白く染まる世界   作:快晴Ⅲ

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第十八話

2045年 11月7日

13:00 横須賀鎮守府正門

「予想以上の量ですね…。」

「まあ、この横須賀は戦略・攻撃型だし、首都防衛の要でもあるからな。なるべく早く復興させたいんだろう。」

「樹希君、こんにちは。」

「ああ、高雄、こんにちは。いやー、予想以上の量だよ。データで送った量よりも多いだろ。」

「確かにそうですね。でも、鎮守府にいる艦娘の編制と戦力を見て、三河司令にも相談したところ、しばらくは資源収集に行かなくてもいいぐらい、多く送った方がいいといわれまして。」

「でも、この量をこんな短時間で送ってくれるなんて、本当にありがとう。」

「鎮守府への搬入は自動で行ってくれるので、あとは待ちましょうか。」

「そうだな。高雄、昼食は食べたか?食べてなかったらここで食べてくか?」

「そうですね、まだ食べていないので、ここでいただきますね。」

「そうだ、円卓の艦娘の駐留はどうなった?」

「それはですね、まず、長門さん、赤城さん、龍驤さん、深雪さん、の四人は横須賀鎮守府に無期限で配属になりました。そして、明石さんも近々ここに配属になります。」

「そうか、それは本当にありがたい!ここにもとからいる艦娘の訓練もできるだろう。円卓の艦娘がお手本になれば、ここにいるみんなはもっと強くなれる!」

「そうですね。あと、これは大本営からの通達なのですが、11月10日に緊急の会議が開かれます。今回の関東への襲撃に関する対応や対策について話し合うそうです。」

「分かった。その日、ここに帰ってくるときに明石も一緒に来るか。」

「それがいいですね。」

 

***

 

「ただいま。」

「あ、お帰り、瑞鳳。どうだった?」

「やっぱり、海戦直後だと、浮いている資源が多いね。やっぱり、装甲とか砲塔とかが破壊されて、沈まずに残ってるんだろうね。」

「今、妖精さんに相談したら、ハ-51も誉並みに小型化できるらしい。ちょっと時間がかかるし、設備も必要になるらしいけど、性能は期待してだって。あと、重量の削減もできるって言ってた。」

「ほんと!じゃあ、空冷エンジンのことはひとまず妖精さんに任せて、私たちは機体の設計とアツタの能力向上に努めようか。」

「そうだね。そういえば、なんか鎮守府が騒がしいけど、なにがあったの?」

「どうやら、大本営からの物資の支給があって、それが今来てるみたい。」

「そうなんだ。じゃあこれからは開発が少し楽になるね。」

「もうちょっと多くの資源が使えるようになるかな。」

「そうだねぇ。んー。」

「どうしたの?」

「前々から考えていたんだけど、天山の機体強度を思い切って強化しようかなって。ほら、資源の量が増えるから。できるかな?エンジンも強化されるし、もう少し空力的に最適な形状に変更すれば多少重くなっても600kmは越えられると思うんだ。機体設計を変更するのはもとからだし。」

「そしたら、天山と彗星を区別する必要がなくなるけど…。」

「彗星のアツタエンジンも強化するから、一式航空魚雷も扱えるようになるんじゃない?そしたら、今の天山と同等の攻撃力を持てるし。それに、彗星のほうが戦闘機としても扱えるから、戦闘攻撃機として運用して、天山が急降下爆撃で敵艦の対空砲を破壊して、そのあとに彗星で雷撃すればいいんじゃない?」

「今までとは逆の運用ってことね。確かに、格闘戦は彗星のほうが得意だし、積載量は天山の方が上。爆撃機は大量の爆弾を積めるほうがいいからね。」

「そういうこと。」

「なるほど、頭いいね。じゃあ、彗星も機体設計を少し変更しなきゃね。」

「資源量が増えていくなら、これからは、航空機も増やせるだろうから、彗星の主翼も折りたためるようにした方がいいんじゃない?」

「そうすると、かなりの変更になるね。時間があるとは言えないから、急ごう。」

 

***

 

高雄も帰ったし、翔鶴のところに行くか。

「あ、提督、なにしてるんですか?」

「ん?ああ、狭霧か。これから翔鶴のところに行こうと考えているんだ。ただ、人形みたいになってるって聞いたから、どうしようか悩んでいるんだよな。」

「それなら、私も行きましょうか?以前まで、翔鶴さんの世話係になっていて、私が行けば、翔鶴さんも少しは安心するのでは内でしょうか。」

「そうか。それならついてきてもらおうかな。」

「分かりました。では、こちらです。」

***

「ここは?」

「懲罰房として使われていた場所です。ここは、満足な戦果を挙げられなかったり、人に犯行したりした人が入れられて、拷問などが行われていました。だから、ここは、多くの艦娘にとってトラウマとなっています。」

「こんな場所が・・・。ここはいつか取り壊して、別の施設とかにするか。」

「ここに翔鶴さんがいます。ちょっと待っていてください。」

一つの部屋の前についた。防音室のようになっている。他とは作りが違う。ここに翔鶴がいるようだ。

「提督、どうぞ。なるべく刺激はしないようにお願いします。」

「分かった。」

刺激をしないように、か。なるべく静かに入る。すると、悪臭が鼻を突いた。吐き気に襲われたが、何とかこらえる。

「お待ちしておりました、人間様。」

声がして、部屋の奥を見ると、翔鶴が正座をして床に座っていた。

「今日は初めての方ですか?どのようなことをご所望で?」

「だから、違いますよ、翔鶴さん。今日はここを出るために、新しい提督が来てくださったんです。だから、ほら。立ち上がってください。」

翔鶴型航空母艦 翔鶴、先の大戦では、ミッドウェーで壊滅した第一航空戦隊を引き継ぎ、旗艦となった艦だ。そして、艦娘としては、白く長い髪と丁寧な物腰が特徴だ。そして、ここにいる翔鶴は、確かに、人形だ。目には光がなく、声もか細くて弱弱しい。

「そうだぞ、翔鶴。君はもうここにいる必要はないんだ。大丈夫。前任たちのようにはしないから。」

「?私では満足できませんか?私はあなた方に捧げるためにここで待っているわけですが・・・。」

「いや、だから、翔鶴はもうそんなことをしなくていいんだぞ。だから、ここから出てきてごらん。」

「いえ、私はこれが務めですから。」

ダメだ。完全に前任に支配されてる。これは聞く耳を持たないだろうな。

「翔鶴さん、ここを出ましょうよ。提督もおっしゃっています、ここを出てほしいと。」

「翔鶴自身は、それを望んでいるのか?みんなが待ってる。瑞鶴だっている。早く会いたいだろ?」

瑞鶴自身は会いたいとは思っていないだろうが、説得のために、名前を出す。だが、今回は愚策だったようだ。

「は?瑞鶴?え…、嘘、ですよね?瑞鶴には手を出さないって…。」

翔鶴の目が大きく見開かれて、声が震えだした。

「いやいや、手なんて出すわけないだろ?それに、今はこの鎮守府を立て直してる時期なんだ。そんなことしてる暇なんてないよ。」

「いや、いやです!お願いします、瑞鶴には何もしないでください。私がなんでもしますから。お願いします…。」

「だから、瑞鶴には何もしてない。ここにいるみんなにも、何もしない。もちろん翔鶴も。安心して。俺は前任たちとは違う。もう、君をこんな目に合わせない。」

なるべく、優しく、丁寧に言葉を掛けるが、翔鶴はなかなか落ち着かない。

「翔鶴さんは、脅されていたんです。瑞鶴さんに手を出すと、それを毎日のように気化されて、かなりトラウマになっているようで…。そのせいで、常に、瑞鶴さんと一緒にいるようになって、いえ、もうまとわりつく、といった方がいいですね。それで、もともとの考え方があっていないこともあり、瑞鶴さんに嫌われてしまったようです。」

「なるほど、今の翔鶴は、ひとまず、瑞鶴に会えば落ち着くかな?」

「おそらく。瑞鶴さんにはかなり嫌われそうですが…。」

「分かった。翔鶴、今からここを出て、俺が瑞鶴に何もしていないことを直接確認してほしい。約束する、俺が瑞鶴に手を出していないことを、これからも、絶対に手を出さないことを。そして、ここを出たら、ここには戻ってこないでほしい。」

「いいんですか!?瑞鶴は今どこに…」

「多分工廠か弓道場だ。」

「分かりました、早くしないと。」

「早くここから出よう。」

 

***

 

工廠

誰かが歩いてくる。三人か。瑞鳳も気づいてるようね。これは…、翔鶴か。一生あの中にいればいいものを。あとは提督と狭霧ね。

「瑞鶴!」

私の名前を呼んだ。

「なに?あんたに気を遣う余裕なんてないんだけど。」

「あなた、提督には何もされていない?大丈夫?」

何もされていない、とは…、ああ、手を出されていないかってことか。

「何もされてないよ。要件はそれだけ?邪魔だからさっさとどっか行ってほしいんだけど。」

「…よかった!瑞鶴、よく無事でいたね、もう大丈夫、私が守るから。」

守る?なにを言ってんでしょうね。守ってるのはこっちなのに。

「はぁ!はぁ!翔鶴、やっと追いついた。」

「はぁ、あんたの仕業ね。迷惑だからやめてほしいんだけど。」

「いや、すまん。翔鶴がなかなか落ち着かなくてな。」

抱きついてくる翔鶴を払いながら作業に戻る。

「なあ、瑞鶴。やっぱり…」

「提督、いい加減にして。」

言い返そうと思ったら、意外なところから声が飛んできた。いや、別に長い付き合いだし、私のことも結構わかってるから、そこまで意外ではないかな。

「瑞鳳…?あの、これは翔鶴の問題でな、二人が中心になって、解決してほしくて、瑞鶴に協力してほしいんだが。というか、なんで瑞鳳が止める?」

「はぁ、私が何年、瑞鶴と一緒にいると思ってんの?瑞鶴がここの翔鶴に対して、なにを考えてるかぐらいわかる。瑞鶴の問題は一緒に戦ってる私の問題でもある。瑞鶴が全力を出せなきゃ私も全力を出せない。だから、瑞鶴が嫌がることをしないで。」

「そうね、私は、ここの翔鶴は嫌いよ。ただただ弱い、役立たず。いっつもまとわりついてきて、集中できないの。私が守るね、とか言いながら、結局何もできない。どっちが守ってるんだか。」

「瑞鶴…」

「嘘、そんなことを思ってたの?違う、よね?瑞鶴は提督様に手を出されていないわよね?それは私が守ったのよ?」

「いい加減にしてくれない?私はあんたに守られたくないの。分かる?いつもいつも、私にまとわりついて、それで守った気になってるの?私がまもられてると思ったの?あんたのただのエゴでなくて?」

「瑞鶴!それ以上は…」

「…確かに、ちょっと言い過ぎたかもね。人としては良くないことよね。でもさ、こんだけ言っても変わらないからさ。」

「瑞鶴、翔鶴は確かに君を守ろうとしていた。その思いだけでもわかってくれないか?」

「分かってどうなるの?なにが起こるの?私は戦いで生き残ることしか考えていない。ここの翔鶴は生き残るうえで邪魔なのよ。それを理解してほしいわね。」

そこまで言ったところで翔鶴が、走って行ってしまった。

「あ!翔鶴!、すまん瑞鶴、翔鶴を追いかけてくる。」

勝手に追いかけてろ。

 

***

 

おや?誰かが走ってきますね。あれは、翔鶴さんですね。なにがあったのでしょうか。私を無視して通り過ぎちゃいましたね。ん?また誰かが。

「樹希君?どうしたのですか?」

「いや、翔鶴を何とかしようと思ってな、それで、いろいろあって、瑞鶴に会わせたら結構言われてしまって。」

「なにをやってるんですか。ひとまず、詳しく説明してください。私が対応しておくので、樹希君は別のことをやっていてください。やはり、あなたはこういう問題には向かないですね。これからは必ず相談してほしいです。」

「う、すまん。」

***

いろいろ説明していただきましたが、翔鶴さん的には正解でしたが、瑞鶴さんからするとあまりとらない方がいい手でしたね。確かに難しい選択ですね。さて、翔鶴さんはどこにいるのでしょうか。

「おーう、赤城、なにしてるんや?」

「龍驤さん、今、翔鶴さんを探していて、どこにいるかわかりますか?」

「翔鶴なら、堤防の先の灯台あたりにいるで。なにがあったんや?」

「その…、ちょっと色々ありまして。」

***

「なるほどなあ、確かに難しい問題やわ。なるべく早い方がいいな。ほな、行こうか。」

 

***

 

ああ、瑞鶴にあんなことを言われてしまうなんて。これまで、提督様たちの手から遠ざけようと、自分を売っていたのは、一体何だったのか。私は、瑞鶴に何もしてあげられなかった。私は必要ないと言った。邪魔だといわれた。私はこれから、どうすればいいの…。

「そんなに思いつめなくてもいいんじゃないですか?」

「えっと…」

「私は正規空母の赤城です。そしてこちらは、」

「軽空母の龍驤や。」

「私は正規空母の翔鶴です。思いつめなくていいとは?」

「今、あなたは、瑞鶴さんに否定されて、ここにいるんでしょう?」

「はい、今まで瑞鶴を守って来たつもりなのに。」

「瑞鶴は、前任どもに何かされたか?」

「いえ、何も。」

「それは、あなたが自分が体を差し出したから、ですか?」

「それは…、分からないです。」

「でも実際に、瑞鶴さんは何もされていない。それでいいのでは?」

「翔鶴が犠牲になったから、瑞鶴は守られた。事実がどうだったかは知らんけど、翔鶴が望むことができたんやないの?」

「でも、瑞鶴は…。」

「あの人、というか、瑞鳳さんも含めて、なんだか、感謝をしないというか、自分中心のような振る舞いをしていますからね。あまり気にする必要はありませんよ。」

「そう、ですか。」

分からない。私は瑞鶴を守っていたつもりなのに、逆に邪魔といわれ。私は瑞鶴にとって必要な存在なんでしょうか。

「翔鶴、自分が必要かどうかなんて考えるな。強くなって、必要な存在になるんや。これからや。」

「ですが…」

「今は自分に集中しましょう。これからも戦いは続きます。あなたは、しばらくの間海に出ていなかったようですし、これでは、確かに、戦闘ではすぐに沈んでしまいますし、いつまでも瑞鶴さんに嫌われたままです。私たちも協力します。だから、明日から頑張っていきましょう。」

「分かりました。でも、もう少し、整理する時間をください。」

「分かってるで。ゆっくりでいい。いつか、瑞鶴を追い抜けるように頑張れや。」

***

相当な苦労をしてたんやな。翔鶴、焦んなくていい。ゆっくりでいい。立ち直って、空に飛び続ける鶴を、うちらに見せてくれや。

「ところで、なんで瑞鶴はそんなに翔鶴を毛嫌いしてるんや?」

「いえ、ちょっとわからないですね…。」

「そこらへんも改善していかなあかんかな。」

 




なかなか話が進めれない…。白霜よ、早く帰ってきてくれ。その時のネタはもうあるんだ。というか、そのネタを書きたくて、この小説を書いているようなもんなんだ…。
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