2045年 11月12日
横須賀鎮守府
電話がかかってくる。
「高雄か。おはよう。」
「おはようございます。頼まれていたこと、一応まとめ終わりました。」
「そうか、ありがとう。で、どんなことが分かった?」
「三人とも、なぜか情報が少なくて・・・。建造日や戦闘詳報もあまりないんですよね。はっきり言って、少し異常です。」
「そうか・・・。一人ずつ教えてくれるか?」
「はい。まず、瑞鶴さんから。まず、建造日、建造場所は不明。現在判明している最初の資料は、断定はできませんが、2026年4月6日の仙台警備府への配属です。この資料には、海上で接触と記載されているため、海上のどこかで顕現したのだと思います。しばらくは仙台にて、任務に就き、そこを拠点にしています。その後、艦娘の増加と、戦況の有利による南方への進出もあり、2030年8月4日に、トラック諸島に配属され、到着しています。そして、2035年2月18日に、トラック泊地が壊滅し、脱出。瑞鶴さんはその後、仙台鎮守府に配属されています。2037年12月1日の仙台鎮守府の壊滅により、瑞鶴さんは、一時的に大本営の即応部隊に配属となりました。」
「ん?瑞鶴って、大本営にいたことがあるのか?」
「そうですね。ただ、話したことは一度もありません。温存されている私たちとは違って、即応部隊ですから。大本営には、ほとんどいなかったようですね。で、2039年1月5日、横須賀鎮守府に転籍となりました。」
「結構、あちこちに配属してるんだな。それに、何度も何度も泊地や鎮守府が変わってる。壊滅しても、生き残れるほどの能力を持っているってことか。」
「そうですね。第二世代の方たちと比べても、遜色ない実力はあると思います。」
「そうだな。次は、瑞鳳について教えてくれないか?」
「分かりました。まず、瑞鳳さんも同じように、建造日、場所ともに不明です。そして、最初の記録と思われるものが、2027年3月27日の志摩警備府への配属です。この記録にも、海上で接触と記載されているため、どこかで顕現した可能性が高いです。しばらくは、ここを拠点に活動していますね。そして、2030年8月4日にトラック諸島に到着、これも、瑞鶴さんと一緒です。ここで、初めて対面したのだと思います。2035年2月18日のトラック泊地の壊滅に伴い、横須賀鎮守府に転籍となり、そこからは、変わっていません。」
「じゃあ、もう10年間もここにいるのか。」
「そういうことになります。そして、この二人に関する資料で、一つ、興味深いことがありまして・・・。」
「なんだ?」
「2035年の仙台周辺への、襲撃に関することです。その時、仙台鎮守府の主力は、大湊にいて、そこで、合同訓練をしていました。瑞鶴さんは、仙台に残っていたようですね。」
「そうなのか?」
「はい。おそらく、防衛のための、最低限の戦力ということなのでしょう。」
「じゃあ、主力がいない時に、攻撃を受けたということか?」
「そうです。このときは、太平洋上の大規模な低気圧のせいで、発見が遅れてしまい、近海への侵入を許しました。」
「そのことで何かあるのか?」
「このとき、瑞鶴さんが単独で迎撃に出たそうです。」
「単独で?危険すぎるじゃないか!」
「その時、低高度衛星によって、とらえられたのは、多数の戦艦を含む、130隻の大艦隊の接近でした。瑞鶴さんは、それを単独で撃破したようです。」
「・・・は?」
いやいやいや、いくら何でも強すぎる。
「事実なのか?」
「事実です。実際に、戦闘をしている瑞鶴さんが、低高度衛星によって、とらえられています。そして、このとき、たまたま瑞鳳さんが近くにいたようで、独断で、仙台鎮守府の防衛に向かったようです。そして、80隻を超える空母機動部隊を壊滅させたようで・・・。」
「一人で?」
「一人で。」
「強すぎるだろ・・・。」
「この二人で、仙台鎮守府の主力と増援が車で持ちこたえたようです。」
「どうして、仙台は壊滅したんだ?」
「単純に、数が多すぎたのと、物資が足りなくなったようです。」
「そういえば、この前の襲撃で、あの二人が、異常個体を二体、撃破したようだが、その話は聞いたか?」
「はい。聞きました。確認されている異常個体の中でも、弱い方でしたが、もしかしたら、第一世代と同じくらいの強さを持っているのかもしれないです。」
「ますます、分からなくなってくる。どうして、それほど強いのに、認知されてこなかったんだ。」
「おそらく、提督が隠していた可能性がありますね。これだけ強い艦娘は、自分の手元に置いておきたいというような。」
「おかげで、情報が少ないのか?」
「それもあるでしょうね。それに、この二人が配属していたところは、結構ブラックな環境だったようです。提督の私利私欲に使われていた可能性も・・・。」
「どれだけ過酷な環境で生き残って来たんだ・・・。並外れた実力でない限り、生き残れないぞ。」
「以前の横須賀鎮守府でも、生き残っていますからね。」
「そうだな・・・。分かった。じゃあ、最後に、白霜について頼む。」
「分かりました。しかし、この・・・、艦・・・息?は、とにかく情報がないです。まず、2032年5月5日、リンガ泊地の設置と同時に、配属となっています。先ほどの二人のように、建造日、場所はわかりません。この人は、しばらくはリンガ泊地から、離れていませんね。そして、2032年の泊地の設置から、2044年末までに、四回、泊地が壊滅し、そのすべてを生き残っています。」
「なに?壊滅しすぎじゃない?」
「まあ、あそこはかなりの激戦地ですし、インド洋からの攻撃も来ますからね。大変なんでしょう。」
「リンガ泊地の生き残りはほかにもいるのか?」
「はい。います。ただ、脱出できたのは5隻、現在は二隻にまで減り、馬毛警備府に配属されています。」
「それだけしかいないのか・・・。なあ、確か、リンガ泊地から脱出してきた艦隊が日本本土に到着したのは10月30日だよな?」
「そうですね。ただ、壊滅した正確な日時は分かっていません。」
「白霜がここに配属になったのは、年明けの1月14日だ。壊滅は、だいたい9月か10月頃だろう。そうなると、壊滅から一か月以上経過している。この間は何なんだろうな?」
「それは・・・分からないですね。リンガ泊地から本土までは、だいたい一週間ぐらいのはずなんですが・・・。」
「結局、よくわからないことばっかりだな。情報そのものが少ないのか?」
「はい。軍の機密情報にもアクセスしましたが、何もありませんでした。」
「だったら、機密の可能性も低いか・・・。」
高雄は、大規模作戦の立案を行うこともあるため、機密レベルの高い情報にもアクセスできる。それでも情報がないのなら、ただただ、情報自体がないことになる。
「力になれず、申し訳ありません…。」
「いや、問題無いさ。俺からも、三人に聞いてみるよ。」
「お願いします。」
さて、どうやって聞き出そうかな。そう考えていると、ドアがノックされた
「誰だ?」
「航空母艦、瑞鶴よ。」
「同じく、航空母艦、瑞鳳です。」
「入っていいぞ。」
ちょうどいいタイミングだな。
「何か用か?」