白く染まる世界   作:快晴Ⅲ

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第十三話

通信が回復しました!」

「みんな、聞こえるか!今こっちは攻撃を受けてる!あの艦隊は囮だ、敵射程圏内まであと約20分、もう時間がない、すまないが急いで戻ってくれ!主力は戦艦六隻と大型巡洋艦十隻、重巡洋艦二隻だ!」

「わかりました!急ぎます。」

「提督は大丈夫なの!?」

「今、通信していましたよ。急いで戻りましょう、あと20分しかありません。」

増速、速度を25ノットまで引き上げる。すると、海上に誰かが見えてきた。

「あれは、摩耶さんと最上さん?あの人たちも気が付いて…」

「今はどんな状況だ。」

「現在、複数の戦艦、大型巡洋艦を主力とする艦隊が北上中です。鎮守府が敵射程圏に入るまであと15分といったところです。」

「わかった、あたしたちも協力する。だけど、これは自分とあそこに残っているやつらを守るためだ。そこは勘違いするな。」

「わかっています、でも、ありがとうございます。」

「みんな、そろそろ南下し始めないと鎮守府に接近される。急ごう。」

「電探でとらえました。詳細は戦艦が二隻、大型巡洋艦が一隻、重巡洋艦が二隻、軽巡洋艦が八隻、駆逐艦が十隻の合計二十三隻です。」

「けっこう差があるね。こっちは重巡洋艦が二隻、軽巡洋艦が五隻、駆逐艦が六隻か、特に戦艦がいないから勝ち目はほとんどない。」

「そのことについてだが、おそらく、かなりの艦が損傷していると思われる。瑞鶴と瑞鳳がかなり攻撃してくれたし、水中護衛隊の攻撃やミサイル、墳進魚雷で攻撃もしたから勝ち目がゼロということはないはずだ。それでも、戦力差は二倍、油断すればこちらが負ける。損傷に注意しながら戦ってほしい。無理な追撃は禁物だ。絶対に帰って来いよ。」

「提督、これからを期待していいんですよね?」

「もちろんだ。俺はここを変える。だから、絶対に沈むな、帰ってこい。」

「わかりました。それでは行ってきます。」

そんなことを話しているうちに敵が見えてきた。上空を飛んでいる航空機、多分瑞鶴さんの彗星が照明弾を投下し、周囲が明るくなる。確かに、かなり損傷している。

「夕立、村雨、春雨、無理は禁物といわれたけど、僕は提督を傷つけたくない。全力で戦うよ。」

「わかってるっぽい、絶対にここで止める。ソロモンの悪夢は伊達じゃないっぽい。」

「はい、私も、怪我を治していただいた恩義があります。それをここでお返ししましょう!」

「そうね、私だって新しい提督に期待してるもの。ここで死なれてしまっては困るよ。」

「皆さん!敵戦艦発砲、全艦、回避運動!」

「取り舵一杯、自由回避!」

巨大な水柱が上がる。はっきり言って怖いな。

「こっちも打ち返す、羽黒、行くぞ!」

「はい!」

「全砲門、打ち方始め!」

摩耶さんと羽黒さんが打ち返す。

「私たちも行きましょう!」

雪風が声をかけてくる。

「私たち重巡が援護します、皆さんは行ってください!」

大淀さんを先頭に単縦陣で突撃して肉薄する。

「全艦、左魚雷戦用意!」

「左魚雷戦用意!」

戦闘はすごい久しぶりだ。だけど、体が覚えているし、本能で体が動く。敵弾をよけて主砲で打ち返す。雪風と一緒に駆逐艦を一隻沈める。重巡は摩耶さん、羽黒さん、最上さんに気を取られて対応できていない。戦艦砲は大きすぎて機動性がないから基本当たらない。問題は副砲だ。数が多いし、射撃速度が速い。だけど、射程がほぼ一緒で、こっちは細かい回避機動をとれる。

「主砲、撃て!」

中央の副砲群に向けて砲撃する。当たった。爆発して煙が上がる。

「接近します、魚雷発射用意!」

魚雷発射管を戦艦と巡洋艦に向ける。

「全艦、魚雷発射!」

「魚雷発射!」

白い航跡が敵艦に向かって伸びていく。数十秒後、巨大な水柱が上がり、わずかに遅れて爆発音が聞こえた。

「やった!当たりました!」

雪風が喜んでいる。

「まだ気を抜かないでください、離脱します!」

後ろから、戦艦を護衛していた駆逐艦が迫ってくる。それに、戦艦が副砲を打ってきてる。

「春雨、大丈夫!?」

「だ、大丈夫です、まだいけます!」

春雨が被弾した。前の軽巡洋艦の四人が反転するが間に合わない。そこで気が付いた、戦艦がこちらに主砲を向けている。すでに傾いてきているが、まだ生きている。魚雷は装填中でまだ打てない。僕は迷わず前に出る。

「おい!なにをしてる、死ぬぞ!」

磯風が叫ぶが、僕は春雨の前に立つ。

「絶対に死なせない!」

主砲の旋回が止まり、砲口が固定される。撃たれる、と思った瞬間、突然、戦艦が爆発した。

目の前にいた駆逐艦が次々と炎に包まれる。

「今です!すぐに離脱してましょう!」

「ぎょらいそうてんいそげ!」

「次で仕留める!」

すでに駆逐艦は壊滅していた。すごいなぁ、と思いながら一度離脱して魚雷の装填に集中する。

「ぎょらいそうてんかんりょう!」

「皆さん、行きますよ。全艦、再度左魚雷戦用意!」

「左魚雷戦用意!」

魚雷発射管が再び左舷を向き、大破し傾いている戦艦に狙いをつける。

「魚雷発射!」

再び水柱が上がり、爆発音が聞こえる。

「大淀さん、前!」

これで戦艦を沈めたと安堵したのも束の間、突然、艦隊の目の前に大型巡洋艦が現れた。すでに、主砲はこちらを向いている。主砲から閃光が見えて僕は、とっさに身をかがめる。爆発、衝撃。顔を上げると、先頭にいた大淀さんと五十鈴さんが倒れていた。

「嘘!もう魚雷は残っていないのに!」

二機の航空機、おそらく天山が低空で接近し、何かを投下する。魚雷かと思ったら、突然海上で跳ねて側面にあたった。たが、有効打にはなっていない。再び砲身が上がる。再装填が終わったのだろう。今度は本当に死を覚悟し、目をつむった。だが、砲撃はいつまで経っても来ない。

「一応間に合ったか。」

聞いたことのない声。誰かなと顔を上げると、目の前には炎上する巡洋艦。

「もう大丈夫ですよ。私たちは円卓の騎士です。ギリギリになってしまいましたが、誰も沈んでいないようでよかったです。」

円卓の騎士って、

「まさか…、」

「そうだ。君たちはよく戦った。もう戦闘は終了している、落ち着いてもだいじょうぶだ。いきなり、こんな戦闘が発生して大変だっただろう。」

今度こそ、終わったらしい。よかった。緊張がほぐれ海に膝をついてしまう。気づいていなかったが、相当疲れていたらしい。

「皆さん、集まりましょうか。」

***

「みんな、いきなりこんな大規模な戦闘が発生してしまったが、みんなが戦ってくれたおかげで深海棲艦の攻撃を防ぐことができた。本当にありがとう。」

そういって、提督はお礼を言った。戦闘後にお礼を言ってくれるなんて初めてだ。

「そこに全員いるか?いたら、早く帰ってきてほしい。みんなも疲れているだろうし、改めて、対面でお礼を言いたい。」

「そのことについてなんですが、まだ瑞鶴さんと瑞鳳さんが帰ってきてません。先ほど戦闘しているときに、二人の搭載機が敵艦に攻撃しているところを見たのですが。」

「そうか?なら、着艦作業をしているのかもしれないな。ちょっと待って、通信してみる。」

そういって、提督の声が聞こえなくなり、代わりに潮の声が聞こえた。

「皆さん、お疲れ様です。」

「潮ちゃんもお疲れ。長かったね。」

「そうですね。途中、かなり危ない場面もありましたが、みんなが戦ってくれたおかげで無事です。鎮守府も少し被害を受けてしまいましたが、そこはあまり影響ありません。」

「鎮守府が!残っている人たちは大丈夫なの?」

「はい!大丈夫です。さっき確認してきました。」

潮との会話が弾んでいる。みんな、緊張がほぐれたのだろう。顔が明るい。ただ、10分もすると、口数が少なくなっていく。

「通信がつながらない。」

提督がそういった。

「電波妨害とかですか?」

「いや、多分違う。単純につながっていないらしい。」

「二人は一緒に?」

「そうだ。」

「どこら辺にいるかとかもわからないのですか?」

「そうだ。赤城、龍驤、偵察機を飛ばしてくれ。」

「分かりました。」

12機の偵察機が空へ飛び立つ。

「暗くて分かりにくいな…。 ちょっと待て?今見えた閃光はなんや?」

「それはどこですか!」

「あっ!撃墜されてもうた!」

「敵はどんな感じかわかるか?」

「本当に一瞬しか見えんかったが、異常個体っぽいもんが見えた。。相手はその瑞鶴と瑞鳳かもしれん。はよ行かんと手遅れになるで。」

「こんな時に!」

 

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