白く染まる世界   作:快晴Ⅲ

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第十六話

樹希さんから、瑞鶴と瑞鳳がいないから探してほしい、と頼まれたので、今、鎮守府全体を見て回っています。お二人は空母ですのでおそらく弓道場にいる可能性が高いでしょう。それか、各々の自室か。自室を覗くわけにはいかないので先に弓道場に行きましょうか。ここの艦娘たちは、みんな寝てしまったので、道を聞くことができませんね。妖精さんにでも聞くとしましょうか。

「すみません、今、瑞鶴さんと瑞鳳さんを探していて、弓道場に行きたいのですが、この鎮守府の弓道場はどこにあるのでしょうか?」

「きゅうどうじょうか?それならこっちにある。ついてきて。」

少し、林に入ったところにありました。周りに何もなく、静かで集中しやすそうですね。

「ありがとうございます。」

中に入っていくと、明かりもつけずに、弓を弾いている瑞鶴さんと、それを見ている瑞鳳さんがいました。邪魔するのも失礼なので、少し見ていきますか。二人が持っている弓、結構ボロボロですね。それに布がまかれています。保護のためなのでしょうか。姿勢は何も言うことはありませんね。きれいです。矢が手から離れ、的に中った音が聞こえてきました。お二人は見えているのでしょうか。瑞鶴さんが後ろに下がり、瑞鳳さんが前に立ちました。そして、同じように弦を弾いています。瑞鳳さんもきれいですね。ただ・・・

バキッ

「!?」

「あ…、」

弓が折れた!?

「チッ、甘かったか。瑞鶴、他に弓って何が残ってるっけ?」

「確か、練習用の弓があと二本。」

「もうそれでいいや。替えてくるね。」

「ちょっと!」

「…なに?」

思わず叫んでしまいました。

「何ですか!弓が折れたというのに、その行動は!もっと、ものを大切に扱いなさい!」

「その大切に扱うものすら、この鎮守府には残ってないけどね。」

「そんなこと気にしてたら、とっくに沈んでたわよ。」

「弓が折れたんですよ?私たち空母艦娘にとって、重大な問題です。分かっていますか?そして、それでいいや、とは何ですか?弓は簡単に作れるものではありません。作っていただいている方々に感謝をしなさい!」

「別に、私たちは弓がなくても飛ばせるから、なくてもいいんだけどね。」

「そういう問題ではありません。弓を作っている職人さんに感謝をしながら使えといっているんです。」

「だからさ、そういうことを考えていたらとっくに沈んでるんだって。」

この二人は何を考えているのでしょうか。ものと心を通わせ、自分の心になじませることでそのものの真価を発揮できるようになるというのに。そこで、後ろに立てかけてある二本の弓に気が付きました。今、二人が持っている弓とは明らかに作りが違う、立派な弓。そして、きれいに手入れがされています。

「では、お二人の後ろにあるその弓はどうなのですか?明らかに、手入れがされていますが。」

「あぁ、これ?もう、使い物にならないよ。」

「使い込み過ぎてさ、張力が全然なくて、矢が飛ばないんだよね。」

「艦娘として生まれ変わって、何十万回、弓を引いたか、あまりにも引きすぎたのと、潮風のせいで、どんどん劣化していって、完全に柔らかくなっちゃったよ。どんなに布を巻いても、劣化はどうしようもないね。」

どんなものか、確かめに行こうとすると、

「触るな。」

「なぜです?」

「あんたらが嫌いだから。」

…これが逆ギレ、というやつでしょうか。

「作り直していただく、ということもできたはずです。一度、新調すれば、弓を折ることもなくなるはずですよ?」

「あいつがそんなことを認めるわけないでしょ。あとさぁ、赤城、あんたこの鎮守府がどんだけ理不尽だったか知ってるの?まともな物資もない、補給もさせてくれない、どんどん艦娘を沈める、性行為の強制。これが、前のここの日常よ。」

「傷ついた弓を少ない材料で何とか修理して、何とかやりくりしている状況、理解できないだろうね。いつでも装備を新調できて、安全なところでダラダラ過ごして、大勢が決してからようやく出てくるあんたらには。」

「出て行ってくれる?邪魔だから。」

…これは、完全に嫌われていますね。この二人は私たちがいなければ、今の日本はとっくに滅びていることを理解していないようですね。

「それは、すみませんでした。」

そういって、弓道場を出ていきました。林を出たところで、樹希さんと出会いました。

「あ、赤城、二人は?」

「この先にある、弓道場にいました。どうやら、かなり嫌われたようですね。」

「そうなんだよな。さっきも雰囲気悪かったし。何かあったのかなぁ。」

「さぁ、分かりません。それで、あの二人はしばらくはやるそうですが…。」

「分かった。探してくれてありがとう。二人は俺に任せて赤城は休んでいいぞ。」

「お願いします。」

 

***

 

赤城が出ていき、やっと静かになった。嫌いな人がそばにいると落ち着かない。

「どうかな?そっちには何かあった?」

「んー、ないかな。瑞鶴は?」

「こっちに一本だけあったけど、これも結構ボロボロ。」

「何とか修理できないかな。さっきよりも厳重にまかないとね。」

すると、また誰か来た。今度は提督か。

「その様子だと、さっき赤城から聞いたみたいだね。私たちのこと。」

「なあ、」

「答えないよ。」

「まだ何も言ってないんだけどな。」

「じゃあ、なに?」

「なんで、赤城のことを嫌っている?」

「赤城だけじゃなくて、円卓の騎士全員だけどね。」

「そうか…。ところで、二人の夕食を作ってあるんだが、食べるか?」

「いい。」

「なんで…。」

「食べなくても生きていける。それが艦娘だから。無駄をなるべくなくす。」

「何も食べないと、力が出ないだろ。」

「なら、早く艤装の整備設備を復旧させてくれる?そっちの方が問題だから。」

優先順位、というものをわかっていないのかしら?

「二人は休まなくていいのか?」

「疲れていないといえばウソになるけど、これくらいすぐに回復するから問題はないよ。」

「そうか…。」

「提督こそ早く休んだら?人間だから。」

「私たちはまだここでやっていくつもりだから、説得しても時間の無駄だよ。」

「…そうか。…分かった。お休み。」

やっと、出ていった。

「今度の提督はいい人だね。これだけ拒否しても、私たちのことを考えている。」

「まあ、それが生存を妨げるようなら、こっちも受け入れないけどね。」

「そこは今まで通りだよ。」

「そうね。早く再開しましょ。」

 

***

 

二人は自分が人間でないと考えているってことなのか?自分たちは人間じゃないから、食べなくてもいいと。艦娘だって、食べなければ満足に動けないはずだ。もしかして慣れか?確かに艦娘は、燃料や弾薬といった補給と定期的な艤装の整備を行えば、理論上は死なない。なぜなら、彼女たちは船でもあるからだ。でも、船であると同時に人間でもある。艤装を操るのは人間だ。艦娘の”人”の部分だ。だとしたら、艦娘の、人、は、艤装の一部ということか?分からなくなってきたな。これは、今は考えることじゃない。今は、この鎮守府の再興が最優先だ。立ち止まっている暇はないからな。

 




瑞鳳と瑞鶴、過去に何があったんでしょうねぇ。
そろそろ設定を追加するべきか?
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