「あ、雪風、なにしてるの?」
「時雨さん?なにをしているといっても・・・、海を眺めているとしか。」
「そうなんだ。ちょっと隣にいてもいい?」
「はい。」
少し、沈黙する。
「・・・時雨さん、怪我が治って、本当に良かったです。」
「うん。治るどころか、腐り始めてたのに。今は何もなかったみたいに動けるよ。でも、ちょっと不思議な感覚がする。海を見ると、なんか、変な感じ。」
「新しいしれいは、血を垂らしていましたよね。」
「うん。多分、その血が、傷を治したんだと思う。でも、なんでだろう。」
「何かあったんでしょうか・・・。」
「うん・・・。」
再び沈黙する。なにを考えているんだろう。お互い、海を見つめたまま、何も話さない。今は、三時半。太陽はかなり傾き、東の空は暗くなっている。吹く風が冷たい。じっとしていると、寒い。もう、冬か・・・。時間の流れが速いな。今までは、その日を生きるのに必死で、それに、鎮守府にいた時間より、出撃している時間の方が長かったから、あまり寒いとは思わなかった。
「・・・寒いですね。」
そういって、雪風が時雨の手を握る。
「そうだね。」
時雨が、握り返す。
「冬って、こんなに寒かったんだ。」
「今までの冬は、ずっと出撃でしたから・・・。艤装は熱を出すし、南方はずっと暖かいし、なにより、私たちも動けば温かくなりますからね。」
「そうだね。今は、ほとんど出撃をしてない。たくさん休めるし、沈むこともないからいいけど、深海棲艦の動きがわからないから、ちょっと不安。」
「そうですね。」
「ねぇ、・・・雪風。」
「何ですか?」
「ごめんね。あの時、ぶつかっちゃって。雪風を、一人にしちゃって。」
「・・・いつのことですか・・・?」
「分からない。でも、謝らないと、ずっと思ってた。この前のことも。あの時のことも。雪風を、一人で戦わせることになっちゃって。」
「もう・・・いいですよ。私は、あの時の雪風ではないですし、それに、今はそばにいてくれますし。私はもう、一人ではありません。時雨さんが生きててくれて、本当にうれしかったです。私こそ、ごめんなさい。守れなくて。」
「初霜には、会ったの?」
「まだ・・・ないですね。でも、いつか会えると信じています。今度は、守りたいです。もちろん、時雨さんも。」
「任せてよ。今度は、沈まないさ。誰も、沈ませないさ。」
「うん。」
***
「九州には、深雪を向かわせます。」
「なるほど、深雪くんか。分かった。10日後に山城くんが松代に到着する。それに間に合うように深雪くんを松代に向かわせてほしい。そして、君たちが北方に向かうのは20日後だ。準備をしていてくれ。それと、深雪くんを除く円卓の騎士は、このまま横須賀に残す。関東に穴をあけるのもまずいからな。異動先は、決まり次第連絡する。」
「分かりました。これから、反撃を始めるのですか?」
「いや、まだ始めない。なにより、横須賀に戦力が回復するまでは派手に動けない。戦力が少なすぎるおかげでまともな反撃などできないし、たとえ成功しても、すぐに限界が来る。君に急げというわけではないが、反撃のための戦力の維持も難しくなっている。それを頭に入れておいてほしい。」
「分かりました。私もそろそろ、戦力の再建に移ろうとしていたところです。これからは艦娘を増やしながら、訓練を行いたいと考えています。ですが、今北方に行ってしまうとなると・・・。」
「大丈夫だ。二人をずっと九州にいさせるわけでもない。あまり長くはならないようにするさ。それに、訓練なら、異動先でもできる。横須賀に残して、円卓の騎士と一緒に訓練を続けてもいい。それでいいか?」
「分かりました。ご配慮ありがとうございます。」
「協力に感謝する。それでは。」
電話が切れる。
さて、戦力の再建、急がないとだな。あまり時間をかけていられない。今日のところは、資源の確認と、工廠の様子見だけして、できるなら駆逐艦の建造をするか。
今回は短め&ほのぼの?
次回は建造、お楽しみに!