白く染まる世界   作:快晴Ⅲ

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第四十四話

提督とも会って、今は復旧している鎮守府を歩き回っている。

「意外と進んでるな・・・。」

おそらく、第一、第二整備場は稼働している。2週間足らずでここまで復旧させるとは。

「あの提督は、今までのとは違いそうだな。」

復旧の速さに感心していると、瑞鶴に話しかけられた。

「あら、だいぶやられてるじゃない。大丈夫なの?」

「大丈夫だ。問題ない。」

「どう見ても問題あるようにしか見えないけど・・・。てかあんたの大丈夫は、私たちとの基準が違うから、あまり信用してないけど。」

「基準が全員同じである必要はない。俺の基準とお前らの基準が違うのなら、わざわざ比べる必要もないだろう。」

「それもそうね・・・。」

「瑞鶴の方は大丈夫なのか?」

「心配かしら?」

「そういうことになるな。」

「そう、うん。まあ大丈夫よ。助けてくれたからね。でもさ、邪魔呼ばわりはちょっとどうかしてるでしょ。」

「仕方ないな。実際、自由に動けるような環境でないと、確実に沈んでた。」

「そう・・・なんだ。」

***

その後はすぐに瑞鶴と別れて、鎮守府西側第一バンカーに来た。ここは、壊滅した第一整備場に代わって、いくつかの設備を移動させて自分の艤装の整備をしているところだ。そこで艤装にもたれかかって休んでいると、長門が来た。何かを探している。目的は俺だな。右手を挙げながら自分の居場所を知らせる。

「どうした。」

「ああ、ここにいたのかって!!お前!その怪我は大丈夫なのか⁉」

「大丈夫だ。止血もしないでしばらくここにいたから真っ赤に染まってはいるがな。まあ心配するな。俺がきれいにしとくよ。」

「いや、そういう問題でなくてだな、早く入渠するなり止血するなりしないと死んでしまうぞ!」

「別に?俺は特に生きていって思ってるわけでもないからな。だから、心配はいらない。するだけ時間の無駄だ。それに、艦娘はこんなことでは死なないだろ。もし死んでるようじゃあ、戦闘なんてできないぞ。」

「いやだからな・・・、せめて高速修復材だけでも・・・。」

「はぁ、だから問題ないといっているだろう。聞こえないのか。で、お前は何をしに来たんだ?長門。」

「そこまで言うならまぁ・・・納得はしないが分かった。それで、私がここに来た理由は、あなたに感謝するためだ。あの時、助けてくれて、本当にありがとう。そして、あの魔女を撃退してくれたことに感謝する。」

「なら、この時間は、完全に無駄になったわけだな。」

「・・・は?どういう意味だ?」

「俺はお前を助けるために介入したのではない。お前のことなんか興味ない。俺はただ、瑞鶴と瑞鳳を助けるために介入しただけだ。あの二人がいなかったら、俺は近くを通っても、ただ傍観するか、素通りするだけだ。自分の方に来たら話は別だが。」

「・・・それは・・・なぜだ?」

「お前が弱いから。そして、助けるほどの価値があるとは思えないから。」

「助ける価値がない、だと・・・?お前は、艦娘に値打ちをつけているというのか・・・?それに、私とお前は初対面のはずだ。なぜ、私が弱いと言い切れる。」

「確かに、悪く言えば、俺はすべての存在に値打ちをつけている。そして、お前は弱い。」

「お前は私のことを、戦っているところを見たことがないだろう。なにを根拠に?」

「さっきに戦闘だよ。」

「嘘を言うな。あの時私に周りには、あの魔女以外誰もいなかったぞ。」

「そうか。ならばそれは、お前の確認不足ということになるな。俺は、お前の戦いを見ていたよ。遊ばれてるなーと思いながら。」

「ならば、なぜあのタイミングで介入しなかった?そうすればもっと被害を抑えられたはずだぞ。」

「この鎮守府の奴らにも、助ける価値がないって思ってるもんで。」

「なぜだ・・・。」

「簡単だよ。・・・お前らは、何もしないからだ。成長しようとしないからだ。お前は、諦めた。だから、助ける価値がないと判断した。」

「私は、諦めてなどいなかったぞ。」

「いーや諦めてた。なら聞くが、お前は、あの時俺が介入しなかった場合、どうするつもりだった?」

「・・・それは・・・。」

「それだよ。お前は何も考えていなかった。確かにお前は強いよ。お前はあの深海棲艦にも届きうる実力を持っているだろう。そしてそれは、今この鎮守府にいる艦娘の中で唯一の存在だ。お前は、あの深海棲艦を、なんとしてでもあそこで止めるべきだった。」

「したぞ!私は全力で止めに行った!だが、あいつとの実力は天と地ほどの差がある。敵うわけがない!」

「それはお前が無意識にお前を縛っている重りだ。お前はあれの実力ばかりを見すぎて、お前自身の実力を見ていない。それだけだ。それに、お前は恐怖に押されすぎている。本能にあらがえ。それができないから、逃げられた。もしもお前が、恐怖を抑え込んであと少し深く踏み込んでいたら、離れていく背中に1発でも打ち込んでいたら、お前の命を捨てる覚悟を見せていたら、俺は介入するつもりだった。ここにいる奴らもそうだよ。死にたくなければ強くなるしかない。特に、以前までの、ここの環境ならば。だが、あいつらは強くならなかった。死ぬ気で努力しなかった。その点、あの二人は、強くなろうとしている。守るために。失わないために。生き抜くために。だから俺は、手の届く限りあの二人を守ると決めた。生きたいのなら、何かを守りたいのなら、命を捨てる。その覚悟でやれよ。すべてを犠牲にする覚悟を持たなければ、すべてが中途半端に終わる。この地獄では。分かったな。」

長門は、何も言わない。

「じゃ、俺はそろそろ入渠してくる。ああ、そこは俺がきれいにしておくから放っておいて構わない。」

「なぁ・・・お前は・・・あなたは、一体、今まで何を見てきたんだ?なにをしてきたんだ?」

「さあね。知らないよ。ただ、一つ言えるのは、いつも、死ぬために、そして、理想の死に場所を見つけるために、あらがっているだけだ。」

「・・・そうか。」

 

***

 

「なぁ、赤城。」

「何でしょうか?」

「私たちが今までやってきたことは、一体何だったんだろうな。」

「・・・どうしたんですか?急に。」

「さっきな、助けてくれたお礼を伝えに、白霜という艦息のところに行ってきたんだが、説教されてしまってな。」

「なにを言われたんですか?」

「・・・覚悟が足りない、と。自分の命を差し出す覚悟が。」

「命を・・・差し出す、ですか・・・。」

「言われてから気が付いた。確かに私たちは、そんなことを考えたことはなかったな、と。今まで、相当な訓練を積んできた。あの魔女に対抗するために。だけど、魔女と対峙して、あの時は分からなかったが、かなりの恐怖を感じていた。そして、何もできなかった。白霜は言っていた。死ぬ気で守るという覚悟がないからだ、と。確かにあの時の私は、時間稼ぎのために残った。全員が合流するために。もしあの時に、死ぬ気で止めに行ってたら、傷を負わせれたんじゃないか、そう思っている。」

「何でしょうか・・・、私も、そんな気がしてきました。私は、対空戦闘ぐらいしか、戦闘に直接かかわることはできませんが、あの時、もっと本気になって爆撃をしていれば、何かしらの援護はできたのかもしれません。もっと、飛行妖精さんを信じて。」

「難しいな。」

「そうですね。ですが、今日はとにかく休みましょう。休みながらゆっくり考えて、また、明日から、心に刻みながら、訓練に励んでいきましょう。」

「そうだな。」

 

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