「すまんな。また呼び出してしまって。」
「いや?暇だったし、別にいいぞ。それで、何かあるのか?」
「いくつか聞きたいことがあってな。その、魔女とか異常個体のことについて。瑞鳳に少し聞いたんだ、異常個体を簡単に倒したそうだが。」
「その前にいいか?」
「何だ?」
「魔女とか異常個体ってなんだ?」
「・・・・・・嘘だろ?」
「ここ本土に来て1年も経ってないし、リンガじゃ本土の情報はほとんど入ってこないし、あそこの提督は全然情報を共有しないし。本土からの情報は基本的に俺が無線を傍受したものしか知らないからな。その中でも異常個体やら魔女やらの言葉は入ってはいたが。まぁ、かなりすれすれのことをやっている自覚はある。」
「そ、そうか・・・。うん、分かった。一から説明するか・・・。」
「すまんな、助かる。」
***
「これで、だいたい分かったか?」
「ああ。あと、異常個体ってのが大したことないやつだってことも分かった。多分、気付かない内に、何隻か沈めてるかもしれない。」
「ああ・・・、まあ、沈めてくれるのはありがたいな、うん。」
「で、今日いた奴が、魔女か。あれは、・・・別格だ。」
「そうだな。あの魔女に傷をつけることができたのは、白霜だけだよ。今の人類の技術じゃあ、まったく傷をつけられない。」
「攻撃をあてたことはあるのか?」
「ああ。ある。ハワイ防衛線の時に、8inレールガンを近距離で直撃させたが、弾かれた。今の人類に、あれを超える火砲は存在しない。できるとすれば、核弾頭を載せた極超音速ミサイルぐらいだろうな。」
「それは単純に装甲で弾いたのか?装甲を傾斜させた、とかではなくて。」
「反応速度、発射から着弾までの距離や時間的に、不可能らしい。」
「そのレールガンの性能はどれほどのもので?」
「口径は8in、初速はだいたい秒速2,800mだ。それを2kmの距離で弾いたんだ。」
「発射から着弾までだいたい0,7秒か・・・。あいつなら、十分反応できる可能性がある。当然、砲弾より光の方が速いから、発射光を見てからでも間に合う。」
「嘘だろ・・・?そんなことが可能なのか?」
「可能だろうね。俺だって、放たれた砲弾を空中で迎撃したりする。」
「それはどうやって?」
「簡単さ。敵が撃った砲弾の信管に、自分の砲弾をあてて、爆発させる。それか、砲弾の軌道を逸らしたり、破壊したり。ただまあ、遅延信管や時限信管なんかを使われたら、あまり意味がないがな。」
「なにをしたら、そんな芸当ができるようになるんだ・・・。それで、魔女にもそれが可能と。」
「だろうな。装甲を傾斜させれば、砲弾をはじくことも可能だ。」
「そうか・・・。」
「ただ、素の装甲も十分厚いだろうな。それだけの砲撃を防いでいるんだから。」
「そうだな・・・。なんで君は、あれを撃退できたんだ?」
「あいつが俺を舐めてたから、だな。あとは初見殺し的なことをやったからかな。」
「初見殺し?例えばどんな?」
「刀を音速以上の速度で振ったり、駆逐艦では扱えない火砲を使ったり。そんなところだ。」
「もう何言ってんのかわかんねぇ。」
「分からなくていいさ。理解する必要もない。」
「そういうわけにはいかないけども・・・。」
「逆に言えば、俺の手札は全て出しきったことになる。あの時は俺の艤装が限界だったおかげで、俺自身も本気ではやっていなかったが、それは、俺を舐めていたあいつも同じ。そしてもう、初見殺しは通用しない。俺はあいつに、まぁ負けることはないだろうが、勝つことは絶対にできない。艤装の性能の限界の120%を出すことができなければ、勝てない。」
「そうなのか・・・。勝つのは厳しいと。」
「そうだ。」
「分かった。ありがとう。そうだ。何かしてほしいこととか、したいこととかってあるか?遠慮なく言ってくれて構わないから。」
「いや、ないな。」
「そうか。」
***
11月14日
「みんな食べ終わったな?」
「はい。もう片付けを始めていますよ。どうかされましたか?」
「ああ、ちょっとな。おーい!片付けが終わったら、すまんがここで待機しててくれ!話さないといけないことがある!」
「何かあったんですか?」
「そうだ。」
「全員ここで待機ということですか?」
「そうだ。かなり深刻な話になる。」
「そうなんですか・・・。」
「あの・・・白霜さんが来ていないんですけど・・・。」
「あ、やっべ。朝にここに来ること伝えてなかった。てか、昨日の夜も来なかったよな?」
「確かに来てませんでしたね。」
「仕方ない。あとだ俺が直接伝えておくよ。」
「ありがとうございます。」
「全員、片付け終わりました。」
「分かった。ありがとう。それで、話さないといけないことというのは、昨日のことについてだ。まず、昨日は、本当にお疲れ様。戦ってくれてありがとう。そして、全員帰ってきてくれてありがとう。昨日の戦闘は、俺達の勝利だ。だが、今はそんな勝利を手放しに喜べない状況にある。まずは一つ目、これは機能、白霜が報告してくれて、そのうえで夜間偵察を行った結果で、マリアナ諸島に、大型重爆撃機が離発着可能な飛行場が複数確認された。よって、これからは関東圏にも、空襲が行われる可能性が高くなる。現在は対空ミサイルの配備を増やすなどの対策を行っている。
「ということは、日本の安全圏はほぼ失われたということに・・・?」
「そういうことになる。幸いまだ、飛行場が完成したばかりであり、爆撃機の配備は行われてはいないが、1カ月以内から、大規模空襲が行われるかもしれない。それに、ここは九州や四国と違い、防空体制は整っていない。よって、空襲が行われれば、みんなにも迎撃に出てもらうことになるかもしれない。これを頭に入れておいてほしい。」
「高高度迎撃の訓練もやらないとだな。特に、艦載型の高角砲は射程が短い。陸上の固定砲がほとんどない関東、東北はかなりの被害が出るだろう。」
「そうだな。次に二つ目。今朝、中国大使館からの報告で、山東半島と遼東半島に、深海棲艦が上陸した。遼東半島ではすでに上陸を許しているらしく、橋頭保が築かれているそうだ。それと同時に、黄海の沿岸都市でも、空母機動部隊による空襲を受けていて、かなりの被害が出ている。ここ二日間の、深海棲艦による攻撃は、日本の戦力の消耗と中国への新たな上陸を狙ったものだろうという結論をつけている。現在は、敵の補給路の寸断と中国援護のための攻撃計画を立案している。最後に、三つ目だ。これは、白霜の報告しかなく、はっきりとした証拠は出ていないが、大規模な深海棲艦の泊地がある、ウルシー環礁やトラック諸島などの、深海棲艦の艦隊は一切出撃していない。これが本当のことだとすれば、今回の攻撃はすべて、南西諸島にいる戦力のみで行われているということになる。」
「だとすれば、深海棲艦は一体どれだけの戦力を持ってるの?私たち、大丈夫かなぁ。」
「分からない。それに、今回の一連の戦闘の中でも、敵に致命的な損害が出ているとは言えない。今はあちこちに戦力が分散しているだろうが、これがすべて集結したとなると、かなり苦しい戦いになることは間違いない。すまんがみんな、これからの戦いは、本当に苦しくなる。覚悟を持ってくれ。俺も、みんなを全力でサポートする。話はこれで終わりだ。解散してくれ。」