そこに着くと、空気が張りつめていて、息苦しくなるほどだった。足柄と深雪は、白霜とにらみ合っている。その隣では、なぜか赤城と龍驤、瑞鶴と瑞鳳が口論をしていた。
「そっちは何なんだ?」
「えっと・・・分からないです。なんで四人が?さっきはいなかったのに・・・。」
「まあいい。お前ら!ちょっと静かにしろ!」
「はぁ、やっと来たぞ。お前らの大好きな提督様が。じゃあな。こんな無駄な茶番に付き合うのはもう飽きた。」
「待て、白霜。」
「さっき話したでしょ。もう忘れたの?」
「茶番とは何だ!あたしらは、あんたにも必要なことを言っているんだ!なんでわからないんだよ!」
「そうです。あなたが訓練への参加を拒否し続けている限り、私たちの勝利はありえません!それに、あなたが求める強さは間違っています!ただの自己満足に過ぎない!」
「なにが間違っている?一人で敵を攻撃・殲滅する。これが俺に課せられた使命だろう。俺一人で敵を殲滅すれば、お前らは楽ができる。いいじゃないか。」
「そんなことを言っているのではありません。みんなで戦い、ともに勝利を得て、海を取り戻すことが私たちの使命です。」
「全員で戦うことが正解とでも言いたいのか?」
「そうだ!一人でできることには限界がある!みんながお互いを支えあえば、どんなに敵が強くても、どんなに戦力差があっても、生きて、また戦うことができる!勝つことができる!」
「じゃあ、この前の、えっと・・・魔女、だったか?長門が一人で残っただろう。あれは何なんだ?そのあと、お前らは何もできていなかったが、あそこに俺がいなかったら、どうするつもりだったんだ?結局、個人が強くなければ、どんなに群れても意味はない。強ければ、一人でも問題ない。違うか?」
「長門さんをあそこに残ってもらったのは、この鎮守府の艦娘を逃がして、私たちが大勢を整える時間を稼ぐためです。そして、あなたが来なくとも、脱出する方法はありました。」
「そうか。だが、瑞鶴は沈む直前まで行ったぞ?あの斧がおろされていれば、頭蓋骨は二つに割れていただろう。お前らの実力で、あれを防ぐ方法はあったのか?」
「それは、砲撃でもなんでもすればいい話だ。あたしたちを舐めるなよ。」
「そうです。私たちも、舐められるような実力と訓練はしていませんよ。今は、横須賀鎮守府再興のために、あまりできてはいませんが、毎日、一日中、魔女に勝つために訓練をやっています。みんなで。ここでの訓練もそうです。深海棲艦に勝利するために、みんなで肩をそろえて戦うことができるように!」
「へえ・・・それが、あのお遊戯か。」
「はあ?」
「お遊戯だと・・・?」
「おい、白霜、それは聞き捨てならんな。訂正しろ、その言葉を。」
「訂正はしないよ。はぁ、お前ら、あんなんで深海棲艦に勝つつもりでいるのか?だとしたら、やさしすぎる。今の日本に、どれだけの時間があると思っている?持って半年、早ければその半分、三か月だ。フィリピンも、南西諸島も、マリアナも失った。次は、小笠原、そして本土だ。そんなのろのろやってて、間に合うのか?お前らは、泊地に停泊している深海棲艦の艦隊を見たことがあるのか?あったら、そんな生ぬるい訓練をやるわけがない。何倍の敵を相手にすると思う?」
「お前は見たことがあるのか?」
「あるよ。フィリピンでも、ウルシー環礁でも、トラック諸島でも。推定およそ3500隻。ちなみにこれは、補助艦艇を除いた、水上戦闘艦のみの数字だ。補助艦艇を入れると、倍以上にはなるだろうな。お前らはそれを、相手にできるのか?」
空気が、完全に凍り付いた。水上戦闘艦だけで、3500。聞いたこともない数字に、恐怖している。この数字はすでに、大本営には報告している。だが、公式に発表はしていない。国内の混乱を避けるためだ。知っている人間は、上層部の一部の人間にしか伝わっていない。もちろん、樹希は、この情報を知っている。そのことについて話そうと、口を開きかけた時、さらに恐ろしいことを、白霜が言い放った。
「あくまでもこの数字は、少なく見積もった数だ。そして、ソロモンやニューギニア、インドネシア、オーストラリアにいる艦隊を含めれば、軽く一万隻は超えるだろうな。」
「嘘・・・でしょ?なんで、どこにそんな数の艦隊が・・・?」
「もう、どんな手を打っても、これを止めることはできない。本土に近づく艦隊を追い払うことしかできないだろう。マリアナに飛行場が建設された今、日本は再び、本土空襲の危険にさらされている。空襲の対処もしながらではもう、まともな訓練もできないだろうな。分かったか?いい加減に、今の日本の状況を理解してくれ。もう、滅亡の一歩手前に来ているんだ。俺の目的も、果たせなくなる。じゃあな。お前らのやっていることが全て無駄だってことが分かったんだ。良かったな。俺は、自分の方法で奴らを亡ぼす。お前らはもう、信用してない。頑張りな。言えるのはそれぐらいだ。」
誰も、何も言えない。少なく見積もって、3500。それだけでも、恐ろしい数字なのにさらに、一万を超える可能性。どうしようもないこと、なにをやっても、全てが無に帰す。そんな壁がある。そんな戦力差がある。誰もが恐れおののいている。中には、座り込んで、泣き出している艦娘もいる。白霜は、誰も何も言い返さないのを見て、踵を返し、歩いていく。
「じゃ、じゃあ!あたしらが、あたしたちがやっていることが正しいって、証明してやる!白霜!あたしらと戦え!勝負だ!」
声は、明らかに震えていた。誰もが、虚勢を張っているとわかる。だが、言い放った。自らが正しいことを証明するために。その声を聞いて、白霜が立ち止まる。
「そんなことをやっている暇があるなら、死ぬ気で強くなれ。」
「いいですね、やりましょう!私たちには、私たちの方法があります!あなたが見れば、生ぬるいかもしれませんが、私たちは全力です!必ず、この国を守り抜く!必ず、青い海を取り戻す!その覚悟があります!それを、証明するためにも!」
「そうだな。白霜、お前がこの勝負に勝ったら、そのままでいい。だが、負けたら、明日から訓練にともに参加してもらう。」
「なんでお前らだけで話が進んでるんだよ・・・。対話ってのを知らないのか。まぁ、深海棲艦も対話できないから仕方ないか。」
「そうだな、仕方ない。私たちに対話という選択肢は初めからなかったのだから。」
「はぁ。分かった。いいよ、証明してやる。お前らがやさしすぎるってことをな。全員でかかってこい。相手してやる。」
「あの、ちょっと・・・まあいいか。白霜の実力を知るいい機会だし。分かった。実弾演習の実施を許可する。沈没が出ないように気を付けてくれ。それで、そっちは何なんだ?」
「こっちも無駄な時間に付き合わされたのよ。返してくれる?」
「いい加減に作業に戻りたいんだけど?」
「ほんっとに無責任なお二人さんやね。さっきの白霜の話、聞いとったやろ?時間がないんや。」
「その話、あんたたちも知らなかったでしょ。あんな狭いとこに籠ってばっかの引きこもりが。」
「そんな狭いところでやってる訓練なんて、意味ないでしょ?それに、まともに戦ったこともなさそうだし。」
「こちらも、このお二人が訓練に参加しないことについて話しているんです。まったく、わがままばかり。本当に勝てなくなりますよ?」
「あんたらのやり方の方が勝てなくなるわよ。まあ、頭の中でお花畑を大事に育ててるから、分かんないか。」
「なんやとコラぁ!そうゆうあんたらこそ、分かってないとちゃうんか⁉」
「あなた達はいいよね。いつでもほしいものが手に入って、最新技術を投入され続けて、いつでも十分に補給を受けれて。戦闘もせず、沈むこともない演習ばっか。うらやましいよ。ちょっとはこっちの状況も考えてくれない?」
「そうそう。こっちは整備場が破壊されて、まともな設備もなくて、そんな中でやりくりしてたの、分かる?分かんないよね。経験したことないから。」
「今、改善に向かっているじゃないですか。環境は変わりました。お二人も変わってみてはいかがですか?」
「だからさ、時間がないって言ってんじゃん。こっちは一刻も早く新型機の開発と量産を終わらせたいの。こっちはあんたらと違ってさ、時々南方にも言ってたから、状況がよくわかってんの。何も知らないあんたらが、口を挟まないでくれる?」
「アホなんか?今は整備場も使えるやろ。訓練と並行してやればいいだけやないか。そんなこともわからんのか?」
「現場に監督が一人もいなくていいってこと?何かあっても対応できないよ。これだから現場を知らないってのは困る。それに、その理論で言ったら、明石さんが整備場に居座り続ける必要もないよね?そんなこともわからないの?」
「明石さんは工作船です。私たちの艤装の整備や修理、新兵器の開発などがあります。そのため、整備場を離れる時間はほとんどありません。お二人とは違うのですよ。」
「それぐらい自分でやればいいじゃん。なに?できないの?艤装の整備、兵器の開発。まぁ仕方ないか。そんなこと考えたこともないもんね。」
「明石さんだって、訓練は必要でしょ?海に出ることがあるのなら、敵に襲われないとも限らないし、何もできないようだったら、護衛も困るでしょ?ほら、明石さんにも、高角砲はついてるでしょ。それは飾りですか?」
「いい加減にせえ!今はそんなことはどうでもいい!あんたらや。あんたらのことや!あんたらが訓練に参加しないのが問題やって言ってるんや!話を逸らすな!」
もう怖い。なんなの?なんでこんなに仲が悪いの?泣き出しちゃってる子がいるぐらいだよ。
「このままじゃ埒があきません・・・。樹希さん、そちらはどうなりましたか?」
「ああ、えっとな、なんか実弾演習やることになった。」
「実弾演習!いいな、それ!それで決着をつけようや!」
「そうね。それであんたらのお花畑を燃やしてあげるわよ!」
「なんでこっちまで・・・。ああもうわかった。分かったから落ち着け!今日はもう時間が遅いし、これからやるから、四人は明日な!いいな!」
「はい。分かりました。一度この腐った性根を叩きなおします。」
「やってみなよ。何なら、ハンデありだからね。それで負けたら恥ずかしいよ。」
「ああもう、落ち着けって・・・。はぁぁ。こりゃ大変だ。」
はい。とんでもなく長くなりました。最後まで読んでいただき、ありがとうございます。はぁ…、どうしてこんなに強引になっちゃうのかなぁ…。もともと勝負させるつもりではあったんですけど…。
白「いくらなんでも強引すぎるだろ。」
作「すみません文章書くのが下手で…。演習頑張ってください。」