奄美諸島近海
「あーあ、天気が悪くなってきたなあ。」
「うわあ、これは大変な任務になりそうだ。」
「汚染海域の偵察だけでもいやすぎるのに、視界まで悪くなるとはね、ついてなさすぎるでしょ・・・。」
「はぁ、とっとと終わらせましょ。」
「ひとまず、天候の悪化は、提督に伝えておきますね。」
「よろしくー。」
「汚染海域が近くて、海が変化しやすいなあ。」
「波が高くなってきましたね。陣形を乱さないように注意してください。」
「・・・あれ?」
「どうしたの?」
「通信がつながりません。電波妨害を受けているのでしょうか・・・?」
「一度引き返そう!風も波も、どんどんひどくなってるし!」
「そうですね、全艦隊、転身!」
陣形を維持したまま転身する。雨が降り出してきた。視界がどんどん悪くなっていく。
「ねえ!流石におかしくない!?あまりにも急すぎる!」
「汚染海域が近いから仕方ないでしょ!」
「皆さん、落ち着いてください!急いで嵐を抜けましょう。」
艦隊の速度を上げ、海域からの離脱を試みる。すると突然、空が晴れた。
「なにが起こっているの・・・?」
「榛名さん、通信を急いで!」
「やっていますが、全くつながりません。」
「これも、汚染によって引き起こされてるわけ?」
「ねぇ、ちょっと、冗談よね・・・?」
駆逐艦、霞が声を上げる。顔を上げると、海が、赤黒く変色していた。
「嘘・・・。」
「ここって、さっき通ったばっかりだよね・・・。」
「ねえ、あそこに誰かいる。」
「行ってみよう!遭難艦かもしれないし!」
海上に立っている艦娘に近づく。白い服を着て、背中には、艤装を背負っている。袖口は、青黒く染まり、艤装はところどころ錆びており、マストが折れている。近づいても、全く動かない。
「あなたは、誰ですか・・・?」
声をかけても、無反応。
「誰か、この人を知っている人は・・・」
重巡洋艦、古鷹が、全員に声をかけるが、手を挙げる人は一人もいない。
「その様子だと、誰も知らないようだな。こっちのほうじゃなかったか。」
不意に、後ろから声が聞こえた。
「誰だ!」
「まあまあ、そんなに驚かなくても。」
そこに、誰かがいる。でも、姿をとらえられない。赤い霧が発生している。声は、そこから聞こえる。
「ちょっと、そいつについて、教えてもらおうと思ったんだけどな、知らないならいいや。」
轟音、爆発。一瞬で、六人が吹き飛ばされた。
「全艦、武装の自由使用を許可!応戦します!」
赤い霧に向けて砲撃した。したはずが、そこには、何もない。
「遅いなぁ。そんなんじゃ、何もできずに終わっちゃうよ?」
「きゃああああ!」
後ろから砲撃され、吹き飛ばされる。一瞬で大破に追い込まれる。
「これが・・・、魔女!」
魔女が、金色の、巨大な斧を振り上げる。
「おらああぁぁああ!」
斧が、横に弾かれる。駆逐艦、長波だ。そのすきをついて、砲撃。周りの人も一緒に砲撃する。着弾して、一瞬だけ、霧が晴れた。そのすきに離脱する。
「今のは、なかなかよかったね。」
「ダメだ、全然効いていない。」
一度、呼吸を整え、構えなおす。だが、その時間が敵に隙を与えることになってしまった。
「そんなことをしてる暇があるのかな~?」
爆発、自分の艤装からだ。弾薬庫まで貫通された。艤装から激しい煙が上がり、何も見えなくなる。その隙間から、剣が迫る。
「あ・・・」
「そんな・・・」
海は、静かに波立ち、揺れ続ける。青く、美しかった海は、赤く、暗く、染まる。空は、再び雲が覆い隠し、暗闇に沈む。
「つまらない…。」
***
2045年11月12日 16:30
佐世保鎮守府所属
戦艦 榛名、日向
重巡洋艦 古鷹、加古
軽巡洋艦 天竜、龍田、夕張、
駆逐艦 吹雪、白雪、初春、子日、夕雲
大隅泊地所属
重巡洋艦 青葉、衣笠
軽巡洋艦 長良、五十鈴
駆逐艦 霞、長波
合計18隻、通信途絶、行方不明
***
翌13日 07:28
奄美諸島を中心に、半径約140kmの、大規模な赤色汚染海域の形成を確認。現在拡大中。多数の深海棲艦の発生も確認。
迅速なる浄化の実施を求む。