白く染まる世界   作:快晴Ⅲ

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第十九話

2045年 11月10日

大本営

「確認した。八代樹希大佐、通行を許可します。」

「ありがとう。」

大本営、現在の日本陸海軍を管理し、大規模作戦の立案や、戦闘指示を出す重要機関。これから、先日の関東襲撃に対する会議が開かれる。現在はマリアナ諸島をかろうじてだが、維持している。関東を攻撃できる拠点はフィリピンしかない。おそらく油断もあるのだろう。車を憲兵に預けて、車を降りる。大本営か。横須賀に着任してからたったの四日。もう戻ってくることになるとは。

「えっと、今日の議題は関東の防衛に関することか。戦力の配置の転換ができるか、南西諸島の防衛に戦力が集中しすぎていることが問題になっているからな。」

「そうですね。南西諸島の防衛は、確かに死活問題ですが、流石に首都に国軍機が一機もいないのは問題ですね。あとは、魔女とマリアナ諸島の防衛ですね。」

「魔女か…、あれはもう規格外すぎる。アメリカのコロラドが何もできずに撃破されたんだ。この世界で最強なのは彼女だったからな。こっちには、そんな規格外の存在はいない。」

「…瑞鶴さんと瑞鳳さんでも、流石に無理でしょうね。」

「たった2kmの距離で8inレールガンを正面から弾いたんだ。この世界にそれ以上の火砲も存在しない。」

「レーザーなんかはさらに無理ですからね…。それこそビーム砲でも持ち出さないと貫通できませんね。」

「一体どうすれば…。」

そこで一つの可能性が思い浮かんだ。

「なあ、白霜ってのはどうなんだろうな。」

「確かに、私も時々考えていました。ですが、私も全く実力を把握していません。なにより、駆逐艦ですから、傷つけることすらできないのでは?」

「流石に無理か…。ん?でも、艦娘自身による直接攻撃は装甲に関係なく、個人の技量に左右されると聞いたことがあるが、それはどうなんだ?」

「ああ、そうでしたね。私たちはそんなことは全然しないので…。」

「でも、ここに来た時は、実際に殴って倒したんだろ?艦種はわからんが、一応可能じゃないかな。」

「んー、私もあまり詳しく聞いていないので、分かりませんね。今日の会議で、名前を出してみませんか?」

「いや、流石にそれはやめとこう。実力も把握できていない、しかも今は鎮守府にいないし、どこにいるかもわからない。」

「確かにそうですね。」

***

「では、これから会議を始める。全員、起立!敬礼!」

部屋の正面に座る司令長官、三河さんに敬礼。

「休め!」

「では、これから、先日の関東襲撃及び、魔女対策に関する会議を開催する。」

「着席!」

司会者が前に立ち、会議の進行を促す。

「まずは、関東への襲撃に関する対策と、戦力の九州一極集中及び、配置転換についてです。現在の戦力配置、特に国軍機についてですが、総数約124,000機、内稼働機約87,000機はほぼすべてが九州の南西諸島の防衛に使われており、その他の地域、近畿、中部、関東、東北、北海道にはほとんど配備されておらず、防衛の空白となっています。今回はそこを突かれた形となりました。東北、北海道はフィリピンからの距離が非常に遠く、空襲の危険性はほとんどありませんが、関東と近畿は実際に空襲をこれまでにも、今回ほど大規模ではありませんが何度か受けています。また、国内で生産された高角砲は現在、すべてが九州へと配備、砲弾も八割が九州へと送られています。」

「すまないが他地域への戦力の抽出はできない。すでに台湾は占領され、沖縄は南部の維持で精一杯だ。中部には大規模な飛行場が建設され、毎日深海棲艦の重爆撃機が飛んでくる。ここで九州の戦力を減らしたら、本土まで攻撃されるぞ。」

「ならいっそのこと沖縄を放棄すればいいのでは?より充足が高く、補給状態も良好な本土で決戦を挑めば敵にも打撃を与えられます。攻撃の難しい沖縄から引いて、戦線の縮小、整理を行い、適切な戦力を持って防衛に当たれば、今よりも少ない戦力で効率的に対処できるでしょう。」

「なにを言っている。沖縄が占領されれば敵は何の妨害もなく飛行場を建設できる。あそこは一万を超える航空機を運用できるような場所であるうえに、護衛戦闘機の随伴も可能な位置だ。毎日何百、何千もの重爆が飛んでくれば、それこそ日本が壊滅するぞ!」

「言っておくが、現在、関東に配備されていたミサイルは底をついた。大本営に配備されていたパトリオットとスリーサイトも使い切った。確か、横須賀に配備してあった墳進魚雷も使い切ったそうだな。」

「はい。現状、艦娘を除いた、深海棲艦への有効な攻撃手段は水中護衛隊による魚雷攻撃のみとなっています。」

「この通り、今の関東は手薄だ。今は他地域からのミサイル搬入を進めているが、充足を満たすことは不可能だ。」

「ところで、八代提督。あなたは最近横須賀に着任したようじゃないか。どうやら、ここ数週間、全く出撃を行っていないようだ。それどころか、哨戒、偵察、そして資源収集も。全く出撃しないから、今回のように攻め込まれたのではないかね?」

「彼女たちは、前任者による非人道的な艦隊運用により、心身ともに傷ついています。また、艦娘自身の練度も低く、外洋に出して、帰投できる保証はどこにもありません。そのため、しばらくの休息と訓練期間が必要です。」

「艦娘は沈めてなんぼではないか?その場で生き残れないならその先も生き残れない。逆に生き残れたら、その艦娘は強くなる。それに、いくらでも替えが効く。そうだろ?」

「艦娘を沈めることは許されないだろう!彼女たちも我々と同様に意思があり感情を持っている。我々が好き勝手に扱っていい存在ではない。」

「その通りでしょう?それに、艦娘たちは練度が上がれば強くなれます。いつまでも弱いままで戦っていたら、それこそ効率が悪いのでは?」

ああもう。なんでこんな言い合いになるんだ。時間も無いってのに。

「全員、一回静かにしろ。」

あれは…、確か舞鶴の提督、新木剛三中将だ。

「今は関東の防衛と戦力の配置について話し合ってる。艦娘の扱いは今は関係ないだろう。」

「では、現在、大本営で協議している、対応策について発表します。あくまでこれは仮の策であります。」

「それは私から説明する。まず、現在、九州に展開している戦力の抽出は行わない。ただし、中国地方の航空隊の配置転換を行う。確か1,500機ほどだったな?そのうちの500機を関東に移す。そして、残り少ないが今年の航空機生産分を全国に分散して配備する。逆に、これ以外の対応はほとんどできない。確かに九州の戦況は非常に厳しい。今ここで手を抜いたら、一瞬で突破されるだろう。そして八代提督は、しばらくの間は戦力の回復に集中、いつかは貴官も南西諸島の防衛と攻略に参加してもらう。異論はないか?戦線から指揮官が抜ける時間は短い方がいい。なるべく早く決定したいのだが。」

「私は戦力の配置転換については異論はありません。ただ、一つだけ。八代提督は以前はラバウルの提督でしたよね?そのラバウルの陥落が今の劣勢を招きました。そして、今回の襲撃、彼は敵の陽動にまんまと引っ掛かりました。これは彼の指揮や未来予測、艦隊運用に問題があると考えられます。彼は横須賀提督としてのふさわしい能力を持っているとは思えません。」

「前任のほうがよっぽど問題がある。それに、最終的に壊滅したとはいえ、10倍の戦力差があるにもかかわらず、敵の侵攻を止めた。これは、彼と彼の艦娘の実力。そして、その艦娘を育てるのは提督の役目だ。これは八代提督が横須賀に着任するのにふさわしい能力を持っている証拠となる。」

「そうですか…。分かりました。」

俺に問題がある、か。確かに俺はラバウルを壊滅させ、先日の襲撃でも、陽動に引っかかった。これは改善していかないと、いつ、不要の烙印を押されるかわからない。そうなると、横須賀の艦娘たちを守れなくなるかもしれない。気を付けないとな。

「さて、本来はここで会議を終わらせる予定だったのですが、これが本題になってしまいました。次は「赤き大海の魔女」についてです。」

赤き大海の魔女、高度に要塞化され、日米の総力を挙げ、防衛したハワイを崩壊させ、パナマ運河を破壊。さらに、世界最強と呼ばれた世界初の艦娘である戦艦コロラドを大破させた圧倒的な存在。

「昨日14:38、沖縄近海にて、急速な赤色汚染海域の発生と拡大が確認されました。フィリピン周辺と南シナ海の汚染海域との接続は確認されなかったため、魔女が原因と判断。早急に当該海域を奪還しなければ汚染は広範囲に拡大し、深海棲艦発生量の増加と悪天候を引き起こします。また、霧の発生により、高高度衛星からの観測は12日以内に、低高度衛星からは20日以内に観測が不可能になります。ただし、範囲は非常に狭いため、そこまで大きな影響は出ないと予想されます。」

「そして、現在、九州と四国の沿岸にレールガンを設置。移動式小型原子炉の輸送と設置を行っている。この作業はあと8日で終わる予定だ。それまでに、魔女が襲撃に来た時の対処について話し合いたいと思う。」

「まあ、やはり、今まで通り、沿岸の住民を避難させて、もしも遭遇した場合は全力で逃げる、しかないでしょうね。」

「誰か、あれに対抗できる実力を持つ艦娘が出てきてくれないものかね。」

「新世第一世代艦艇で対処できない、しかもあの最強と言われたコロラドが一瞬で撃破された。さらに、レールガンを弾いた。この世の中のすべての兵器を防ぎ、あらゆるものを破壊する。あれに対抗できるといったら、神のような存在しかいないだろう。」

「あれに遭遇または襲撃されたら、その時はもう覚悟を決めよう。もしも、魔女のせいで、拠点や艦隊が壊滅してもそれは誰の責任でもないさ。魔女があまりにも強すぎる。今の人類ではどうにもできない存在さ。」

「魔女から離れる、もとい逃げるときの方法をなるべくまとめておきましょう。特に足の遅い戦艦や輸送艦がいる場合を。」

「そうだな。とにかく、電探をフル活用して、なるべく遠距離で発見、ばれていないようなら、何もせずに離脱。もしばれているようなら、何とかして時間稼ぎですね。」

「その時間稼ぎの方法をマニュアル化しておこう。基本はそのマニュアルに沿って行動、状況により臨機応変に対応できるようにする。」

「マニュアルも何種類か作成したほうがいいですね。」

「ここではひとまず、米国が作成したマニュアルをもとに、日本に合ったものに変更していきましょう。」

***

「三時間ぐらいかかったな。魔女対策のマニュアルが無駄になることを祈ろう。」

「そうですね。魔女なんかにはぜったい会いたくないです。」

「にしても、お昼の時間を過ぎてしまったな。ここでなんか軽いものでも食べてくか。」

「ふっふっふっふっふ、それでしたら、私もお供しましょう。」

この声は…

「明石だな!?」

「その通り!工作船の明石です!修理や開発はこの私にお任せあれ!」

「お前の声を聴いていると、頭が痛くなるような錯覚に陥るんだ…」

「えー?なんでですか!ひどいですよー。」

「お前の声が大きすぎるんだよ!それに距離も近い。」

「ま、そんなことは置いておいて、早く食堂に行きましょう!」

「あれ?明石さんって、確か今日、横須賀に配属される…。」

「そうだ。だから、帰りの車は明石も乗ってしまうんだ。」

「なんでそんな残念そうにするんですか?」

「もうわかるだろ。結構うるさいんだよ。」

「いやいや、私だって時と場所はわきまえてますよ。」

「まあ、確かにそうだな。」

 

***

 

「八代樹希、彼には本当に横須賀にふさわしい能力を持っているといえるのか?」

「さあ、それはどうでしょうね。ただ、ラバウルを陥落させ、陽動にまんまと引っ掛かり、関東の防空網を突破させたのは事実。これだけの失態を冒しているのなら、横須賀鎮守府の提督という役職は彼には荷が重いだろうな。」

「着任したてで、しかも立て直しの最中だから少しかわいそうだが、彼には辞めてもらうか。」

「そしたら、誰があそこに着任する?」

「そしたら、もうあいつしかいない。今は逮捕されているがな。」

「あいつか…。艦娘の扱いについては我々から見ても、かなりの地獄だが、一応結果は残している。妥当ではあるだろうな。それに、あいつ意外に人がいない。」

「だとしたら、どうやって釈放させる?」

「それは、私に任せておいてください。」

「できるんだろうな?」

「ええ、もちろん。私を誰だと思っているんですか。」

「いやー、地獄からせっかく最高の待遇になったのに、また地獄に落とされる艦娘たちがかわいそうですな。」

「そんなことはみじんも思っていないでしょうに。」

 




話が、続かない!結構ネタ切れだ。くそ!白霜よ、早く帰ってきてくれ!
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