白く染まる世界   作:快晴Ⅲ

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第二十二話

「おかえりー。」

運動試験を終えて、飛行場に戻って来た。毎回の報告でも、異常はなかったし、墜落もなかった。

「いやー、結構よかったね。飛行中に何も起こらなくてよかった。」

「そうね。精密検査で何も出なければいいけど。」

「流石に、技術は100年も経過してるから、大丈夫だとは思うんだけど・・・。」

「22気筒エンジン、独特な形状をしているから、かなり不慣れってのもある。どうなってるかはまだわからないわね。」

「今までは18気筒だったからね。エンジンを試作した妖精さんも結構苦労したって言ってたよ。」

「少ない資材で、しかも、まともな設備すらない状況で、ここまで仕上げてくれた妖精さんには、ホント頭が上がらないよ。」

「そうだね。さて、私たちも、運動性能の検証を始めようか。」

「そうだね。ねえ、妖精さん、飛行中に何か感じたことは?」

「まず言えるのが、さっきよりも、舵がとにかく重い。全然動かなかった。曲がり始めも遅いし、さっきよりも、旋回時間が長い。これでは空中戦は無理だ。」

「速度が一気に上がったからねー。多少は仕方ないのかもしれないけど、流石に問題か?」

「曲がり始めが遅いのは、エルロンの形状を変えるだけで、済ませられるかな。」

「多分、失速がほとんどないのが影響してるのかもしれない。内側の減速が少し遅い気がする。あとは、外側が持ち上がりにくい。」

「フラップが良くも悪くも仕事してるって感じだね。多分外側も加速しづらいんだと思う。フラップを大きく開けば、揚力は発生するけど、空気抵抗が大きくなる。小さくすれば、抵抗は小さくなるけど、揚力が発生しない。」

「エルロンを大きくしてみようか。」

「ラダーも面積が大きくなるようにしてみよう。」

「ひとまず、これらが解決するまでは一撃離脱だな。」

「ごめんね。しばらくは苦労すると思うけど。」

「大丈夫だ。そこは何とかする。」

***

今度はかなりの時間をかけて、検査をした。

「さて、この試験飛行で分かったことをまとめると・・・」

新型戦闘機試作機・・・限界高度16,500mで時速573km

           高度10,000での最高速度は時速713km

           上昇能力、高度10,000まで11分21秒

           急降下速度、最大時速902km

 

新型彗星・・・限界高度、11,100mで時速581km

       高度10,000での最高速度は時速622km

       上昇能力、高度10,000まで14分45秒

       急降下速度、最大時速883km

 

新型天山・・・限界高度、11,400mで時速574

       高度10,000での最高速度は時速603km

       上昇能力、高度10,000まで14分06秒

       急降下速度、最大時速865km

 

「精密検査をしても、異常は特になかったぞ。まあ、ここには専用の機材が少ないから、帰ったら、またやり直すことになるけどな。」

「それなら、もう次、行っちゃう?」

「そうだね。今回結構時間かかったから、パイロットの妖精さんも休めただろうしね。」

「良し、じゃあ早速準備だね。」

「もう、ほとんど終わってるぞ。」

「速くない?」

「いやー、この機体に乗るのが楽しくてさ。旋回は確かにあんまりよくないけど、滑らかに飛べるし、速いからな。」

「そうだね。やっぱり気持ちいい。」

「そう。じゃあ早速飛んで行っちゃおう。着陸するときは、重りは海中に投棄してね。」

「分かった。」

次は全備重量。つまり、燃料を満載して、爆弾となる重りもある程度載せた状態。いきなり限界まで載せるのは流石に危険だから、今回は、機銃と弾薬をすべて搭載し、さらに、戦闘機は500kgを、彗星は1,200kg、天山は1,400kg。多分もう少し載るだろうけど、今回は目標の重量まで。

「ハンドプロップ開始!」

妖精さんが、プロペラを手回しで回していく。エンジンが始動し、プロペラが回り始める。次第に機体が加速し、後輪が浮き上がる。さらに走ると、前輪が浮いて、ついに離陸した。

「落ちないでね・・・」

心配をよそに、機体は安定して、軽やかに浮き上がっていく。

「離陸が一番心配かもね。」

「あそこまで上がったらもう大丈夫でしょ。」

「だといいけどね。」

「今日の試験結果的には、ひとまず成功といえるかな?」

「旋回の面をどうやって修正するか、だね。」

 

***

 

「よし、今日はここまでにしよう。」

現在、16:50、あと1時間で夕食だ。それに、全員疲れてきてる。これ以上やっても動けないだろう。

「今日の訓練はここまでにして、いったん、お風呂に入っていいぞ。その後に夕食だ。」

「や、やっと終わった…。」

「きつすぎるー。」

「これからは、出撃に向けて、少しずつ厳しくしていきます。夜にしっかり休むようにしてください。」

「みんなが強くなるために必要なことあきらめないでね。」

「ここからさらに厳しくなってくのか。」

「まだ、そんなことを言う場面じゃないでしょう。」

「そうだよ。それに、僕たちが強くならなきゃ、戦闘になったら沈んじゃう。」

「・・・確かにそうだな。せっかく環境が変わったのに、沈むなんて御免だ。」

「そうですよ。ここを変えてくださった新しい提督のためにも、私たちは強くならないといけません。」

「強くなれば沈まないのは、確かなんだよね?」

「まあ、戦闘の結果にはいろいろな要因があるが、基本的に敵よりも強ければ沈むことはあまりないな。ただ、実際にはわからない。敵に罠にはめられているかもしれないし、天気、兵装、そして、自分の状態。強ければばいいってものでもない。」

「そうか・・・。」

「まあ、ひとまずは強くなることを目指して、頑張っていこう。それに、兵装、士気の維持、戦略はそれぞれ得意な人が分担して担当する。すべてを一人でやる必要はない。」

「まずは、目の前の訓練に集中して、戦闘で沈まないことを目指しましょう。」

「沈まないことを?勝つことでなくて?」

「勝ちにこだわれば、気持ちが早まってしまい、誤った判断をしてしまうことがあります。それに、あなた達はもう、勝ちにこだわる必要はありません。樹希さんが大切にしていることは勝利よりも、艦娘です。これからは、勝利よりも、生きて帰ることを優先してください。」

あまりにも衝撃的な言葉。勝利よりも生きて帰ることが優先。今までとは全く逆のことだ。

「それで・・・、怒ったりは?」

「そんなことは絶対にしない。それは保障しよう。だから、戦闘でも、ある程度の緊張感を持ちつつも、気楽にな。」

「なんだか、変な感じだね。」

「そうね・・・。今までとは、違いすぎて。」

「ま、沈まなければいいってことだ!」

「そういうことさ。さ、お風呂に入りに行こう。」

 

***

 

「アルミがないぃ・・・。」

「ボーキサイト自体はあるんだけどね。」

「でも、精錬する施設がないんだよねー。それに、設備があっても、十分な電力がないから・・・。」

「第三整備場が使えるようになれば・・・。」

第三整備場、横須賀鎮守府にある、第一から第五まであるうちの航空機専用の整備施設。そこでは、量は多くはないが、アルミの精錬や合金の製造ができる。ただ、そこは、一年半前の空襲で破壊されて以来、資源や予算、工員、妖精さんの不足で、再建されていない。一応、他の整備場でも、航空機の整備は行えるが、アルミやアルミ合金はそこでしか製造できない。第三整備場自体は、まだ稼働できるが、とにかく電気が足りない。この鎮守府に残っている発電所では、到底賄えない。

「ホント、宝の持ち腐れだよ。」

「うーん、ねぇ、瑞鳳、第三以外でも、アルミ合金の加工はできるんだよね?」

「まあ、できるよ。そこまで量は多くないけど。」

「じゃあ、アルミ合金があればいいんだよね?」

「そうだね。」

「なら、精錬ができるところがあるかもしれない。」

「ホント!?どこどこ?」

「釜石なんだけど。」

「え?そこって、仙台と一緒に壊滅したところじゃなかった?それに、あそこにあるのは製鉄所でしょ。」

「隣に、アルミの精錬と加工をする施設が建設されてたんだよね。製鉄所って、かなりの熱が発生するから、そこで発電して、その電気を使うって感じ。」

「でも、その製鉄所も動いてないでしょ?民間の発電所から電気を持ってくるわけにはいかないし。」

「いや、近くに、潮流発電機の整備場がある。それが、攻撃対象になってなかったおかげで、破壊されなかった。」

「足りるの?」

「私たちも、発電機を持っていけばいい。」

「そうね・・・。明日、早速行ってみよ。」

 




試験飛行終了!だいぶ省略したけど、作者が面倒くさくなったからでは決してありません。書くのが難しいです。
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