってくるかわかるか?」
「いつもはだいたい二週間で行き来しているので、あと十日ほどだと思います。敵の電波妨害がひどくて連絡は基本取れません。」
「ほかに、羽黒や大淀が見てて気が付いたことは?」
「ほとんど鎮守府にいないのでそこは何とも…、ですが、今この鎮守府の中で一番嫌われていて、多分一番強いです。誰も戦っている姿を見たことがないので断言はできませんが。」
「ん?それはなんでだ?」
「えっと、前任者がいた時、人間に反抗したとか目立った戦果を挙げられず必要ないと判断された艦娘だけで構成された艦隊、いわゆる懲罰艦隊というものが編制されていたんですけど、白霜さんはよくその艦隊の旗艦を務めていました。それで、本当に全員沈めてきてしまって。それ以外の人の時は何とか生き残る人も出るのですが、白霜さんの時は誰も戻ってこないんです。本当に全員沈めてくるんです。」
「でも、編制された艦娘が沈んでいることから、少なくとも艦娘が沈むような戦闘は起こっていることは確かなのですが、白霜さんは一回も損傷していないんです。」
「そんなものが…、でも、白霜についてわかることは戻ってくるまでは何もないか。」
「そうだ、たしか一回だけ、瑞鳳さんが白霜さんの戦闘を見たことがあるって言っていました。」
「そうなのか!?そのことは何かあるのか?」
「はい。えっと、確か、白霜さんがここに来た日でしたね。その時にも懲罰艦隊が編制されていて、旗艦が瑞鳳さんだった気がします。その日は、異常個体に襲われて、艦隊が壊滅、瑞鳳さんも応戦したのですが大破、その時たまたま近くにいた白霜さんが瑞鳳さんを助けたそうです。その時は異常個体の攻撃を数回かわした後にちょっと離れて、カウンターを打ち込んでから、刀で首を刎ねたそうです。」
「嘘だろ、…まさか、異常個体を単独で撃破したのか?」
「瑞鳳さんが多少の損害を与えていたそうですが、それでも、単独で、しかもごく短時間で撃破したことには変わりないそうです。しかも、かなり余裕を持って。」
「どんだけ強いんだ…。てか、異常個体に単独で損傷を与える瑞鳳も強すぎだろ。円卓の艦娘ですら勝てない相手だぞ。」
「そうですね。白霜さんはわかりませんが、この鎮守府で、一番昔に建造された艦娘は瑞鳳さんですからね。その次は瑞鶴さんでしたね。瑞鶴さんもかなり強いです。戦力差が数倍あっても、少ない航空機で普通に勝って帰ってきますからね。はっきり言ってこの鎮守府の戦力はその三人に依存しています。戦果もその三人のものが8割を超えています。」
「そんなにか、これは何とかしないとな。で、話を戻すが、やはり鎮守府の規模にしては戦力が少ないな。戦艦が一隻、空母が三隻も問題だ。巡洋艦はこの規模の艦隊にしては多いが、駆逐艦が巡洋艦の数の割には少ない。」
「前任が戦艦の方と駆逐艦の子たちを酷使していたからですね。大艦巨砲主義者でしたので、戦艦は積極的に前線へ投入していましたし、駆逐艦や潜水艦は替えが効くから、と、使い捨てられていました。そのため数が少なくなっています。逆に巡洋艦の方はあまり出撃がなく、ほとんどはここ半年、部屋から全然出ていないです。ストライキ状態です。空母も全然建造していなかったので、ここで建造されたのは翔鶴さんのみです。瑞鶴さんと瑞鳳さんは別のところからの移籍です。」
「そうか…。わかった。次に君たちの生活について教えてくれるか?夕立の部屋を見たが、布団がなかったな。いつも床で寝てるのか?」
「はい。今はもう慣れましたけど、最初は全然寝れませんでした。」
「じゃあ、大本営に頼んで布団を持ってきてもらうか。」
「本当ですか!ありがとうございます。」
「ほかにはなにかあるか?」
「んー、ひとまず、皆さんと相談します。一度にたくさん持ってくると大変ですから。」
「それもそうだな。そうだ、この鎮守府で、誰が前からいたとか、最近建造されたか、とかについて教えてくれるか?」
「わかりました。まず一年以上前に建造された人は衣笠さん、北上さん、五十鈴さん、如月さん、時雨さん、雪風さんです。次に最近六か月以内に建造された人は愛宕さん、名取さん、阿武隈さん、皐月さん、白雪さん、狭霧さん、荒潮さん、初風さんです。そして、戦闘未経験が扶桑さん、利根さん、神通さん、潮さんです。かなり最近に建造されたことと、全員でばれないようにかくまっていたこと、前任者たちは基本艦娘寮には来なかったこともあり、ばれませんでした。」
「そうか、それはよくやった。あと航空機について教えてほしい。さすがに少なすぎる。翔鶴型二隻と瑞鳳ならば艦上機だけでも200機はいてもおかしくないが。」
「前任がボーキサイトを他の人に打っていたおかげで、全く航空機が支給されませんでした。この航空機は、瑞鶴さんと瑞鳳さんが自力で回収したもので製造、改造したものです。」
「そんなに苦労しているのか。今は何の機種を使っているんだ?」
「えっと…、もう、あの二人があまりにも改造しすぎて、完全に別物になってしまっているんですよね。基となった航空機は艦上爆撃機彗星と艦上攻撃機天山です。」
「戦闘機は?」
「ありません。」
「は?彗星はともかく天山は護衛機がいないと攻撃ができないだろ。」
「だから、二人が独自に改造を行ったんです。少ない数で攻撃力を最大にするために。というか、速すぎて零戦では追いつけません。」
「いやどんだけ速いの?」
「二人とも、発動機を変更していますからね。瑞鶴さんはアツタをアツタ改に、瑞鳳さんは火星を誉に。それも、エンジン出力が最も高いタイプに。ほかにも、固定機銃、斜め銃、防護機銃の追加、防弾板の強化など。天山の搭乗員を三人から二人に減らしていますし、完全に別物になっていますよ。しかも、最高速度は時速570kmオーバーです。最高速度時速530kmの零戦はいない方がいいまであります。」
「どんな改造だよ。名前変えた方がいいんじゃねえの?」
「二人はそれぞれ、彗星改、天山改、とつけていますね。」
「改ってレベルじゃねえ。紫電と紫電改以上の差があるぞ。」
「そうですね。でも、これも機体も搭乗員もこれ以上失えないため、必要なことでした。」
「わかっている。それほど苦労してでも、航空隊を運用してきた二人には感謝だな。ところで、翔鶴の名前が全然出ていないが。」
「翔鶴さんは…、前任が一番タイプだ、とか言って…、毎日」
「それ以上は言わなくていい。…クソが、お前のものじゃねえってのに。本当に気分が悪くなる。話題を変えるか、すまん。」
「いえ、大丈夫です。一応、過去のことになったので。えっと、次は水上機についてですね。まあ、これらは扶桑さんや航空機の搭載が可能な巡洋艦の人が持っているものなので、ほとんど消耗していません。」
「わかった。最後に、白霜のことを”彼”って呼んでいたけど、…もしかして男?」
「はい、そうです。ここに来た日に男といっていました。
「そうか…。ひとまず、知りたいことは知れた。ありがとう。次は戦闘を経験していない艦娘に会いに行きたいんだけど、大丈夫かな?」
「んー、扶桑さんと神通さんは大丈夫じゃないですか?」
「そうですね。今日はその二人だけにしておきましょう。」
「わかった。」
「では、案内しますね。」
そういって、部屋を出たその時、けたたましいサイレンが鳴り始め、赤色灯が付いた。
「大淀さん!」
「わかっています!南南東、距離300km、およそ22ノットで北上中!詳細は不明です!」
「羽黒は動ける艦娘を全員集めろ!大淀は司令部に敵の報告と航空隊、ミサイル援護の要請をしろ!なんとしてでも食い止める!」
「「はい!」」
食堂につくと、さっきもいた艦娘がいた。
「ほかには来ていないのか?」
「人間の指示には従わないって言って、部屋に閉じこもっている人がいて…。」
「そうか。みんな、すまないが、さっき、出撃しないといったが、あれは今だけ撤回させてくれ。申し訳ない。」
「大丈夫です!私たちも、自分の身は自分で守ります!」
「提督には助けてもらったお礼があるからね。まだ返してもいないのに死なれてしまっては困るよ。大丈夫。僕も行く。」
「私も行けます。問題ありません。」
「みんな、ありがとう。」
「あ、いたいたー。提督、久しぶり。」
「ちょっと、なれなれしすぎるでしょ。」
「え?でもさっき遠慮しなくてもいいって、」
「限度ってもんがあるでしょ。…私は瑞鶴。よろしくね。」
「ああ、よろしく。」
航空母艦 瑞鶴、勝気な性格で活発な子だが、ここの瑞鶴はかなり落ち着いているように見える。そして…瑞鳳はさっきとは雰囲気が一変している。口調は変わらないが、鋭い殺気を放っている。なんか、さっきの雰囲気と一致してて、気が軽い感じがする。
「来てくれてありがとう。さっき、話を聞いたけど、とても強いって大淀と羽黒が言っていたから、期待しているよ。」
「…あんたはいい人そうだから、死なれたら困るわよ。また、あの地獄に戻ったらたまったもんじゃないわ。」
「確かにそうだねー。」
この二人は仲がいいのか。ならば、二人は一緒の方がいいか。
「あ、私たちに護衛艦はいらないわ。多分、戦いづらいだろうから。それに、二人だけで戦っている方が楽よ。」
「大丈夫なのか?」
「もちろん。」
「わかった。では今ここにいるメンバーで編制を決めていこう。」
今、ここにいるのは、12人か。そこから瑞鶴と瑞鳳を外したら10人、一塊で動いた方がいいかな。いや、確か潮は戦闘が未経験だった。流石にいきなり戦闘はマズイ。
「すまないが潮は外れてくれ。戦闘未経験は出せない。」
「どうしてですか!私もみんなと戦いたいです!」
「潮ちゃん、だめよ?まだあなたは訓練も受けていないんだから。海の上に立つことはかなりたいへんなのよ。だから、だめ。大丈夫、また次がある。その時のためにしっかりと訓練をしましょう。」
「そうだ、それに司令室で俺を補佐してほしい。そこならみんなとも会話ができる。それで我慢してほしい。」
「分かりましたそういうことならであれば、この潮、全力で提督を補佐いたします!」
「提督!敵情判明!正規空母1、軽空母1、重巡洋艦2、軽巡洋艦4、駆逐艦4、総勢12隻です。また、すでに艦載機の発艦を確認、司令部はすでに防衛システムを起動、攻撃を行なっています!」
「わかった、みんなもすぐに出てくれ。いいか、俺がみんなに出す命令はただ一つ、無事に帰れ、だ。わかったな?」
「了解!」
「じゃあ、まずは私たちが囮になって、防空と漸減をやるから、あとはよろしく。ミサイルはどれぐらいあるかな?」
「現代製のレーダーでは精密誘導ができない。あまり期待はしない方がいい。」
「そうだね。もう時間がないから行くね。」
「私たちも行きましょう!暁の水平線に勝利を!」
「はい!」
見送りのために俺も外に出る。
「気をつけろよ!」
「行ってきまーす!」
出撃ドックからどんどん出ていく。頼んだぞ。すると、航空機の轟音が聞こえた。
「あれだけなのか。さみしいな。」
さて、俺も戻って、指令室に行くか。
…本当にちょっとしか出せなかった。でもまあ、ソロモンから帰ってきたらちゃんといっぱい出すのでそれまで我慢してね。
次回は戦闘です。うまく書けないと思うので、違和感を感じても気にしないで欲しいです。