「・・・結局、白霜は参加しないのか。」
「しないし、したくもない。あいつらにとっても、俺がいない方がいいだろ。そろそろ理解してくれ。」
海上では、艦娘たちが訓練をしている。中には、今日の朝建造された艦娘も混ざっている。見ている限り、直進、蛇行、旋回など、基本的な練習を繰り返しているようだ。そして、白霜はというと、何やら馬鹿でかい銃のようなものを分解している。
「・・・君が今までしてきたことは、周りからすれば、確かに受け入れることができるようなことではない。だけど、今からでも変えられるだろう。みんなと話して、ご飯を一緒に食べて。少しずつでいいから、仲良くなっていけばいいじゃないか。」
「周りが変わろうとも、俺自身が変わらなければ意味がない。そうだろう?俺は、一生このままさ。生きるためではなく、仲間を守るためでもなく、死ぬために戦う。理想の死に方を見つけるために。もう、そこから違うんだよ。」
「人は、必ず変われる。それは、白霜にも言えることだ。時間がかかるだけで。今は、分からないかもしれないが、いつかは変われる。」
「それは人間が言えることなのか?いつまでたっても、争いをやめない。今だってそう。誰かと争って、誰かを蹴落として。こんな状況になってもだ。お前ら人間は、愚かすぎる。」
「そうだな。人はおろかだ。だけど、そんな人だけじゃないってことも、知ってもらえると嬉しい。白霜は、今まではずっとリンガ泊地にいて、あまり人と交流はしてこなかっただろう?これからだよ。ここにいれば、多分たくさんの人と出会うことになる。いろんな人と交流して、たくさんのことを知って、それから変わっていけばいい。楽しみだろ?」
「まぁ・・・楽しみではあるな。敵に面白い奴がいるし。これであの退屈な日々ともおさらばかな。」
「お前さぁ・・・。戦う以外には何かねえのかよ。」
「あるわけがないだろう。」
「そんなんじゃ人生つまんねえぞ。」
「俺は強いやつと戦えればそれでいいさ。弱いやつには興味はない。それはあいつらも同じだ。俺は、あいつらがどうなったかなんて、知ったことではない。沈むんだったら、勝手に沈んでろ。沈みたくなければ、強くなれ。それだけだ。」
「確かに、強くなければ自分も仲間も守れないが、白霜が言う強さってのは、個人での強さだろ?たった一人で強くなる必要もない。みんなで強くなって、お互いを守りながら戦う。そんな強さもある。だから白霜、みんなと一緒に訓練に参加してくれ。白霜一人で強くなる必要もない。みんなで強くならないといけない。白霜は、確かに強い。俺はあまり見たことはないが、みんなそういっている。だから、その強さをみんなに分けてほしい。その強さでみんなを守ってほしい。頼まれてくれないか?」
「・・・俺が強い?ふざけるな。俺が強かったら、こんなくだらない戦争なんて、とっくに終わらしてる。」
空気が変わった。白霜の出す圧が、周囲を凍らせる。気温は低く、寒いはずなのに、冷や汗が出てきた。
「今まで、どれだけの艦娘が目の前で沈んだと思っている。俺が強かったら、誰も沈まなかったはずだ。誰も、何も守ることができなかった。無駄だよ。守るなんて。俺は一人で戦う。もう誰も守らない。ただ、深海棲艦を海の底に沈めるだけだ。ほら、深海棲艦をすべて沈めれば、誰も攻撃を受けないだろ?合理的じゃないか。守るよりも。」
「だから、全員で協力して、それをしていこうって言ってるんだ。攻撃とか守るとかの話ではない。」
「・・・無駄だよ。俺は一人で戦っている方が気楽でいいんだ。誤射の心配もないし、自由に動ける。だから、俺は一人で戦う。今までだってそうしてきた。これからもそうする。」
いつの間にか、銃のようなものの組み立てを終えていた白霜は立ち上がって、歩いていく。
「じゃあね。お前が俺を理解できる日は一生来ないと思っているよ。その逆も。」
「待て。」
「・・・まだ何かあるの?」
「白霜、お前は、お前以外の艦娘は嫌いか?」
「いや。嫌いなのは、あの状況下でも強くなろうとしないその気持ちだよ。艦娘そのものが嫌いってわけじゃない。」
「そうか。あともう一つ。その艦娘が、白霜の言っている強くなろうとする気持ちを持たないとして、沈んだら、うれしいか?悲しいか?」
「別に。うれしくはないよね。」
「分かった。ありがとう。」
「そう。もういいよね?」
「ああ。すまんな、引き留めてしまって。」
「別にいいよ。出撃してなくて暇だから。」
白霜が歩いていく。波の音が戻って来た。風が強くなったからか、海がいつもよりも少し荒い。空を見上げると、たくさんの航空機が編隊を組んで飛んでいる。
「赤城と翔鶴だな。こんな短期間で、ここまでできるようになったのか。すごいな。翔鶴は。」
少しの乱れもない編隊で、上昇や降下、旋回をしていく。上達速度が異様に速い。あとは、その編隊飛行を維持しながら別のことをして、どれだけの時間集中できるかだ。だが、翔鶴ならできるだろう。おそらく、妹である瑞鶴と一緒に戦いたいと思っているはずだ。肩を並べて、ともに戦い、今度こそ、二人で勝利をつかみ取るために、と。すると、その上を、別の航空機が通り過ぎていった。瑞鶴と瑞鳳だろう。三個三機編隊を組み、飛行している。赤城と翔鶴の航空隊を追い越したであろうタイミングで花が開くように散開、円を描きながら、再び集まり、寸分の狂いもなく、まったく同じ瞬間に翼を傾ける高度な編隊飛行を披露した。あの動きは、二人が毎日繰り返している。だが、今日は違って見えた。まるで、私たちの方が上だ、と言わんばかりに。あの二人の実力が相当高いということは、先日の海戦の結果を見て分かった。戦艦部隊を、たった二回の攻撃で全滅に追い込んだ。しかも、一切の損害を出さずに。
「ああもう・・・分かんねえな。ここの艦娘は。」
あの三人、瑞鶴、瑞鳳、そして、白霜が異質過ぎる。第一世代、円卓の艦娘と同等、もしかしたら、それを上回るほどの実力を持ち、他の艦娘との仲は悪い。建造場所、日時はいずれも不明。
「はぁ・・・。少しずつやっていくしかないか。」
やっぱり白霜は頭おかs…ちょっと、なんかこう…、ズレてるよね。え?作者の頭がおかしいって?いやいや、そんなことない…と思いたいですね…。