2045年 11月12日 14:26
釜石
「ここが釜石製鉄所かぁ。」
「一度は鉄鉱石の輸入の減少で閉鎖されたけど、瀬戸内での生産量がどんどん減ってきて、不足し始めたから、また再開された。設備は比較的新しいけど、突貫工事だったし、まだ東北は安全といわれてた頃だから、防爆構造はあまりちゃんとしてなくて、すぐに破壊されちゃった。あの時の襲撃は、仙台鎮守府と、釜石の工業地帯が目標だったみたい。」
「アルミ工場は大丈夫なの?」
「アルミ自体は、生産拠点が北陸のほうに行ったから、ここでやる必要はあまりなくて、設備もそこまで大きくないし、時間をかけて作られたから、重要施設の防爆構造はしっかりしてる。」
「潮流発電機の整備場は?」
「そこもしっかり作られたし、そこまで大きな設備は必要ないし、それに、製鉄所から、少し離れたところにあるから被害を受けなかった。」
「そうなんだ。そこから送電線がつながってるってこと?」
「うん。地下でつながってる。空母艦載機だったから、地中貫通弾みたいな重い爆弾は運用できなかっただろうしね。じゃ、私は潮流発電機のほうに行ってくるね。」
「よろしくー。」
上陸して少し歩き回る。人気は全くない。いまだに撤去されていない瓦礫が大量にある。予算すらないうえに、この地域一帯は、完全に放棄されているから、全く手が入らなかったのだろう。
「・・・あれかな?」
少し歩いたところで、瓦礫に埋もれかかっている四角い構造物が見えてきた。あれが防爆構造なのかな?近づくと、閉じられたシャッターや扉が見えてきた。シャッターは開きそうにないから、扉にかかっている南京錠を開ける。中は真っ暗だった。天窓すらないのだろう。懐中電灯をつけて、中に入る。目の前に下へと続く階段がある。地下にあるようだ。隣には、大型のエレベーター。トラックの昇降にでも使っていたのだろう。階段を降りると、巨大な空間があった。ここが加工場か。
「さて、電気室はどこにあるかな。」
懐中電灯をあちこちに向けながら歩いてゆく。妖精さんも、ふわふわ飛びながらついてくる。
「かんりしつみたいなところがあったよー。」
管理室か、近くに電気室もあるかな。
「こっちこっち。」
妖精さんについていくと、窓があって、近くにドアがあった。鍵がかかっていたが、ここも開けて中に入る。結構広い。休憩所としても、使われていたのだろう。
「ここじゃないか?」
ドアのプレートには、「配電室・高圧電流注意」と書かれている。
「ボイラー室はないの?」
「この奥だな。」
「誰か、ここに故障とか異常がないか調べてて。」
そういって、奥に進む。
「これがボイラーか。まだ、動きそうではあるが、ひとまず様子見だな。」
持ってきた発電機を置く。
「壊れているとして、直せそう?」
「当たり前だ。」
「じゃあ、ここはよろしく。私は加工場の設備を見てくるね。」
「頼んだ。」
***
一通り見て回ったが、設備に損傷はなかった。ただ、劣化で、故障している箇所が多い。稼働できる状態になるまで、かなり時間がかかるだろう。
「誰!?」
向上の地下からのびる長い通路から、人の気配がした。自分の声が反響する。腰の刀に手をやり、警戒を強めるが、すぐに必要ないと分かった。この雰囲気は、瑞鶴だな。少しして、瑞鶴が歩いてきた。
「へー、ここに直接つながってたんだ。」
「そうらしいね。この配管は多分、電線を通してるものだと思う。切れている箇所はなかったから、多分大丈夫。」
「向こうでは、何かあった?」
「特に何も。発電機はもう、沖合に設置してきた。こっちの方は?」
「一応、一通り見て回って、損傷は見られない。だけど、劣化のせいで、故障している箇所は結構あるかも。」
「時間かかりそう?」
「うん。」
「やっぱり、簡単なことじゃないなぁ・・・。」
「・・・鎮守府に帰ったら、円卓の騎士と戦うじゃん。そこで勝ったら、第三整備場の復旧を最優先でやってもらうのはどう?」
「それが一番手っ取り早いか。」
「ま、今日はもう遅いから寝よ?」
「そうね・・・。」
***
同日 大本営
「本当によろしいのですか?」
「そのことは、先日の会議で言っただろう。確かに、数年間、提督からは離れていたし、ラバウル壊滅の原因の一つではある。だが、私は彼しかいないと思ってる。非常に苦しい状況で戦い、仲間を失うことの恐ろしさと悲しみを知っている。これは、なによりも大切なことだ。彼以上の適任はいない。」
「・・・そうですか。大丈夫でしょうね?こんな一大事に、私情をはさむつもりですか。」
「これは決して私情ではない。あくまでも、客観的に見て、艦娘のことも加味したうえでの決定だ。」
「・・・分かりました。それでは、私はこれで。・・・失礼しました。」
***
2045年 11月13日 05:50
釜石
「はぁ・・・。」
朝は嫌いだ。暗闇から浮かび上がるような感覚が嫌いだ。あの頃の、もっと楽しかった生活に戻りたい、そんな気分になってくる。隣では、まだ瑞鳳が寝ている。一度、瑞鳳の髪をなで、立ち上がる。
「外行くか・・・。」