白く染まる世界   作:快晴Ⅲ

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第三十二話

2045年 11月13日

 

戦闘が始まって、もうすぐ一時間になる。敵の誘導は全然うまくいってない。これまでに三回試したけど、一定の距離からは全然進まない。これまでの戦闘で学習したのだろう。近づけばレールガンに砲撃されると。弾薬はほとんどない。かなりの疲労がたまってきてる。味方の航空攻撃もかなり低調になって来た。どうやら、空母艦載機のほとんどを戦闘機にしてきたのだろう。爆撃はほとんど受けていない。その代わりに、航空優勢が取りづらくなっていて、空でも、数の優位を生かせていない。そうなってしまうと、数ではるかに劣るこちらがどんどん苦しくなっていく。

「そろそろ、真面目に撤退を考えるべきですね。艦隊が壊滅しかねません。」

「そうね。でも、電波妨害がひどくて泊地と通信ができないわ。通信機も破壊されてるし。」

「最悪、独断で撤退しましょう。おそらく、今回の侵攻はこちらの戦力の低下を狙ってのものでしょう。ここに居続ければ敵の思うつぼです。それに、ますます不利になっていきます。敵は、損傷した艦を下げて、後方の艦をすぐさま補充しています。撃っても打っても、敵が減りません。」

「考えておくわ。」

確かに、この戦闘では、撃沈をほぼ確認していない。流石は霧島、よく見てるわね。敵艦が少しずつ水雷戦隊を突破してきている。魚雷をほぼ打ち尽くした駆逐艦にとって、これを止めるすべはほぼない。先頭の重巡に3番、4番主砲の翔潤を合わせ、砲撃。放たれた砲弾が命中して爆発、停止した。そのおかげで、後続の隊列が乱れる。すかさず副砲で砲撃をして牽制。

ガァン!

「くっ!」

危なかった。敵戦艦から意識が逸れたせいで、砲撃を見逃していた。たまたま、主砲に当たったおかげで砲弾をはじくことができたが、普通に甲板にあたっていたら抜かれていた。ただ、今の衝撃で2番主砲が故障した。

「1番、テー!続いて3番4番、装填が終わり次第砲撃開始!」

まずは、装填が終わっている1番主砲で砲撃。距離が離れているため外れる。修正を行い、3番、4番で砲撃をする。終わったら取り舵をとって、艦首を敵艦に向け、防御姿勢を取ると同時に左舷からの魚雷を警戒する。

「2番主砲、修理急いで。」

通信機から悲痛な叫びが聞こえる。

「ダメ!全然止められない!」

見ると、敵駆逐艦がどんどん突破してきている。

「戦線の維持はだめそうね・・・。」

「陸奥さん!そちらからお願いします!」

「分かってるわ!」

離れたところにいる霧島と一緒に、副砲と高角砲で攻撃し、二方向から砲撃を浴びせる。先頭の二隻が炎上したが、後続の艦隊を止めることはできない。正面にいる戦艦が砲撃をする。

「あれは・・・耐えれる!」

艦を少し傾けて傾斜を作り、耐える。直撃こそなかったが至近弾が発生し、衝撃が体を襲う。

「てきだん、きょうさ!」

「次撃たれたら終わりかもね。」

旋回が終わった1番主砲で照準をつける。相手は側面をさらしている。当てられればバイタルパートを打ち抜ける。

「1番、テー!」

これで仕留めるつもりで砲撃を行う。少しして、相手の戦艦が爆発する。当たった。だが、まだ動いている。弾薬庫までは届かなかったようだ。左舷からは、駆逐艦が接近してくる。砲撃自体はいたくないが、こちらは側面をさらしている。今の自分の状態で魚雷を打ち込まれたら、回避は難しいだろう。

「てきくちくかんとのきょり10kmをきった!」

いよいよまずいか。10kmを切ったらだいたい魚雷を撃ち始める。

「3番4番、テー!」

当たるわけないが、主砲で砲撃をする。至近弾にでもなれば、多少の損傷ぐらいは与えられるだろう。水柱が上がり、一隻が隠れた。あれは至近弾になっただろう。注意を正面の戦艦に移し、砲撃を警戒する。

「2ばんしゅほう、しゅうりかんりょう。」

「装填と旋回を急いで。」

戦艦が砲撃、再び艦を傾けて防御姿勢をとる。しかし、これをよけることはできず、着弾。接触信管だったらしい。直撃してすぐに爆発した。が、装甲に大穴が空き、浸水が拡大する。

「ダメージコントロール、排水作業急いで!」

艦が右舷側に傾斜する。

「左舷注水!」

2番主砲の砲撃準備はもうすぐ終わる。相手は、相変わらず側面をさらしている。いつまでこんな好条件で砲撃できるかもわからない。どっちにしろ、あれを沈めなければ私は帰れない。

「前部主砲、テー!」

砲撃、敵艦が大きく揺さぶられる。直後、天まで届かんばかりの大爆発。

「やった。」

弾薬庫に届いたらしい。周囲が爆炎で完全に覆われている。あれはもう沈んだだろう。そう思って注意を駆逐艦に向けたその瞬間、激しい衝撃に襲われた。自分の艤装から、大きな爆発が起きる。

「え・・・?」

おかしい。敵艦はさっき砲撃したばかりなのに。それに、たった今、撃破したはず。弾薬庫を抜かれた。弾薬がほとんど残っていなかったおかげで何とか助かったが、今のは・・・?敵の援軍?だが、周囲を見渡しても何もいない。まさか・・・、あの戦艦?私はさっき、前部主砲を狙った。だとしたら後部主砲は生き残っていてもおかしくない。さっきは、後部主砲で砲撃をしなかったのか?1番主砲がやられた。生き残っている主砲を構えなおし、警戒を強める。炎が収まって来た。見えてきたのは、激しく炎上しながら沈んでゆく敵戦艦。最後の意地で撃ったのか。この一瞬の油断を狙うために。

「左舷から敵駆逐艦急接近!魚雷の発射を確認、目標は陸奥さん!」

「全艦取り舵一杯!回避行動!」

たくさんの白い筋が自分に向かって伸びてきているのが見える。一体何本あるの?艦首を魚雷の方向に向けて回避を試みる。だが、右舷側の浸水が激しくてなかなか曲がらない。

「左舷注水急いで!」

そうこうしているうちに魚雷が接近する。ダメだ、よけきれない。そう思った瞬間、海面が爆ぜた。それに続いて爆発が次々と起こる。魚雷が爆発してる?最後の望みをかけて水煙の中に飛び込む。衝撃は・・・来ない。何とか助かったようだ。水煙を抜け、上を見上げると、意外なものが目に入った。

「A-10!?なんであんな骨董品が!まだ敵艦が多いのに危険すぎる!」

「陸奥さん、大丈夫ですか⁉」

「ええ、大丈夫よ。でも、なんであれが・・・。」

「泊地との通信が回復しています。上空にP-2がいます。中継してくれているのでしょう。」

「聞こえるか?時間がないから手短に説明する。佐世保に向かっていたであろう艦隊が進路を変更し、お前たちの方へ向かっている。そろそろ射程に入るはずだ。今すぐ撤退しろ。」

「誘導は一切できていませんが。」

「構わん。今回の敵の目的は侵攻ではないと結論付けた。一切の誘導は無駄だ。それに、呉からの援軍も途中で足止めを食らっている。それ以上そこにいたら孤立するだけだ。」

「分かりました。今すぐ撤退します。」

「皆さん、聞きました?今すぐに撤退しますよ。」

そこに、突然の警告。

「敵弾警報!全巻散開、自由回避!」

周囲に砲弾が次々と着弾し、水面を揺るがす。

「もうここまで来ていたのか!」

「主砲、テー!」

すかさず反撃するが、射撃方位盤や電探はすでに損傷していて、精度は期待できない。進路を変更して本土へ向かう。全員がそれに従う。

「速度が出ない・・・。」

機関部にも浸水が始まり、出力が落ちている。次々と追い抜かれ、艦隊から離脱してしまう。霧島と鳥海が反転してくる。

「大丈夫ですか!」

「だめそうね・・・。ただでさえ遅いのに、出力がどんどん落ちていく。離脱は・・・、きついわね。」

「鳥海さん、そっちをお願い、二人で曳航するわよ。」

「分かりました。陸奥さん、行きますよ!」

「無駄なことはしないで。二人は行ってていいわよ。」

「なんでですか!まさか沈むつもりじゃないでしょうね!」

「その通りよ、霧島。私はもう、20ノットも出ない。全力で逃げても追いつかれるわ。」

「それなら私たちが時間を稼ぎます。それまでに安全圏まで退避してください。私たちの速力なら、多少離脱が遅れても追いつけます!」

「ダメよ、これ以上犠牲は増やせない。私一人だけで充分。」

「その犠牲を減らすためにいってるんですよ!」

「あなた達が離脱できる保証なんてないわ。これは旗艦命令よ!早く行きなさい!」

「私たちなら離脱できます!それだけの実力はあるでしょう⁉」

「100%帰れるわけじゃない。それに、私が単独で帰投できる保証もない。それはわかってる?それに、もしも、私も沈んで、あなた達も沈んだら、誰が艦隊旗艦を務めるのよ。高い練度があって、そのうえ、長距離通信ができる中心能力を持つ艦娘は私たちの泊地にはあなた達しかいないのよ!私が生きて帰れる保証はない。だけど、二人はまだ帰れる保証がある。分かっているでしょう。早く行きなさい!」

「・・・分かりました。それでは。」

「霧島さん!?いいんですか?」

「陸奥さんは頑固ですからね。こうなったら梃子でも動きませんよ。」

「あら、よくわかってるじゃない。その通りよ。分かったら早く離脱しなさい。」

そういって、二人に背中を向ける。

「ビッグセブンの力、舐めないで頂戴ね。」

 

***

 

11月13日 10:43

戦闘終了

此方の損害

沈没・・・七隻

内訳   戦艦 陸奥

     重巡洋艦 青葉 

     軽巡洋艦 川内 五十鈴

     駆逐艦 叢雲 有明 夕暮

 

損傷

大破・・・八隻

中破・・・二十四隻

小破・・・十二隻

 

戦果

豪撃沈・・・二十七隻

内訳   戦艦二隻

     重巡洋艦二隻

     軽巡洋艦四隻

     駆逐艦十九隻

 




戦闘シーンってめちゃくちゃ難しいです。客観的になってしまって、あまり緊迫感を出せません。自分もssを読んでて、この小説の戦闘シーン上手いなー、と思うことがよくあって、作者の方はどんなふうに考えているのだろうと、思っています。
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