白く染まる世界   作:快晴Ⅲ

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第二十四話

2045年 11月12日

横須賀鎮守府 執務室

 

「何か用か?」

「ちょっとね、資源が少なくなってきたから、哨戒ついでに出かけてみようかなって。」

「護衛艦は?2人だけで行くつもりか?」

「そうだね。」

…別に、許可を出してもいいが、護衛艦無しでは許可が出しにくい。それに、今日から訓練を、本格的に始める。引き抜くわけにもいかない。

「そうだ、多分何日か帰らないと思う。ちょっとやりたいことがあるんだよね。」

「なにをしたいんだ?」

「新型機の空母発着艦、ほら、昨日試験飛行やったじゃん。結果が良好だったから、空母発着艦もすぐにできるかなって。」

「護衛艦なしに加え、数日間帰らないとなると、許可は出せないな。」

「えー?なんでー?」

「流石に危険だ。それに、艦娘を沈めたくない。」

「私たちが沈むとでも思ってるの?」

「さっきさ、大本営の重巡高雄と話してたでしょ。聞いてたよ。私たちが、どんな環境にいたかも知ってるでしょ。」

「聞いていたのか・・・?」

「話しているのを、邪魔するのはしたくないしね。ちょっと盗み聞きさせてもらったわよ。提督さん、私たちが、そこまで頭が回らないとでも思った?」

「沈まないためには、結構いろいろやって来た自信があるからね。何か罠を仕掛けられて、少なくとも、自分と同じ組織に属している人間には嵌められた、なんてことはないようにしたいからね。」

「私たちって、結構恨まれることも多かったから。」

何だろうか、この二人からは、円卓の艦娘から感じられる歴戦の戦士といった風格は感じられないが、不思議な圧を感じる。心の奥で、恐怖するような、でも、はっきりとは感じられないような・・・。

「訓練はどうする。今日から本格的に始めるつもりなんだが。」

「いやー、私たちはいない方がいいわよ。変な戦い方を覚えられると困るし。」

「変な戦い方?」

「これまで、資源もない、戦力も少ない、時間もない、そんないやな環境で戦ってきたからさ、とにかく効率的に沈めるために、基本とかから外れるような動きをしてるからね。それを十何年続けてるから、癖になっちゃって。一応、基本的な動きもできるんだけどね。」

「それに、他の子たちは、まだまだ弱いし、基本ができていない子も多いから、いきなり基本から逸脱した動きをしちゃうと、強くなれなくなっちゃうからね。」

「それは、二人が生き残って来た理由なのか?」

「そうとも言えるんじゃない?少なくとも、強ければ、提督から必要とされる。必要とされれば、盾になることもないし、解体されることもない。敵よりも強ければ、その戦闘に負けることはない。基本的に、こう考えてるよ。」

「それにさ、今まで艦娘を沈めまくってたのに、いきなり沈むな、なんてさ、おかしなはなしじゃない?結局、艦娘を失いたくないっていう私欲から来た感情だろうし。求めるものが、戦果から、生き残ることに変わっただけだよ。はっきり言って、もう人間のわがままに付き合うのには、うんざりしてきた。指揮を外れることができるんなら、外れたいよ。まあ、沈んで来いって言われるのよりは、遥かにマシだけどね。」

「単純に、戦闘にしか、興味がないってことか?」

「それも違う。私たちは戦闘じゃなくて、強くなることそのものにしか興味がないってこと。」

「強くなって、なにがしたいんだ?」

「お互いを守る。それだけ。まあ、私は、先の大戦ですぐに沈んだあの空母に色々言ってやりたいってのもあるけどね。」

「どんなに、戦力差が開こうとも、お互いを守りたい。絶対に沈まない。最初は対等に殴り合っていたのに、2、3年で、一気に差が開いた。そして、何もできないまま沈んだ。みんな、沈められた。それが悔しいってのもあるし、私にとって、一番の戦友だった瑞鶴を沈められたのが、とにかく悔しいし、悲しい。私はもう、あんな感情を味わいたくない。」

「これが、強くなりたい理由ね。二人で、生き残る。絶対に、沈まない。」

「・・・分かった。出撃の許可を出す。」

「え?いいの?ありがとう!」

「ただし、一つ、条件がある。」

「・・・なによ。」

「帰ったら、円卓の艦娘と戦え。」

「理由は?

「二人の実力を把握しておきたいのもあるし、その思いが本気かどうかを確かめさせてもらう。」

「いいわね、それ。いっつも大本営でダラダラしてる、変なプライドの塊をへし折ってやるわよ。」

「円卓の騎士なんて名乗ってるけど、そんな肩書なんていらないよね、あれ。」

・・・やけに乗り気だな。この二人、円卓の艦娘が嫌いなのか?

「二人は、円卓の艦娘が嫌いなのか?」

「ええ、それはもう。いつも、大本営で何もしないからね。

「トラック泊地の時も、仙台の時も、ギリギリになってからようやく来て、活躍するフリだけして、何もしないで帰る。もっと早く来れば、犠牲も被害も減らせたのにね。」

「・・・あいつらは、もしものために温存されている。そう簡単に動かしていい戦力じゃない。」

「そうやって、温存して、結局勝敗が決してから、慌てて戦場に出すんでしょ?あの時と同じじゃない。二の舞を踏むだけよ。いや、もう踏み始めてるか。」

「それに、あれに匹敵するほどの実力者が出ていないのは、あんたたちが、艦娘の訓練や育成を軽視してるからでしょ。何にも学習してないわね。」

言いたい放題だな。まあ、実際に、そんな状況だから、何も言い返せない。

「ま、楽しみにしておくわ。」

そう言って、二人は出て行った。

「なんだか嫌な気分になるな…。」

はあ、何があったんだろうか。あれは完全に嫌ってる。あの二人は、円卓の艦娘の出撃が遅いことや、出撃自体少ないことに怒ってる。でも、失ったら、それこそ、大きな打撃になってしまう。

「艦娘の育成かぁ…。」

あのレベルまで、成長させることができるのだろうか。第一世代は、先天性の特殊な能力を持っている。でも、他の艦娘は持っていない。あまりにも大きな壁だ。

「そういうような能力を発見することも、育成するうえで必要なんだろうけどな…。」

 

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