白く染まる世界   作:快晴Ⅲ

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第二十七話

2045年 11月12日 14:26

釜石

 

「ここが釜石製鉄所かぁ。」

「一度は鉄鉱石の輸入の減少で閉鎖されたけど、瀬戸内での生産量がどんどん減ってきて、不足し始めたから、また再開された。設備は比較的新しいけど、突貫工事だったし、まだ東北は安全といわれてた頃だから、防爆構造はあまりちゃんとしてなくて、すぐに破壊されちゃった。あの時の襲撃は、仙台鎮守府と、釜石の工業地帯が目標だったみたい。」

「アルミ工場は大丈夫なの?」

「アルミ自体は、生産拠点が北陸のほうに行ったから、ここでやる必要はあまりなくて、設備もそこまで大きくないし、時間をかけて作られたから、重要施設の防爆構造はしっかりしてる。」

「潮流発電機の整備場は?」

「そこもしっかり作られたし、そこまで大きな設備は必要ないし、それに、製鉄所から、少し離れたところにあるから被害を受けなかった。」

「そうなんだ。そこから送電線がつながってるってこと?」

「うん。地下でつながってる。空母艦載機だったから、地中貫通弾みたいな重い爆弾は運用できなかっただろうしね。じゃ、私は潮流発電機のほうに行ってくるね。」

「よろしくー。」

上陸して少し歩き回る。人気は全くない。いまだに撤去されていない瓦礫が大量にある。予算すらないうえに、この地域一帯は、完全に放棄されているから、全く手が入らなかったのだろう。

「・・・あれかな?」

少し歩いたところで、瓦礫に埋もれかかっている四角い構造物が見えてきた。あれが防爆構造なのかな?近づくと、閉じられたシャッターや扉が見えてきた。シャッターは開きそうにないから、扉にかかっている南京錠を開ける。中は真っ暗だった。天窓すらないのだろう。懐中電灯をつけて、中に入る。目の前に下へと続く階段がある。地下にあるようだ。隣には、大型のエレベーター。トラックの昇降にでも使っていたのだろう。階段を降りると、巨大な空間があった。ここが加工場か。

「さて、電気室はどこにあるかな。」

懐中電灯をあちこちに向けながら歩いてゆく。妖精さんも、ふわふわ飛びながらついてくる。

「かんりしつみたいなところがあったよー。」

管理室か、近くに電気室もあるかな。

「こっちこっち。」

妖精さんについていくと、窓があって、近くにドアがあった。鍵がかかっていたが、ここも開けて中に入る。結構広い。休憩所としても、使われていたのだろう。

「ここじゃないか?」

ドアのプレートには、「配電室・高圧電流注意」と書かれている。

「ボイラー室はないの?」

「この奥だな。」

「誰か、ここに故障とか異常がないか調べてて。」

そういって、奥に進む。

「これがボイラーか。まだ、動きそうではあるが、ひとまず様子見だな。」

持ってきた発電機を置く。

「壊れているとして、直せそう?」

「当たり前だ。」

「じゃあ、ここはよろしく。私は加工場の設備を見てくるね。」

「頼んだ。」

***

一通り見て回ったが、設備に損傷はなかった。ただ、劣化で、故障している箇所が多い。稼働できる状態になるまで、かなり時間がかかるだろう。

「誰!?」

向上の地下からのびる長い通路から、人の気配がした。自分の声が反響する。腰の刀に手をやり、警戒を強めるが、すぐに必要ないと分かった。この雰囲気は、瑞鶴だな。少しして、瑞鶴が歩いてきた。

「へー、ここに直接つながってたんだ。」

「そうらしいね。この配管は多分、電線を通してるものだと思う。切れている箇所はなかったから、多分大丈夫。」

「向こうでは、何かあった?」

「特に何も。発電機はもう、沖合に設置してきた。こっちの方は?」

「一応、一通り見て回って、損傷は見られない。だけど、劣化のせいで、故障している箇所は結構あるかも。」

「時間かかりそう?」

「うん。」

「やっぱり、簡単なことじゃないなぁ・・・。」

「・・・鎮守府に帰ったら、円卓の騎士と戦うじゃん。そこで勝ったら、第三整備場の復旧を最優先でやってもらうのはどう?」

「それが一番手っ取り早いか。」

「ま、今日はもう遅いから寝よ?」

「そうね・・・。」

 

***

 

同日 大本営

「本当によろしいのですか?」

「そのことは、先日の会議で言っただろう。確かに、数年間、提督からは離れていたし、ラバウル壊滅の原因の一つではある。だが、私は彼しかいないと思ってる。非常に苦しい状況で戦い、仲間を失うことの恐ろしさと悲しみを知っている。これは、なによりも大切なことだ。彼以上の適任はいない。」

「・・・そうですか。大丈夫でしょうね?こんな一大事に、私情をはさむつもりですか。」

「これは決して私情ではない。あくまでも、客観的に見て、艦娘のことも加味したうえでの決定だ。」

「・・・分かりました。それでは、私はこれで。・・・失礼しました。」

 

***

 

2045年 11月13日 05:50 

釜石

 

「はぁ・・・。」

朝は嫌いだ。暗闇から浮かび上がるような感覚が嫌いだ。あの頃の、もっと楽しかった生活に戻りたい、そんな気分になってくる。隣では、まだ瑞鳳が寝ている。一度、瑞鳳の髪をなで、立ち上がる。

「外行くか・・・。」

 

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