「あ、いたいた。いーつきー。」
「ん?どうした?」
「訓練終わったよー。」
「そうか。お疲れ様。」
「でさ、訓練から帰ってくる途中で白霜とすれ違って話したんだけど、その時に一緒にいた雪風たちがすごい目で睨みつけててさ。何かあったのか、知ってるかなーと思って。本人には直接聞きにくいし。」
「あー・・・、やっぱり溝があるかぁ・・・。俺も詳細を調べている途中なんだが、かなり胸糞悪くなる内容だ。少し覚悟してくれ。前任の時代にどうやら、懲罰艦隊なるものが臨時で編制されていたらしくてな、最近その艦隊の旗艦を務めていたのが白霜だったらしい。で、その懲罰艦隊については、簡単に言えば、前任が不要と判断した艦娘を海没処分するために編制される艦隊で、毎回艦娘が選ばれて、わずかな燃料と弾薬だけを積んで出撃させられていた。1年前までは何人かの艦娘が交代で務めていたらしいが、白霜がここに来てからは毎回、旗艦になっている。どうやら、白霜は編制された艦娘を、本当にすべて沈めて帰ってくることに定評があったらしくて、前任からはかなり気に入られていたようだな。」
「・・・そんなことが。ますます許せなくなってくる。なんであんなのが提督になれたんだよ。艦娘のことを何だと思っているんだ・・・。白霜も、なんでそんなに艦娘を沈めるようなことができる!同じ艦娘だろ!」
「深雪の言う通りだ。俺も白霜と話してみる。溝が深いままだと、心の傷もよくならない。ここにいる艦娘たちのこことのケアは、お前たちが中心になってしてほしい。人間に対してトラウマや恐怖が強い子たちも多いはずだ。俺は白霜と瑞鶴、瑞鳳に集中する。」
「うん。分かった。できる限りのことをしてみるよ。」
「頼んだ。」
***
「だいたいこんなもんかな。」
新型艦爆の、さらなる改良型の設計、試作が終わった。昨日の戦闘の様子を見て、もともと艦爆として持っている高い急降下性能を生かして、一撃離脱に特化した制空戦闘をしてもらうことにした。機首がさらに長く、重くなるけど、二重反転プロペラに変更し、翼端を丸く切り落として短くした。
「完成がどんどん遠のく・・・。」
「設計変えすぎだ。何回変えれば気が済む。」
「返す言葉もないです・・・。・・・だけど私たちが目指しているのは常に理想だからね。妥協はしたくないよ。」
「そうだな。だから我々も全力で協力させてもらっている。」
「ありがとね。ずっとわがままに付き合ってもらって。」
「もう慣れたさ。」
「ま、外板の素材が変わるから、どっちにしろ設計変更はしなくちゃいけなかったんだけどね。」
「ああ、ようやくアルミが手に入る。超々ジュラルミンが。塗装はしっかりしなきゃだな。」
「うん。あんな海じゃあね。」
横須賀鎮守府には、資源さえあれば、しばらくの間単独で戦闘を続けられるように、巨大な工廠が備わっている。それが、整備場、と呼ばれるもので、第一から第五整備場まである。その中でも特に規模が大きいのが、艦娘の艤装の整備、修理を行う第一整備場と、航空機の製造、整備を行う第三整備場。その二つの整備場には、専用の、金属精錬・加工設備がある。第三整備場では主に、航空機に使う金属の精錬や合金の製造、加工を行っている。ただし、すべてが航空機用というわけではなく、艤装の装備の製造も少し行っている。そしていまは、その設備がすべて破壊されている状況。原料はそれなりの備蓄があるが、製造が一切できない。第一整備場が奇跡的に機能を維持していたため、今までは何とかそこでしのいだが、ここ一年の間に製造した航空機は、材料が全く違うものであったため、本来の性能を引き出せず、かなりの苦戦を強いられた。今までは練度でしのいできたが、最近の戦況の急激な悪化により、限界が出てきている。マリアナが陥落し、小笠原の失陥も時間の問題だ。そうなれば、大型で強力な陸上戦闘機と交戦する可能性も出てきたし、重爆の迎撃もやらなければならない。数でも大きく劣る。今の性能では厳しい。一刻も早く完成させなければ。
「これで、より自由に戦えるようになる。より、優位に立つことができる。もう、あんなことは繰り返したくない。」
その決意を固め、作業に戻った。
今回はちょっと短め。前回が長くなっちゃったから、ちょうどバランスが取れたかな?全く、キリが悪いから。次回は、間に合えば日曜日に。英検があって厳しいかもしれないです。