鎮守府付属横須賀北飛行場北端
「やっぱり、北側までくると遠いな・・・。」
「墜落とかを考えると、南側に飛ばさないとだからね。」
今回は各機種3機ずつ。本当はやっちゃいけないけど、最初に軽く飛ばして、異常がなければ全力運転もやるつもりだ。そこで異常がなければ、さらに、正荷状態でもやるつもりだ。それぞれ別の日にやらなきゃいけないことだけど、時間がないから仕方ないね。今日はできるところまでやっちゃおう。本当はもう、完成してるつもりだったんだけど、エンジンをなかなか決められなかったし、アルミが全然なくて、大部分を鋼鉄製にしたおかげで、加工が大変だった。早く、アルミに戻せないかなぁ。
「準備できた?」
「ちょっと待ってて、エンジンの点検してるから。」
「分かった。」
私も、もう少し点検しておこう。絶対に失敗できない。魔女も出たみたいだし、これ以上時間をかけてたら、本当に人類が滅びる。動翼の動作確認もする。
「よし、点検終わり。早く飛ばそう。」
「よし来た。」
三機の機体から少し離れて、離陸作業を見守る。艦娘用だから、とても小さい。数人の妖精さんがプロペラを回す。音が大きくなる。エンジンが始動したようだ。車輪止めを外し、機体がゆっくりと前進する。速度がだんだん上がっていき、見えづらくなる。フラップが展開され、機体が浮き上がる。
「とんだ・・・!」
「バランスは・・・、よし、崩してない。大丈夫。」
主脚が格納される。ひとまず、墜落の心配はないだろう。
「高度3,000まで上昇して、速度時速400kmに固定、そこで、横旋回、宙返り等、一連の運動試験をやって。できないようなら、中断。すぐに帰投して。」
「上昇は結構早いね。もうすぐ、1,000超える。」
「今のところ、いい感じじゃない。」
「このまま成功してほしいね。」
***
数分して、連絡が入る。
「高度3,000に到達。これより、運動試験を開始する。」
持ってきた双眼鏡を覗いて、空を見上げる。すると、きれいな旋回が見えた。
「結構いいんじゃない!」
順番に旋回が終わり、次は宙返りを始める。無線機からも、興奮した声が入る。
「すごい!滑らかに動く!これはいいぞ!エンジンも今のところ問題なしだ!」
「いやー、よかったね。思い切って、三重のファウラーフラップにしたけど、うまく動いてよかった。妖精さんも興奮してるよ。」
「整備が大変そうだけどね。」
運動試験を終えて、着陸する。私たちから、少し離れたところで、停止する。地上待機していた妖精さんが駆け寄っていく。パイロットの養成さんが下りてきた。
「どうだった?」
「いや、これはすごい、気持ちよく乗れたよ。」
まだ結構興奮してるね。整備妖精がエンジンや主翼の確認を始める。私たちは、運動や動作に異常がないかを確認する。
「飛んでて、何か感じたことは?」
「特に、違和感はなかった。動翼もちゃんと作動してた。だけど、やっぱり、機体が重いせいで舵の効き始めが遅いかな。」
「アルミじゃなくて、鋼鉄だから仕方ないね。やっぱり、舵は効きにくいのは同じか。エンジン出力を上げても、重ければ、あまり変わらないのかなあ。速度を上げたら、もっと曲がりにくくなっちゃうかな。今使っているのと比べて、何か変わったことある?」
「エンジン出力が上がって、上昇は楽になったな。あと、加速も速い。あ、そうだ、旋回をしても宙返りをしても、失速がほとんどなかった。これはかなりいいな。」
「急上昇をしても、失速しないってこと?」
「そんな感じだな。だけど、軽荷状態だったから、正荷状態だと分からない。」
「うーん、ひとまず、異常はなさそうだね。機体の検査が終わるまではまとう。次は、映像を見てみよう。舵の効き始めはどんなものかな。」
「さっきも言ったが、遅いな。奇襲を受けた時に、致命的になるかもしれない。」
「見ている限り、曲がり始めたら、それなりにまがってたよね。」
「ああ、失速がないこと以外は、良くも悪くも変わらない。」
「終わったら、機体形状も見直してみようか。」
***
映像を見終わって感じたのだけど、舵の効き始めが、以前よりも遅くなってる。エンジンが重くなって、重心をとるために、後部に重りを載せたおかげで、かなり重量が増加しているからだね。それに、重心が前に偏ってる。失速しないのはいいけど、旋回半径は少し大きくなっているかもしれない。格闘戦になると、厳しいかな。
「機体の検査、終わったよ。」
「どうだった?」
「異常なしだ。もう一回飛ばしても問題ない。」
「分かった。じゃあ、二機目も速く飛ばそう。」
「もう準備は始めているから、そろそろできるぞ。」
「ありがとう。」
「次は、最高速度、高度限界、急降下性能、失速耐性に関する試験か。」
「最高速での、旋回性能の試験もやるつもりだから。これは、さっきの試験よりも危険なものになる。必ず、海上に行くこと、何かあって、着陸ができないと感じたら、すぐに脱出すること。この二つは絶対に守ってね。」
「分かった。心に銘じておく。」
「まず、離陸したら、限界高度まで行って。もう無理だなと感じたら、安定するところまで、降下。そのあとに、その高度で、最高速度の試験、ある程度飛んだら、旋回、宙返りをして。そのあとに、急降下試験をやるから、高度を上げて。フラッター現象が起き始めたら、減速、すぐに飛行を中止して、着陸して。海上にも、ボートを待機させてあるから、脱出をためらわないで。」
「分かった。無理は絶対にしない。」
「よろしくね。」
パイロットの妖精さんが機体に乗り込む。さっきと同じような手順で、エンジンが始動し、離陸準備が行われる。
「私たちも、速く移動しよう。」
墜落した時に備えて、海上に移動する。後ろから、プロペラ音がする。少し走って、海に飛び込みながら、艤装を展開し、着地する。
「急げ!」
機関を限界まで動かして、東京湾を出る。上を見上げると、どんどん遠ざかっていく、三機の機影が見えた。
***
「流石に、限界高度までは時間かかるなあ。」
戦闘機のほうは、六分前、離陸してから11分で、高度10,000に到達したという連絡が来た。天山の方は、二分前、離陸してから14分、彗星は一分前、離陸してから15分で、高度10,000到達の連絡がきた。それ以来、音沙汰なしだ。
「どこまでいけるかは、上昇できなくなるまで、だし、空気が薄くなって、揚力も小さくなってるんでしょ。そりゃ、時間かかるよ。」
「確かに、そうだね。もし、通信機の故障だったら、結構まずいけどね。」
「それは、起こらないことを祈るばかりね・・・。」
そこで、一つの無線が飛んできた。
「こちら、新型戦闘機試験機、高度16,500に到達し、それ以上は失速して、うまく飛べなくなる。16,500が限界高度と思われる。」
「分かった。そこで、どれくらいの速さが出てるか?」
「時速573kmだ。」
「分かった。エンジンとか、動翼とか、機体に何かおかしなこととか、発生してない?」
「特にないな。」
「じゃあ、高度10,000のところでは、姿勢は安定する?するなら、そこまで降下して、試験を一通りやってほしいんだけど・・・。」
「了解。高度10,000では、十分安定するから、そこまで、降下する。」
「よろしくね。」
「14,500mかあ。すごいところまで飛ぶんだね。」
「それに、その高度で時速573km出せるなんて、これは、最高速度が楽しみね。」
そんなことを言っていると、連絡が二つ、同時に入った。私は新型天山のほうを担当する。
「こちら新型天山試験機、高度11,400に到達。これ以上は無理だ。」
「その高度での、最高速度は?」
「時速532kmだ。」
「結構早いんだね。」
「そうだな。」
「じゃあ、高度10,000まで降下して、次の、運動試験をやって。」
「了解。」
「彗星のほうはどうだった?」
「高度11,100が限界だって。その高度で、時速582km。」
「天山の方は高度11,400が限界。その高度で、時速574km出る。」
「結構いい高高度性能してるね。」
さすがに、ここまでとは思わなかった。ハ-51の性能、かなりの小型、軽量化しても、十分に発揮されている。
「こちら、新型戦闘機試作機、高度10,000まで降下。これより、運動試験を開始する。」
「了解。一つ一つの試験が終わるごとに連絡してね。」
「了解。」
離陸作業の手順とかあってるかな?一応調べたけど…。